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Data Clean Roomの魅力と、最大限にその価値を引き出す活用のポイント(第2回)【電通デジタルコラム】

Data Clean Roomを使って、広告プラットフォームの膨大な広告配信ログデータから、価値のある示唆を導き出すためのポイントについて解説。
Data Clean Roomの魅力と、最大限にその価値を引き出す活用のポイント(第2回)

※所属は記事公開当時のものです。

広告プラットフォーム事業者の提供する次世代型レポーティングの仕組みであるData Clean Roomについて解説する連載の第2回。今回は、Data Clean Roomの魅力と、Data Clean Roomを使って、広告プラットフォームの膨大な広告配信ログデータから価値のある示唆を導き出すためのポイントについて解説する。

※本記事は2021年7月時点での情報をもとに作成しています。本記事の内容は公開情報を元にした電通デジタルの解釈に基づくものであり、プラットフォーム事業者が公式見解として内容を保証するものではありません。あらかじめご了承ください。

Data Clean Roomの魅力

Data Clean Roomは、広告プラットフォーム事業者が用意するクラウド環境上で動くソリューションである。第1回では、導入や分析のハードルが高いことと、出力できるデータも一定の閾値以上のプライバシーチェックを潜り抜けたものだけであることについて見てきた。こうした厳しい制約を受けつつも、Data Clean Roomを使うことの魅力は大きく2つある。

外部データとの掛け合わせができる

1つは外部データとの掛け合わせ分析ができること。集計対象は広告プラットフォームの配信ログデータだけというわけではなく、そこに外部データを掛け合わせた分析をすることができる。

たとえば、電通グループではPeople Driven DMP®という独自のオーディエンスデータのリクルーティングを進めている。Data Clean Roomを使えば、このPeople Driven DMP®で培ってきたデータ資産を活用した分析を行うことができるため、従来はできなかったところまで分析の幅が広がる。

あるいは自社のCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)データを掛け合わせた分析も可能だ。自社サイト来訪者のサイト内行動とCRMデータを掛け合わせた分析であれば、従来もGoogle アナリティクスなどのサイト解析ツールを使うことでも可能ではあったが、サイト来訪前のimp(インプレッション)レベルのデータを掛け合わせた分析が可能になるのは、Data Clean Roomならではの機能と言えるだろう。

自社のCRMデータを含む外部データの掛け合わせが可能なことは、Cookieフリー対応の文脈の中で、企業の持つ許諾の取れた自社データ(1st Party Data)の重要性が高まっていることとセットで考えられる。マーケティングへのデータの利活用は、ユーザーから適切に許諾を取ったうえで行うべきであるという潮流を踏まえて、自社顧客のデータを正しく補完する動きが加速している。こうして得た自社顧客データを新規客の獲得につなげていくためには、自社内メディアでの活用だけでは不十分で、自社外のデータとの突合と活用が必要不可欠だ。この自社外のデータとの突合にあたって、セキュアかつプライバシーに配慮されたData Clean Roomは最適なソリューションであると言える。

広告プラットフォームの持つ属性データが使える

もう1つは広告プラットフォームの持つ属性データが使えることだ。これはすべての広告プラットフォームにあてはまるものではないが、属性データも含めて情報として利用できるプラットフォームが多い。

例えばGoogleを例にとると、デモグラフィック情報(年齢、性別など)のほかに、アフィニティ(ユーザーが熱中していること、習慣、興味や関心)やIn-Market(購買意向が強いオーディエンス)と呼ばれる、いわゆる興味関心のユーザー属性データを持っている。これはGoogleの持つ豊富なネットワーク上でのユーザー行動から判断された非常に精度の高い属性情報であり、多くのクライアントでGoogle 広告のターゲティングに使われている信頼性の高いものだと言える。

その他の広告プラットフォーム事業者も、広告配信時のターゲティングに利用可能な興味関心属性として類似のデータを持っており、ユーザーごとの属性として定義されている。多くのプラットフォームでは、一定の条件(データがフィードされる配信面が限られる、一部の属性データは利用できない、など)のもとではあるものの、Data Clean Roomを介することでこうしたユーザー属性データにもアクセスすることができる。

