インタビュー

アプリDL不要、ブラウザだけでAR体験! ドミノ・ピザが仕掛けたWebARを使ったCX戦略とは?

アプリのダウンロードが不要で、ブラウザだけでAR体験ができる「WebAR」。ドミノ・ピザが実施したWebAR活用の舞台裏を聞いた。
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アプリのダウンロードが不要で、ブラウザだけでAR体験が簡単にできる「WebAR」。拡張現実とも呼ばれるARは、企業がプロモーションの一環としてWebARを活用したり、eコマースの購買促進に活用されたりとWeb界隈では新たな技術として注目を集めている。今回は、2020年8月にドミノ・ピザが実施したWebAR活用の舞台裏を同社の小山氏と開発支援をしたOnePlanetの村上氏に詳しく聞いた。

ピザに使われた10種類のチーズを楽しく知ってもらうためにWebARを開発

――今回、WebARを使ったプロモーションを実施されたんですよね。プロモーションの目的と狙いを教えてください。

小山魁理氏(以下、小山): 世界中から厳選した10種のプレミアムチーズが1枚のピザで楽しめる「ワールド10チーズ・クワトロ」販売に際し、そのプロモーションの一環として、新商品「ワールド10チーズ・クワトロ」に使用している10種のプレミアムチーズを詳しく知っていただける体験型コンテンツとして「ドミノ“世界のチーズをめぐる旅”AR」をご用意しました(現在AR体験は終了している)。

カスタマーエクスペリエンス(CX)向上を目的にARを開発しましたが、その他プロモーションとして、TVCMや折り込みチラシ、ウェブマーケティングなどさまざまな施策を行っています。

――WebARを活用したプロモーションを実施するきっかけや課題感は?

小山: WebARをプロモーションとして活用した目的は、お客様の満足度の向上です。楽しみながら、新商品「ワールド10チーズ・クワトロ」で使用しているチーズを知ってもらったり、お酒とのペアリングを学んでもらったり、そういった体験をしてもらいたいと思い、開発に着手しました。

WebARとは何? アプリのARと何が違うの?

――WebARとはどんなものですか? どのように使うのですか?

村上智彦氏(以下、村上): AR(Augmented Reality:エーアール)は、実際の風景にバーチャルの映像を重ねて表示できるもので、「現実を仮想的に拡張できるもの」=「拡張現実」とも呼ばれています。ARを体験するプラットフォームは複数ありますが、アプリのダウンロードを必要としないWebブラウザをベースにしたARのことを「WebAR」と呼んでいます。LPやWebサイト内、印刷物などにARが起動するカメラを仕込むことで簡単にAR体験ができます。

ドミノ・ピザのWebARもユーザーがQRコードを読むことで、体験ができる仕組み(現在、AR体験は終了)

――どのように活用されているのですか?

村上: マーケティングのプロモーション活動に使われる他に、オンラインでのeコマースの購買促進や展示物の理解促進に使われることがあります。たとえば、家具など実際のサイズや色感などがわかりづらい場合にWebARを通じて、スマホ画面上で家具が配置された映像を見られることで、購入の後押しをするといったことが可能です。

――アプリのARとWebARはどう違うのですか?

村上: 1番の違いはアプリのダウンロードが不必要という点です。アプリの方が大きなデータ容量に耐えられるといったメリットもありますが、一方でアプリはユーザーにダウンロードをしてもらうまでに大きなハードルがあります。

マーケティングに活用するARであれば、WebブラウザベースのARでも十分に耐えうるので、より多くの人にリーチしたい場面においては大きなメリットがあります。最近はInstagram内のARも事例が増えていますが、多くの人がすでにダウンロードをしているInstagramのようなアプリの中のAR機能とWeb ARの2つがマーケティング文脈ではより事例が増えてくるでしょう。

ピザと一緒に「楽しい!」という体験を提供

――開発期間はどのくらい? 開発時に苦労した点、工夫した点も教えてください。

小山: 開発期間は約3か月間です。ユーザーがより良い体験ができるように、無駄を省き、シンプルな動線で情報までたどり着けるように工夫しました。また、今回のWebARはピザを購入していない方でも体験できるコンテンツであったため、WebARをきっかけに購入してもらえるように、注文ページへのリンクも用意しました。

WebARを起動した後は、10種のチーズがふわふわ浮いた地球儀が表示され、気になるチーズ(ここではカマンベールチーズ)をタップすると、熟成期間や硬さが表示され、購入もスムーズにできる

――UGCが多く発生した、ということですが、具体的にどんなものか教えてください。

小山: WebARを使ったプロモーションは、2020年8月11日~9月13日でしたが、8月12日~8月30日までTwitter上で「#ドミノワールド10AR」というハッシュタグ付きで、且つARを体験し画像や動画を投稿してくれたユーザーの中から抽選で10名にピザ無料券1枚をプレゼントする企画を行いました。

――みなさんご自宅の思い思いの所で写真を撮ってますね。寝ている子供の手に載せている画像は可愛らしいですね。UGCの発生は、小山さん的に狙い通りでしたか?

