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ユーザーに愛されるコミュニケーション設計できていますか? MA活用とLTV向上のポイント 【電通デジタルコラム】

「愛されるMAコミュニケーション」と「LTV拡大」のジレンマとは?

マーケティング施策において持続的に効果を得るのに欠かせないのは、“ユーザーに愛される”ためのコミュニケーションです。これを実現するMA(マーケティングオートメーション)活用のポイント、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)向上の方法について、電通デジタル 中西修二と塚本三喜が解説します。

※この記事は、2022年2月に開催したウェビナーを採録し、再構成したものです。


“ユーザーに愛される”コミュニケーションに必要なこと

中西 : MAを使ったオンラインのコミュニケーションでは、ユーザーの反応が目に見えないため、ユーザーから愛されない以下のようなケースが多々発生しています。

1. メッセージの頻度が多すぎる
2. メール、プッシュ通知、LINE、SMSなど、異なるチャネルから同じ内容が送信される
3. 過去の情報に基づき、現在はユーザーが求めていない情報が送られてくる

店頭接客を想像してみてください。接客上手なスタッフの場合、こうした愛されないケースはほとんど発生しません。顧客に話しかけるタイミングを見計らい、行動や反応を観察し、話す内容や情報量を変えているからです。

オンライン接客でユーザーに愛されるためには、店舗接客と同様に「顧客理解」にもとづいた「おもてなし」が必要です。ユーザーに愛されるMA活用は、このようなイメージになります。

1. メッセージは必要最小限で、送信頻度が適切である
2. 異なるチャネルから、それぞれタイミングよく、有益な情報が届く
3. ”最近”興味/関心をもっている情報が届く

たった1通のメールやメッセージからでも、ユーザーは企業からどのように扱われているかを敏感に感じ取ります。雑な扱いを受け、信頼できないと感じれば、その企業への愛は急激に冷めてしまうかもしれません。一つひとつの接点を大切にし、顧客満足度を高める努力をする必要があります。

「愛されるMAコミュニケーション」と「LTV拡大」のジレンマ

3rdパーティCookieの規制などにより、新規顧客の獲得が難しくなる中、LTVを向上させて、効率的に利益を最大化する取り組みの重要性が増しています。

LTVを向上させるには、「購買単価を上げる」「購買頻度を上げる」「継続率を上げる」「顧客ロイヤルティを高める」「顧客獲得・維持コストを下げる」などの施策が必要ですが、ここで問題となるのが、「愛されるMA」とのジレンマです。


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「愛されるMA」では「メッセージは必要最小限」にすべきですが、LTV拡大には、アップセルやクロスセルを目的とした頻度の高いアプローチが求められます。この両者のバランスをとりながら、中長期的な利益最大化を意識しつつ、信頼されるコミュニケーション設計を策定しなくてはなりません。

もちろんコミュニケーション設計には、MAだけでなく、Webサイトやスマートフォンアプリ、カスタマーサポート体制など、さまざまな顧客体験の要素が必要です。徹底的にユーザー視点で考え、長く愛されるためのコミュニケーション設計が重要です。

LTV向上のためのコミュニケーション設計

ユーザーから愛されるためには、オフライン・オンラインを横断した「カスタマーサクセス志向」で全体を捉え、コミュニケーションを設計します。ブランド戦略を土台としつつ、一つひとつの顧客体験に細心の注意を払い、顧客視点で考えることが大切です。次の3ステップで、施策を設計・改善していきましょう。

1. ロイヤルユーザー像を策定する
2. コミュニケーション施策を見直す
3. 運用を効率化する

○ロイヤルユーザー像を策定する
LTV指標とエンゲージメント指標、この両方が高いユーザーを「理想的なロイヤルユーザー像」として策定します。例えば自動車販売会社の場合は、以下のような指標が考えられます。

・LTV指標:購入単価、購入回数、継続利用期間など
・エンゲージメント指標:イベント参加経験の有無、会員専用サービスへのログイン頻度、メンテナンスの頻度、メッセージへの反応率、ディーラーに足を運ぶ回数、知人紹介の有無など

