企業ホームページ運営の心得

バカッターから作る新しい社会のルール

SNS上での炎上が相次ぐ時代の心得について
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の327

どうにも止められない

公共の場での迷惑行為やアルバイト先での非常識行為を、TwitterをはじめとするSNSに投稿する通称「バカッター」。犯罪行為の告白まで行われており、未成年の逮捕者も現れております。にもかかわらずバカッターは後を絶たず、より過激にシフトしています。

さて、SNSやスマホを礼賛する声は、その利便性を語ります。一方、よく研がれた包丁がたやすく人を傷つけるように、便利な道具の登場が、社会に及ぼす迷惑の可能性についての議論は不十分です。結論を述べれば「バカッター」はなくなりません。どこでもネットに接続でき、撮影機能を完備したスマホを片手にした常識欠落者の行動を止めるには、抑止のための専用アプリや端末の機能開発が待たれるところです。

そしてこれは若者だけの問題ではなく、会社員のバカッター、主婦のバカッター、年寄りのバカッターが表れると予言するのは、人間のだれもが持つ「承認欲求」が行動原理だからです。

つまり、これからの社会はバカッターとの共存を余儀なくされる。そんな時代の「心得」です。

主要な対策はひとつ

バカッター対策は、2つに分けて考えなければなりません。パトカーの上に乗ったり、線路に降りたりしての撮影などは、社会のルールに則り、刑事責任、民事責任をしっかりと追及します。たとえば、コンビニやレストラン店内での悪ふざけに対しては、警察を呼び業務妨害で告訴します。これらの動機は悪ふざけです。そして悪ふざけはそれを見逃す人や環境を選んで行われます。そこから一罰百戒を対策とします。

問題は身内です。アルバイトなどの「身内」による店内でのバカッターは、店舗閉鎖に至る事例が発生しており、今後はさらに厳しい対応を迫られていきます。ネットがらみということから、Web担当者に対応が求められる可能性も高いとみることも、この「心得」を取り上げた理由です。

バカッターの初期のころなら、バカなアルバイトによる特殊事例と見逃してくれていましたが、こうも頻発するようになれば、企業側の対策の不備を責めるのが日本人の特徴です。そこでもう1つの対策として、細かく禁止事項を記した「マニュアル」を作ります。

マニュアルは程度に合わせるもの

たとえこんな感じです。

  • 冷蔵庫にはいってはいけません
  • 食器洗浄機で身体を洗ってはいけません
  • 調味料を鼻にいれてはいけません。

「そんなバカな」と思うでしょうか。むしろ逆です。マニュアルとは“わからない人”を基準に策定するものだからです。常識を持ち、技術を身につけている人にマニュアルは不用で、彼らがバカッターを投稿することはありません。

日本における業務マニュアルの一般化は、ファミレスやコンビニの普及によります。バブル経済へと向かう1980年代の後半、すべての業界で人手不足が深刻となり、未経験者の即戦力化が経営課題となりました。そこで各社がマニュアル作りに注力し、定着していったのです。たとえば、「厨房に入るときは手を洗う」もその1つ。マニュアル以前の時代には「当たり前」だったことが、事細かに決められていったのがこの時代です。

マニュアル世代の功罪

マニュアルに書いたからといって、100%守られることはありません。しかし、記載がなければバカッター予備軍に「禁止されていない」という消極的な行動許可を与えてしまいます。そんなバカな、と思う人ならバカッターなどしません。そしてマニュアルの存在が、事件発覚時の「言い訳」になります。

アルバイトを雇う業種だけに限られたものではありません。先日、誤報の緊急地震速報が配信されたとき、個人のケータイ(スマホ含む)の持ち込みを禁止しているフロアで、あちらこちらから緊急地震速報が鳴った会社があったと報じられました。持ち込み禁止の理由は情報漏洩の防止などが考えられますが、明文化して署名を取ったマニュアルが必要でしょう。なぜなら、マニュアルとはトラブル発生時の「言い訳」でもあるからです。

SNS時代の業務

マニュアルの次にバカッター防止の有効な手段は「監視」です。社員、アルバイト、外部スタッフのTwitterやFacebookをフォローすると宣言するのです。もちろん、これもマニュアルに記します。実際のチェックの有無はあまり重要ではなく、「いつも会社に見られている」というプレッシャーが一定の抑止力になります。大きな組織なら人事部がチェックし、アルバイトを多く雇用する企業なら、専門業者にアウトソーシングするのも1つの方法です。

会社が見ていてバカッターするバカは即日解雇してください。プライベートな空間であるSNSを監視されることに抵抗を覚えるかもしれません。しかし、SNSは公開情報でもあります。そしていま企業の人事部では、採用前の「Facebookチェック」は当たり前です。

世間は自分を映す鏡

電子メールの代わりにFacebookのIDを交換するようになったと喧伝されたころの米国で、議論の対象となっていたのが人事部によるFacebookの閲覧です。日常をチェックする行為が、プライバシーの侵害に当たるのではないかと問題提起されました。閲覧が採用結果に影響したとするなら、人種差別にもつながるのではないかという危惧です。当時の米国の報道では、取材を受けた企業の人事担当者は否定していましたが、いま日本では一般的に行われています。それは企業の大小を問いません。

新しいツールの誕生によって社会のルールは変わります。自動車の普及によって「歩道」が生まれたのが皮肉な話(元々は馬車ですが便宜上)であるように、スマホやSNSといった「個人」がネットワークを通じて社会と深く結びつくツールの登場によって、プライベートタイムと会社との接点が生まれるのは当然と言えなくもありません。そのきかっけが「バカッター」と考えると、残念極まりない話ですが。

今回のポイント

マニュアルは程度に合わせて作る

SNS監視は必須業務になる……かもしれない

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