百戦錬磨のSNSマネージャーが手ほどき! 企業SNS活用の悩みに答えます

SNS採用のコツ! 新卒・中途採用に適するSNSとは? 活用事例も紹介

近年、SNSを採用活動に使う企業が増えています(ソーシャルリクルーティング)。そこで調査ニュースや成功事例を交えて、SNS活用のメリット・デメリットを解説します。Twitterに適しているのは新卒採用? それとも中途? Facebookに適しているのは? また戦略のポイントは、求人票などでは伝わらないリアルさ? 人材募集の方法で悩みを抱えている担当者さん、必見です!

オーガニック運用・広告配信・危機管理など、企業のSNS活用のポイント、最新情報を、SNSマネージャー養成講座の講師陣「チーフSNSマネージャー」のメンバーが、それぞれの得意分野を中心に解説します。

今回は、臨床検査技師・ウェブ解析士・SNSマネージャーと多彩な顔を持つ稲葉修久氏(RIコンサルティング代表取締役)が回答します。

質問

最近企業の採用活動でSNSが積極的に使われていると聞きました、自社でも使っていきたいと考えていますが、本当に採用活動にSNSって有効ですか? 使ううえで注意する点を教えて下さい。

稲葉

企業の取り組み方によっては有効です。ただし、企業の特徴や自社がターゲットとする求職者像をイメージし、SNSの特徴も交えて適切な手段で利用しないと、逆効果になることも……。

SNSを採用に活用するうえで、それぞれのSNSの特徴やどのような点に注意しながら進めるべきかをお話しします。

新型コロナウイルスの影響で、2020年以降はさまざまな生活様式が変化しました。採用活動においてもオフラインのイベントや面接がオンラインにシフトしており、企業と求職者が接触するポイントが例年よりも少なくなっています。

そんななか、新卒・若手中途採用の目的で、SNSを積極的に利用する企業が増えています。トレンドや求職者の動向を見ていきながら、どのようにSNSを採用活動で利用すべきかを考えていきます。

SNS採用のトレンドを、求職者視点・企業視点から考える

SNSを利用した採用活動は、新卒採用・若手中途採用を中心に積極的に行われています。特に、新卒採用のターゲットとなるZ世代(1990年後半から2012年頃に生まれた世代)は、デジタルネイティブ・SNSネイティブ・スマホネイティブでもあるといった特徴を持っており、あらゆる情報をスマートフォンなどで収集します。

そしてZ世代は、SNSを情報収集のツールとして積極的に活用しており、就職活動においても同じと言えます。

2022年3月卒大学生のSNS利用状況(調査時期:2020年10月)
出典:ディスコ(キャリタスリサーチ)「キャリタス就活 2022 学生モニター調査結果」
https://www.disc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2020/10/202010_gakuseichosa_k.pdf

一方、企業側も、SNSの活用を前向きな意識で捉えています。コロナ禍により、オフラインでの採用活動を積極的に行えない環境で、中途採用において、オンライン面接・オンライン説明会・SNSを活用した募集を、新たな取り組みとして積極的に進めています。

人事担当者1000人に聞いた今年の中途採用計画と人材確保のための施策
出典:小学館(ダイム公式サイト「@DIMEアットダイム」)
https://dime.jp/genre/1156689/

各SNSの特徴と採用活動との相性は?

現在の日本ではさまざまなSNSが活用されています、代表的なものとしてはTwitter、Facebook、Instagram、YouTube、TikTok、LinkedInがあげられます。各SNSは、短文あるいは長文テキストに適したもの、画像や動画も利用できるもの、さらには画像や動画を主軸としているものなど、それぞれの特徴があります。

⾃社の採⽤活動にすべてのSNSが適している、というわけではありませんので、⾃社の特徴や採⽤ターゲットに合わせて、最適なSNSを選定する必要があります。

主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率
出典:総務省「令和元年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000708015.pdf

たとえばTwitterは、若年層の利用率が高いので、新卒採用などに適していると言えます、実際に大学生・大学院生は、就職活動において、志望する企業やその社長・社員に関するTwitterを複数回チェックしているようです。SNSコーチの調査によると、44.8%の学生が志望企業関連のTwitterをチェックしていました。

一方、Twitterは匿名が原則のSNSなので、企業側としては求職者の情報が見えにくく、炎上に注意する必要もあります。

就職活動時のTwitterの活用状況に関する実態調査
出典:SNSコーチ「就職活動時のTwitterの活用状況に関する実態調査」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000074113.html

一方Facebookは、実名登録が原則のSNSですが、TwitterやInstagramと比較すると若年層の利用率が高いとは言えません。中途採用(特に30歳~)が主な採用ターゲットであれば、適したSNSでしょう。

