「自分ではもう分析しない」ってホント? Web解析のレジェンドに10問10答! 【GA4×AI活用の最前線】
生成AIの普及により、Web解析の現場はどう変わるのか。レジェンドである木田氏と小川氏が10の質問に答えながら、GA4やBigQueryを使ったAI活用の最前線と、アクセス解析の未来を語った。
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生成AIの浸透により、Web解析の常識は大きく変わりつつある。GA4の分析にAIをどう使うか、BigQueryを導入するべきか、AI時代に人間に求められる役割とは――。解析の現場には、AIだけでは解けない問いが山積みだ。
2026年7月7日にリアル開催された「Japan SEO Conference 2026(JSC26)」では、Web解析のレジェンド、プリンシプルの木田和廣氏とFaber Companyの小川卓氏が登壇。同社の中川貴裕氏がモデレーターを務め、10の問いを通して、Web解析の本質に切り込んだ。
本講演は、下記のサイトにて期間限定で無料アーカイブ配信中だ。申し込みは【2026年8月31日(月)】まで。
Web解析の現在地:いま解析の現場で起きていること
本講演では、事前アンケートで寄せられた内容をもとに、木田氏と小川氏がそれぞれのテーマを掘り下げていった。ここでは、「Web解析の現在地」「AIによる変化」「これからの人間の役割」の3部構成で、両氏の回答を10の質問に沿って紹介する。
【Q1】データを“見るだけ”の組織と、意思決定に生かせる組織の違いとは?
さまざまなBIツールが普及し、誰もがデータを見られるようになった一方で、それを意思決定に生かせるかどうかは、組織によって差が生じている。
小川氏は、データ活用が根付く組織の条件として、「施策を実行しやすい環境」と「上司が現場に意思決定を任せること」の2点を挙げた。ツールやサポートを整えて施策実行のハードルを下げるとともに、現場の役割を明確にし、判断を委ねる文化が重要だという。
これはAI時代に関係なく、10年前も今も変わりません(小川氏)
一方、木田氏は、データ活用が進まない組織の特徴として、「過去の成功体験が強いこと」と「仕事の進め方が受け身でルーチン化していること」を指摘した。従来の営業手法などで成果を上げてきた企業ほど、データに基づく新たな意思決定へ切り替えるのは難しい。また、主体的に仕事の進め方を変え、新たな価値を生み出そうとする組織ほど、データを活用しやすいという。
過去の成功体験がある企業を変えるには、経営層によるトップダウンが不可欠です。成功体験はどこかで断ち切らないと、「データは誰でも見られるけれど、それに基づいて意思決定はしない」という状態になってしまいます(木田氏)
【Q2】実態とずれるGA4データ、どこまで信頼して活用すべき?
GA4(Googleアナリティクス4)のデータは、Cookieの同意拒否やアドブロック、ボットなどの影響を受けるため、実態とのずれを完全には避けられない。これは今に始まった問題ではなく、UA(ユニバーサル アナリティクス)との数値差など、以前から存在していたものだという。
木田氏は、重要なのは数値の完全な一致ではなく、施策の方向性を誤らないことだと説明した。たとえば、データの誤差によって「広告を増やすべき」という判断が、実際には「増やさない方がよかった」となるのであれば問題だ。しかし、「この広告は増やした方がいい」という意思決定の方向が変わらないのであれば、基本的には問題ないと語る。
GA4は、“数字の下1桁を合わせるツール”ではなく、“意思決定をするツール”です(木田氏)
小川氏は、計測値のずれには「計測するたびにランダムに生じるずれ」と「常に同じ方向に生じるずれ」の2種類があると説明した。局所的なボット流入によるランダムなずれは、除外やセグメント分けなどの対策が必要になる。一方で、社内アクセスやCookieの同意拒否などによる一定のずれは、その傾向を把握したうえで、判断に利用できるという。
数値のずれ方が一定であれば問題ない、という考え方です(小川氏)
【Q3】BigQueryを導入すべきサイト、しなくてよいサイトは?
