【レポート】Web担当者Forumミーティング 2022 春

2022年注目! 米国デジタルマーケティング 8つの最新トレンドとは?

デジタルマーケティングの最新トレンドを8つ、サンフランシスコ在住のハートコアの神野社長が徹底解説する。
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デジタルマーケティング技術は毎年・毎月のペースで進化しており、それを追うのは容易ではない。日本企業でありながら、このほど米国NASDAQ株式市場への上場を果たしたハートコアは、サイト運用の根幹ともいえるCMSを専門的に開発している企業であり、その事情にも明るい。

Web担当者Forumミーティング 2022 春」に登壇した同社の神野純孝氏が、米国の動向も踏まえながら、最新のマーケティングトレンドを8つ解説した。

ハートコア株式会社 代表取締役社長 神野 純孝 氏
ハートコア株式会社 代表取締役社長 神野 純孝 氏

2022年のトレンドを徹底紹介

ハートコアは2009年6月に創業(当時の社名は株式会社ジゾン)。CMSツール「HeartCore CMS」、DX領域やRPA関連ソリューションなどの開発を手がけており、2022年2月には米国NASDAQ株式市場へ上場した。神野氏自身はサンフランシスコ在住で、いわゆるシリコンバレー周辺の事情にも詳しいという。本セミナーは、神野氏による米国デジタルマーケティング最新トレンド解説という趣でスタートした。

2022年最新トレンド① AI

AIの利用シーンは、消費者が意識していない分野にも広がっていると神野氏。iPhoneの写真アプリにおける顔判別はその代表例だという。

AIはもう皆さんの生活と密接に結びついていると言い切れるだろう。一方でWebサイトやECで顧客体験を向上させるためにAIを使い始めるところが出てきているが、その数はまだまだ少ない。そうした分野でいかにAIを広めていくかが当面の課題(神野氏)

また、近年強まるCookie規制に対してもAIが有効だと主張する。パーソナライズにサードパーティCookieが使えない以上、ファーストパーティCookieをフル活用するしかない。CDP(カスタマーデータプラットフォーム)に顧客情報を蓄積していく方向性に変わりはないが、その抽出や選別にAIを活用する格好だ。

AIによるパーソナライズ
AIによるパーソナライズ

2022年最新トレンド② ダイナミックコンテント

たとえばWebサイトは、老若男女・居住地などに関わらず、どのユーザーがアクセスしても同じ内容が表示されるのが従来のスタイルであった。対してアマゾンなど一部サイトでは、ユーザーのサイト閲覧履歴・購入履歴などに応じておすすめ商品が切り替わる仕組みが整っている。(静的・スタティックではない)ダイナミックなコンテンツ表示切り替えは、BtoBなどあらゆるWebサイトに適用されるべきだという。

大手ECサイトなどでは「ダイナミックコンテント」が広がっている
大手ECサイトなどでは「ダイナミックコンテント」が広がっている

ダイナミックコンテント導入を阻む課題は、パーソナライズを細分化したければしたいだけ、コンテンツ(画像バナーなど)を作成しなければならないこと。100製品に100パターンの素材を作るのは、一般企業には極めて困難だ。近道はない。

よってコンテンツの作成数は極力抑えるのが基本。セグメンテーションやターゲティングを適切に行い、コンテンツを無際限に作らないで済むようにすることが重要で、いわば「最大公約数を狙う」方式である。

ダイナミックコンテントは神野氏が2009年の創業時点から注力していたが「ようやくトレンドといえるくらいの勢いになってきた」と吐露。10年以上に亘ってノウハウを蓄積しているだけに、今こそハートコアの実力を示せると意気込む。

2022年最新トレンド③ 音声検索

技術としてはすでに知名度の高い音声検索だが、プラットフォームはSiri(アップル)、Googleアシスタント(Google)、Alexa(アマゾン)の3つに集約されつつある。そして利用は着実に広がっている。

