【最新トレンドを5分で理解】ゼロパーティデータ・脱クッキー・顧客ロイヤルティ構築とは?

デジタルマーケターが知っておきたい最新トレンド「基本のキ」をチーターデジタルの加藤氏が解説。

Webマーケターが取り扱うデジタル接点は、重要な個人情報の取得 = データの入口となる。顧客体験UXを高める出口戦略としても、Web経由のコンバージョンだけでなく、購買単価の向上やリピートなどの指標も重要だ。つまり顧客ロイヤルティを高めてLTVやリピートにつなげる現在のトレンドの理解も求められる。

本コラムでは、ゼロパーティデータ、マーケティングオートメーション、顧客ロイヤルティ構築を専門とするチーターデジタルが、Webマーケターが今押さえておくべき最新の3つのマーケティングトレンドを端的に解説する。

トレンド1 - 脱クッキーデータが意味するもの

個人情報保護法の改定を2022年に控え、プラットフォーマー各社はサードパーティクッキー規制の強化に乗り出している。消費者に直接商品を販売するブランド企業は、追跡型広告の代替えとなる手段の検証に迫られている。今市場で何が起こっているか、まとめてみよう。

まずクッキー規制については、「法的な制限」と各プラットフォーマーによる「技術的な制限」の2つの側面で考える必要がある。法規制ではEUのGDPR (EU一般データ保護規則:2018年)の施行が実施され、次いで米国CCPA (カリフォルニア州 消費者プライバシー法: 2020年)が施行されている。

この2つの法律にはそれぞれ違いはあるものの、クッキーデータを個人情報として扱っているため、取得時に個人の同意が必要という点は共通している。この点はコンセントマネジメントとして、サイト訪問時にクッキー取得の許諾が義務付けられてしばらく経過しているため、一般的に浸透しているといえるのではないか。一方、日本でも、2022年4月に改正個人情報保護法が施行予定だが、今回の法改正では、クッキーデータは個人情報には含まれていない。

クッキーが求められる市場背景: 法規制とGoogle、Apple、Mozillaの動き

次に「技術的な側面」に関してみてみよう。Appleは2017年にトラッキング防止機能のITP(Intelligent Tracking Prevention)をSafari11でリリースし、サードパーティクッキーを徐々にブロックし、最終的にすべてのサードパーティクッキーをブロックしている。Googleも当初、2022年までに段階的にサードパーティクッキーのサポートを終了すると発表していたが、1年ほど延長し2023年後半までに終了するとしている。Mozillaも同様にサードパーティクッキーをブロックしている。

各プラットフォームでサードパーティクッキーが使えなくなることで、クッキーを用いた追跡型広告ができなくなる。その代替手段を広告プラットフォーマー、配信ベンダー各社が模索している状況だ。Googleが提供を予定しているPrivacy Sandboxによる新たなターゲティング手法などが一例となるが、そのターゲティング精度においてはこれから検証が必要になると想定される。

クッキーが求められる市場背景: 広告配信ベンダーの動き、広告主の動き

次に、広告主と消費者の変化を中心に見て行こう。このような法規制、技術的な規制に対して、ブランドはどのような対策を講じているのだろう。当然、継続的に新規獲得を行わなければならないので、広告の利活用はデジタルマーケティング において必須なのは変わらない。しかし、ビジネスにおける顧客との向き合い方をダイナミックに変革している企業も現れている。顧客リストをしっかり構築し、新規顧客獲得偏重にならない、ストック型のビジネスを重視するディノス ・セシールなどが一例だ。アパレルブランドのラコステも同様に、リターゲティング広告の懸念を表している。

次に消費者意識の変化を見ていこう。チーターデジタルが実施した日本を含む世界6ヶ国、5,000名の消費者を対象にした調査によると、実に2/3の消費者がクッキーの追跡によるリターゲティング広告を好ましくないと回答している。一方で、消費者自身に提供されるサービスや製品品質の向上が期待できるのであれば、半数の消費者が積極的にデータを提供すると回答。さらには、先行販売の機会や会員限定の特典が得られると、80%の消費者がその権利と引き換えに情報を提供してくれると回答している。

これは、ブランドと消費者との価値交換を意味し、消費者が認識できないところで自分のデータを収集・活用されていることへの不信感を明確に表している。

消費者マインドの変化 - チーターデジタル消費者トレンド調査

このセクションのまとめ

ここまで法規制、プラットフォーマー、ブランド、消費者という4つの観点で脱クッキーの意味を解説してきた。まとめると、調査結果からわかる通り、追跡型の広告が消費者に求められているわけではない、これはクッキー技術の代替によって、法規制に抵触しない新たな追跡方法・広告配信手段が開発されても消費者体験が進化しなければ同じである。

では、今後顧客とのコミュニケーションにおいて、どのような視点が必要になってくるのだろうか。その解の一つとして、ゼロパーティデータについて解説したい。ゼロパーティデータとは何か、その活用方法を具体的にみていこう。

トレンド2 - ゼロパーティデータを活用すると何が得なのか?