小山: WebARをプロモーション施策として行った目的は「お客様に楽しんでもらうこと」でしたので、その様子がTwitter上で見られたのはすごく良かったですね。ピザを食べながら楽しんでいただいた方もいらっしゃいましたし、まだ「ワールド10チーズ・クワトロ」を食べたことのない方にも、本商品を知っていただくきっかけになったことは、期待通りでした。

また、ユーザー同士で「これなに? すごいね!」などとコミュニケーションが生まれ、それがきっかけで商品もWebARも知って頂けていたようで、その点については期待以上の成果だったと思っています。

株式会社ドミノ・ピザ ジャパン デジタルマーケティング部 ソーシャルメディアマネージャー 小山 魁理(こやま・かいり)さん。
ドミノ・ピザは1985年に創業し、日本発の宅配ピザというライフスタイルを作り、全国で700店舗(2020年9月時点)を展開している。

――村上さんに伺いますが、一般的にWebARを使った施策を実施してみたい、という場合の予算感など教えてもらえますか?

村上: 費用は3Dの使い方やプログラムの複雑性によって非常に大きく変動します。一般的には、InstagramのARが最も低コストで導入可能で、30万円以下で制作するARも出てきました。しかし、お客様に「わ、驚いた!」といった体験を提供したり、競合と差別化をしたりするのであれば、InstagramでもWeb ARでも3Dモデル制作やアニメーション、インタラクション性のある高度なプログラムなどに一定の予算をかける必要があるでしょう。

スタバに見る、桜ARの秀逸さ

――社内外での反響やプロモーション担当者の方の学びなどあればぜひ。

小山: 社外のみならず、社内でも体験して楽しんでくれた方も多かったです。AR体験という、ドミノ・ピザ ジャパンとしては新しい施策でしたが、弊社の新商品情報を楽しみながら知っていただくためのツールとしては相応しかったと感じています。

――他企業では、どんな使われ方をしているのか事例を教えてください。

村上: 弊社が手掛けた案件ではございませんが、国内のWeb ARの事例ではスターバックスさんの事例が秀逸です。2020年2月頃、お花見シーズンより一足早くストア内で桜が咲くというARを実施されていました。

専用アプリを必要とせずにお客様にQRコードを認証してもらうだけで、3Dの桜が店内で楽しめるという店舗限定のWeb AR体験を全国の店舗で一斉導入されていました。店内の内装を変更するコストやストアのスタッフのオペレーションコストがかかっておらず、QRコードが印刷されたPOPだけで来訪者の体験を一変できるWeb ARの使い方は、非常にイノベーティブだと感じました。

株式会社OnePlanet 代表 村上智彦氏
同社は2018年に創業し、WebARを活用したサービスを展開。ドミノ・ピザの他にもTBS系「逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!」の Instgram向け ARコンテンツ「#AR恋ダンス」の制作を手掛ける。

最後に

――これからの展望や読者へのメッセージを教えてください。

小山: ドミノ・ピザは、今後もピザを通じて、お客様に新しい体験や機会を創出するよう邁進いたします。その中で、よりお客様に楽しんでいただけるコンテンツをご用意していく予定ですので、楽しみにしていただければと思います。

村上: ブランドや企業が空間にバーチャルな情報を表示させ、それらと消費者がインタラクティブにコミュニケーションすることが当たり前になる時代がまもなくやって来るでしょう。

スマホのスクリーンを対象にしたデジタルマーケティングが、まもなく「空間すべて」をスクリーンとした新しいフォーマットへと移ろう、まさに移行のタイミングにあると感じています。

ARは上手に投資しなければなかなかリターンを生み出せませんが、一方でうまく活用できれば大きなブランド資産を構築できます。まだ多くの企業が取り組み始める前のタイミングゆえの先行者利益を大きく受け取れるので、ぜひ多くの企業がARマーケティングにチャレンジしていただけたら本望です。

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