調査によれば、音声検索を利用するユーザーの84%がなんらかの「質問」をしているという。たとえば「CMSって何?」と聞かれた時に、回答がうまく示せなければ、ユーザーはそこで離脱してしまう。よって、自社商品名などが音声検索されたときに、適切な回答を返せるような備えが必要だ。

着実に音声検索が広がっている
着実に音声検索が広がっている

2022年最新トレンド④ VR・AR

VR分野はMeta(旧社名 Facebook)が1兆円規模の投資を表明するなど、活況ぶりは明らかだ。神野氏が在住するサンフランシスコ近郊にはMetaによる実店舗もオープンした。

VRに注目すべき理由をこう説明する。

ECサイトを利用した後、「余計なものを買いすぎた」と感じることは相当少ないはず。しかし100円ショップでは違う。誰もが1回くらいは、目についたものを衝動買いした経験があるだろう。店に足を運んだとき、目的外のものを買うのは顧客行動としてある意味自然。これをECサイトで再現するのは難しいが、VR・ARなら実現しうると考えられている(神野氏)

ハートコアでは、Metterport(マーターポート)社の技術をベースとした「VR360」という製品を販売している。空間を撮影してWebコンテンツ化するもので、東京都港区のコロナワクチン接種会場では導線案内に活用された例がある。

「VR360」の概要
「VR360」の概要

2022年最新トレンド⑤ ヘッドレス

「ヘッドレス」とは、コンテンツの管理に関する概念である。一般的にCMSは、情報をHTML単位で管理し、PCやスマートフォン、タブレットなどのデバイスに応じて表示方法を調整している。しかしヘッドレスは、HTMLより細かな「パーツ」単位でコンテンツを扱い、実際の表示方法はデバイス側に任せる。結果として、ユーザー側から見た場合に表示速度が速くなる。

Googleの検索順位表示の決定には、Webサイトの表示スピードが大きく関わっているとされる。SEO面で有利なだけでなく、またマルチデバイス対応をデジタルサイネージやカーナビ(自動車内コンソール)にも広げやすい。

ヘッドレスはコマース分野で注目されているが、用途はそれだけに限らない
ヘッドレスはコマース分野で注目されているが、用途はそれだけに限らない

2022年最新トレンド⑥ LTV戦略・顧客生涯価値を最大化

LTV(Life Time Value)は「顧客生涯価値」のこと。企業と顧客の関係性において、1回あたりの購買金額を増やすことだけに終始せず、長期的(場合によっては顧客の一生涯)な観点で最大化しようという発想で、近年注目を集めている。

顧客の購買行動にとって大前提となるのが「なぜ購入するか」である。つまり「WHY」であり、マーケティングのいわゆる4W(When/Where/Who/What)よりも重要な概念だと神野氏は指摘する。「服が欲しいから服を買う」のではなく、「お出かけするから服を買う」「冠婚葬祭に行くから服を買う」というわけだ。これをデジタルマーケティング領域でも意識しなければ、効果が薄くなってしまう。

LTV(顧客生涯価値)の最大化を意識したい
LTV(顧客生涯価値)の最大化を意識したい

2022年最新トレンド⑦ 親指のためのデザイン

スマートフォンの大画面化は著しく、情報の一覧性という意味では有利だが、画面の上部に指が届かないといった弊害も指摘される。しかし、片手操作ではその指が届きづらい部分にWebサイトのメニュー(ハンバーガーアイコン)が表示されるケースは往々にしてある。

こうした問題意識から、親指1本でも簡単に操作できるWebサイトデザインが導入されつつある。具体的には、画面の下部に「ショッピングカートに入れる」ボタンを配置するといった具合だ。

