F2転換率を1.7倍に改善! ECアパレル企業が実施した本当は教えたくないデータ分析と施策とは?
F2転換率いわゆる、リピート率はEC業界のみならず、企業のマーケティング活動における大切な指標の一つである。そのF2転換率を1.7倍、CVRを2.9倍、LTV1.2倍にしたというアパレル企業は、どんなデータ分析と施策を行ったのか。
「Web担当者Forum ミーティング 2020 秋」に登壇した株式会社フロムスクラッチ Sales&Marketing Div.の河村駿介氏が、SQLコードを書かずにデータの取り込みから活用までワンプラットフォームで実現するクラウドシステム「b→dash」を活用した事例を紹介した。
ノーコードによる分析レポート作成で
KPIの確認頻度を上げ、F2転換率を改善
b→dash導入前のF2転換率は平均34%を下回る27%。その要因を探る
フロムスクラッチの調査によると、アパレル業界において「初回購入をした」層が6か月以内に「2回目の購入をした」層に変化した割合、いわゆる「F2転換率」は平均34%だという。
この「F2転換率」を改善することを目的とし、まずは20代~40代の男女向けに幅広いセレクト商品を提供するアパレル専門運営会社A社の事例が紹介された。
総会員数50万人、平均購入単価7,000円、CRM部署4人という状況下で、マーケティング戦略としてLTV(LifeTimeValue:顧客生涯価値)の改善を重要テーマとしていたが、「F2転換率」は前述の業界平均34%を下回る27%前後だった。その原因を河村氏は以下のように分析した。
改善に向けた分析と施策を実施する上で、分析レポートの作成が必要だ。しかしその分析レポートの準備に膨大な時間を要しており、四半期に1度しかデータを閲覧できていなかった。そのため、PDCAを素早く回し、改善することができていなかった(河村氏)
円滑なPDCAを阻んでいた150万円のレポート作成コスト
A社の場合、分析レポートを作成するためには「初回購入年」「初回購入月」「商品カテゴリ」「初回購入人数」「2回目購入人数」「F2転換率」の6つのデータ(カラム)を準備する必要があったが、社内システム内にはそのまま引っ張ってこられるデータ(カラム)がなかった。
そのため、A社では存在していた受注/受注明細/商品のそれぞれのデータから、その都度必要な数値を変換・集計して作成していた。
具体的には、受注データと受注明細データを、受注IDを手がかりに統合し、さらに顧客ID別に初回購入時の記録を特定してフィルタリングをかけ、初回購入時のみのデータし、さらに初回購入の年・月・日で分割し……というように、分析レポートを作成するだけで10ものタスクが必要だった。そして、これを自動化するには、加工用および統合用のSQLを書く必要があった。
A社がレポートを作成するには、SQLを書けるエンジニアの稼働が必要だったが、社内でエンジニアの工数をねん出できなかったため、SIerへレポート作成を依頼していた。
結果として1レポート作成にあたり150万円もの費用がかかっていたという。そのため四半期に1度しかレポートが出せず、KPIを確認する頻度も少なかった。PDCAを潤滑に回せない状態だった。
河村氏は「A社の事例に限らず、『分析頻度の多さ』と『KPI改善率』は相関することが、フロムスクラッチの調査で明らかになっている」と説明し、縦軸をF2転換率、横軸をKPI確認頻度としたグラフを掲示した。
それによると、アパレル業界の平均F2転換率34%をクリアするには平均して2週間に1度のKPI確認が必要だという。当然のことながら、KPIの確認頻度はすなわちPDCAのスピードであり、施策と分析の改善回数が上がれば必然的にKPIの改善につながるというわけだ。
これを改善するべくA社では「b→dash」を導入。SQLコードを書く必要なく“ノーコード”かつGUIでレポートが作成できるようになったため、マーケターが好きなタイミングでKPIを確認できるようになった。
150万円の発注費用は不要となり、KPI確認頻度も格段に向上し、結果としてF2転換率を大幅にアップすることができたのだ。
500種類以上のテンプレート活用で、直感的にデータを統合し
分析結果から施策設計までトータルに伴走
それでは「b→dash」はどのようにして、SQLを書かずにデータを統合・分析ができるのか。河村氏は「データの加工/統合のテンプレートを約500種類用意している」と説明する。そのため、SQLを書くこともなく、SIerに依頼することもなく、自動的に分析用データの抽出・加工・統合が可能になるというわけだ。
たとえばA社の場合は、「商品カテゴリ別F2転換率分析用」というテンプレートを活用している。
