研鑽し続けたネットプロモーション手法とユーザーの心をとらえる想像力――(株)コンテンツ
株式会社コンテンツ
研鑽し続け身に付けたネットプロモーション手法
サイトに触れるユーザーの心をとらえる創造力
さまざまな種類のウェブサイトがあるが、動画やFlashなどのリッチコンテンツを駆使したサイトと、採用・IRサイトなどのコーポレートサイトの大きく2つに分けることができるだろう。求められる要素や手法は大きく異なってくるが、コンテンツは専門性を高めるために、それぞれに特化した専門チームを結成し、どちらの分野でも実績を残している。そのコンテンツのクリエイティブと提案力を支え活躍している、山口真裕氏と岩崎智則氏にそのクオリティの秘訣を聞いた。
コンテンツの会社概要や制作実績は記事の末尾に記載。
取材・文:吉村正春(ドラゴンフィールド株式会社)
ユーザー目線を疎かにしないクリエイティブ
コンテンツは、同社が手がけた採用サイトで「2007日本BtoB広告賞」に入賞し、かつキャンペーンサイトでも「東京インタラクティブ・アド・アワード」に入賞するなどの実績を持つ。採用サイトとキャンペーンサイトという性質の違うサイトでそれぞれ受賞歴を持つ制作会社はほとんど例を見ないが、どのようなサイトを制作するにしろ、確固たるポリシーが存在するのだろう。そのポリシーを支える仕事の進め方や考え方は気になるところだ。
同社の制作事業は、作るサイトの性質によって2つのチームに分かれている。「インタラクティブプロモーションBU」では、広告・キャンペーン、プロモーションといった表現力重視や短期的な需要刺激を意識したサイトを中心に手がけ、「ウェブインテグレーションBU」では、コーポレートサイト、ブランドサイトのような、長期的にブランド・アイデンティティを構築し、ロイヤルティ維持を志向するサイトや、IR、人材採用、ウェブサービスなどの企業活動を支援するサイトなどを手がける。数々の受賞歴の裏には、2つのチームが切磋琢磨して、レベルアップしてきたであろうことは間違いない。
「私たちは、クリエイティブとして当然『アワードを獲る!』という位の気概を持って日々インタラクティブな表現に挑んでいます。とはいえ、アワードを獲ることよりも、ユーザーにとってベストなクリエイティブ、コミュニケーションとは何かを常に意識しています。クリエイティブのポイントとしては、サイトを開いたときにモニタの中に一瞬で引き込まれるようなデザインや色使い、居心地の良さを大事にした世界観を構築することを心掛けています。やはりユーザー目線を忘れずに、ユーザーにちゃんと伝わっているか。使ってもらえるようなインターフェイスになっているかという問いかけは常に行っています。
おかげさまで、弊社が手がけたサイトは、ユーザーの皆様に愛してもらえていると自負しています。ユーザー目線で考えられることが、ウェブサイト制作における弊社の強みと言えるかもしれません」(山口氏)
特にターゲットユーザーを意識してサイト構築にあたったのが、小学5、6年生を対象にしたエデュケーションサイト「東京メトロこども大学」だろう(図1)。将来の東京メトロファンを作るという目的がありつつも、あくまでも東京メトロの社会活動の一環として、純粋に子供が欲しい情報、喜ぶ情報を出していくことに注力したという。
「小学生向けの雑誌を見ると、ファッション誌のようなページとポケモンのページが混在することからもわかるように、幅広い嗜好が混在している年頃です。そういったターゲットに対して、多少背伸びしたデザイン、飽きさせない内容、直感的に楽しみ方がわかるユーザーインターフェイスを通じて、子供達が思わず触りたくなるようなサイトを目指しました。
こうした考えに対して、東京メトロの担当者の方にも好感をもっていただけて、弊社に必要な情報や素材を快く提供してもらえました。東京メトロこども大学のコンテンツを作るための取材にもいろいろとご協力いただきました。お互いの協力があったからこそ実現できたサイトですね」(山口氏)
子供向けでありながら洗練されたデザインや、サイトには珍しく冒頭にチュートリアルが用意されているのはそういった理由があったのである。使いやすく、わかりやすい、という意見は、他の制作会社からも寄せられるほどだったという。
意識を会社の外に向ける意味
インタラクティブプロモーションBUチームは、手がける案件の性質上、広告代理店経由で依頼が来ることが多いというが、そういったケースでも企画が固まっている案件をそのまま請けるのではなく、一緒に企画を立てるところからプロジェクトに参画することが多いという。裏を返せば、同社の企画力・提案力が頼りにされている証だろう。このように広告代理店からも全幅の信頼を寄せられている同社だが、その企画力の裏には地道な努力が隠されている。
