携帯端末IDとの紐付けによってトラフィック以前の効果を実証/モバイル広告効果検証調査
今回の調査では192×53ピクセルのものが使用された。
インターネット広告、モバイル広告ビジネスに関わる企業で構成され、インターネット広告のガイドライン策定などを行う、インターネット広告推進協議会(Japan Internet Advertising Association:略称JIAA)は2008年7月、2007年11月から2008年1月にかけて行われたモバイル広告(ピクチャー広告※)の効果測定調査の結果を「モバイル広告効果測定調査レポート」としてまとめ、発表した。
サイトに訪問者が訪れ、広告が1回表示されると1インプレッションとなる。
広告の効果測定検証に関しては、かねてからトラフィック効果を測定するクリック率(CTR:Click Through Rate 1インプレッションあたりのクリック数)が使用されてきたが、インプレッション効果※に関しては、概念こそ存在していたものの具体的な数値として測定するのは難しいとされてきた。そこで、今回の調査では、携帯電話の端末IDを活用して、広告到達者(携帯電話に調査対象の広告が表示されたことが特定できる人)を特定したうえで、調査対象広告の認知率や、非広告到達者との比較を行っている。
モバイル広告においても効果が想定されるインプレッション効果にフォーカスした貴重な実証実験といえるだろう。
- モバイル広告到達者の64.9%がモバイル広告を認知(キャンペーン中に1度でも広告に接触した場合)
- モバイル広告の認知率は接触回数の増加とともに上昇
- モバイル広告のイメージは「インパクトがある」「親しみを感じる」
- モバイル広告到達により商品名を想起する比率が増加
- モバイル広告に連動してテレビなどにも波及
- モバイル広告にはクロスメディアやクチコミの効果あり
※詳しい調査概要に関しては、記事の末尾に記載している。また、特に断りのない限り掲載している数値は調査期間中に出稿された5キャンペーンの平均値である。
本記事は、JIAAが実施した「モバイル広告効果測定調査レポート」の調査結果をもとに、編集部がJIAAの許諾を得た上で執筆・作成している。
モバイル広告到達者の3人に2人はモバイル広告を認知
モバイル広告到達者(実際に対象の広告が表示されたことが特定できる人)のモバイル広告認知率は64.9%に達し、3人に2人はモバイル広告を認知している(図1)。この数値は5キャンペーンの平均値であり、個別のキャンペーンで見た場合、認知率は50%代のものから、最も高いもので77.8%となる。もちろん認知度に関しては調査で使用された広告のクリエイティブ自体が大きく関与していることが考えられるが、1つの参考となる数値ではないだろうか。JIAAでは、「画面の専有率が高いモバイル広告は高いインパクトをもたらすのでは
」と分析している。
- 50%代:1件
- 60%代:2件
- 70%代:2件
モバイル広告の認知率は接触回数の増加とともに上昇
続いて、接触回数(フリークエンシー)別の認知率をみてみる(図2)。対象のモバイル広告に、より多く接触している人ほど認知率は上昇し、接触回数が10回以上の対象者で72.4%、20回以上となると76.5%に達する。ただし、このグラフの横軸部分は、該当する回数以上の数値を示していることに注意が必要。つまり、横軸「1回以上」の認知率64.9%は、接触回数が1回以上の対象者の認知者の平均値で、「2回以上」の68.0%は、接触回数が2回以上の対象者の認知率の平均となっている。
モバイル広告のイメージは「インパクト」「親しみ」「個性」
モバイル広告認知者を対象に、その広告のイメージを尋ねたものである(図3)。クリエイティブ自体の種類にもよるが、「インパクトがある」が34.8%で最も高く、次いで「親しみを感じる」、「個性がある」が27%となる。JIAAでは、「携帯電話の画面とユーザーとの近さがモバイル広告の受容性をたかめているのでは」
と考察している。
モバイル広告到達により高まる商品の認知と商品への評価
アンケート調査の結果から、モバイル広告到達者は非到達者に比べて商品名を想起する比率が65ポイント増加する結果が得られた(図4)。その他の項目では、その広告が示すメッセージを理解している(覚えている)比率が20ポイント増となっている。
比較の際には、純粋に対象のモバイル広告による効果のみを検証するためにウェイト集計を用いている。具体的には、到達者と非到達者の性年代、及び対象広告となった商材自体への関与度(対象広告がパソコンであれば、パソコンの利用頻度)が広告到達者と非到達者で同じになるよう、比重をかけた集計を行っている。