テンプレートは約500種類用意されていて、その中から見たいレポートを選択すると、ナビゲーターが統合に必要な手順を細かくガイドしてくれるという仕組みだ。直感的に操作できるUI(ユーザーインターフェース)で、レポート作成が誰でも簡単にできる。
A社の場合、統合したい3つのデータ(受注/受注明細/商品)を選択する。そうするとデータ統合に必要なカラム、つまり「紐づけするデータ部分」が表示される。
その中から、たとえば「商品カテゴリ」を選択して「適用」をクリックすると、「商品カテゴリ別F2転換率分析用」のデータ作成が完了するというわけだ。
河村氏は「A社では、前述したようなデータの加工/統合の10タスクがSQLを書かずに、わずか9クリックで完了できた」と語り、「b→dash」による「商品カテゴリ別F2転換率分析データ」の表を提示しながら「レポート作成をマーケターのみで完結できるようになり、分析頻度を劇的に高め、毎日のようにKPIを確認できるようになった」と強調した。
F2転換率向上のための3つのステップ
ステップ①改善箇所を把握
さらにA社では、F2転換率向上のため、ステップ①として改善箇所を把握するため、3つの分析を行なった。
- 商品カテゴリ別F2転換率分析
「スカートを購入した人」はF2転換率が高いことを把握 - 商品カテゴリ別F2転換タイミング分析
スカートを購入した人は「21日を超えるとF2転換率が激減する」ことが判明 - 商品カテゴリ別買い回り分析の実施
スカートを購入した人が「2回目に購入したものはトップスが多い」ことが判明
ステップ② 仮説とターゲットを設定
これらの結果から、ステップ②として施策を実行するべく、仮説を設定しターゲットを定めた。
- 仮説を設定
21日以内に2回目購入を促すシナリオを実施すればF2転換率が向上する - ターゲット
F2転換率が最も高い「スカートの購入者」
ステップ③ 施策の策定
最終ステップとして次のような施策に落とし込み、実行した。
- 初回購入から10日後に10日間限定のクーポンを訴求期限切れ直前でリマインド
- さらに、スカート購入者に対して、直近1週間でよく売れているトップスをレコメンド
100種類ものテンプレートで手軽にシナリオ作成
多彩なKPI分析によって効果的な施策設計を実現
なお、シナリオ設計については、A社を含め、多くの企業より「シナリオ作成の仕方がわからない」という声が多く寄せられるという。
そこで「b→dash」では、その声に応えてシナリオのテンプレートも約100種類用意しており、シンプルな画面の中で直感的に作業ができるようになっている。
たとえば「トリガー」として初回購入から7日後に「スカートを購入したユーザー」に購入関連商品であるトップスをレコメンドすると設定し、3日後には開封・未開封を確認する。
次に「開封したけれど未購入」という人にはクーポンメールを送付し、再び開封・未開封を確認し、さらに「開封したけれど未購入」という人に対してクーポンのリマインドを送るという流れだ。
加えて「レコメンドメール」を開かなかった人や、期間限定クーポンのメールを開かなかった人にも、再度クーポンを送付したり、LINEでアプローチしたりといったアクションをシナリオに加えて調整することも可能となっている。
レコメンドメールやクーポンメールなどの開封/未開封、商品の購入/未購入といったお客様の行動に応じて、適切なアプローチを実施できる。それも分析結果をもとにテンプレートを活用して工数をかけずにシンプルにPDCAサイクルを回せる(河村氏)
導入1年でF2転換率は1.7倍に向上
A社はこうした取り組みの結果、1年で目覚しい成果を上げることに成功した。
メール開封率
導入前:12.1%
導入後:29.1%(2.4倍)
クリック率
導入前:9.3%
導入後:24.1%(2.6倍)
CVR(コンバージョン率)
導入前:2.3%
導入後:6.8%(2.9倍)
F2転換率
導入前:27%
導入後:45%(1.7倍)
ひとりあたりLTV
導入前:12,600円
導入後:15,100円(1.2倍)
F2転換率は、最終的な目標値の1つである1人あたりLTVの向上にも直結しており、導入前は12,600円だったが、15,100円(1.2倍)と大幅に改善することができた(河村氏)
そして都度SIerへの依頼が不要となり、その分の費用節約ができたことに加え、いつでもレポートを確認できる状態となったこと、そしてF2転換率が向上し、1人あたりのLTVも向上したことなどを強調した。
さらにアパレルEC企業には、「F2転換率以外にもおさえるべきKPIが多く、『b→dash』が活躍する余地がまだまだ残されている」と語り、「他にも改善事例を弊社サイトで多数紹介しているので、参考にして欲しい」と訴え、セッションを終えた。
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