さらに、アンケートの質問で多かったのが「うちのサイトもBigQuery(ビッグクエリ)を入れた方がいいの?」というものだ。GA4との連携も注目されているBigQueryだが、導入するべきサイトの特徴はあるのだろうか。
小川氏は、「大半のサイトではBigQueryを導入する価値がある」と回答した。導入初期の工数はかかるが、GA4の管理画面だけを使うよりも、AIを活用した分析や改善案出しがしやすくなり、結果的に業務を効率化できるという。
ただし、アクセス数が極端に少ないなど、データを見るまでもなく改善点が明らかなサイトでは、まず集客やサイト改善にリソースを充てるべきだと指摘した。
木田氏はさらに踏み込み、「すべてのサイト、特に小規模なサイトこそ導入すべき」だと主張した。
一見逆だと思うかもしれませんが、小さなサイトこそ導入すべきです。なぜなら、1つのコンバージョンが非常に重要になるからです(木田氏)
コンバージョンが少ないサイトでは、ユーザー一人ひとりの行動経路を詳しく分析する必要がある。ユーザーをまとまりとして捉えるGA4に対し、BigQueryでは個々の行動を詳細に確認できるため、小規模なサイトに適しているという。
また、データが少ない小さなサイトでは、ページ間のコンバージョン率の差が、実際の効果によるものか、偶然のばらつきによるものかを見極める必要がある。BigQueryには、こうした統計的な有意差を検証する際に役立つ関数が、豊富に用意されているという。
今ではGeminiがクエリを書いてくれるので、自分たちがSQLを完全に理解している必要もありません(木田氏)
コスト面については、小規模サイトであれば無料枠に収まるケースが多いと木田氏。さらに、カスタムクォータ機能や予算アラートを設定すれば、想定外の出費も防げると語った。
AIで変わる、解析の現場:見るべき指標・AIによる分析プロセス
ここからは、AIがWeb解析の現場をどのように変えていくのかをテーマに、両氏が意見を交わした。
【Q4】クリックが届かないAI検索時代、これから追うべき指標とは?
AIの普及により、検索結果のみで検索を終える「ゼロクリック」が増加している。サイトへのクリックが減少するなか、Web担当者はセッション数やクリック数以外に、どのような指標を見るべきなのだろうか。
小川氏は、Webサイトの役割が変わらない限り、重視すべき指標も基本的には変わらないと話す。AI経由の流入数やクローラーの訪問数は確認するものの、ユーザーがサイトを訪れて最終的にコンバージョンするという流れは同じだ。
分析から得られる結果は多少変わっても、Webサイトがある限り、見るべきものは変わりません。今まで通り、コンバージョン率や各ファネルへの到達率を見ます(小川氏)
一方、木田氏は、これからは「セッション軸」ではなく「ユーザー軸」の指標を重視すべきだと指摘した。具体的には、総ユーザー数や新規ユーザー数、ユーザー単位のキーイベント率などだ。ユーザーが最初にどこから訪れ、どのページを経てコンバージョンしたのかを捉える必要があるという。
セッションはお財布を持っていません。お財布を持っているのは人です。GA4も、セッションベースの分析からユーザーベースの分析へ変わってきています(木田氏)
一定時間操作がなければ区切られる「セッション」は恣意的な指標である一方、「ユーザー」そのものは揺らぎにくい。特に、ユーザーが初めてサイトを訪れた際の流入元や、コンバージョン直前の行動を分析することが有効だという。
ユーザーがサイト外でどれだけ情報を集め、どこから流入してきたのかを見る。ユーザーの初回訪問を分析すると、おもしろい発見があると思います(木田氏)
【Q5】AIが「仮説設定」する時代、分析プロセスで人が担うべき役割は?
