「ZOZOCOSME」は、なぜ成功したのか? 好調な理由を聞いた
ファッションEC「ZOZOTOWN」上のコスメ専門モールとして誕生した「ZOZOCOSME(ゾゾコスメ)」が、ローンチから1年で商品取扱高を57億円にまで拡大させている。2023年には、さらに100億円にまで拡大する計画だという。
コスメECとしては後進ながらも、成果をあげているのはどうしてなのか。その要因を、ZOZOのコスメ事業のEC推進を取り仕切る豊田慶氏に尋ねてみた。
ローンチから1年経った「ZOZOCOSME」の現状は?
――はじめに、豊田さんの現在担当されている業務の内容を教えてください。
豊田: いまZOZOTOWN内は、「すべて」「シューズ」「コスメ」の3つのモールに分かれていて、その中で私は、「コスメ」モール内の企画や販促を担当しています。コスメ事業を盛り上げるための役割を担い、最近では2022年4月にサービスを開始した「ARメイク」の進行役も務めています。
――2021年3月18日に、「ZOZOCOSME」がローンチしてから1年が経過しました。当初の想定と比べて現在の状況をどのように捉えていますか。
豊田: コスメカテゴリの新設計画自体は以前からあったものの、ローンチのタイミングでコロナ禍に入ってしまったため、ユーザーのニーズがどう変化するのか予想するのが難しかったです。ただ、リアル店舗で気軽にコスメを試せない状況において、スマホで簡単に肌の色を計測できるフェイスカラー計測ツール「ZOZOGLASS(ゾゾグラス)」をローンチするなど、テクノロジーを用いてECでコスメを購入しやすい環境を整えてきました。ローンチ当初より国内外500以上という豊富なブランドラインナップを揃えていたことと、 またZOZOTOWNの会員基盤が整っていたことから、結果はついてくると想定していました。この1年で、参加いただいているブランド数は600以上にまで増え、それと比例するように「ZOZOCOSME」の利用者も伸びているような状況です。
ZOZOならではの強みが成功につながった
――ずばり、現状の「ZOZOCOSME」の成功要因はどの点にあるとお考えでしょうか。
豊田: 私が分析するに、要因は大きく2つあると考えています。1つ目は、ZOZOTOWNユーザーに、コスメとアパレルのクロスセルが上手く機能している点です。これは、あわせ買いをしやすいような導線設計がポイントとなっています。たとえば、ZOZOTOWNのホーム画面でそのとき旬のコスメ特集を行ったり、最近は『コスメ検索がより便利になりました』というバナーを設置してコスメ専用の検索ページを設けたりと、よりコスメを検索しやすい仕様に変えています。
豊田: また、「コスメ×アパレル」を押し出したイベントも実施し、そこでは時期ごとのトレンドコーディネートと、そのコーディネートに合わせたメイクをコスメと共に提案するような施策を定期的に行っています。以前、ブランドの最新トレンドコスメを動画で紹介するイベントを行った際には、その掲載商品の売上金額が前週比140%超えしたこともありました。
2つ目は、やはりテクノロジーでコスメの購入をスムーズにするアシストができている点です。これまで「ZOZOGLASS」と「ARメイク」をローンチしていますが、その開発の裏には前述のようにECでコスメを買いやすくする狙いはもちろんのこと、コスメ事業の新参者として、コスメを購入する人を増やす貢献ができればという想いもありました。
「ARメイク」でECならではの体験を提供、購入の後押しに
――4月よりサービス開始された「ARメイク」は、豊田さんが進行を務められたとのことですが、導入の背景にはどういった狙いがあったのでしょうか。
豊田: ECでコスメを購入するときの大きなハードルとして、“色選び”の問題があります。その問題の解消と、ZOZOCOSMEでのコスメ購入体験をより楽しんで欲しいという想いから「ARメイク」を導入しました。加えて、通常は店頭でタッチアップしてもらったり、テスターを試したりして自分に似合う色を選ぶことが多いと思いますが、コロナによってそれらが制限されるようになったため、その代替としてもニーズの高い「ARメイク」の活用を検討しました。
これはZOZOTOWNアプリ内から、商品詳細ページの「ARメイク」をタップするとカメラが起動する仕組みで、自分の顔にバーチャルメイクを施すことができます。メイクの濃淡調整やメイクのON/OFF切り替え機能もあり、実際にコスメを使用した際の色感やテクスチャーをイメージしやすくなっています。
――サービス開始後の反響はいかがでしょうか。
豊田: ローンチ時には、SNSで多くの反響をいただきました。ユーザーからは、「今まで挑戦したことがない色も試せて楽しい」「店頭でタッチアップできないから試せていい」といったポジティブな声を多数いただいています。「ARメイク」を試せるのは現在はアイシャドウとリップで、対応しているブランドはまだ一部になりますが、参加していないブランド様からも興味を持ってもらえている状況です。
――実際に、「ARメイク」が購入の後押しになっていることもあるのでしょうか。
豊田: そうだと思います。気になっている商品はあるけど、つけたときの色味がわからなくて二の足を踏んでいるという方に対しては、購入の後押しをするスイッチになっているのではないでしょうか。実際に、「ARメイク」利用者と非利用者を比較したところ、コンバージョンに大きな差が出ている例も報告されています。
――では、最後に今後の展望を教えてください。
豊田: まず今後注力するカテゴリは、「メンズコスメ」と「スキンケア」です。メンズ市場に関しては、ZOZOTOWNの約3割が男性ユーザーになります。その方々に向けてユニセックス商品の特集を組むなど、購入障壁を下げる施策を展開しながら、男性ユーザーもコスメを購入しやすい環境を整えています。
スキンケアについては、徐々に売上構成比を伸ばしていて需要の高まりを感じています。ただ、メイクアップの商品とは選び方がかなり異なるため、よりアイテムが探しやすいよう6月から「スキンケア検索LP」を導入しました。それにより、「お悩み」や「成分」など、スキンケアならではの軸でアイテムが検索できるようになりました。
豊田: そしてZOZOCOSMEローンチから2年目となる今期は、商品取扱高100億への到達を目標にしています。アパレルとコスメを一緒に探せるという「ZOZOCOSME」の強みをより生かすためにも、商品のラインナップを増やし、あわせ買いをしやすいよう導線の強化もさらに行っていく予定です。何より、コスメを楽しむ環境づくりに取り組んでいければと思います。
試しに「ARメイク」を使ってみたが操作が簡単で、さまざまなアイテムを試せて楽しかった。まさに“コスメを楽しむ”を実感。ECサイトの成功にも、テクノロジーの発展や、UI/UXの向上が必須のようだ。
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