こうしたユーザー属性データを利用することで、例えば属性別のリーチや、属性別の行動転換率など、従来管理画面では見ることのできなかった切り口での分析が可能となる。

管理画面で可能な分析との違い

コンバージョン情報としてアップするケースとの違い

広告プラットフォームに詳しい方は、「外部データの掛け合わせなら、他の方法でもできるのでは?」と思われるだろう。たとえば各広告プラットフォームの用意しているオフラインCV(コンバージョン)のアップロード機能を使えば、広告接触履歴とコンバージョン情報を掛け合わせることができるため、類似の分析は可能となる。

しかし、オフラインCV機能はあくまでコンバージョンの紐づけのための機能なので、タイムスタンプが広告接触よりも前のコンバージョンを紐づけることはできない。このことは、たとえば「デジタル広告接触者」と「テレビCM接触者」の重複リーチを分析する際には致命的になる。「デジタル広告接触前のテレビCM接触者」を評価することができなくなるためだ。

Data Clean Roomならば、この制約を受けることなく、集計が可能になる。あくまでSQLベースでの集計なので、

  • タイムスタンプが前のものだけを抜き出す

  • タイムスタンプが後のものだけを抜き出す

  • 順番を考慮せずに単純な重複全体を抜き出す

といった条件を、分析者の設計次第で自由にできる。

集計結果のドリルダウンができる

加えて、集計結果のドリルダウンができることもData Clean Roomによる分析の利点となる。

広告プラットフォームのオフラインCV機能も、複数CV地点を設定すれば地点ごとの分割ができるが、基本的には事後的な分割はできないケースが多い。たとえば外部データとして"店舗来店"を広告接触に紐づけて分析する与件の場合に、Data Clean Roomであれば、「東京都の店舗の来店」と「神奈川県の店舗の来店」など、エリア別の来店を事後的に分割することができる。

一方でオフラインCV機能の場合は、事前に「東京都来店CV」と「神奈川県来店CV」のように地点を分けて設定しておかないと、エリアごとの分割ができない。ここからさらに「東京都来店CV」を23区内外で分けたい場合、オフラインCVでは分割ができないが、Data Clean Roomでは自由に分割できる。

こうした事後的な分析の自由度が圧倒的に高いことも、Data Clean Roomならではの機能と言える。

Data Clean Roomでの分析と管理画面での分析の違い

ここまでの議論を改めて整理すると、「Data Clean Roomで見られるデータ」を氷山に例えるなら、従来の「管理画面経由で見られるデータ」は、広告プラットフォーム事業者が持つデータのほんの氷山の一角に過ぎない。

管理画面経由の数字は、あくまで各広告プラットフォームが規定した切り口で見える部分、すなわち水面上に浮かぶところだけに限られる。それに対して、Data Clean Room経由であれば水面下の全体も含めた、より深い分析ができる。

管理画面経由で見られるデータは氷山の一角

ただし、Data Clean Room自体が担保することは、普段見えないデータへのアクセスができることだけなので、それ自体は無価値である。

データ分析全般に通じることだが、データそれ自体には価値がない。データを加工することで、どんな示唆を引き出し、どんな施策につなげていくかまでやりきって初めて、データの価値は生まれる。

Data Clean Roomにおいても同様で、Data Clean Roomを開設して満足することに意味はまったくない。Data Clean Roomによってアクセスできるようになったデータから、いかに価値を引き出すかという、データアナリストの能力が問われるのである。

価値を引き出すための分析のポイント

それでは、Data Clean Roomを使って価値のある示唆を導き出すためには、どのような点に留意すれば良いだろうか。

1.プラットフォームの属性データを最大限に活用する

まずもっともわかりやすいのが、プラットフォームの属性データにアクセスできることのメリットを最大限活用することだろう。

従来もWeb属性データでの顧客分析はいろいろなソリューションとして存在しており、各社の提供するDMPでもそれが売りになっていた。ところが、こうしたDMPで分析したセグメントに対して広告を配信しようとしたとき、配信先にできるメディアが限られるという問題がある。

