[マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

マーケターとして、どんな「仕事の体内時計」を持っていますか?

マーケターコラム、今回はヤプリの島袋孝一氏。複数の「仕事の体内時計」を持つことが、マーケターにとって大事である理由とは?
株式会社ヤプリ コミュニケーション室 マーケティングスペシャリスト 島袋孝一

この寄稿が掲載されることには、2020年も11/52を終えていることでしょう。

さて。ここでピンときた方とこない方で、「どんな業種で仕事をしてきたか?」のバックグラウンドが、わかったりします。

「52」という数字がすっと入ってきた方は、おそらく私同様、流通小売業経験者の方。1年を52週に分解してマーケティング活動・施策に生かそうとするのは、流通小売業出身の特徴かと思います。

しかし、情報の鮮度や施策のタイミングが、昨今のマーケティング業界に与える影響が大きくなっています。いかに適切なタイミングで顧客のインサイトを捉えるかが勝負です。

当然、商業施設運営、飲料メーカーと渡り歩いてきた私にとっては、この施策実行の時間軸の違いは大きく、このスピード感を掴むのに、転職当初は苦労させられたものです。

そこで今回は、マーケターと時間軸について、いろいろ考えてみました。

社会人の体内時計

過去の寄稿のとおり、私のファーストキャリアは商業施設運営でしたので、週次・月次を起点としたライフサイクルが身についていました(月曜の朝に、前週の月~日曜までの概況と数値を本部に報告する段取りが、年々うまくなるスキルが身につきました)。

ところが、メーカーやB2Bマーケティングに転身すると、それまでに身につけた時間軸とはまったく異なる時間軸で仕事をすることになります。

業種が異なれば仕事を回すサイクルが異なるのは当然のことですし、頭では違うことをわかった気でいるものですが、その大きな違いは実際に、その仕事に従事してみないとわからないものです。私も、転職して初めて、「仕込み」から「施策(アウトプット)」までの「サイクルの数」や「回転ギア値」が大きく違うことを実感しました。

たとえば、パルコのような商業施設では、1年間を週で割った52回ごとのプランニングと、それに加えて歳時記に合わせた季節型プロモーションを日々こなしていかなければなりません。PDCAというより、日々、DDDDな日々でした。

たとえば、年末年始の大型セールを現場で対応している時期には、同時にデスクワークで春頃の新生活キャンペーンの仕込みをしている、という感じです。常に走り続けながら、次の山場に向けて企画を仕込んでいるイメージです。

PDCAという言葉どおり、当然、施策ごとの振り返りも行いますが、流通小売業は「前年比」での数値指標で管理されることが多く、振り返った施策への学びは、翌年に活かすためのものもありますので、PDCAサイクルが1年単位だったりもします。当然、週次や月次単位の改善も行いますので、大小さまざまなサイクルが多層になって仕事をしている感覚です。

多忙な時期になると、DDDDになってしまうことも多かったことも実際ありましたが、ドキュメントに書き起こさなくても、その裏には、小さなPDCAが自然と起こる強いチームでした。

「どれだけ先の未来を見て仕事をするか?」

若手マーケターならば、明日とか、数時間後といった、短期的な時間の先に予期される仕事のや、その準備に追われることが多いかと思います。ただ、その予測距離はキャリアを重ねるごとに、長くなっていくものですし、長くするように意識して普段の仕事をすることが大切です。

私がパルコ入社してから7年目。本部勤務時代に経験したのは当時の全店舗数である19店の年間のPL予実管理(売上高と販売管理費、つまり全店舗の営業利益の管理)という規模で担当させていただいていたことは、貴重な機会でした。それまで「週次でのDDDD」が基本サイクルだった中、年間単位で考える機会をいただけたのは、非常に大きな経験でした。

「年間PL」と言われるとピンとこないかもしれませんが、仕組みは、シンプルで、「年商」は「四半期」「月次」「週次」「日次」の積み上げです。自身の仕事の売上高は、年商につながっているのです。

若手に長期的戦略が必要な案件を任せられることは、なかなかないと思いますが、それでも、今担当している案件は、手が届く程度の未来の仕事なのか、少し遠くの未来の先に創っていかなければならない仕事なのか、そういった時間軸を意識しながら日々の業務をこなすだけでも、マーケターとしてのセンスは大きく向上すると思います。

いまのあなたは、どれくらい未来を見て、仕事をしていますか? この複眼的な視座や予知、逆算の思考を持つだけでも、自身の仕事のバリエーションが広がるはずです。

業種業界によって異なる時間軸

2016年から飲料メーカーに転職した当初、商業施設運営時につちかった体内時計軸が通用しなかったので、苦労しました。ステークホルダーが社内外に非常に多くなったことが1つの要因でした。

3年間の飲料メーカーでのデジタルマーケティング部では、さまざまな仕事を担当していました。年間を通じたコミュニケーションプラン立案、店頭送客・購買を狙ったキャンペーン施策、SNSでの話題化を狙ったネタ作り。

取引先企業様(流通小売業・飲食店)のデジタルマーケティング支援・協業企画は、数ヵ月先の施策の提案になりますし、企業公式SNSアカウントの運用は、「今日この日、今この瞬間のトレンドに乗る」というモーメントを捉えたアウトプットも求められました。「日次」を超えて、「数時間単位」リアルタイムでのパフォーマンスも必要なのが、SNS運用担当、つまり「中の人」としてのスキルでした。

