ウェブマスター業務《1》たくさんの人を呼び込む
ウェブマスター業務《1》
たくさんの人を呼び込む
プロモーションやマーケティングと呼ばれる側面で、「いかにそのサイトのことを知ってもらうか」「どうやってそのサイトに来てもらうか」の部分である。ウェブサイトはよく図書館やお店などにたとえられるが、利用者がそのサイトに来ないことには何も始まらない。
集客を考える場合、昨今は、ウェブサイトの訪問には、ほとんどのユーザーが検索エンジンを用いており、その重要性は高まるばかりだ。何かを探す場合だけでなく、ブックマーク代わりに検索エンジンにキーワードを入力してサイトを訪問するような使われ方も増えているのが実際だ。
ユーザーの訪問経路をうまく考え、サイトによりよく来てもらえるようにする手法を具体的に紹介しよう。
SEO
SEO(検索エンジン最適化)は、検索エンジンで特定のキーワードで検索されたときに検索結果で上位に表示されるように、ページ内の文章やHTMLの構造を最適化する手法だ。ある程度まではだれにでもできるサイト訪問者数を増加させる対策で、基本的に考えなければならないことは、次の2つのポイントだ。
- サイトにある情報はどういったキーワードで探されているか
- ユーザーが欲しい情報をサイトで提供できているか
しかし、実際には付け焼き刃でSEOを行ってもある程度以上の効果は出ない。実際にウェブサイト管理者がSEOとしてするべきことは、「ユーザーニーズを反映したわかりやすいサイト構成」を突き詰めることだ。検索エンジンは「ユーザーの要求に合わせた結果をどうやって出すか」を考えて日々進化しているため、ユーザーにわかりやすいサイトは検索エンジンからも良い評価を得る可能性が高いのだ。自分でSEOを考える場合、次のポイントをよく考えよう。
- 自社サイトの構造がユーザーにわかりやすくなっているか
- ページの中でユーザーにわかりやすい表現がなされているか
- 扱っている商品、サービス、内容がすべて表現されているか
- サイトの構成が全体から詳細へ、という順序になっているか
特に、自社の情報や自社で扱っているサービスや製品の情報については、慣れてしまってつい表現を省略してしまったり、説明を省いてしまったりすることも多い。常に初めて情報に触れる人の気持ちになって内容が書かれているかを考えてみよう。適切な情報を、論理的に正しいHTMLの書式にならって記述することで、SEO効果の向上が期待できる。
もちろん、さらに高度なSEOをねらうならばSEOの専門業者に依頼するのがいいだろう(P.80やP.82も参照)。
キーワード広告
検索エンジンで使われたキーワードに対応した広告を検索結果ページに表示するキーワード広告は、ここ数年で飛躍的に効果を高めている。
検索エンジン経由の集客ならば、SEOを適切にしていればいいはずだ。それでもキーワード広告が伸びている背景にあるのは、多様な検索キーワードに対してSEOするのは不可能なことや、世の中に存在するウェブページの数が爆発的に増えて、ビジネスに結びつきやすい人気キーワードでは検索結果の上位に露出するのが難しくなっていることなどがある。
ほとんどのキーワード広告では、露出回数ではなく、広告がクリックされた回数で広告費用が発生する。また、キーワードの価格は「オークション方式」、つまり高い価格で入札した広告が優先的に表示される仕組みになっている。このため、一般的なキーワードは人気で入札価格はすぐに上昇してしまう。適切なキーワード選びが費用対効果を高めるためには重要だ。
多くの企業にとって有効なのは「特徴を持った、それでいて普遍的なキーワード」を、単語の組み合わせも利用して見つけることだろう。昨今では、1社が数千~数十万種類のキーワードに入札して広告を出すことも珍しくなくなってきている。
キーワード広告で価値を生むキーワードは簡単に見つかるものではないが、自社のサイトにどういったキーワードが最も適しているかは、マーケティング会社などの外部の専門家よりも内部のスタッフのほうがよりわかる場合も多い。自社の商品やサービスをとりまく環境や顧客の志向がもとになるからだ。ユーザーが自社のサイトの内容(商品・サービス)をどういった状況で使いたいのかを検討したり、自社のサイトにどんなキーワードで人々が訪れているかをアクセス解析で調べたりすることによって効果的なキーワードを探れるはずだ。
キーワード広告は、効果が出なければ意味がないので、キーワード広告経由でのサイト訪問者が適切な振る舞いをしているか(購買を行っているか、情報請求を行っているか、など)については、アクセス解析で特別に分析を行い、その費用対効果を常に検討する必要がある。