LTV指標だけで策定すると、高価格帯商品を一時的に購入した場合や、サブスクリプションサービス契約後に忘れてしまっている場合でもロイヤルティが高いと見なされるため、エンゲージメント指標を併用します。

ロイヤルユーザー像を策定したら、認知段階から購入・契約、ロイヤルユーザー化までのカスタマージャーニーを描いて必要な顧客体験を設計し、その上でMAが担う役割を見直します。

○コミュニケーション施策を見直す
次の4点を意識し、コミュニケーション施策全体を見直します。

①施策全体を管理し、足並みをそろえる
顧客視点では、すべての部署が1つのブランドに見えています。そのため、部署/チャネル横断で優れた顧客体験を提供できる協力体制を作る必要があります。具体的には「マネジメントポジション」(まとめ役)を設置し、企画段階から全体を俯瞰し、バランスを見て施策の実行可否をチェックします。また顧客体験の全体像を一枚絵にして、全部門で共通認識を持ち、部分最適から全体最適へ移行します。

②会員IDに各チャネルのIDや情報を紐づける
ユーザーとのタッチポイントを点から面にするために、各チャネルのIDや情報を、できる限り会員IDに紐づけていきます。各チャネル・各部署が同じ顧客データを見て応対できるシステム構成とすることで、一貫したブランド体験を提供できるようになります。

③フォローの過不足をチェックする
製品やサービスを使うにあたり、ユーザーに余計な手間をかけさせていないか(エフォートレス)、より良い使い方や気付きを与えられているか(文脈設計)という観点から、フォローの過不足をチェックしてMA施策を修正し、ユーザーをスムーズに成功体験へ導きます。

④配信通数を制御する
エンゲージメントの低下やオプトアウトを防ぐために、MAによるメッセージの配信通数を制御します。MAで実行しているシナリオを洗い出して、ユーザー視点でメッセージの優先順位を決めましょう。シナリオの見直しやMAの機能で配信通数を制御できない場合は、CDPなどMAの外のシステムで制御するか、MAツールのリプレイスも視野に入れても良いかもしれません。

○運用を効率化する
マーケティング担当者がもっとも力を入れるべきは、顧客理解と施策設計です。ここに十分なリソースを割けていないのであれば、運用フローや運用体制を見直してください。例えば、不要な会議、資料作成、社内調整、外部ベンダー調整、制作やチェック業務、MAの設定や配信テストなど、効率化できる部分は効率化し、顧客と向き合う時間を作り出しましょう。

顧客とのコミュニケーションは、小さな満足や信頼の積み重ねです。それにより、エンゲージメントが高まり、LTVが向上し、やがて安定した事業成長へとつながります。1つひとつのメッセージが”接客”であり、「真実の瞬間」であることを忘れず、顧客視点で細心の注意を払ってコミュニケーション設計をするように心がけましょう。

"LTVの穴"をふさぎ、LTVを向上させる3つのステップ

塚本 : LTV向上のためには、日常のあらゆる面で「ブランドから大事に扱われている」と顧客が感じるようなコミュニケーション設計が欠かせません。コミュニケーションのどこかに「このブランドは自分のことを分かってくれていないな」と感じるポイントがあると、顧客はブランドから離れ、最終的にはLTVの低下を招きます。このポイントのことを、"LTVの穴"と呼びます。

"LTVの穴"に着目したLTV向上施策には、大きく分けて3つのステップがあります。①"LTVの穴"の発見、②"LTVの穴”へのアプローチ、③持続的な成長支援です。

①"LTVの穴"を発見する

まず顧客データを分析することから始めます。分析段階の目的はあくまで顧客理解です。顧客像を知り、顧客を理解するには、ライフタイム全体のデータをまんべんなく見ます。売り上げやコンバージョン関連のデータだけにとらわれず、視点を広く持って顧客像を知るという意識が大事です。

次に、LTV指標を分析します。LTV指標としては、一般的な「客単価、購入頻度、継続購入期間」といったコンバージョンに直結する指標だけではなく、顧客満足度に関連する指標にも着目してください。顧客のライフタイムの全体像を見るために”満足度を全方位から”見ていきます。