AIに数値を渡すだけで、複数の仮説を瞬時に提示してくれるなかで、分析プロセスのどこに人間が介在する意味が残るのだろうか。木田氏は、まずWeb解析のワークフローを以下の4つに整理した。
- データ収集
- データの可視化
- データの分析
- アクション
このうち、「可視化」と「分析」はほとんどAIが行うようになっていくと木田氏。一方で、どのようなデータを集めるかを決める「収集」と、分析結果をもとに行動を起こす「アクション」は、人間の役割として残ると予測する。
グラフにすると、真ん中の2つの仕事が一気に少なくなって、U字型にカーブするようなイメージです(木田氏)
小川氏も、現在は分析作業そのものはほとんど行っていないと明かした。代わりに重視しているのが、事業やクライアントに関する情報をAIに読み込ませることだ。過去の施策や利用できるリソースなど、与える情報が多いほど、その企業の状況に即した分析結果を得やすくなる。
さらに、AIが提示した改善案をチェックすることも、人間の重要な役割だ。部署間の関係など、AIにインプットしにくい組織固有の事情も踏まえ、施策の実行可能性や優先順位を判断する必要があるという。
私はもう、自分では基本的に分析していません。今取り組んでいるのは、AIによる分析の精度を高めるための情報収集と、出てきた改善案の確認や優先順位付けです(小川氏)
【Q6】GA4解析にAIをどう使う? 木田氏・小川氏のリアルなAI活用実践例
では、両氏は実際どのようにAIをWeb解析に活用しているのか。小川氏は、「AIでペルソナを生成し、サイトを巡回させる」という手法を紹介した。
具体的には、クライアントへのヒアリングをもとに、ターゲットの属性や利用状況に応じた複数のAIペルソナを設定し、それぞれに目的を持たせてWebサイトを自動で巡回させる。そして、気づいた点や操作の様子をコメント、録画、スクリーンショットで記録していく。
さらに、小川氏の分析ノウハウを学習させたAIが、ペルソナの指摘をデータと照らし合わせ、課題や改善案の妥当性を検証するという仕組みだ。
講演では、紹介制度の特典が掲載されているものの、受け取るための条件がわかりにくいページを例に挙げた。AIペルソナが使いにくさを指摘し、小川氏がGA4のデータを見たところ、ファーストビューでの離脱が多いことが確認できた。こうした分析をもとに、AIがサイトデザインに合わせた改善後のモックまで作成するという。
今では、ペルソナの設定からサイト巡回、GA4データの分析、改善案やモックの作成、PowerPoint資料へのまとめまで、AIを活用しています。8種類ほどのペルソナにサイトを2周させても、大体45分ほどで完了します(小川氏)
ただし、AIが作成したものをそのまま全部使うことはできないため、人間の目による確認は欠かせない。また、どのようなペルソナを設定するかは、クライアントへの詳しいヒアリングを通じて決めているという。
続いて木田氏は、BigQueryの「会話分析(Conversational Analytics)」を紹介した。これは、BigQueryに蓄積したデータについて、自然言語でAIと対話しながら分析できる機能だ。分析に使用する機能を詳しく見ていこう。
- ナレッジソース
GA4やGoogle Search Console(グーグルサーチコンソール)など、分析に使うデータを設定する。 - 手順
サイトの目的やリソース、実行可能な施策など、分析の前提となる情報を具体的に入力する。 - 検証済みクエリ
質問と正確なSQLを対応させた「検証済みクエリ」を登録する。正しいSQL文を手動でいくつか入れておくことで、回答の精度が高まり、ユーザー数や直帰率などが適切に算出できるようになる。 - 用語集
企業ごとに異なる用語や、「コンバージョン」「CV」「キーイベント」「お申し込み」といった同義語を定義する。
必要なデータを「ナレッジソース」に設定し、サイトの概要や前提条件などを「手順」に入れます。さらに、「検証済みクエリ」や「用語集」を登録しておけば、文脈がぶれにくい会話分析のエージェントを作れます(木田氏)
作成したエージェントを社内で共有すれば、営業や経営企画、開発などの各部門が、共通の前提に基づいてデータを分析できる。木田氏は、Googleも会話分析の普及に力を入れているとして、今後2〜3年でより広がる可能性があると予測した。
マーケターの仕事は、データと文脈を整え、会話分析のエージェントを全社に公開するような仕事になっていくと思います(木田氏)
変わるもの、変わらないもの:人間の役割とこれからのスキル
AIが行う業務が増えるなかで、人間にはどのような役割が残るのか。そして、これから解析者に求められるスキルについて、両氏が見解を語った。
【Q7】AIに任せる仕事、人間のアナリストにしかできない仕事とは?
