[若手マーケターコラム] Half Empty? Half Full?

おじさんマーケターは若者を理解できるのか? 行動観察調査で見た若者のスピード感とダイナミズム

若者世代を対象にして実施したエスノグラフィック・リサーチ、その結果から見えてきた可能性とは
株式会社ポーラ CRM推進部 CRMチーム 課長 中村俊之氏

皆さんは、顧客理解についてどのくらい自信がありますか?

お客様が自分と同じ性別・年代・趣味嗜好であれば、比較的想像しやすいかもしれません。しかし多くの場合、マーケターは、自分と異なる自我やインサイトを持つ人に対するコミュニケーションをしているのではないでしょうか。お客様という他者を理解するのは簡単なことではなく、とくに世代の違いは超えがたい壁として感じることがあります。

私はいわゆるアラフォー世代で、若者たちからは「おじさん」と言われてしまう年代です。私が属するWeb広告研究会(通称Web研)において、諸先輩方や同年代のマーケターと議論を重ねていく中で、若者理解における超えられない壁にぶつかりました。

「おじさん」マーケターは、どうすれば「若者」を理解することができるのか? 私たちの議論は文化人類学にまで話が発展し、最終的には若者世代のことを「異文化」と設定してエスノグラフィック・リサーチをおこなうことになりました。

今回は、Web研の動画活用委員会が、若者世代を対象にして実施したエスノグラフィック・リサーチの結果について紹介し、私見を述べさせていただきます。年代に限らず、異なる属性を持つ顧客を理解するための1つの手法として、参考になればうれしいです。

同じ20代でも、社会人と大学生は大きく違うのではないか?

動画活用委員会では、若年層向けのコミュニケーションをテーマとしたディスカッションを行い、

同じ20代でも大学生と社会人では、異なるメディア接触の特性があるのではないか

という仮説について、深掘りをすることになりました。就職して社会人になれば、可処分時間や交友関係などライフスタイルが変化しているはずという考えです。

一般的に公開されている多くの調査データが「若者」や「20代」といった分類でまとめられているものが多いです。しかし20代でも大学生と社会人で特性が大きく異なるのであれば、どのように戦略を変えていくべきかが議論のポイントでした。

そこから私も含めたアラフォー世代を中心とした委員会メンバーによって仮説の深掘りを試みましたが、想像の域にすら自信を持つことができませんでした。悩みに悩んだ私たちの議論は「異文化理解とは」というテーマへ発展し、エスノグラフィック・リサーチへとたどり着きました。

エスノグラフィック・リサーチとは?

エスノグラフィック・リサーチとは、民族誌学的アプローチによる調査です。定量的なアンケートなどの手法で顕在化したニーズや情報を探る調査とは異なり、

  • デプスインタビュー
  • ユーザビリティテスト(ラボテスト)
  • 観察調査
  • コンテクスチュアルインクワイアリー

などの手法を使って、ユーザーの潜在的なニーズを探る調査のことを指します。

今回は「若者」を、異なる文化を持つ1つの集団と見なし、その行動観察を通じて、メディア接触や利用実態を調査しました。

エスノグラフィック・リサーチによる異文化理解の調査方法

調査においては、対象者を以下の4グループに設定しました。

  1. 大学生・女性・19~22歳(大学1~3年生)
  2. 大学生・男性・19~22歳(大学1~3年生)
  3. 社会人・女性・24~27歳(社会人3年以上)
  4. 社会人・男性・24~27歳(社会人3年以上)

これらのグループには、大学4年生と、就職して1、2年目の社会人が含まれていません。大学生は4年生になると就職活動でメディアの利用状況が変わると考え除外し、社会人も職場環境に定着する3年以上の就業経験者を対象としました。

図1:対象者の年齢とおもな出来事

調査は以下のプロセスで実施し、最後に定量調査を行って仮説を検証しました。

1. グループワーク(ワールドカフェ)

はじめに、若者のWeb/SNS利用実態を把握するため、学生男/女、社会人男/女 各4名、計16名を集めて、自分たちのメディア接触やデバイス利用がどのように変化してきたかをテーマに、グループワークを行ってもらいました。リラックスした雰囲気の中で、4名ごとのグループで組み合わせを変えながらディスカッションを行い、メディア接触における過去の自分と今の自分の違いについて発表をしてもらいました。

2. 行動観察とデプスインタビュー(エスノグラフィック・リサーチ)

グループワークの中から特徴的なユーザーを学生(男/女)、社会人(男/女)から各1名、計4名を抽出し、まずは1週間のメディア接触について日記を提出してもらいました。

そのうえで、自宅におけるありのままの生活状況を調べるために、部屋に固定カメラを設置するとともに、視点を確認するためのウェアラブルカメラを装着してもらい、自宅での過ごし方を観察させてもらいました。

そして後日、撮影した家での過ごし方を一緒に見ながら、デプスインタビューを実施しました。

3. 仮説検証(Web定量調査)