「広告代理店と一緒に仕事を進めていくにあたり、広告代理店のクリエイティブの方が講師をされている講座に参加するなどして、チーム一丸となって“広告”を勉強しています。制作会社としての発想に加えて、ウェブというインタラクティブなメディアにおける広告表現という広告会社的な発想も身に付けることにより、クライアントの課題に対してより精度の高い最適解を導き出せるようになったと思います。もちろん中途採用や新卒で入社したスタッフにもこういった講義やセミナーに参加するように促し、チーム全員がそうした視点を維持できるように努めています。
クライアントや広告代理店の人との会話で、最近のウェブの技術や人気のウェブサービスの話題が出ることがありますが、そのときにそれらを単純に知っているだけではなく、なぜそれが流行っているのか、その技術にはどんな意味があるのかという理由も含んで説明ができなければウェブのクリエイターとしては失格だと思っています。ですからディレクターやプロデューサーは会社の中に閉じこもっているだけではなく、外界を知っておく必要があるのではないでしょうか。一般的な価値観や社会感覚を押さえておかないと、なにが現在のスタンダードかがわからなくなってしまいますし、流行の本質が見抜けなかったり、自分の尺度でしか判断できなかったりしたために、結局ひとりよがりなウェブサイトになってしまいます。
ディレクターやプロデューサー職だけでなく、デザイナーやFlashクリエイターにも、他のクリエイターと積極的に付き合うべきだと伝えています。私自身、トップクリエイターと呼ばれる人たちとの交流を通じて刺激を受けたり、仕事に対する意識が変わったりした経験を持っていますので、ソフトウェアデベロッパーが開催するイベントやクリエイターが集う交流会といった場には積極的に出かけるように全社的に促しています」(山口氏)
ウェブ業界にいる以上、情報設計やSEOについての知識は持っていて当然として、そのうえで世の中の流れもきちんと把握して、今は何がスタンダードなのか、何が正しいのかを意識できているスタッフが多いことは制作会社としての強みだ。
「弊社のデザイナーやFlashクリエイターは全員、クリエイティブの技術はもちろん、利用するユーザーやサイトの目的に対してその案が最適かという、きちんとした意見を持っていますので、ディレクターから回ってきたラフ案をそのまま形にすることはまずありません。それぞれの立場から修正・改善案が入り、そのたびに追加要素や仕様変更などの見直しが加えられていきます。その分、コストや納期に影響が出ることもありますが、最終的に、自分達が納得できないものは、クライアントに対してもきちんと説明責任を果たすことができません。何となく作ったような、隙があるサイトではいけないのです」(山口氏)
「常に勉強していないと、クライアントの注文に対してただ答えるだけという単なる技術屋で終わってしまいます。見識が浅かったために、要望以上の付加価値を見出すことができなかったということが起きないように、会社としてスタッフ教育や育成に投資していくのは当然のことだと考えています」(岩崎氏)
可能性を模索してユーザーの記憶に残るサイトを作る
これだけ多種多彩なサイトが制作できるとなると、クライアントからさまざまな依頼が舞い込むだろうが、やはり「Web 2.0的なサイトを作ってください」と流行に乗っかった依頼が来ることも多いという。
「Web 2.0が話題になってからしばらく経ちますが、こういった話はよくあります。こうした場合でも、CGM的な要素をちょっと取り入れて終わり、といったありきたりな『Web 2.0的な』提案はしません。ウェブの業界は新しいことが次々と生まれてくることもあり、Web 2.0などのキーワードが1人歩きしてしまうことがあるのですが、そのキーワードに惑わされることなく、クライアントの課題の本質を見抜いて、必要なサイトを作ることに注力します。
またライバル会社のサイトに触発されて、うちもやりたい、という依頼を受けることもありますが、ライバル企業と横並びで同じようなことをやっても、ユーザーの記憶に残りません。中途半端な挑戦だったら、いっそやらないという選択肢もあるのではないでしょうか。
短期的に成果を出さないといけないキャンペーンサイトと、数年かけてブランドを確立していくようなサイトやコンテンツでは戦略も違うと思います。その基本的なところを見失っているケースも見受けられますから」(山口氏)
たとえば制作会社から3案の企画やデザインプランを出すときに、すべての要素を盛り込んだ“松”案、そこからいくつか要素を削った“竹”案、最低限のことだけをやる“梅”案という具合にクライアントに提出することがままある。同社はそういった仕事量に強弱をつけた複数案の提出はほとんどなく、いろいろな方向性を模索した複数案を提出することが多いという。
ユーザー目線に立ち返りサイトのスペックを見直す
