あなたが最後に広告をクリックしたのはいつ? Wetpaintの動画に学ぶバイラルキャンペーンの勘所
シアトルを拠点とするWeb 2.0的なイカしたwikiのサービスを提供しているWetpaint(ウェットペイント)のやり方は、いつも他のwikiサービスと一味違うの。
まず、そのwikiサービス。とってもユーザーフレンドリーで使いやすいインターフェイスのおかげで、どれだけ技術にうとい人たちでもWetpaintを使えば簡単にウェブサイトを作成できるの。Wetpaintで作ったサイトは、もちろんすべてがwikiなんだけど、Wetpaintにホスティングしてもらうこともできるし、独自ドメイン名で運営することもできるわ。
Wetpaintは、まだテレビでマーケティングキャンペーンをやる計画はないみたい。でも、YouTubeで動画を7本公開していて、それが割と新しいタイプのバイラルマーケティングになっているのよ。7本の動画は、まるでテレビ用コマーシャルのように、専門のスタジオとプロのチームを使っているんだけど、オンライン閲覧用のためだけに作られたものなの。
たいていの場合、制作側はバイラルビデオに関してあまり熱心だとは言いにくいもの。不安定なカメラワークで、近くの高速道路とか突風とか近所の芝刈り機とかの騒音に負けじと大きな声で叫ぶ男を追ってみたりね。ちょっとでもいいから気の利いたカットやフェードをうまく使ってれば、もっと印象深い作品ができるのにね。実際のところ、SEOmozの「Whiteboard Friday」のビデオでは、YouTubeにアップされているほとんどの動画をこき下ろしているわ。
もちろん、オンラインで出来の良い動画を目にすることもあるけれども、その多くは、テレビ用に制作するついでにネットで公開したものなのよね。
でも、Wetpaintでは、オンライン用の動画をテレビ向けのクオリティで丁寧に撮影しているの。
見てのとおり、この動画はWindowsをからかったMacのコマーシャルのパロディ。このほかに、出会い系サービスeHarmonyの不愉快なコマーシャルを茶化したビデオもあるわ。こうしたやり方は特に目新しいものじゃないけれど、従来のwikiとWetpaintとの違いについて、言いたいことを見事に表現してるわね。
プロモーションの媒体としてバイラルビデオを採用する場合に問題となるのは、インターネットには決められた広告放送スケジュールというものがほとんどないことね。ネットは広告だらけだし、画面にいきなり広告が表示されて、「広告をスキップしてコンテンツを見るにはここをクリックしてください」とか言われると、イライラしちゃうわ。私たちはオンラインのコマーシャルを無視することが多いけど、それはあらゆるところに広告があるからよ。Tivoや一般的なDVRのおかげで、人々はテレビでも同じように広告を無視するようになっている。だからこそ、オンラインだろうとオフラインだろうと、広告は注目を集めるためにとりわけクリエイティブでなければならないのよ。
私がニュージーランドから米国に移住してきた2002年当時、テレビコマーシャルの質の低さにショックを受けたのを憶えているわ。
どういうわけか、ニュージーランドでは1990年代末にテレビコマーシャル市場の競争が激化して、テレビ番組よりもコマーシャルを見るほうがおもしろいということもよくあったの。こちらのすばらしいコマーシャルのせいで、オーストラリアやニュージーランドでは、誰だれもが「bugger(ちくしょうっ)」なんていう古臭い罵り言葉を使うようになったくらい。米国の飲酒運転防止コマーシャル(そして他の交通安全コマーシャルも)は、ニュージーランドならきっとNC-17(17歳以下は鑑賞禁止)に格付けされるでしょうね。ニュージーランド航空はいつも本当におもしろい30秒間のミニムービーを制作して、私たちを楽しませてくれた。
米国にやってきて、広告の品質にとてもがっかりしちゃった。最近のコマーシャルでは、米国の広告もずいぶんましになったけど、私はまだニュージーランドのコマーシャルの楽しさが恋しいわ。
競争力や差異化の必要性は、オンラインでは特に重要なのよ。あなたがアドセンスの広告に目を留めたのは、いちばん最近ではいつのこと? ましてや最後にクリックしたときなんて覚えているかしら? 私は今朝、あるアドセンス広告をクリックしたけど、それは「DUI(driving under the influence:酒酔い運転)」に関連して「BUI」の意味を調べるためだけのためにやったことよ(ちなみに、BUIは「boating under the influence:酔った状態で舟を漕ぐ」の意味だったわ)。
こういった例外的なケースは置いといて、人々はつまらない広告を無視することに慣れてしまっているの。自動車保険会社のAllStateが作ったとてもつまらない自動車事故のコマーシャルを見ないのと同じようなことよ(ニュージーランドのコマーシャルと比較したときの話ね。あんなホラー映画まがいのコマーシャルにリンクを貼りたくはないわ)。
Wetpaintのキャンペーンはまったくのオリジナルというわけではないけれど、すでにインターネットを利用していてWetpaintのサイトをチェックする可能性のある人たちを対象にビデオを制作したという点で、とっても賢いやり方だわ。それに、まったく無関心な人々をコマーシャルに引きつけて「wikiとは何ぞや?」と怪訝に思わせるだけのテレビ広告枠に高価な資金を投じてもいないしね。
これまでにバイラルビデオに関する経験がほとんどなかったから、バイラルビデオについて記事を書くのは今回が初めてなんだけど、とても興味深いことがわかったわ。Wetpaintの手法はおもしろいと思うし、すべての広告形態に対して人々が鈍感になっているということから考えると、この媒体からさらに多くのものが生まれるのは間違いないわ。
もしあなたが、YouTubeの楽しさにはまらずに、何とかこの記事の最後にまでたどり着けたのなら、あなたのストイックな集中力が持続したことに感謝しなきゃね。
11月15~16日にロンドンで開かれるSMX Londonで私も参加するリンクベイトのセッションでは、パネラーのCiarán Norris氏がビデオによるリンクベイトをテーマに講演する予定よ。たぶん私も最前列の座席に陣取って、ほかのみんなと一緒に厚かましくメモを取るわ。
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