ウェブマスター業務《2》サイトでもてなす
ウェブマスター業務《2》
サイトでもてなす
サイトに訪れた人にいかに目的を達成してもらうかを考えるためには、「そのサイトの目的」つまりサイトでどういったことを達成してもらいたいのかが重要となる。楽しんでもらいたいのか、必要な情報を入手してもらいたいのか、問い合わせをしてもらいたいのか、あるいは購入を行ってもらいたいのかなど、目的によって、もてなし方は変わってくる。
目的がないサイトでは問題点も改善の方向性も見えてこない。「サイトの目的」がまずあり、そこから「ユーザーにどういった体験をしてもらいたいか」を考え、それに従ってサイトでのもてなしを考えることになるのだ。
サイトでのもてなしには「こうすればOK」といったようなハウツーやテクニックは存在しない。目的に応じて、ユーザーのことを考えてどうすれば一番効果的かを試していこう。
サイトでのもてなしの効果は、アクセス解析によって具体的に知ることができる。ひとつひとつのもてなしの方法を少しずつ変えて、変更の効果をアクセス解析によって検証しながら、長期的に最適なサイトにしていこう。また、異動などで担当者が代わってもノウハウが残るように、立てた仮説とその効果を記録していこう。このノウハウの蓄積は、その企業のサイトにとって、ある意味最も貴重なものでもある。
ここでは、サイトでのもてなしを向上させるためのいくつかの要素を紹介しよう。
ユーザーのことを考えたコンテンツ
一番重要なのは、サイトの内容だ。これがなくては、いくらデザインが美しくても、オープニングムービーがすごくても、サイトを訪れた人を失望させてしまう。
ウェブサイト内での文章は広く万人に読まれることを意識して書かねばならない。文章で主に気をつけなければならないのは、「ぱっと見てそのページに書かれていることがわかるか」という点だ。ウェブサイトを訪れる人は、さまざまなページからのリンクや検索エンジンからやって来る。必ずしもトップページから順にたどって来るとは限らないのだ。このために、それぞれのページでポイントを絞った内容が明快に書かれていることが必要となる。
コンテンツとしては、「企業側が伝えたいこと」ではなく、「ユーザーが知りたいこと」を基本に構成することを心がけたい。これはそのまま、ユーザーの検索エンジンで使うキーワードにも結びつき、SEO効果を高めることになる。
サイト全体の構成としても、全体→詳細という順序で内容を記述するようにし、入口のページだけで全体がつかめるよう心がける必要がある。また、ナビゲーションに使う「ラベル名」も、ユーザーのサイト内での移動や行動に密接に関係があるため重要だ。想定しているユーザーの立場になってわかりやすいラベル名を記述しよう。
いずれにせよ、実際のユーザーから反応を聞いて、よりよくしていくことがベストだが、それができなくとも周りの人や他部署の人に読んでもらって、わかりにくいところは直していこう。
ユーザーに便利なサイトの作り
一般に言われる「ユーザビリティ(使い勝手)」、つまり「使いやすさ」は、「おもてなし」において特に重要だ。ボタンやリンクの位置ひとつで申し込みや購買の行動をするかあきらめるかが分かれる場合もあるからだ(P.126も参照)。
ページとページをつなぐリンクを例に考えてみよう。たとえば、チケットを販売するサイトで、システムの都合でスケジュールの表示とチケットの申し込みとが別のページになってしまったとする。このとき、企業側では「グローバルナビゲーションの『予約』を押せば予約できるから問題ないだろう」と考えがちである。しかしユーザーからすると、選択肢が多いために、次に何をすればいいのかわからなくなり、そのままサイトから去ってしまうこともあるのだ。
この場合は、スケジュール表示の下に「予約ページへ」というリンクを用意しておくだけで、ユーザーは混乱なく次へ進むことができる。
アクセシビリティ
ここのところ重要視されているのが、サイトがさまざまな環境やユーザーに対応しているか、いわゆる「アクセシビリティ」だ。JIS(JIS X 8341-3)としても規定されているアクセシビリティは、具体的には高齢者や障碍者などハンディキャップを持つ人に対応しているかという意味で使われることが多い。たとえば、マウスを使えない人に対しては、ウェブサイトはキーボードだけで利用可能である必要がある。
通常は、特にFlashコンテンツなどでは表現力と引き替えにアクセシビリティが低下することが考えられる。しかし、単純にFlashが悪いわけではない。そのサイトの目的やターゲット、企業としての方針に従って検討すべきである。
サイトの印象(ブランド価値)
ここまで、主に使い勝手や目的への最適化について述べてきたが、別の観点ではウェブサイトはその企業や組織の玄関であるとも言える。ウェブサイトを訪れて持ったイメージがそのままその企業や組織のイメージとなると考えるべきだろう。
たとえば老舗の旅館を訪れた場合、その佇まいと、スタッフのもてなし、料理、すべてから感じるイメージがその旅館の印象として残るはずだ。ウェブサイトでも同じだ。その内容、デザイン、ナビゲーションなどの機能といった全体的なイメージでサイトの印象が決まるのだ。内容などもさることながら、画面デザインも単に「かっこいい」だけでなく、「どういった表現が一番自分たちらしいのか」という観点で考えていきたい。
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