採用視点でのSNSの使い方は“リアル”志向で

採用を目的とした場合、企業はSNSをどの様に活用すべきでしょうか? 「Z世代はSNSを情報収集ツールとして活用している」という話をしましたが、こうした世代に対し企業は「自社を知ってもらうための情報」を積極的にSNSで発信する必要があると思われます。

しかし、その情報はコーポレートサイトや求人媒体に掲載されているものと同じではいけません。求職者はこれらでは知り得ないような“リアルさ”を求めているのです。

では、リアルな情報とは具体的にどういった情報でしょうか? 企業が運営するSNSから得たい情報として新卒者は「社員の雰囲気」「仕事内容」「給与や雇用制度などの詳細」を知りたいと回答しています。

企業が運営するSNSから得たい情報は何ですか?
出典:DYM「就職活動に関するアンケート調査の集計結果」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000198.000027235.html

たとえば、社員同士の日常的な風景や仕事を実際にしている時の動画などをSNSで投稿すると、求人票などでは伝わらない“リアルさ”が求職者に伝わるかもしれません。

タクシー会社の三和交通の事例では、「高齢化が進むタクシー業界で少しでも若者に訴求したい」という思いから、取締役部長兼人事担当者の男性がダンスをする動画がTikTokに投稿され、注目が集まりました。

「“この会社は何となく面白そう”と思ってもらえればいいな」という想いで始められたそうですが、2021年度入社の新卒採用が通常年の2倍になるなど、採用が拡大したようです。ダンスと採用が直接繋がったかは不明ですが、「楽しそうな会社だから、きっと雰囲気が良いに違いない!」という印象を、リアルに与えたかもしれません。

三和交通のTikTokアカウントの動画例
出典:三和交通@TAXI会社
https://www.tiktok.com/@sanwakotsu

こうした事例を踏まえると「SNSは一方的に情報を伝えるツールではなくコミュニケーションツールである」ということが重要に思われます。コミュニケーションを取りながら自社の特徴を知ってもらい、まだ応募意欲が低い状態の求職者ともやり取りを重ね関係を深めることが、SNSでは可能なのです。

SNS採用活動のメリット・デメリット

採用活動にSNSが積極的に活用されていますが、やはりメリット・デメリットもあります。SNSによっては拡散力があり、さまざまな求職者にアプローチが可能ですし、限られた枠の中で掲載する有料の求人サイトと比較すると、SNSの枠内で自由に何度でも投稿できます。またSNS自体は基本無料なので、採用コストの削減にも繋がります。

メリット
  • 拡散力がある。
  • 自由度が高い。
  • 採用コストを削減できる。

しかし運用には手間暇がかかります。利用するSNS自体の操作や特徴に慣れる必要もありますし、始めればすぐに成果が出るわけではなく中長期的な施策になります。投稿内容も工夫する必要があり、求職者の視点に立った魅力的なコンテンツを作るために求職者が求める情報を常日頃からキャッチアップしてそれをSNSに適した形で変換しなければいけません(そして、それを継続する必要があります)。

デメリット
  • 運用に手間がかかる。
  • 即効性はない。
  • 魅力的なコンテンツを作る必要がある。

通常のマーケティング同様、メリット・デメリットを事前に理解したうえで、戦略的に進めていくことが大切です。

まとめ

SNSの採用活動は、企業規模に関わらず始めることができますが、自社の特徴や求人ターゲットにあったSNSを選定して、計画的に中長期で運用する必要があります。

SNSだけで求職者の認知から採用までを行うのではなく、コーポレートサイト、採用サイト、有料求人サイトなどとも組み合わせながらSNSを利用し相互効果を高めること、全体で俯瞰してSNSの役割を明確にしながら日々のSNSを運用することが重要です。なにより、楽しみながらやってみることがポイントですね。

稲葉でした。

2020年より私たちは、「SNSマネージャー養成講座」という資格試験をスタートしました。SNSマネージャーの上位資格である上級講座では、実際に運用しているアカウントをサンプルにして、徹底的に運用目的とKPIなどの必要項目を掘り下げて企画書を作成するワークを実施しています。

この記事を読んで「理屈はわかったけど、実際自社のアカウントに当てはめるとピンと来ない。さてどうしたものか……」とお悩みのあなた。ぜひチャレンジを。

【SNSマネージャー養成講座 | 企業がSNSを効果的に運用して事業を進化させる講座】

タイトルデザイン、タイトルイラスト:995(Twitterアカウント
三度の飯より猫が好きなイラストレーター。ゆるくてかわいいイラストが得意です。

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