失敗しないためのCMS導入事例

CMS導入のために3年かけて経営層を説得/大成建設+WebRelease 2

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失敗しないためのCMS導入事例

大成建設+WebRelease 2(株式会社フレームワークスソフトウェア)

文:加藤さこ
写真:編集部

大成建設が運営する「耐震ネット」は、新規顧客に対する営業機会を作りだし、さらに営業を支援するための場だ。

10年以上にわたって試行錯誤してきた耐震ネットだが、コンテンツ中心の現在の形を実現したのがCMSによるコンテンツと情報構造の分離だった。しかし、その実現には社内を説得する長い道のりがあったという。耐震推進部の小野 眞司氏に、その経緯を伺った。

ウェブサイトの基本的な情報や利用CMSに関する情報はページの末尾に記載

CMS導入の目的

  • 制作に時間をかけずに、新鮮なコンテンツを提供できるようにしたい(HTMLコーディングやビジュアルデザインに時間をかけたくない)
  • 決まっているデザインのページ作りにお金をかけずに、もっとコンテンツの中身にお金をかけられるようにしたい
  • 情報の出し方をもっとコントロールしたい(公開期間、そのコンテンツを見たら次に何を見てほしいかなどの情報誘導)
  • 状況(アクセス解析結果、訪問者からの質問、時勢など)に応じて臨機応変にコンテンツを見直したい

変遷を重ねてきたが
根幹の理念は変えてない

小野 眞司氏
大成建設株式会社
耐震推進部 次長
小野 眞司氏

国内に76、海外に12の支店、営業所などをもつ大手建設会社の大成建設は、1995年にコーポレートサイトを立ち上げた。そして、地震対策技術に関するコーナーも、ほぼ同時に配信を始めている。阪神・淡路大震災の発生もあり、当時はまだ一般的にはわかりにくかった「地震の揺れ」や「免震」の説明などに動画を駆使するなど積極的に展開していたこのコンテンツは、1997年には「安全の空間を創る-大成Seismic HomePage-」として、独立サイト的なコーナーとなった。

コンテンツサイトの目的は、当初から新規顧客の獲得など、営業志向でした。営業マンが伝えきれない情報を補完するような意味合いもありました。こうした基本的な視点は今も変わっていません。しかし当初はこうした取り組みも手探り状態だったんです

このコーナーは2000年には「耐震ネット」という名前に変え、地震対策や免震に関することは、ここに来れば何でもわかる「耐震関連のソリューションポータルサイト」というコンセプトで生まれ変わった。免震装置をはじめとした耐震関係のメーカーの製品情報も掲載して探せるようにしたり、耐震補強の費用や経済的な効果などをシミュレーションできる自己診断サービスも提供することで、経営層の意思決定を促進させるようにした。

しかし、2002年頃にはそのスタイルのサイトにも限界がきた。シミュレーションを中心とした動的運営によるクローズドなサイトとなったため、検索エンジンを中心としたウェブのトレンドに追従できなくなり、ネット上での存在感がなくなってきたのだ。ユーザーが最初に求めているのは、無機的なアプリケーションではなく情報だということもわかり、改めて耐震ネットのサイトを、コンテンツ中心の形にリニューアルするべきだと小野氏は考えた。

小野氏がCMSを知ったのもこの頃だった。当時のシステムでも、管理フォームへの入力によって記事が掲載できるなど、CMS的な機能は備えてはいたのだが、リンク構造などは自由に変更できなかった。コンテンツ中心の形にサイトを作り替えるにあたって、ユーザーが求めている情報やこちらが提示したい情報を、どのように配置して提示するかまで含めて管理する必要があると考えた小野氏は、「ユーザーの役に立つ情報を配信するためのサイトリニューアル」という社内向けの提案書を作成した。2002年のことだ。

小野氏が社内の説得のために作成した資料は、今でもファイルにして保管してある

ウェブに対して問題意識のあった情報企画部門のトップの協力を仰ぎ、社長室にも直談判するなどして、承認を求めて積極的に動いた甲斐があり、2002年から出し続けた提案が承認されたのは、3年後の2005年のことだった。

プロジェクトの承認は2005年の6月。リニューアルオープンはその2か月半後の9月1日の防災の日に決定した。

CMS選定の決め手は
情報構造の管理

提案と並行して2004年ごろからCMSの選定を始めていた小野氏は、20項目にわたる条件と導入実績の事例で、どのCMSが目的に合うか評価していった。

コンテンツというのは、一度出したら終わりというものではありません。たとえば、メルマガで新着コンテンツを紹介するときでも、関連するバックナンバーのコンテンツとあわせて提示することで、より情報の価値が高まることがあります。新しいコンテンツを公開したら、関連するバックナンバーも後からメインテナンスできることは非常に重要です。機能の面では、管理画面で簡単に操作できること。また、過去のコンテンツにリンクを設定したら、そちらからも自動的に逆リンクの設定がされるなど、情報の相互関係が構築できること。これらの条件を満たし、予算内で収まるCMSは、WebRelease 2だけでした