木田氏は、人間に残る役割として「意思決定」と「実行」を挙げた。AIが仮説や施策案を提示しても、予算や過去の失敗、社内事情などを踏まえ、実際に取り組む施策を決めるのは人間だ。外部の支援会社にも、施策の妥当性を判断し、担当者の実行を後押しする役割が求められるという。
どれだけデータを集めて分析しても、実行しなければ意味がありません。予算を取り、稟議を上げて、「これをやる」と決める。その最後の一歩を進めることが、人間の役割です(木田氏)
一方、小川氏は、極端にいえば「AIに代替されない仕事はない」と話す。データの収集から分析、改善施策の提案、Webサイトの更新まで、技術的にはAIへ任せられる範囲が大きく広がっているためだ。実際、小川氏が運営するGA4の情報サイト『ga4.ガイド』も、現在は基本的にAIに更新を任せているという。
ただし、AIによる施策が失敗しても、AI自身が責任を負うことはできません。AIへ十分な情報を与え、周囲を説得したうえで実行し、その結果に責任を持つことが、人間に残る仕事だと思います(小川氏)
【Q8】AIによる分析は開示する? クライアントの信頼と透明性の考え方
さらに、AIを使って分析や提案をまとめた場合、その事実をクライアントにどう開示するのかという質問では、小川氏は「分析後に知らせるのではなく、作業を始める前にAIの使用について相談している」と回答した。
AIが出すアウトプットの品質に不安を感じるクライアントも多い。小川氏は、まずAI利用のメリットとリスク、具体的な分析方法を説明し、自身の分析ノウハウをAIに反映したうえで、人間の目でもチェックしていることを伝え、クライアントの意向を確認するという。
また、提供したデータがAIの学習に利用されるのではないかという、セキュリティ面の懸念も多く挙げられる。これに対し小川氏は、GA4も同じくGoogleにデータを預けて利用するサービスであるとして、Geminiによる分析のどの点にリスクを感じているのかを具体的に確認。不安を一つずつ整理することで、同意を得られるケースもあるという。
なお、外部のクライアントを支援する場合は、NDA(秘密保持契約)にAI利用に関する条項を追加し、合意を得たうえで分析を進めている。
実務上では、今はまだ過渡期だと感じますね(小川氏)
【Q9】解析者としての失敗談は? 失敗から学んだことは?
続いて、分析結果が間違っていた経験と、そこから得た学びについて聞いた。
木田氏が紹介したのは、機械学習を用いたプロジェクトの例だ。紙のカタログを会員に配布し、FAXやWebで注文を受け付ける事業の支援で、カタログを送っても購入しない可能性が高い会員を抽出し、印刷・配布費を削減することを目指していた。
しかし、学習用データに正解となる情報が混入する「リーク」が発生し、実際よりも精度の高いモデルができてしまった。木田氏は、結果の信頼性が不自然に高いことに違和感を覚え、施策の実行前に誤りを発見。環境を作り直して再度学習させたため、実害は生じなかったという。
実行前に「何かおかしい」と気づいてすべて作り直せたため、実害はありませんでしたが、冷や汗をかきました(木田氏)
一方、小川氏は、施策が想定どおりの成果にならなかった経験は数多くあるとしたうえで、「間違えることは失敗ではない」と語った。仮説が間違いだったと判明したのは、施策を実行する段階まで進められたからだ。そこで得られた示唆を次の提案に反映すれば、成功する可能性をより高められる。
間違いだったとわかるところまで施策を進められてよかった、と感じますね(小川氏)
【Q10】AI時代のアクセス解析・SEO担当者が身につけるべきスキル
最後に、これからアクセス解析やSEOを学ぶ人が身につけるべきスキルや考え方について、両氏の意見を聞いた。
小川氏が挙げたのは「好奇心」だ。新しいサービスやAIの機能について、まずは自分で試してみることが重要だと語る。深掘りする必要はなく、10~15分触るだけでもよい。自分の業務やビジネスを効率化できるか、よりよい成果物を作れるかという視点で、新しい技術を試してほしいと呼びかけた。
今は、AIによって仕事が大きく変わりつつある、非常にわくわくする時代です。業務を楽しく効率化し、成果につなげることを意識しながら、まずはいろいろ試してみるのがよいと思います(小川氏)
木田氏は、1点目として「数字の先に人がいること」を挙げた。検索クエリやクリック率などの数値の裏側には、実際に検索した人と、その人の意図が存在する。数字だけを追うのではなく、ユーザーの行動や目的を想像する姿勢を忘れてはいけないという。
2点目に挙げたのが「データリテラシー」だ。AIに分析を任せられる時代だからこそ、平均値やデータの分布、欠損値などを正しく読み解くための基礎知識が重要になる。AIが示した答えをそのまま受け入れず、自ら判断する力が求められるという。
Web解析やSEOに携わる人は、いわばデータマーケターです。AIですぐに答えを得られる時代だからこそ、最低限のデータリテラシーを身につけておく必要があります(木田氏)
両氏は、今回の講演を通じて、今後に生かせるヒントやモチベーションを持ち帰ってほしいと呼びかけ、セッションを締めくくった。
講演の詳しい内容は、期間限定のアーカイブ配信で確認できる。視聴を希望する方は、8月31日(月)までに公式サイトから申し込んでほしい。
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