CVRの向上やサポートコスト削減が可能 顧客が求める答えを届けるサイト内検索とは?
企業サイトにサイト内検索の検索窓が設置されているのに、求めている答えが見つからず検索サイトやSNSに戻って再検索……という経験をしたことはないだろうか。株式会社Yextの廣川侑氏は、検索ツールを導入しているにもかかわらず、あまり有効に機能していないサイトがかなり多いと言う。
「Web担当者Forum ミーティング2020 秋」のセッションでは、サイト内検索の体験をよくすることがどのような効果をもたらすかを解説。ユーザーが満足する検索の仕組みと、それを実現するYext Answers(イエクスト アンサーズ)の価値について紹介した。
欲しい結果が得られない「サイト内検索」が生む損失
廣川氏によれば、一般的に「3回に1回はサイト内検索で欲しい結果が得られない」という。実際、サイト内検索をした結果、以下のような経験をしたことがある方は多いのではないだろうか。
- 欲しい情報とは関係ないページのリンクが出た
- リンクが出るだけなので、知りたいことが載っているページかどうか、リンクをたどって探さなければならない
- 検索キーワードを増やしたら検索結果がゼロ件になった
セッションの冒頭、Zoomのアンケート機能を使って参加者の経験を尋ねたところ、「消費者として、サイト内検索を利用した際に常に満足な検索結果を得られていますか?」という質問に86%の人が「いいえ」と答えた。
例えば以下の図は、「求人情報 営業 東京」というワードで検索した結果の例だ。このユーザーは、東京で営業職の求人を探しているということだが、結果として表示されているのは個々のワードが含まれているページのリストでしかない。
営業や東京というワードは含まれているものの求人には関係なかったり、東京で探しているのに大阪の情報が出ていたりする。単純に、そのワードが含まれているページを表示しているためだ。
実は、一昔前までは、検索機能といえばこのようなものだった。しかし、現在は多くの人がこのような結果には不満を感じる。理由は、Google検索に慣れてしまっているからだろう。
例えばGoogle検索で「ビッグマックのカロリーは?」と入力すれば、カロリーの数値という直接回答から、よくある質問、原料、近くの店舗の地図まで、さまざまな情報が出てくる。
このような回答に慣れた人にとっては、キーワードマッチングで抽出されたページのリンクが羅列されている回答に満足できないのも当然だ。
満足のいく結果が得られなければ、消費者はサイト内検索に対する期待値が下がる。その結果サイト内検索ツールが使われなくなり、企業にとっては設置している効果が実感できなくなってしまう。
必然的にサイト内検索の対応優先度は下がる。サイトによっては、サイト内検索のツールを目立たない場所に配置している場合もある。
Webマーケティングの担当者に優先事項は何かと問えば、よく挙がるのは「サイト流入数を増やす」「CV数/CVRを上げる」「コンテンツを拡充する」などだ。「サイト内の検索体験向上」と答える人は少ない。
しかし、実はサイト内検索体験を後回しにすると、損失が生じる(廣川氏)
サイト内検索するユーザーは優良顧客の可能性が高い
廣川氏は、以下の2つの数字を紹介した。
サポートの電話は繋がりにくいと相場が決まっているし、問い合わせのメールにすぐ返事が返ってくるとも限らない。このため、企業に電話やメールで問い合わせることなく、検索など自力で問題解決したいと思っている人は多い。
しかし、サイト内検索が必要としている回答を返してくれなければ、結局サポートに電話をするしかない。これによって、企業にとってはサポートコストが増大してしまう。
また、サイト内検索で望む情報が得られなかった時、ユーザーはGoogleに戻って必要な情報を探すことがよくある。その結果、他のサイトにユーザーが流出してしまうかもしれない。つまり、検索体験を後回しにすることで、機会損失が発生している可能性すらあるのだ。
「サイト内で検索するという行動をしているユーザーは、実はホットな顧客である可能性が高い」と廣川氏は言う。その例として、以下のような数字を挙げている。
- 検索機能を使用する訪問者のコンバージョン率は、閲覧のみのユーザーに比べて1.8倍も高い傾向
- 検索を行わないユーザーに比べて、検索を行うユーザーの支出金額は2.6倍
- 訪問者のうち、サイト内検索を使用する15%のユーザーが、Eコマース収益の45%に相当する