グループワークや行動観察から再構築した仮説を検証するため、学生男/女、社会人男/女の各300名、計1200サンプルにWebアンケート調査を実施しました。

調査の結果、垣間見られた「おじさんたちの知らない若者の世界」

調査結果の詳細については、長くなりますので本コラムでは割愛します。ご興味いただけた方は、本記事末尾に掲載したレポートやダウンロード資料を参照いただけると幸いです。

ここでは、調査の結果を見て、私の心に印象強く残ったトピックスについてご紹介をさせていただきたいと思います。記事をご覧いただいている若者の皆さまは、こんなおじさんもいるんだなという視点でご覧ください。

1. ソーシャルメディアダイナミズム

まず衝撃を受けたのが、若者がInstagramのストーリーズにおいて、まったく異なる世界観を体験していることでした。若者の皆さまはなんのこっちゃと思われるかもしれませんが、委員会メンバー(アラフォー世代以上)が見ていたおじさんたちのストーリーズは、週末の家族写真や動画、食事や仕事に関することなどなど、Facebook投稿の延長のようなものが続きます(私たちだけかもしれませんが)。

一方、若者たちのストーリーズには「今」を切り取ったコンテンツが溢れており、スピード感もリアリティもまったく異なるものでした。友人たちの日常が手のひらの中に次から次へと流れ込み、私たちの知るSNSよりはるかに生々しいリアル感満載な情報接触体験です。

私にとっては体感したことがないダイナミックな情報世界に見え、今自分が若者だったら、まったく違った発見や楽しみがあったのではないかと羨ましく思います。

図2:Twitterでは画像や動画の閲覧が多く、Instagramではストーリーもよく見られている

2. ゴロ寝が中心となっている生活

次に驚いたのが家に帰ってから寝床で横になるまでの早さと、ゴロ寝視聴における環境充実度です。

テレビやパソコンを利用する人もいたのですが、今回調査した4名とも「横になってスマホ世界に没頭する」という共通姿勢がありました。そしてテレビやタブレットなどとの「ながら視聴」が前提となっているため、皆さん自己流のゴロ寝スマホのスタイルをお持ちです。中にはロフトの天井にマジックテープでタブレットを固定して、2つのデバイスで同時に動画を見ている強者もいました。

大学生男子のお子さんを持つお母さん方から、「今の子たちは家に帰るとすぐにシャワーを浴びるのよね」とお聞きしたことがありますが、スマホとともに布団の中で過ごす人が増えていることも一因ではないかという仮説を持ちました。

またデバイスを汚さないようにすることも、彼らにとっては重要でした。たとえば、手を使わないで食べられるポテトチップスなどは若者にうけるのではないかと話をしていました(寝床での飲食はあまりお行儀よくないですが)。

図3:「布団/ベッド」でのスマートフォン利用がメイン

3. 映像における音の役割

家の中での自然な過ごし方を拝見していて、動画における「音」の役割について考えさせられることがありました。

今回調査した4名とも、全員がスマホと一緒にテレビ、PC、タブレットのどれかを組み合わせた「ながら視聴」をしていたのですが、特に印象的だったのは、スマホを見ながらテレビCMから流れる企業のサウンドロゴに反応して視点が動いていたシーンです。

定量調査においても、気になる話題や好きな音楽、好きな有名人やタレントの声が聞こえたときにテレビに目がいくという結果が出ました。

Web動画において最初の数秒で興味喚起をするような作り方をすることはこれまでも意識をしていましたが、テレビCMにおいても冒頭の音を含めた注意の惹き方も重要ではないかという話になり、音の活用は委員会内で盛り上がったポイントです。

図4:テレビから流れる音声をきっかけに視聴

まとめ:再認識した「想像の限界」と「洞察の重要性」

今回の調査を通じて、あらためて感じたことは、

「自分の頭で想像できる範囲が限られていること」

「相手を理解するために洞察することが重要であること」

といった当たり前のことです。

もちろんお客様の気持ちを想像するということ自体がマーケターの役割であり求められる資質である前提です。今回はそのプロセスにおいて、エスノグラフィック・リサーチ、中でも行動観察という手法から多くの新しい視点や発見を得られると感じました。

今回は「若者」というテーマでしたが、ビジネスにおいて国や地域を超え、異なる文化や考えの方など、自分と異なるさまざまな”人“を想像しなくてはならないシーンがありますので、応用できることはたくさんあると感じています。

ついついマーケットやプロダクトといった言葉から語ってしまうことも多いですが、デザインシンキングなどでも大切にされる「人間を中心に考えること」を出発点にしていきたいと反省しました。年代をテーマにしたので「今さらデモグラ?」と思われた方もいらしたかもしれませんが、人に興味を持ち、人を知り、そこにあるコンテクストについて考えることの重要さをあらためて感じる良いきっかけになりました。

今の私のミッションはお客さまへ最上のおもてなしを行うために、何ができるかを絶えず考え続け、実現していくことだと思っております。お客さまの理解からはじめて、「ビジョン」と「らしさ」と「ケイパビリティ」とともに価値を提供し続けるための戦略立案と実行をしていきたいです。

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