橋本大也の“帰ってきた”アクセス向上委員会 #001
毎回、視点を変えてアクセス向上を考えるコラム、今回のキーワードは「Web 2.0」。ウェブのトレンドといえば、なんといってもWeb 2.0である。
橋本大也
箸が転がってもおもしろい
~ロングテール上のセレンディピティ~
「年頃の娘は箸が転がるのを見ても笑い転げる」という言葉があるけれども、ブログでネコがワンツーパンチを繰り出すGIF画像を見つけてローカルに保存したり、YouTubeで地元の街をネタにした歌の映像を見つけて笑い転げたりしている私も、そんな年頃の娘心理に近いのかもしれない。
誰が見てもおもしろいわけではないけれども、“私にとって”は爆笑レベルのネタとの偶然の出会い(セレンディピティ)。ロングテールの長い長いしっぽの上で、そうしたセレンディピティを体験するのが2.0時代のウェブの楽しさだと思う。
こうしたセレンディピティの入り口になっているのが、「検索」と「メタデータ」である。Web 2.0的なアクセス向上を考えるとき、人気のサイトを作りたいコンテンツの作り手にとって、この2つが最重要テーマ2.0だ。
未来の検索結果に最適化する
~検索エンジンとキーワード~
検索結果の順位を上げるための技術、いわゆる“SEO”の話はここではしない。実はそれはあまり重要な事柄ではないからだ。ウェブサイト構築に何らかの致命的欠陥がない限り、主要な検索エンジンには登録されるし、人気があるページは、巷のSEO本が説く“順位を上げる秘訣”などとは無関係に上位に並ぶからだ。
ロングテール時代に、大切なのは、ある1つのキーワードに対して、というより、どれだけ多数のキーワードで検索結果に出ているか、の方である。セレンディピティ発生の確率を高めるには、その入り口をたくさん用意しておくべきである。このとき、競争の熾烈な現在のキーワードより、未来のキーワードに最適化するという考え方が有効である。
ワールドカップやオリンピックのように、近未来に国民的話題になることがわかっている関連テーマがあれば、そうしたキーワードを入れておく。北朝鮮のミサイルや大地震や感染症などの、確率は低いが起こりうるテーマも絡めておくと、“いざ”がきたとき、アクセス数を集められる。
集合知で膨大な情報を整理
~フォークソノミーとメタデータ~
情報の信頼性を計る上で、検索結果順位と並んで、重要な役割を果たしてきているのが、ソーシャルブックマークのブックマーク数である。個々の有用性判断の積み重ねが集合知として、ブックマーク数のランキングに反映されている。
日本は総じて教育レベルが高い国だと言われる。少なくともほぼ全員が読み書きができ、専門分野でない限り、常識的な判断ができると考えていい。米国のような少数のエリート教育に力を入れている国では、少数の天才もいるが、文字が読み書きできない人もいっぱいいる。それとは状況とは違っている。
議論が不要というプロセスも日本人向きだ。自分で役立つと思ったら自分用にブックマークする。声の大きい人の政治力に引っ張られない。このちょっとした判断の積み重ねで日本のウェブ全体の信頼性を向上させていくというのは、国を挙げての検索技術の開発より重要なテーマなのではないかとさえ思う。
アルファクリッパーの先見性から
未来への最適化を実施
さて、セレンディピティとの関係で重要なのが、フォークソノミーのメタデータ、すなわちタグ(ユーザーが付与するキーワード)とランキング(ブックマーク数)である。はてなブックマークでおもしろい研究サイトがある。
- ■Hatena Bookmarker Ranking
はてなブックマークで人気になったサイトを、最も早い時期にブックマークしたユーザーのランキングサイトだ。人気になる話題を見つける先見性と、他のブックマーカーへの影響力を持つ“アルファクリッパー”を特定している。
- ■Alpha Clipper Clips(はてなブックマーク超注目リスト)
アルファクリッパーの直近のクリップ内容とタグから「人気になりそうなエントリ」を機械的に選出し、予測人気指数で並べなおしている。
はてなブックマークはまだユーザー規模が大きくないので話題に偏りもあるが、前述の「未来への最適化」を考える際に、参考になるはずである。
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウvol.1』 掲載の記事です。
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