ゼロパーティデータとは顧客の趣味・嗜好・選好 (プリファレンス) を意味し、顧客に直接働きかけないと収集することができない。つまり、購入、来店、ポイント利用といった、トランザクションを通じて発生するデータではない情報を意味し、トランザクションデータと合わさったときにその成果を発揮する。

従来のトランザクションデータはクッキーが示すように、Webログはターゲティング広告、購買履歴は製品のレコメンデーションや購買後のフォローなど、打てる施策がおおよそ決まってきている。ゼロパーティデータを収集できると何が得なのだろうか。

端的に表すと、パーソナライゼーションのレベルが向上する。よりよいUXの提供が可能になると理解するとわかりやすい。これまでのマーケティングが、トランザクションデータを基にしているものであれば、図のようにゼロパーティデータを加えていくことで、顧客に到達するマーケティング深度が増すとイメージすると、捉えやすいのではないだろうか。

データタイプとマーケティングの深度の違い

ラコステのゼロパーティデータ活用例

アパレルブランド、ラコステのゼロパーティデータ活用例を紹介しよう。ラコステでは購買履歴など、従来のトランザクションデータだけではなく、「ポロシャツの好みを診断する」というアプローチをとり、顧客の好みを把握しながらコミュニケーションを工夫している。

よく身に付けるカラー、チャレンジしてみたい15色の長袖ポロシャツの診断、加えてオンラインストアの利用体験なども把握。つまり、診断を通じて、隠れた人気商品である長袖ポロシャツを訴求する機会を得ながら、顧客理解高め、一人ひとりの好みの色やスタイルに合わせた提案をその後に可能にするデータを入手している。回答率もアンケートの2倍となり、マーケティングコミュニケーションを深めている事例と理解できる。

チャレンジしたいラコステ長袖ポロシャツのカラー情報を収集

THE NORTH FACEのゼロパーティデータ活用例

アウトドア アパレルブランドであるTHE NORTH FACEの例を見てみよう。THE NORTH FACEのロイヤルティプログラムを構築したイアン・デューア氏はこう語る。

「特別なブランド体験を提供するためには、ゼロパーティデータはなくてはならない。たとえばTHE NORTH FACEが販売しているダウンは、タウンユースと本格的なマウンテンユースに分かれる。実際に顧客がどのようなライフスタイルを重視しているか、ハイキングや山登りを趣味としているのか、通学や通勤時に軽くて暖かい洋服を求めているのか。THE NORTH FACEではこのような情報を積極的に集めている。これにより情報の出し分けが明確になることから、積極的なゼロパーティデータ収集をプログレッシブ プロファイルングと呼び、マーケティング施策の中核に位置付けている」。

バックパックのサイズ / 都市型 or マウンテン型 / 購入タイミング / どの年齢の子供に購入するのかなどのゼロパーティデータを段階的に収集し、顧客体験に反映

このセクションのまとめ

ゼロパーティデータは、消費者の同意を取った深いレベルの顧客理解を意味する。ライフスタイルに関する情報などが一例だ。ゼロパーティデータを従来の属性データやトランザクションデータと掛け合わせることで、これまでのマーケティングコミュニケーションの精度を高め、デジタルコミュニケーションが円滑になることは想像に難しくない。その結果、消費者の信頼が向上し、CTRやCVR、売上などにも反映されていく。

次に、顧客ロイヤルティをどのように考え、これまでのデータ活用と連携すればいいのかを考察していこう。

トレンド 3 - 顧客ロイヤルティ構築手段

顧客ロイヤルティを考える際に重要な2つのポイントを紹介する。自社のカスタマージャーニーにおける広義のロイヤルティと狭義のロイヤルティ実現手段を分けて考えるとわかりやすい。カスタマージャーニーを簡易的にプロットすると、認知から興味・検討、初回、利用、再利用、3回目以降の利用などのステージ変化が一般的である。どのブランドも、2回、3回という回数と合計金額をいち顧客に対して最大化したいことは自明である。LTVの最大化がうたわれる領域だ。

まず広義のロイヤルティ実現手段を考えてみよう。これは、顧客を理解して、スムーズに段階的にジャーニーのステージを態度変容してもらう手段とも言い換えられる。マーケティング手段としては、ここまでに紹介したゼロパーティデータの活用も挙げられる。さらには一般的になってきたWeb接客、マーケティングオートメーションを活用したメッセージやコンテンツのパーソナライゼーションもその領域だ。さらにCDPに格納されたデータ活用も、顧客のロイヤル化促進に貢献してくれる。

それでは狭義のロイヤルティとはなんだろうか。ここは購入をきっかけにポイントを貯めたり、還元されたり、特別な優待を受けるロイヤルティ会員プログラムを指す。仕組みとしては、ロイヤルティプログラム構築のためのシステムやロイヤルティ オファーの出しわけ、ポイント管理や会員階層の設計管理などがそれに該当する。

図のように、カスタマージャーニー上で、顧客ロイヤルティを広義と狭義に切り分けるとその役割の違いが理解しやすい。

広義と狭義の顧客ロイヤルティ実現手段の棲み分け

全体のまとめと明日からできるスモールアクション

脱クッキーデータ、ゼロパーティデータの活用、顧客ロイヤルティ構築手段をここまで解説してきた。3つのテーマを通じて明確になった事実をステップでもう一度整理してみよう。

  • Step 1 - 法規制に則ったデータ取得と活用がこれからのマーケティングの前提となる

  • Step 2 - トランザクションデータにゼロパーティデータを加えると、顧客理解が深まり、パーソナライズが高まる。同時に顧客満足度を同時に向上できる可能性が得られる

  • Step3 - カスタマージャーニー全体で捉えると、顧客ロイヤルティ向上という点ではどのブランドもいずれかのステージで施策を打っている。ジャーニー全体に効く広義と、ジャーニーの後半に貢献する狭義のロイヤルティ構築の棲み分けを理解することで、今活用すべきマーケティング手段やツールも明確になり、最適な顧客体験を提供する近道となる

3つのトレンドを簡単に掴んだ上で、Step1~3までを意識するだけで現代版のツール活用、マーケティング施策の検討、データ活用へのインサイトがより深まるのではないだろうか。

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