大画面スマホでもスムーズに操作できるよう、画面下部にボタン類を置く
大画面スマホでもスムーズに操作できるよう、画面下部にボタン類を置く

2022年最新トレンド⑧ Core Web Vitalsの対応

Webサイトへの自然流入を増やそうとなると、現状ではGoogle検索に頼らざるを得ない。そのGoogleが2021年、検索表示順位の選定にあたって「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」を重視する方向へ大転換したと神野氏は解説する。具体的な要素は以下の3つ。

1. LCP(Largest Contentful Paint)
サイトの読み込み時間。2.5秒以下で「Good」、4秒以上で「Poor」。日本国内企業のスマホ向けWebサイトを調査すると、Poorのケースが半分を超えるという。

2. FID(First Input Delay)
操作入力のインタラクティブ性にかかる指標。100ミリ秒以下で「Good」、300ミリ秒以上で「Poor」。

3. CLS(Cumulative Layout Shift)
コンテンツの視覚的安定性を図る指標。0.1以下で「Good」、0.25以上で「Poor」。

コアウェブバイタルの3つの指標
コアウェブバイタルの3つの指標

Core Web Vitalsが推進されれば、ユーザーにとってはWebサイト利用時にかかるストレスが減少するなど体験の向上が期待できる。しかし背景には、Googleのビジネスモデル事情によるところが大きいと神野氏は分析する。

Googleは広告で稼ぐ会社。検索結果画面では広告をもっとも優先的に表示し、続いて位置情報にもとづいた地図など「ローカルパック」を表示して、その次に検索1位を出している。つまり、画面的には検索1位の表示位置が相対的に下がった。だが、これも顧客のためを思ってのことで、検索がとにかく便利になるよう、徹底的に改善を進めた結果(神野氏)

検索結果画面の構成が大きく変化
検索結果画面の構成が大きく変化

今後は「ゼロクリック検索」に注力する姿勢も明らかになっている。キーワード検索した直後に表示される画面において、ユーザーが求めているであろう情報を推定し、まとめて表示する。こうすれば、ユーザーは外部サイトにリンクせずとも目的を果たせるようになる。広告表示回数を増やしたい以上、Googleにはそれが理想的だ。

企業側はこれを現実として受け入れなければならない。前述の「ローカルパック」に正しく情報が表示されるようGoogleビジネスプロフィール(旧称 Googleマイビジネス)に登録したり、「強調スニペット」「ナレッジグラフ」にも対応したりすべきだという。

「ゼロクリック検索」という概念が登場している
「ゼロクリック検索」という概念が登場している

「HeartCore CMS」は10年間ハッキング被害歴なし、新バーションも投入

ハートコアの主力製品である「HeartCore CMS」は、ここまで神野氏が紹介したトレンド動向などを踏まえ、進化・機能強化が着実に進められているCMSだ。国内では約650社の企業で採用されている。

「HeartCore CMS」概要
「HeartCore CMS」概要

エディターの使いやすさ、検索機能の標準搭載など基本機能にこだわった一方で、そのセキュリティ性能の高さに胸をはる。神野氏によれば、過去10年間で1回もハッキングされたことはないという。またアクセス集中への耐性の例として、1日1億アクセス規模のサイト運営が問題なく行われているとした。

また神野氏は「弊社はCMS分野では数少ない国内ベンダー。“行間”もしっかり読める」ともアピールする。CMSを「HeartCore CMS」に乗り換える際、「以前のCMSの管理画面で使いたい」といった顧客に、専用の画面を用意する対応も度々実施している。

「HeartCore CMS」ではこのほど最新バージョン「Ver.12」をリリースした。10万点規模の商品管理に対応したPIM(商品情報管理)、デジタル素材をWebサイト以外のYouTubeや広告などでも共用する場合に便利なDAM(デジタルアセットマネジメント)を新たに追加している。

神野氏は「ぜひ今回のトレンド情報を皆さんのビジネスに役立てていただければ」と述べ、講演を締めくくった。

機能性の高さはもちろん、セキュリティ性能の高さも自慢という
機能性の高さはもちろん、セキュリティ性能の高さも自慢という

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