Walled Garden化は分析だけでなく、Cookie連携についても進んでおり、各種DSPとの接続がクローズしている。その結果、大手広告プラットフォーム事業者は軒並み、外部DMPからCookie経由の連携は基本的にできなくなっている。そうなると、せっかく分析しても配信できるのは大手広告プラットフォーム以外のその他のDSPになってしまう。

やはり多くのクライアントでは、圧倒的なユーザーへのリーチ率を持つ大手広告プラットフォームに配信したいニーズが強い。一方で、Data Clean Roomで分析すれば、分析結果として出てきたプラットフォーム純正の興味関心セグメントをそのまま選べば良く、直接的かつ無劣化での連携が可能だ。

2.自由度の高いアトリビューション分析

次に考えられるのが、分析の自由度の高さを活かしたアトリビューション分析だ。

例えばCampaign ManagerやGoogle アナリティクスといった計測ツールでは、すでに管理画面上で簡単にアトリビューション分析ができる。しかし、あくまで決められた集計条件での結果が出せるだけで、クライアントごとのニーズや検証したいテーマに沿ったオーダーメイドの分析は、内容にもよるが困難だったり、集計の設定に多大な手間がかかったりと現実的でないことも多い。

こうしたニーズに対して、自由に設計し、かつAPIを使うことで定点観測がしやすいというのはData Clean Roomならではの提供価値と言えるだろう。電通デジタルとして開発している、アトリビューション分析関連の分析の切り口については次回にご紹介したい。

3.タグレスで計測できる

こうした切り口に加えて、Data Clean Roomのメリットとしては、広告プラットフォーム事業者の広告配信ログに直接アクセスできるため、タグレスで計測できるという点が挙げられる。

もちろん第三者配信ツールであるCampaign Managerは、計測のために広告配信時に発火するように設定が必要だ。しかし、それ以外の広告自体の配信ログについては、広告側のログとして広告プラットフォーム事業者に蓄積されるため、Data Clean Roomのための特別なタグ設定といった工数が発生しない。事前に分析が発生する案件の指定は必要なケースも多いが、タグなどの設定としては従来どおりの運用をしていれば分析が可能というのは、特に運用者や配信設計者の負担が小さいという点で魅力だろう。

4.ある程度長期間のデータが蓄積できる

これも広告プラットフォーム事業者によって仕様は異なるが、通常の管理画面ではコンバージョンに紐づく広告接触の期間は短くなる傾向にあるのに対して、Data Clean Roomを使えばプラットフォームのIDという一貫性の高いIDを基盤として、ある程度長期間のデータを分析に利用することができる。

例えば、管理画面経由では広告クリック後7日間以内に発生したコンバージョンしか紐づけて計測がされない場合でも、Data Clean Roomでは数十日のレンジで紐づけることができる、といった具合である。プラットフォームによっては、最大で過去13ヵ月分のデータが蓄積できる。データを蓄積するだけならコストも発生しない場合、分析内容が決まっていなくても、いったんデータを蓄積しておき、広告配信が終わってから事後的に分析内容を考える、ということもできる。

こうした過去分のデータがあることを活かして、データの蓄積を待たずとも過去にさかのぼって指標の定点観測や比較分析ができる、というのも目立ちにくいが便利なポイントだろう。あるいは、IDの一貫性を活かして、顧客のナーチャリングの様子をData Clean Room内で分析する、という使い方も考えられる。

次回は、ここまで見てきた分析のポイントを踏まえて、電通デジタルで用意している具体的な分析パッケージについてご紹介していきたい。

「電通デジタル トピックス」掲載のオリジナル版はこちらData Clean Roomの魅力と、最大限にその価値を引き出す活用のポイント(第2回)

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