LTV指標の方向性が見えてきたら、"LTVの穴"を既存施策の全体像から洗い出します。良くあるシナリオの例として、以下に一般的な顧客の買い物フローを挙げます。


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顧客のライフタイム全体の動きを指標に照らし合わせて、”LTVの穴”を見つけます。

・デジタルチャネルでの入会前に店舗利用はないか
・情報収集レベルでUIやサイトの使いづらさから休眠に入っているケースはないか
・問い合わせユーザーにレコメンドを送りすぎていないか
・メッセージが多すぎてブランド離脱を招いていないか

これらがよくある”LTVの穴”です。

②LTVの穴をカバーするアプローチを考える

2つ目のステップとして、"LTV"の穴をカバーするためのアプローチを考えていきます。ここでも重要なのは、やはり顧客視点に立って考えることです。シナリオの再設計やタッチポイントの最適化から着手し、最終的に全方位から顧客とのコミュニケーションを丁寧にサポートできる体制まで作れれば理想的です。しかし、すべての穴をカバーするには、膨大な工数と時間、専門的な知識、人的リソースが必要で、やるべきことは膨大に発生します。

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しかも「穴をふさいだら終わり」ではありません。顧客や市場の変化に合わせて、改善したシナリオを常にアップデートし続けなくてはなりません。作ったら見直し、改善し、成果アップにつなげる流れを作り、持続的に運営することが求められます。

ただし、改善すべき課題が顕在化するたびに人員を補充していては、迅速な改善は見込めません。改善体制を構築することが持続的なLTV向上・事業成長に必須です。

③変化に対応できる持続的な運用体制を作る

持続運用にはLTV改善の道筋から逆算し、必要な人員や体制を整えることが最重要です。とはいえ、人材育成には時間がかかります。本質的なLTV改善に取り組もうと思っても、すぐには間に合いません。そうした場合、当面は電通デジタルをご利用いただき、専門家のノウハウを使いつつ、スキルを自社に取り込むことが近道です。

例えば、オンラインとオフラインを統合するなら、店頭での接客経験豊富なマーケター。サイトの改善ならエンジニアやデータアナリスト。コミュニケーション全体を俯瞰して改善するならMAコンサルタントなど、電通デジタルにはさまざまな領域の専門家がおり、あらゆるサポートが可能です。

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人員配置で最も重要なのは、体制を整えることで成果が出せる流れを戦略的に作ることです。どのような変化にも負けず、いつまでも愛される最強のブランドを育てるため、皆様と並走していくことができれば、私としては何よりの喜びです。

a-y-d-c-t-us-l_05中西 : 電通デジタルでは、マーケティング戦略をプラットフォームで具現化するという思想のもと、戦略策定からシステムの導入・定着化まで、マーケティング施策の成功をトータルにサポートしています。デジタルマーケティングに必要なソリューションすべてにおいて、プラットフォーマーとのアライアンスを強化していることも強みです。お困りの際は、ぜひ声を掛けてもらえれば幸いです。

中西 修二 Shuji Nakanishi

テクノロジートランスフォーメーション部門  CRMソリューション事業部 第4グループ
Web制作会社でWebサイトやモバイルアプリの制作に携わった後、MAツールベンダーで導入コンサルティングを経験し、2018年に電通デジタルに入社。現在はCFA、CRMを中心とした様々な業界におけるコミュニケーションプランニングを担当している。顧客視点のコミュニケーションプランニング、および担当者目線のマーケティング運用支援をモットーとしている。

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塚本 三喜 Miki Tsukamoto

テクノロジートランスフォーメーション部門  CRMソリューション事業部 第2グループ
2019年に電通デジタルへ新卒入社。シナリオプランニング、実装、分析、改修など一連のコミュニケーション施策に携わる。利便性を重視したシステムおよび体制構築を通じて、顧客企業の持続的なデータドリブンMA支援を心がけている。

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「電通デジタル CX UPDATES」掲載のオリジナル版はこちら ユーザーに愛されるコミュニケーション設計できていますか?MA活用とLTV向上のポイント

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