ブランドセーフティで大事なのは「共通認識」を作ること
書籍『デジタルマーケティングの実務ガイド』の一部をWeb担向けに特別にオンラインで公開。
この記事は、第4章「キャンペーン(プロジェクト)を企画・実行・レビューする」から、Chapter 4.5.3「ブランドセーフティについて共通認識を持つ」の内容をお届けします。
4.5.3 ブランドセーフティーについて共通認識を持つ
キャンペーン(プロジェクト)を企画・実行・レビューする
イギリス政府をはじめとした団体や大手企業がYouTubeとグーグルの広告をボイコットし、世界中の広告主の注目をブランドセーフティーに集めるきっかけとなったのは、同プラットフォームがテロやヘイトスピーチを賞賛するような悪質なビデオにも広告を流しているという広告掲載面の管理の問題でした。
しかし、デジタル広告におけるブランド毀損のリスクは、掲載面の管理だけでは解決できません。同じ面に何個も自社の広告が出る、毎日のように同じ広告がリターゲティングで表示される、などというフリークエンシー管理の問題も、対応を誤れば広告をスパム化させてしまいブランド毀損のリスクに直結します。
ここでは、その2つの問題を管理するためにとり得るメディア戦略のオプションを整理し、社内のコンセンサスをとり付けるプロセスを議論します。まずはじめに、「効率重視」「ブランドセーフティー重視」「バランス型」の3つのメディア戦略オプションを紐といていきます。
効率重視
ブランドイメージの悪化をあまり気にせず、コンバージョン獲得などのKPI最大化をミッションとする方針です。ブランドイメージの悪化を気にしない、というと聞こえは悪いですが、ブランドセーフティーを気にしなかったことによるブランドイメージの悪化は、実際には捕捉・計測することができません。
それゆえ、ブランドセーフティーはどうしても感覚的に管理していかざるをえないのが現実です。また、ブランドイメージ悪化のリスクは他のチャネルにも存在し、何もデジタル広告だけに留まるものでもありません。そこは割り切って、数字で可視化できる効果の最大化に徹する、というのは、ブランドによっては現実的かつ合理的な判断とも言えます。
効率重視のオプションでは、4.5.1「なぜ広告主にメディアの知識が必要か?」で紹介した全ての種類の広告を、獲得単価(CPA)や、利益が算出できる場合はROI/ROAS(リターン・オン・アド・スペント)という1つのものさしで評価していきます。
※Chapter 4.5.1「なぜ広告主にメディアの知識が必要か?」のオンライン記事は未公開です。詳しくは書籍『デジタルマーケティングの実務ガイド』でご覧ください。
コンバージョン獲得を直接の目的としない広告の場合は、認知などのブランディング上の指標やそれを推測できるVTSなどの中間指標をKPIとして設定し、それをもっとも効率的に達成できるメディアの組み合わせを選択します。フリークエンシーの管理もこれらの指標をもとに行います。
つまり選択した指標においてもっとも「効率の良い」フリークエンシーを、A/Bテストを繰り返し検証していきます。
例えば、リターゲティングは10回、それ以外は15回で回したとき、全体のROIがもっとも高くなる、などというデータに基づきフリークエンシーを管理していきます。ブランドにふさわしくない掲載面に広告が掲載されイメージが悪化していないか、かなりの頻度(フリークエンシー)で広告が露出され「鬱陶しい」と思われていないか、ということには目をつぶり、あくまで数字に現れる効率性だけを追求します。
実際には、不適切な掲載面に広告が掲載されたり、過度の露出になってしまっている場合は、短期の売上にも悪影響があります。それゆえフリークエンシーに関しては、すぐに売上に悪影響が出るような行き過ぎた設定は、このオプションでも防ぐことができます。
ブランドセーフティー重視
不適切な掲載面や過度なフリークエンシーがもたらすブランドに対するダメージは結局正確には定量化できませんが、それを悲観的に捉えるなら、「石橋を叩いて渡る」式に可能な限りでリスクを最小化します。
行動ターゲティングでもコンテンツターゲティングでも、掲載面が確実に把握できるSNS広告と予約型メディアをプランニングの中心に据えます。YouTubeなどの動画プラットフォームや一部のアドネットワーク・(中見)DSPには、掲載面をURL単位で指定できる「プレイスメント」や、限られた「優良かつ安全」なインベストリーだけに広告を表示できるメニューがあるので、そういったものは「ブランドセーフティー重視」のオプションでも活用することができます。
フリークエンシーに関しては、「一定期間に何回同じブランドの広告に接触すると鬱陶しいと感じるか」などという調査を行い、あるいはそのような予算がなければ消費者としての感覚値でそれを設定して、それぞれのメディアの利用者の重複を意識しつつ管理を行います。
バランス型
効率重視とブランドセーフティー重視の間のバランスをとったのが「バランス型」です。幅広いメディアを活用していきますが、原則全て3PASを経由させ、トータルでどれくらいのフリークエンシーが発生しているのかを厳格に管理します。かつ、「ベリフィケーション機能」を使って、悪質なサイトはブラックリスト化し排除していきます。
ただ実際には、予約型メディアの大半は3PAS配信に対応していないので、また、例えばA社が提供するアドネットワークはライバルのB社が提供する3PASには対応していなかったりするので、これらに関しては利用している3PASに対応しているメディアのみを選ぶか、フリークエンシーの一元管理を諦めて一部のメディアを切り離して運用するかを選択する必要があります。
後者の場合、各メディアの利用者の重複を考慮してメディアをまたいだフリークエンシーの実績値を推定しながら、3PAS内外のメディアのフリークエンシーをそれぞれ別々に管理していく必要があります。同一のサイトが複数のアドネットワークに枠を解放している場合などは、いくら3PASを使って表示をコントロールしていても、同一面に複数同じ広告が表示されてしまうリスクは残ります。
また、ブラックリストの管理は常に完璧には行えません。その上でリスクを可能な限りコントロールしながらも受容し、効率とのバランスを取っていくのが「バランス型」です。
オプションはこの3つしかありえない、ということはなく、特にバランス型はより「効率重視」に寄せたもの、より「ブランドセーフティー重視」に寄せたもの、それぞれに無数のバリエーションが作れるでしょう。
この分類をスタート地点としつつ、どこまで厳密にブランドセーフティーを管理していくか、社内でコンセンサスを作った上でそれをエージェンシーに伝えましょう。
※次項のChapter 4.5.4「ビークル選定・運用方針」は、オンライン記事は未公開です。詳しくは書籍『デジタルマーケティングの実務ガイド』でご覧ください。
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