つまり、せっかく検索という労力を使って明確な意図を持って実行してくれているユーザーに、正しい情報を出せないのは非常にもったいないということ(廣川氏)
Googleのような検索体験を提供するYext Answers
サイト内検索の検索結果で、キーワードマッチングによるページリンクの羅列ではなく、Googleのようなリッチな検索体験を提供するために必要なテクノロジーは、2つある。
①自然言語処理(NLP)
Googleの検索エンジンでも使われている自然言語処理は、人間の言葉に対して「読む」「翻訳する」「抽出する」「答える」という4つの処理を行う。質問を読んで、理解し、回答すべき内容を選び出して、ユーザーに返すということだ。
翻訳や抽出の部分では、マシンラーニングやディープラーニングといったAIが使われる。また、自然言語処理は検索エンジンだけでなくチャットボットやスマートスピーカーなどでも既に活用されている。
②構造化データベース(ナレッジグラフ)
回答のための情報が格納されたデータベースだが、情報をただ溜めるのではなく、意味づけし、相互関係や属性を整理整頓して保存する。例えば、会社名、住所、電話番号など個々の情報を、単なる文字列としてではなく、それが何の情報かという意味づけをして保存する。
質問を理解するための自然言語処理は、多くの質問と回答の結果を学習することで理解する精度が上がるが、どうしても時間がかかってしまう。そこで学習時間を短縮するために、データベース側を整理してデータを関連づけするこの2つのテクノロジーが必要になるわけだ。
Yextは、「Search Experience Cloud」という検索体験最適化プラットフォームを提供している。製品としては、検索メディアに自社サイトの情報を正しく提供するためのYext PagesやYext Listing、自社サイト内の検索ツールであるYext Answersがあり、それらを支えるのがKnowledge Graph(ナレッジグラフ)だ。これは、社内のさまざまなシステムの情報を一元管理するものとなっている。
コンバージョン促進、サポートコスト削減につながるリッチな検索体験
Yext Answersでは、主に以下の4つの機能を提供する。
①ユニバーサルな検索
サイト内にさまざまなカテゴリのページや情報があるが、すべてを横断的に検索し、質問者が求めているであろう情報を抽出する。
②答えをダイレクトに表示
従来のサイト内検索ツールのようにリンクのリストを表示するのではなく、質問の答えを直接的に表示する。
以下の図は化粧品メーカーのサイトで「コロナ マスクメイク おすすめ」と検索した例だが、検索結果は、商品、FAQ、イベント・キャンペーン、販売している店舗の地図と、それぞれセクションに分けて表示している。
③コンバージョンの促進(CTAの設置)
検索結果には、ECでの購入や来店予約など、CTAを設置することができる。また、「お試しキャンペーン中」や「テスティングを行っている店舗はこちら」など、企業として特に訴求したい施策を上部に表示させることも可能だ。
④顧客インサイトを提供
ユーザーが何を質問したか、検索結果としてどのような情報を表示したか、表示した検索結果をユーザーがクリックしたかといったデータは、Yext Answersの管理画面で確認できる。
何を知りたいのか、何を出しているのか、お客さんが満足したのかを知ることができれば、コンテンツを拡充しようとか、FAQの回答を変えてみようなど、改善のアクションが起こせる。こうやってPDCAを回せる(廣川氏)
また廣川氏は、導入実績や効果として、以下のようなものを挙げた。
- WHOと連携し、COVID-19に関する公式なオンライン情報ハブ(マイクロサイト)を立ち上げ
- 英国大手通信会社では、コンバージョン率が2.2倍
- 米国州政府では、サイト滞在時間が3.7倍、コンテンツ閲覧量は1.6倍(正しいコンテンツを出しているため、無駄な遷移がない)
- 米国の大手スイーツ販売チェーンでは、コールセンターのコール数が45%減少
また、検索バーの設置はJavaScriptを埋め込むだけなので、技術面でのハードルも低い。もし新規にページを作ることが難しい場合は、Yextが提供するページを利用する方法もある。
最後に廣川氏は、Yext Answersの価値を以下3点にまとめ、セッションを終えた。
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