他媒体での商品の広告チェック、モバイルでのキャンペーン参加が増加
モバイル広告の到達により、対象の商品の広告を他の媒体(テレビや新聞など)でチェックする比率が高まっている(図5)。また、モバイルで行われているキャンペーンに参加したり、モバイルで検索をしたりする比率も、非到達者に比べて大幅にポイントを増やしている。広告に行動喚起を促す効果があることが実証される結果となった。また、この比較にも図4と同様のウェイト集計を行っている。
その他に検証されたクロスメディア、クチコミ効果
図5の結果にもあるとおり、広告の到達が他媒体へのアクションを誘導している効果もあることが判明し、微増ではあるが、モバイル広告到達者は、非到達者に比べてテレビCM、ラジオCM、新聞広告、雑誌広告、インターネット広告すべての分野において、注目・関心度が増加している(図6)。なお、こちらもウェイト集計の対象である。
加えて、同時期にテレビCMを出稿しているキャンペーンの場合では、出稿していないキャンペーンと比較し、そのモバイル広告認知率は10ポイント以上増加している(図7)。テレビCMとモバイル広告のクロスメディア効果も考えられる結果とみてよさそうだ。
さらに、モバイル広告の特徴的な効果の1つとしてクチコミ効果が考えられる(図8)。モバイル広告認知者では、およそ4人に1人は何らかの方法で情報発信を行っている結果となった。「情報発信計」は情報発信のうち、1つでも行ったと答えたユーザーである。
広告といっても、自動車や飲食料、消費者金融と幅広く、個別のクリエイティブに大きく左右されるという点は否めない。ただし、上記でも触れたようにインプレッション数や、クリック率といった実際の数値以外にもさまざまな広告効果が考えられるのは事実である。その効果を、携帯電話の端末IDとアンケート調査を紐付けるという手法で実証した今回の調査は、モバイル広告の新たな効果を示す実証値として大いに参考になるものではないだろうか。JIAAも、「今回の調査をきっかけとしてより多くの事例が検証され、より確度の高いデータとして今回の指標が利用されていくことを期待している」
と述べている。
調査対象キャンペーンと回答者属性
- 調査対象キャンペーン(調査期間中に出稿が行われたピクチャー広告)
- 出稿媒体:
- i-mode:とくするひろば(トップページおよび同コーナー内)
- EZweb:FeliCaポータル・au oneニュースカテゴリー・au one検索結果
- Yahoo!ケータイ:S!ループ
- 商材:自動車・飲料・携帯電話サービス(計5キャンペーン)
- 広告素材:ピクチャー広告 192×53ピクセル
- 出稿規模(※調査対象5キャンペーンの平均値):
- インプレッション:282万9675
- クリック数:1万5131
- CTR:0.53%
- 出稿媒体:
- 回答者属性
- 性年代
- 職業
調査概要
- 調査実施期間:2007年11月26日~2008年1月28日
- 調査方法:モバイルインターネット調査(オープンアンケート形式)
- 調査対象者:調査対象キャンペーン実施媒体ユーザー
- 回収サンプル数:9,533(5キャンペーン合計)
- 対象者獲得方法:調査対象キャンペーン終了後、キャンペーン実施媒体に調査
回答者誘導広告を掲載しモバイルインターネット調査サイトに誘導してサンプル回収 - 調査主体:インターネット広告推進協議会(JIAA)
モバイル広告効果測定調査プロジェクト - 調査実施機関:株式会社ビデオリサーチインタラクティブ
インターネット広告推進協議会(Japan Internet Advertising Association:略称JIAA)は、1999年(平成11年)5月、インターネットが信頼される広告メディアとして健全に発展していくために、共通の課題を協議しビジネス環境を整備することを目的として発足された。2008年10月現在、インターネット広告、モバイル広告ビジネスにかかわる企業(媒体社、メディアレップ、広告会社など)199社が集まって、調査研究、ディスカッション、ガイドライン策定などを行っている。また、優れたインタラクティブ広告を表彰する「東京インタラクティブ・アド・アワード」を開催するなど、インターネット広告市場の健全な発展、社会的信頼の向上のために、多方面にわたる活動を行っている。
http://www.jiaa.org
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