実は、なんでも実現できる高価なCMSと比べると、WebRelease 2は作り込みの自由度自体は低い。しかし小野氏は、あまりにも汎用性が高いCMSは、「やりたいこと」が先行してしまい「やらなければならないこと」が埋もれてしまうと考えた。また、このため実装時の工数も拡大してしまう。

低機能に見えるけど、実は高性能でポテンシャルがすごく高い。しかも、基本的なツボをよく押さえてあるんです」そう評価するWebRelease 2のカスタマイズ性で十分だと小野氏は考えたのだ。また、300万円という価格も、使ってみてだめだと思ったら乗り換えることが可能だ。数千万のCMSでは、そうはいかない。

さらにWebRelease 2に決めた理由として、情報のつながりの見せ方を、小野氏が考えていたように実現できることがあったのだという。

耐震ネットのコンテンツは「読み物系」「技術情報」「事例情報」などの情報種別のカテゴリだけでなく、「補強」「事業継続」「免震」といったニーズ種別や建物種別など、さまざまな切り口があり、情報が多面的につながった状態でコンテンツを管理する必要があった。小野氏が「自分でも簡単にサイトマップが書けなかった」と言うように、マトリックス型で情報を管理しなければならず、そのためには、「コンテンツ」と「切り口(情報構造とプレゼンテーション)」を分離して管理できなければ、後々に困ることが明らかだったのだ。

コンテンツはコンテンツとして管理して、各コンテンツをサイト上でどのように表示して関連リンクを生成するのかを、また独立した形で管理できるシステムが必要でした。その点で、1ページ1コンテンツで管理するCMSは除外されました。もちろん、高価なCMSを使って工数をかければ実現できることなのですが、そのための仕組みをいちからカスタムで作るのは、わざわざコストをかけてするべきことなのかという疑問があったのです。

しかし、WebRelease 2の導入事例のなかに、まさにやろうとしていることを実現しているサイトがあったのです。もう、『これだ! これがやりたかったんだ!』という感じで、その制作会社さんにWebRelease 2を使って作ってもらうよう頼みました

小野氏が「情報のとらえ方がぜんぜん違うんですよ」というように、その制作会社は情報アーキテクチャの観点をもっており、デザインを「見た目」ではなく「情報のインターフェイス」としてとらえられるところだった。そして、それを実現できるツールがWebRelease 2だったのだ。

CMS導入によるリニューアルの作業は突貫工事のような勢いで進められた。制作会社から2名、社内で2名、技術サポート1名の5名が携わり、まずはコンテンツを入力するためのインターフェイスだけを先に作った。コンテンツを社内スタッフ総動員で入力しながらデザインの制作を進め、予定どおり2005年の9月1日に新しい耐震ネットがオープンした。企画成立から2か月半だった。

情報の流れを社内とサイト上で交通整理

小野氏は、コンテンツの作成でも工夫をしている。コンテンツ企画の打ち合わせという形ではなく、市場戦略会議という形で、複数の部門メンバーによる定例ミーティングを設置したのだ。

ウェブサイトは1つの手段であり目的ではありませんし、効果を得るためには、さまざまな施策と連携していく必要があります。サイトのコンテンツが他の施策と整合性を取っていく必要もあります。このため、会議は、単にウェブサイトの状況を報告する場ではなく、関係者それぞれを巻き込んで市場状況、社内状況の情報交換会として位置づけ、Web担当者がエンジン役となってコミュニケーションを推し進めるようにしました。

とはいえ最初は、他の部署の人に興味をもってもらうために、状況をわかりやすく説明したり、それぞれの部署を取材してヒントを集めたりする必要がありました。しかし、そういった動きを重ねることで、各自に“自分が関わっている”という意識が生まれ、だんだんと定着して理解が深まっていきました

サイトのコンテンツ企画を新規に作るときに使っているコンテンツ企画シート(図はクリックで拡大)

リニューアルから3年経過し、当初300ページ程度だったコンテンツが800ページほどに増えた2008年、小野氏はさらに耐震ネットのインターフェイスに少し手を加えた。1つの記事を読んだあとのアクションを誘発するための「関連情報」の表示を変えたのだ。これまでも「関連コンテンツ」として、同じキーワードが設定されている記事が自動的に表示されたり、手動で関連記事を指定できたりという機能はあったのだが、手動で指定する部分に関連性のプライオリティを定義し、それにあわせて表示項目やデザインに強弱を付けたのだ。これによって、コンテンツを見にきた人にぜひ見てほしい関連記事は本文エリアから目立つ形でリンクされるようになり、より強調できるようになった。

コンテンツが増えてきたので、交通整理をしっかりとできるようにした形ですね。多分ちょっと見ただけではどこが変わったのかわからないと思います。でも、『おっ、なんだか見たいところがすぐわかるようになったぞ』という感じにはなったのではないかと思います。これで、全体の情報整理がいったん完了しました

