1500万会員の総合エンタメサイト「TSUTAYA online」がCMS導入で重視したのはモバイル対応と外部アプリ連携
CMSの条件はモバイル対応し、デザインと開発を分けて管理できること。運営の課題は情報鮮度の向上でした。総合エンタメサイトとして1999年にスタートした「TSUTAYA online」がCMSを導入したのは、わずか3年前の2008年のことだ。モバイル対応や商品数の増加にともない、情報発信スピードが課題になりつつあるなか、リニューアルにあわせてCMSを導入し、体制を見直した。
数万単位の商品情報を抱えるTSUTAYA onlineでは、CMS導入の条件としてモバイル対応と外部アプリケーションとの連携を挙げ、CMS導入を進めている。その狙いはどこにあったのか。
エンターテインメント商品全般を扱うポータルサイト
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下、CCC)が展開するTSUTAYAは、レンタルCD/DVDの代名詞であり、本やゲームなどエンターテインメント商品を扱う店舗としてお馴染みだ。加えて、ネット宅配レンタルの「TSUTAYA DISCAS」やビデオオンデマンドサービスの「TSUTAYA TV」、電子書籍サービス「TSUTAYA.com eBOOKs」など、ネット事業も積極的に展開している。
そのなかでも、音楽、映画、ゲーム、本を中心とした情報発信を行っているのが「TSUTAYA online(ツタヤオンライン)」だ。TSUTAYA店頭キャンペーン情報、CDやDVDの新作紹介、アーティストのインタビュー、話題の映画やゲーム特集など、情報メディアとしての機能を持っており、それらを楽しむ幅広い層がターゲットとなる。TSUTAYA onlineの情報をきっかけに、TSUTAYA店舗での購入またはレンタル、ECサイトの「TSUTAYA オンラインショッピング」や「TSUTAYA DISCAS」につなげるという「送客」がサイトの主な役割となる。
選定条件は「編集の簡単さ」「モバイル」「外部連携」
TSUTAYA onlineでは、「お客様への提供サービスの向上」「業務効率の改善」「コンテンツ開発スキームの一本化」を目的に、2007年にリニューアルプロジェクトを立ち上げ、2008年11月にリニューアルを実施した。その際に、CMSとしてミックスネットワークの「PUBLIS Enterprise」が導入された。TSUTAYA onlineがスタートしたのは1999年だが、実は2008年のリニューアルまではCMSを利用しておらず、初めての導入だった。導入に踏み切った理由は「情報鮮度の向上」だったと、リニューアルプロジェクトを担当した畝岡 健氏は説明する。
「1999年にサイトを立ち上げてから、微改修を加えながら運営してきました。しかし、基本的なアーキテクチャーは8年間変わらないままでしたから、古臭い感じは否めませんでした。2005年ごろにWeb 2.0ブームがあって、世の中におけるウェブサイトの作りや機能が大きく変わってきたこともあり、2007年にリニューアルの話が持ち上がりました。目的は、デザインの変更とコンテンツの幅を広げて数を増やすことでした。
当時の課題は、コンテンツの企画から公開まで時間がかかっていたことです。TSUTAYA onlineは、CCCが扱う商品全般に対するポータルサイトのような位置付けです。さまざまな部門の担当者から出てくる情報を、いち早く掲載することが求められます。以前は、企画担当者が社内の制作チームに依頼するという流れでしたが、担当者自ら制作できないかという要望が社内から挙がっていました。そこで、CMSを導入したら専門的なスキルがなくても更新できるのではないかと考えたわけです
」
オープン当初から社内の制作部門で外部発注を含めたサイト管理を行っていたCCC。改修を続けてはいたものの、規模の拡大や商品数増加などにともない、情報発信のスピードが課題になりつつあった。社内に制作部門を有していたことから、リニューアルにあたり、まず社内でサイトデザインのワイヤーフレームを制作し、動的ページなどを検討した。そうした要件は、最終的に提案依頼書(RFP)としてまとめられ、それを実現するツールとしてCMSの導入が盛り込まれていったという。
- 現場レベルで更新できる編集機能
- モバイルサイト対応
- プレゼンテーション層とアプリケーション層の分離
CMSの選定条件には「IT担当者ではない現場の人間でも使えること」に加えて、2つの条件が挙がった。その1つがモバイルへの対応だった。海外製のCMSでは、日本のケータイ(フィーチャーフォン)に対応していないものが少なくない。さらに、日本では季節ごとに新端末が登場するため、継続的な更新も求められる。