前述にあるインタラクティブプロモーションBUはその特性上、広告代理店経由の案件が多い一方で、コーポレートサイトを専門とするウェブインテグレーションBUではクライアント企業から直接話が飛び込んでくるケースも珍しくないという。
「たとえばCAFE COMPANYさんでは複数のブランドサイトがあるものの全体をひっくるめてなんとかしたい、というお声がけから案件がスタートしました(図2)。
このときは、並存する各ブランドサイトの共通情報をモジュール化して複数のサイト運営を効率化するなどの仕組みを構築しつつ、クライアントのウェブに対する認識の部分もケアさせていただきました。たとえば、判断議準が担当者の感覚だったりすることもあるのですが、プロジェクト開始当初に、経営の方向性や事業ドメイン、ブランドに関する考え方を十分に話し合い、ウェブに対する認識を共通化することで、経営トップが瑣末なことにまですべてに判断を下さなければならないといったことが少なくなり、作業の効率化はもちろん、クリエイティブ開発に注力できることにつながりました」(岩崎氏)
店舗営業がメインの業種は、ウェブでは直接収益が上がらないこともあり、あまり熱心でないところも珍しくない。店舗はすごくおしゃれなのに、ウェブはそれほど力を入れていない、という企業は決して少なくない。そういったクライアントに、ウェブ戦略がどうこうと大上段で説明する前に、まずウェブという媒体がどういうものであるかをきちんと説明することが信頼関係を築くための一歩となるだろう。
そして、そういったケースに直面したとき制作会社側には一般ユーザーの肌感覚が求められるのではないだろうか。同社はその説明をきちんとできていることと、積極的に外部へのチャンネルを開いていることとは無縁ではないだろう。
「自社の強みを活かして制作に取り組む制作会社もあります。自分達の得意なフィールドを案件の落としどころにするというのも手段の1つだとは思いますが、弊社はフルFlashのキャンペーンサイトから、採用サイト、IRサイトのようなコーポレートサイトまで幅広く手がけてきましたので、クライアントの課題に対して最適な提案を全方位的に提示できる自信があります。
ユーザー視点に立ち、どのような情報が求められているのか、適正な体験を提供できているのか、自社のビジネスに最適化されているかを再度確認してみることをお勧めします」(岩崎氏)
項目 | 料金 | 備考 |
---|---|---|
企画/ディレクション | 40万円~ | 企画:20万円~ ディレクションは内容・規模に応じて異なる |
トップページデザイン | 20万円~ | - |
第二階層テンプレートデザイン | 15万円~ | 情報量、サイトの規模などによって変動 |
素材制作(写真、アイコンなど) | 1万円~ | イラストの制作にも対応 |
HTMLコーディング | 1万円~ | 情報量、サイトの規模などによって変動 |
更新作業 | 2万円~/1ページ | 情報量、サイトの規模などによって変動 |
アクセス解析 | - | - |
アンケート調査 | - | - |
レンタルサーバー選定・導入 | - | - |
CMS | - | - |
SEO | - | - |
SNS | - | - |
Flash | 15万円~ | - |
株式会社コンテンツ
http://www.contents.ne.jp/
- 株式会社コンテンツ
- 所在地 ● 東京都目黒区下目黒
- 設立 ● 1995年8月
- 資本金 ● 1億4,050万円
- 代表取締役社長 ● 岩切敏晃
- 社員数 ● 160名
【社内制作スタッフ】
ディレクター10人、プロデューサー4人、デザイナー10人、システムエンジニア2人、Flash Developer4人
【社外制作スタッフ】
デザイナー15人、プログラマ5人、カメラマン10人、ライター10人 - 事業内容 ●
1995年に創業し、創業以来「新たな価値の創造こそが最大の顧客満足につながる」と考え事業活動を展開。1999年にウェブサイト制作の事業を本格化する。制作事業においては、販売促進キャンペーンやウェブサイトへの集客など短期的に効果を求められるニーズから、コーポレートサイトやブランドサイトの構築など長期的な事業成長支援など、さまざまな課題に応じ、それぞれの領域のプロフェッショナルが最適なチームを形成してクライアントのビジネスを総合的に支援する。マーケティング戦略の策定やウェブサイトの設計・構築・運用、VI・CI設計、コンテンツ企画・制作、広告プロモーションなどに特化した専門的なサービスも提供する。
※社名、所属部署、利用サービス、価格など、この記事内に記載の内容は、取材当時または記事初出当時のものです。
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