企業ホームページ運営の心得

クロスチェックで思い込みを排除、背筋の凍るオカルトサイトを駆逐せよ!

クロスチェックによって、苦情の声すら聞こえない無反響なオカルトサイトが完成することを防ぎます
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の457

背筋が凍る恐怖のサイト

Balazs Kovacs/iStock/Thinkstock

夏が近づくと「怪談」を筆頭に、さまざまなオカルト話が飛び交うようになります。しかし、有名な「ポルターガイスト」なる現象は、フォックス姉妹による関節を鳴らすトリックに尾ひれがついたもので、だれもいないはずの家で音がするのは「家鳴り(やなり)」という物理現象です。

木造家屋は人の移動によって、ひずみやねじれが生まれ、元通りになろうとする柱や壁が「鳴る」のです。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」との川柳もあります。霊はあるはずだ、お化けはいるはずだという「思いこみ」こそが、オカルトの正体。

実はこれ、Webサイトにも通じ「オカルトサイト」が存在します。

オカルトサイトとは、閲覧者が呪われたり、画面から「貞子」が飛び出したりするものではありません。なにより、そこで事件は起きません。なぜなら、事件どころか反響やアクセス数も皆無だから

100万円を投じて構築したものの手元に残ったのは領収証だけだった。

というWeb担当者にとっての「恐怖のサイト」です。

オカルトサイトの正体

訪問者は、サイトに来たらここをクリックしてくれるはずだ。

ひと目見れば意味を理解してくれるはずだ。

これらが願うだけで実現するなら「オカルト」です。つまり、十分な説明や理解を促す工夫のない、制作者・管理人の「思いこみ」だけで構築されているのが「オカルトサイト」です。

訪問者にとって毒にもならなければ薬にもならず、時間を浪費するだけのラビリンス(迷宮)ながら、苦情すら聞こえてこないのは、訪問者の多くが、すぐさまブラウザの「戻る」ボタンをクリックして去り、二度と訪れることがないからです。

実際にあった「オカルトサイト」を見ていきます。なお、いつものように事実関係に手を加えており、同様のサイトを見つけたとしてもたぶん別物……もう改善しているので。

FAQにあるのは料金だけ

「レイキ」とは人間がもつ自然エネルギーを利用したヒーリング術。さらにこのエネルギーは、占いにも転用でき、研鑽を重ねると死者と交信し、前世が見え、動物との会話が可能になるとのこと。信じるか信じないかはあなた次第。

このレイキによる占いサイトが「オカルトサイト」でした。

トップページには「占い」という文字があり、そこから「占い」に関連したサイトであることはわかりますが、コミュニティなのか、開運グッズを販売しているのかがわかりません。何を提供しているかの説明が皆無なのです。

有料のレイキ占いを受け付けるためのサイトでしたが、グローバルナビに見つけた「FAQ」には、代金の支払い方法と、返金不可と書かれているだけで、占いの申し込み手順が記されていません。これで申し込みを期待するとは、オカルトも過ぎるというものです。

結果、Web担当者の背筋に冷たいものが流れる無反響なオカルトサイトが完成します。

背筋を凍らすオカルト

デザインにも問題ありです。幾何学模様が多用され、設置されたスライドショーには、双子座ならギリシャ数字の「Ⅱ」、射手座なら矢印を模した星座占いのシンボルマークが次々と登場し、隷書体で書かれた「干支」が並びます。各種アイコンは「タロットカード」を模しており、すべて「占い」を連想させる狙いがあったようですが、その結果「レイキ」らしさは全滅し、Web担当者の背筋に冷たいものが流れる、無反響なオカルトサイトが完成します。

コンテンツに求められるのは、スピリチュアルなメッセージではありません。複数の視点で精査されたコンテンツ、すなわちクロスチェックに耐えた客観的な説明であり、明快なデザインです。

クロスチェックで思い込みを排除

クロスチェックとは、2つ以上の方法を用いる確認作業で、最も単純な方法は「2人以上」での確認することです。接点のない2人ならなおよく、デザインも含めてチェックをさせ、似たような感想に至らないなら、そのコンテンツには問題があるということです。

端的にいえば、「何のサイトか」という質問に同じような答えが返ってこないなら、「思いこみ」だけで構築されたオカルトサイトである可能性が疑われます。

クロスチェックは知人や友人、同僚はもとより、私のようなプロや業者に依頼するのも一手ですが、いまなら「クラウドソーシング」を利用することで、文字通り接点のない人に依頼できます。サイトを公開したのになにも起こらないのなら、それは「恐怖のサイト」かもしれません。

見えない何かが見える

最後にオカルトつながりの「クロスチェック」体験談を紹介します。

プログラマ時代、「霊が見える」という同僚がいました。ある朝、悪寒とだるさを覚え、軽い風邪だろうと自己診断して出社すると、彼は私の顔を覗き込んだ後、左肩の上あたりを指さし「憑いている」といいます。私の自宅近くのお墓に葬られている病死したお爺さんの霊だと言うのです。信じたわけではありませんが、彼が「お祓い」をしてくれると、身体が軽くなった気がしたものです。

数日後、学生時代にバイトしていた喫茶店で、同僚だった年上の女性とばったり再会し、お茶を飲みます。近況報告の笑い話のネタとして「そういえばこの前、憑かれたんです」とだけ切り出すと、女性は表情を一変させ「まだいるわよ」とつぶやきます。私の左肩の上に視線を移し「お爺さん」「病死」「自宅近くの墓所」と、まったく同じ指摘をする彼女も「霊が見える人」だったようです。

同僚と女性に接点はなく、足立区某所に足を運んだことはありません。接点のない2人による「霊のクロスチェック」という体験談でした。

今回のポイント

願いだけでは通じない

ダブルチェックで「主旨」を確認

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