これまでの経験から、Web担当者は、CMSというアプリケーションのすべてをコントロールできるようになれるとは思うべきではないと小野氏はいう。

Web担当者は情報配信の最前線にいるものとして情報をどう取り扱っていきたいのか、どんなユーザー体験を誘発したいのかを考えることのほうが重要です。CMSを自分でやってしまうと、自分の範囲でできることしか考えられなくなってしまいます。だから、そのCMSを良く理解していて信頼できる制作会社さんを見つけていく事が大切です

なぜCMSが必要なのか
明確な指針を立てるのが導入成功の秘訣

耐震ネットのプロジェクトというのは、ウェブサイトが単独で展開しているわけではありません。前述の戦略会議を中心に、『展示会やセミナー』『パンフレットなどのペーパーツール』『マスコミリリースや広告』などとも連携して相乗効果を出そうとしています。その施策の中心が『耐震ネット』だというわけです

ウェブサイトからの効果は上がってきている。問い合わせ数も増え、それをきっかけに受注に至ったケースもでてきている。ビジネスチャンスを提供するという最初の目的はいったん達成できたともいえる。

次のステップとしては、逆に営業マンがそれぞれの営業活動でこれらの施策をどう活用していくかということになっていく。

実は耐震ネットの裏側では、耐震ネットで配信している公開情報に社内向けの情報を付加した社内向けイントラネットのサイトも同時に運営しています。CMSの導入にはこれもやりたかったからというところがあります。こちらの方は本格的になるのはこれからだと思います

ウェブサイトの可能性としては、まだまだ沢山のものが残っているのだという。

B2Bカスタムメイドの大きな買い物を扱う大成建設にとって、ウェブサイトは情報提供と新規顧客の獲得のほかに何ができるのかを模索する小野氏は、公開性と囲い込みをうまく使い分けられるようにしなければいけないのだという。

95年に耐震補強の最前線の情報をウェブサイトで公開し、97年には動画配信などの先鋭的な試みを行い、2000年に会員登録制のサービス中心のサイトにした。しかし2005年には改めてオープンなコンテンツ中心の形にリニューアルし、情報の設計と見せ方を整備した。小野氏が「サイト自体の目的はブレてないのだが、それを実現するための方法論が時代に合わせて変わっていった」と言うように、耐震ネットは成長し続けてきた。今後は自社サイト全体との連携で新たなビジネスチャンスをねらう。

小野氏にとってCMSとは、ページを作成してサイトを更新するためのツールではなく、コンテンツを情報資産として管理するためのものなのだという。そしてウェブサイトの運営は、1つのアウトプットであり、コンテンツを育成していくための場としてもとらえられるのだという。

当初は理解してもらえなかったCMS導入だったが、自社のビジネスを取り巻く環境がどのように変化していて、ウェブサイトがそこにどんな役割を果たせるのか、そしてそのためにどんな何が必要なのかを、資料を揃えて根気強く説得し続けた小野氏のアクションが、今の耐震ネットを支えているのだ。

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耐震ネット ウェブサイト概要
URL http://www.taisin-net.com/
目的 情報提供を通じた新規顧客の獲得、営業支援、営業マンの教育
オープン 1997年
ページ数 約800ページ
更新頻度 大きな更新は毎月、細かい更新が1~2週間に1回程度
大成建設 耐震ネット

利用CMS情報
製品名 WebRelease 2(ウェブリリース2)
提供事業者 株式会社フレームワークスソフトウェア
URL http://www.frameworks.co.jp/
出力形態 静的HTMLファイル出力
対応OS Mac OS X/X Server、Solaris、RHEL、Fedora Core
特徴 国内導入実績250社超のミッドレンジCMS。プログラミング不要のパッケージソフトのため、コストパフォーマンスが高く導入も容易。HTMLベースのテンプレートにより、ウェブクリエイターがプログラマーの手助けなしにサイトを構築できる。デザインの制約も一切なく、XMLやPHPの生成、Flashとの連携やRSS自動生成など、幅広い応用が可能。シンプルなユーザーインターフェイスで、専門知識がない現場の担当者でもコンテンツの更新・公開ができる。
CMS導入概要
  • サイト全体をCMS化して大幅リニューアル
  • CMSのライセンス費用は300万円
  • アプリケーション開発費用が300万円~500万円程度
  • 情報構造の定義とテンプレート作成で800万円程度
  • 2004年後半からCMSの評価を開始
  • 2005年6月半ばに社内で企画成立
  • 先行してコンテンツ入力画面を作成
  • 社内スタッフ全員で300ページ程度のコンテンツ投入作業を開始
  • 平行してデザイン制作
  • 企画成立から2か月半後の防災の日(9月1日)にサイトをリニューアルオープン
CMS選定のポイント
  • 使いやすい(コンテンツ入力画面や管理画面が直感的に使える)
  • 価格がリーズナブル
  • テンプレートなどをいちから作り込まなくても、やりたいことを実現できる
  • 情報構造とプレゼンテーションを分離できる

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※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材当時または記事初出当時のものです。

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