バナー広告
特に広く告知を行い、多くの人に知ってもらう場合は、いわゆるバナー広告も検討に入れるべきだ。たとえばキャンペーンなどは、多くの人に知ってもらい、興味を持ってもらって初めて意味を持つからだ。代理店などに相談をもちかけ、妥当なプランを提案してもらうのがいいだろう。
また、最近ではメガバナーと呼ばれるFlashを用いた広告も見られるようになった。その広告の内容自体がストーリーやゲームになっており、従来のバナー広告を超えた別物だと考えるべきだろう。広告の内容自体が話題を呼ぶこともあるなどの効果も考慮しておくべきだろう。
キーワード広告と同様に、費用に見合った効果が得られているかをアクセス解析で検証し、適切な規模感を見極めていく必要がある。
ブログ(トラックバック)
ブログはもともと個人向けの日記として普及したものだが、企業サイトのプロモーションとしても注目を集めている。
たとえばスタッフのブログなどを運営することで、企業の生の声が見えるようになるという特徴がある。ブログを通じた人間同士のコミュニケーションがサイトへのロイヤリティを生むと言えるだろう。
またサイトへの集客において、個人ブログの口コミによる効果は無視できない。特にロングテールと呼ばれる、いわゆる「ニッチ」ジャンルでは、キーワード広告やバナー広告などだけでは効果が期待できない。こういった場合もサイトにトラックバックを受け付ける機能を持たせるだけで、それらの情報は個人サイトや掲示板などでとりあげやすくなり、口コミの効果が期待できるようになる。また、トラックバックによりウェブサイト間の生きたリンクが密になり、SEOの効果も期待できる。
ブログは技術的にはCMS(コンテンツ管理システム)の一種だが、運用負担も含め、後述のワークフローの検討と同時に考えるべきだろう。
RSS
ブログ同様に普及しだしている技術がRSSだ。RSSは一言で言えば、ウェブページとは別のチャンネルでサイトの情報を告知できるる仕組みだ。サイトの情報をRSS形式で出力しておけば、ユーザーはサイトを訪れなくとも、RSSリーダーと呼ばれるソフトやはてなアンテナなどのサービスを使って情報を得られるようになる。
現在のところまだ大々的に普及しているとは言い難いが、今後一般化する速度は速まるだろう。RSSリーダーを常用している先進的なユーザーからは、RSSを提供していないサイトは定期的にチェックする気にならないという声もあるぐらいだ。
また、ブラウザでサイトを訪れたページビューだけでなく、RSSを読み込んだ数を読者数としてカウントする考え方も出てきている。
RSS機能はCMSと連動するものであるため、CMS導入と一緒に考えるべきだろう。
その他のプロモーション(メルマガ、SNS)
これ以外にもメールマガジンやSNS(ソーシャルネットワーク)など、ユーザーとの接点になる部分にはサイトプロモーションの機会がある。どういったユーザーをサイトに呼びたいかを考え、それぞれの方法を検討しよう。
アクセス解析
ここまで述べてきたようなプロモーションの効果を高度に検証できるのが、アクセス解析だ。一昔前のアクセス解析は、ページビューや来訪者数をカウントする「アクセス統計」でしかなかったが、ここ数年でアクセス解析は急速に進化し、マーケティング的な観点による高度な分析が可能になっている。ユーザーがどういった道筋でサイト内を移動しているのか(動線分析)、申し込みなどの手順の各段階でどれぐらいのユーザーが先に進むのをあきらめたのかや、さらに、キーワード広告をクリックしてサイトに来たユーザーがサイト上でどの製品を購入していくらの売り上げになり、広告の費用対効果がいくらになったのかなどまで分析できるサービスもある。
これらの分析によって、SEOや広告などの効果測定をすることは、ビジネスでウェブサイトを運営していくうえでは必須だろう。費用対効果はどうなのか、もっと積極的に展開すべきなのかなどの判断は、アクセス解析なしにはできないと言っても過言ではない。また、ユーザーがサイトをどう使っているのかや、この後で解説する、サイトでのユーザーの「もてなし」のヒントもアクセス解析から得られる。
目的に応じて、中長期のインターバルで行うアクセス解析と、毎日またはそれよりも短い単位で行うアクセス解析をうまく組み合わせることが成功の秘訣になるだろう。ただし、アクセス解析によって分析する項目は、最初に一度に設定するのは難しい。まずは全体の傾向を見るような設定を行い、数か月ごとに、より細かく分析ようにするのがいいだろう。
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