プリンタやパソコンがなくても宣伝はできる、コンビニ事務所で無料拡散のススメ
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の456
だってスマホだから
これ、どうすればいいの?
馴染みの飲食店がFacebookを始めたというので、制作した案内POPをPDFデータで提供したところ、返ってきたのはお礼ではなく質問でした。
そう、プリンタを持っていないのです。Facebookの更新はスマホからできるので、パソコンすら持っていません。今年に入り、立て続けにこんな事例に遭遇します。
Facebookの更新はもちろん、ネット検索や連絡は、スマホやタブレットでこと足ります。かつては競ってパソコンで制作した「年賀状」も、ケータイメールの「あけおめ」「ことよろ」から「スタンプ」で済ませる時代になり、いまやプリンタは不要。
そこで社会現象となった朝ドラ「あまちゃん」が終了した喪失感から生まれた造語「あまロス」にかけ、プリンタのない状態を「プリロス」と命名することにしました。そこで役立つのが「ネットプリント」です。
ネットプリントの仕組み
「ネットプリント」または「ネットワークプリント」(運営元によって名称が異なる)は、コンビニ店頭のマルチ端末(いわゆるコピー機)で提供する印刷サービス。使い方は簡単。パソコンやスマホから、印刷データを専用サイトに登録(アップロード)すると発行される「予約番号」を、コンビニのマルチ端末に入力するだけです。アップロードには会員登録が必要ですが、「予約番号」があれば、だれでも、どの店舗からでも印刷できます。
現状、ゼロックス機(セブンイレブン)と、シャープ機(サンクス・セイコーマート・ファミリーマート・ローソン)の2系統のサービスがあり、どちらでも、家庭用のレーザープリンタ最上位機種の刷り上がりが期待できます。1枚あたりの印刷料金は、A4モノクロが20円、カラーが60円。
データの保存期間は前者が7日間、後者は8日間。ゼロックスはJPEG 2000形式の画像を埋め込んだPDFを受け付けず、シャープは「Microsoft Office for Mac」の文書データは不可といった違いがあります。
暴落したプリンタ価格
プリロス解決の王道は「プリンタを買う」ことです。家庭用プリンタの相場は下落どころか暴落状態、低価格帯のインクジェットプリンタは3千円を割り、カラーレーザーでも1万円未満の商品があります。単純計算で比較するなら、インクジェットで50枚が採算分岐点、毎月5枚、毎週1枚ちょっと印刷すれば「元」がとれる計算です。
しかし、インクジェットプリンタは、しばらく使わずにいるとインクが詰まり、メンテナンスをしないとまともに印刷できなくなります。インク詰まりのないレーザープリンタでも、「紙詰まり」に対応する知識や経験が必用です。
コンビニ店頭の機器を利用する「ネットプリント」なら、定期的に整備された最新機器を必用なときだけ利用でき、紙詰まりが発生しても店員さんか、メーカーのサービス担当者が解決してくれることでしょう。
こうしたメンテナンス費用を加味すれば、印刷頻度の少ない(職場)環境なら、ネットプリントはプリロス対策の最有力となります。今回は掘り下げませんが、同じものを50部、100部と印刷するなら「印刷ネット通販」がお得です。A4フルカラー100枚で640円(1枚6.4円、送料込み)という業者もあります。
拡散性も利点
ネットプリントに注目したのは、ちょうど1年前、安保法制に反対する学生集団とされる「SEALDs」を目にしたときです。それぞれがプラカードを手に国会前で怒声をあげます。彼らに同調的なメディアは、若者の自発的な活動と紹介し、その論拠としてネットプリントを紹介します。特定の政治組織が用意したプラカードではないという意味です。しかし、政治活動をしたことなどない、いまどきの若者が自然発生的に「プラカード」を持つことに「違和感」を覚えたのです。職業柄「紙よりネットだろ」という理由から。
そしてネットプリントを調べて「使える」と直感。その出番は「プリロス」で訪れます。冒頭の飲食点の店内掲示に成功し、保守系の団体のイベント告知のチラシでは、ネットプリントで資料配付を試み評判は上々。所属会員が、本部に足を運ばずとも資料を受け取ることができたと喜びます。コンビニを「事務所」にして「拡散」したということです。ノウハウに政治信条という色はつきません。これも一種の「現場のノウハウ」です。
紙媒体の強さ
外出時のピンチを救う「FAX」としても使えます。「申込書」や「契約書」、あるいは設計プランの図面など、そもそも忘れることは論外とはいえ、うっかりを克服する特効薬はいまだ発明されておらず、こうしたピンチを「ネットプリント」でリカバリー。事務所で印刷データをアップロードして、うっかりものに「予約番号」をメールします。直接の業務に関係ないかもしれませんが、こうした提案は、Web担当者の社内評価を高めること請け合いです。
スマホの限界に気づいたのも「ネットプリント」でした。あるとき店頭で、ガテン系の風体で還暦を超えたと思われる男性が、コピー機の前でなにやら操作しています。印刷された書類を、すれ違いざまに横目で確認すると「競馬新聞」。なるほど、18頭立ての出走表を、スマホ画面でみるのはほぼ不可能。そして今週末は日本ダービー。私の予想は……と、本稿執筆時、まだ出走馬は決まっていません。
追加コストはほぼ0円
スマホの普及が「紙」のプレゼンスを高めています。その特性上、スマホの画面は小さく、フルHDレベルの高解像度を誇る8インチのタブレットでも、A3の上質紙に出力された図面の迫力と「見やすさ」には勝てません。
ある昼下がりのファミレス。ママ友らしき会合が開かれています。リーダー格の女性が、資料らしき画面をスマホで提示すると、「端末」がたらい回しにされ、2~3人ごとに画面を覗き込みます。そこに遅れてきたママが、コンビニでプリントアウトしてきたと申し出ると、スマホ人気はストップ安となり、すべてのママが「紙」に殺到します。
Webサイトではかつて、「PDF版」の資料などを用意するだけで、ユーザーがそれぞれ印刷することを期待できましたが、「プリロス」時代に突入したいま「ネットプリント」も顧客の利便性を考える上で有力な選択肢になります。PDFがあれば、追加コストはほぼ0円です。
今回のポイント
ネットプリントは「プリロス」をフォローする
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