社会人歴も10年を超えてくると、自身で発案した企画の社内承認フローやアウトプット方法は、体内に染み込んでいたのですが、環境が変わることによって、そのプロセスが変わり、社内段取りや稟議書起案方法自体の変化に適応することが、転職直後に苦労した点です。

しかし、しっかり外向けのパフォーマンスを出すために、社内の協力者(時間軸を身につけているプロパー社員)を見つけることも、重要な仕事の1つかと思います。

アウトプットをイメージしたFacebook投稿

現職での事例を1つ。

前回の記事が2019年10月末に公開されたとき、私は記事中にお世話になった3名――奥谷孝司さん、菅恭一さん、本間充さん、のお名前を出し、本稿を自分のFacebookでシェアする時にも、彼らの名前をタグ付けして投稿しました。実は、そのときに、その後のアウトプットイメージも「なんとなく」持っていました。

それは、その3名との再会の場を創出すること。投稿時には確固たる自信はありませんでしたが、最終的に2019年末に、弊社主催の無料セミナーに3人そろってご登壇いただくという形で結実しました(そのセミナーの詳細はこちらでお読みいただけます)。

自分がどんなピース(コンテンツ)を持っているのか、そのピースを使えば、どんな絵(パズルの完成図)が描けるのか。それを完成させるには、どれくらいの時間軸が必要なのか。マーケターにとって、目の前の案件に対して瞬時にそれを判断することは、とても大事な能力です。これは、書籍や先輩からの伝承で身につくものではなく、自身の経験から獲得していくものだと思います。

今回の例で言えば、自分が持っていたピースは従前から3人と知り合いだったことと、自分がヤプリでイベントを企画できるポジションにいたこと。パズルの完成形は、自社セミナー開催か、あるいはメディアに座談会記事を掲載してもらうこと。想定した時間軸は3ヵ月から半年ぐらいでした。これらを「なんとなく」ですが頭の片隅で計算して、企画を逆算して、Facebook投稿をしていたというわけです。

前述のように、私自身、パルコから飲料メーカーに転職した際には、伴走者に恵まれて時間軸の違いによる苦労も何とか乗り越えられましたが、スタートアップは人材が潤沢なワケでもないので、なかなかそうはいきません。そういう方は多いでしょう。私の場合は幸いにも、弊社の行動指針の1つに「チームドリブン」がありました。独りで走っているつもりでも、気がついたら周囲をチームメンバーが固めていてくれていた、というシーンが多々あって、本当に日々チームメンバーに助けられています。

複数の「時間軸」や「距離感」を持つことのメリット

私は、今期より、B2Bマーケティングに従事する部門に異動しています。

具体的には、B2Bマーケティング活動において、オフライン施策を担当するセクションです。総合展示会へのブース出展、Web担さんなどのメディアが主催するセミナーへの登壇、自社主催セミナーやマーケティングコミュニティの運営など。

これらの施策は、それぞれ、「時間軸」や「距離感」が異なります。

展示会のように2~3日間、終日現場対応するものから、セミナー登壇のようにMacBookと身体ひとつで短時間で対応できるもの。それに対して、自社セミナーは集客とコンテンツの企画の両軸で、それなりに長期にわたった準備が必要です。こういった、短期、長期と異なる性質の案件を同時に進行させながら、しかも、ただこなすだけでなく、回ごとに精度を上げていくことが求められる仕事です。

さらに、現在のポジションは、月次も含め、四半期・半期・年間、そして、その先を見据えた長い時間軸での取り組みが求められます。

スタートアップだからこそ行える意思決定のスピード感と、伸張著しい市場でのトライ。

社内の情報共有ツールひとつとっても、従前とは大きく異なります。「Slack」というチャットツールを使い、Eメールに依存することないリアルタイムな社内コミュニケーションを実現しています。「G Suite」を利用し、複数人で同時に企画書作成を行っていくなんてことも当たり前です。

また、テレカン用ツールとして「Zoom」の活用も盛んです。先日行われた社内全社会議は、社員の約1/4はZoomで参加、また一部のスタッフは、出張中のロンドンからの参加でした。それでもしっかり意思の疎通が図れています。

今年に入っても昨年から引き続き、SaaS業界の話題を聞かない日はありません。まさにSaaSが盛んになっている「2020年だからこそ」、体感できる仕事を受け持っています。

これまで、不動産商業施設、メーカーと、さまざまな「時間軸」で仕事をしてきましたが、現職では、そのハイブリッドな波長で仕事をしている感覚です。

もちろん、単一の職種・仕事でプロになるのもすばらしいキャリア形成です。しかし、私のように異業種を経験し、「時間軸」や「距離感」の異なる複眼的視野を組み合わせて仕事を動かしていくことは、チームにより広いナレッジ供給になるし、マーケターとしても仕事の幅や深さを広げていけるきっかけるになるのではと思います。

◇◇◇

不動産商業施設、メーカー、そしてITスタートアップと、これまで3回にわたって、私のこれまでの経歴を順番に振り返りつつお話をしてきましたが、とうとう足元、現職まで辿り着いてしまいました。

次回は、このバトンをどのようにパスしようか、ちょっと思案しています。どんな展開になるか、どうぞお楽しみに……!?

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