もう1つの条件は、プレゼンテーション層とアプリケーション層を分離できるアーキテクチャーであること。サイトの表側となるプレゼンテーションはCMSに任せて、アプリケーションはAPIを使って展開していきたいという考えが社内にあったからだ。制作チームと開発チームの分業化が図れ、他のシステムと連係しやすくなれば、たとえば、外部のデータを動的に取り込んだコンテンツなども簡単に開発できるようになる。
これらの条件を満たすCMSとして最終的に選んだのが、SITE PUBLISだった。随時更新されるモバイル端末への対応、わかり易さに定評のあるページ制作機能に加えて、ブロック単位でサイトのパーツを管理し、パーツごとにAPI連携が可能な「プラグインブロック」の機能も他のシステムとの連携という要望にマッチした。
CMS導入によって分業体制を確立
リニューアルは、2007年から約1年をかけて行われたが、CMS導入への大きな苦労やトラブルはなかったという。プロジェクトが完了して「トレンドに沿ったサイト」として生まれ変わった後は、更新頻度の向上や各担当者の役割分担など、期待していたCMS導入の成果が得られている。
「CMSの導入前は、ちょっとしたテキストの修正も制作チームが担当していましたが、それが不要になったことで、それぞれが本来の役割に集中できるようになりました。これは開発チームも同様で、フロントのこと(プレゼンテーション)を気にせず開発に集中できるようになりました。以前は、意識はしていても、CGIとHTMLが混在してしまうことは多々ありました。CMSの導入で、それがきっちり分離できるようになり、分業体制を確立することができました
」
担当者 | CMS導入前 | CMS導入後 |
---|---|---|
企画担当 (編成チーム) | 簡単なテキスト修正も制作に依頼していた | テキスト修正程度なら自分でできるようになった |
制作担当 (制作チーム) | デザインだけでなくテキスト修正も受け持っていた | デザインに集中できるようになった |
開発担当 (ITチーム) | ページデザインを気にする必要があった | フロントのことを気にせず開発に集中できるようになった |
他にも、SITE PUBLISのプラグインブロック機能を使うことで、外部からランキング情報を取り込み、動的に表示するといったコンテンツを簡単に開発できるようになった。以前は、手作業でデータを集めて作っていたので、手間も減るうえに更新頻度も高められた。
また、CMSを前提にページデザインを考えるようになったことで、サイト全体の統一感も出せるようになった。以前は、静的なHTMLとして個別に更新していたため、良くも悪くも自由度が高いデザインであった。それがルール化されたことで、制作の効率化にも貢献しているという。
- サイトデザインの統一感向上
- 各担当者の役割分担/分業の実現
- 更新頻度の向上
マルチデバイスへの対応でビジネスを拡大
リニューアルとCMS導入から3年を経過したTSUTAYA onlineでは、今後の展開としてマルチデバイスへの対応などを検討しているという。
「今後は、PCやモバイルだけでなく、スマートフォンやそれ以外のデバイスから利用されることを前提に、ウェブサイトの展開を考えていくつもりです。弊社は音楽や映画といったエンターテインメント商品を扱っていますが、それらをテレビやゲーム機から楽しむという動きも将来増えてくるはずです。スマートテレビというキーワードも注目されていますし、電子書籍も普及が進むはずです。ウェブサイトを始め、お客様の環境に合わせてサービスを対応させていくつもりです
」
「PUBLIS Enterprise 3」
ミックスネットワークの大規模サイト・組織向けCMS「PUBLIS Enterprise 3」は、SITE PUBLIS 3をベースに、より大規模・高負荷のWebサイトにも対応できるよう、大幅なパフォーマンス向上を実現。大規模組織や高負荷Webサイトを安定して運用するための各種機能が搭載されている。
- パフォーマンスを向上させる「動的コンテンツキャッシュ機能」
- 大規模・高負荷サイトを支える「冗長化構成」
- LDAP連携による「他システムとのログイン一括管理」
- ブロック単位で実現する「外部システム連携」
- 負荷に応じて公開サーバー数を設計「高負荷サイト構成」
株式会社ミックスネットワーク
- 設立:1997年8月7日
- 代表者:代表取締役 吉川 隆二
- 住所:【東京本社】東京都千代田区神田神保町1-11-1 DSM神保町ビル4F
【福岡本社】福岡市博多区博多駅東2-6-26 安川産業ビル8F
【関西支社】大阪市北区豊崎2-10-17 サン・オークスビル405 - URL:http://www.micsnet.co.jp/
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