インタビュー

GDPR対策支援、WebP自動変換、プッシュ通知…常に新機能を採り入れ進化するディバータ「RCMS」の原点とは

国産CMSのパイオニア的存在「RCMS」。常に最新モードを採り入れる姿勢について、代表の加藤健太氏に聞いた。

国内CMSの黎明期から存在する古参サービス「RCMS」。機能追加やアップデートを重ね続けているが、今回新たに、WebP自動変換機能の搭載、GDPRへの対応を発表した。常に最新のトレンドを採り入れる姿勢について、提供会社であるディバータ代表の加藤健太氏に話を聞いた。

株式会社ディバータ 代表取締役社長 加藤健太氏

国産CMSのパイオニア的存在「RCMS」(Relational Contents Management System)。もともとは、早稲田大学ラグビー部のサイト運営を簡単にするため、同部出身の加藤健太氏が、独力で開発をスタート。その後2005年に、会社組織として株式会社ディバータを立ち上げ、ベータ版を公開。商業サービスとしての展開を開始した。その後も、機能追加やアップデートを重ね続け、現在に至るという。

「RCMS」の主要機能。は有料プランにて提供

10年以上という歴史の長さは、常にさまざまな機能を採り入れユーザーの要望に応えてきた信頼の証でもある。「RCMS」のこれまでとこれからについて、ディバータ 代表取締役社長の加藤健太氏に話を聞いた。

RCMSは、もともと「部活のため・後輩のため」のシステムだった

――RCMSが誕生した背景を教えてください。

加藤氏(以下、加藤と表記):もともとは、私自身も所属していた、早稲田大学ラグビー蹴球部の公式サイトのために開発したツールでした。部活というのは4年で代替わりしてしまう。卒業した後も私が管理人を続けるのは負担が大きいし、かといって、HTMLなどの知識を後輩に覚えさせるのは無理がある。そこで、誰でもサイトの構築・運営をできるようにしたのが始まりでした。

これが2000年ぐらいです。その評判が良くて、他の部活や大学などにも提供し始め、SaaS形式にしたのがRCMSの原点です。

早稲田大学ラグビー蹴球部のサイトトップページ
「早稲田大学ラグビー蹴球部」サイトトップページ。2018年7月時点の画面だが、現在もRCMSで構築・運営されている

――RCMSの利用企業やジャンルを見ると、スポーツ系が多い印象だったんですが、そういう背景があったのですね。

加藤:ラグビーに限りませんが、スポーツジャンルのサイトであれば、「部員紹介」「写真も含めた、試合のレポート」「試合の成績の記録」「部内メンバー・OBなど関係者だけの交流」「部員の勧誘」「いろんな告知」を、Webで行うようになっていった時代だったんです。手作りでWebサイトを作っていた時代です。

――当時、すでに出来合いのCMSなどはなかったんですか?

加藤:そんなに知識がなかったということもありますし、そもそも「CMS」という概念自体が稀薄だったと思います。「試合の記録とか簡単にできるよー」「部活のマネージャーでも更新できるよー」といった発想で、ほぼ独力でシステムを作り上げていきました。

早大ラグビー部のサイトも、デザインはどんどん変わっていますが、当時のデータは現在も継承されています。そういうわけで、最初はスポーツ関係が主でしたけど、一般のコーポレートサイトなどでも使っていただく機会が増えて、機能追加も行っていった結果、さまざまな企業さまにお使いいただくようになりました。最近では銀行や上場企業さんにも使っていただいてます。

――現在の採用企業数はどのくらいですか?

加藤:OEMも含めて3000社以上です。

モジュール式で機能が選択できるのが、RCMSの特徴

――RCMSの一番の特徴は何でしょう?

加藤:RCMSでは、さまざまな機能をモジュール形式で提供していて、各社さんが自由に機能を選択できるということですね。今風にいうと「プラグイン形式」というほうがわかりやすいかもしれません。「ラクロスの試合の得点結果を、綺麗に表示する」といった、ちょっとマニアックなスポーツ系特化型モジュールが多数存在しているのが、特徴といえば特徴です。

最近ではそうしたスポーツ系に特化した機能はセールスポイントにしていませんが、歴史としてそういう経緯があって、幅広く受け入れていただくことにつながったと思います。お客様からの要望があれば付け加えているので、現在のモジュール総数は、すでに数え切れないぐらいになっていますね。

RCMSには多彩なモジュールが標準装備されている

――モジュール式で機能が選択できるのは、いろいろなメリットを生み出しそうですね。

加藤:構築と運用で分けて考えた場合、当社からは構築した状態でお渡しすることも多いんですが、管理画面でレイアウトやデザインなどを全部編集できるので、大きく手を入れる企業さんも増えています。

――ディバータさん側の開発や運用の体制は、どういった形でしょう?

加藤:サーバ管理などのシステム運用は、クラウドを利用して少数体制です。営業も少なく3人程度です。あとはエンジニアが15人ぐらい、フロントエンド(デザイナー)が4人、ディレクター(プロジェクトマネージャー)が6人といった具合いで、そのほかテスターや間接部門のスタッフがいます。やはり開発に力を入れているという部分はあります。

CDN、PWA、WebPなど、常に最新技術に注目

――最近注目されている技術はありますか?

加藤:最近、社内的に流行っているのは、CDN(Content Delivery Network)やPWA(Progressive Web Apps)、Vue.js(SPA)といった領域の技術です。CDNは最近安くなってきたので、それをRCMSで繋いであげることで、顧客企業でも手軽に利用できる仕組みを作っています。

メディア系の顧客企業も多いんですが、最近だと、サッカーワールドカップでアクセス数が数倍に急増したことがあったそうです。そういったときにしっかり対応できるのも、RCMSの特徴だと思います。

――なるほど。

全体的に「Webの高速化をしっかりやる」という部分には注力しています。5月に画像をWebP形式に自動変換する機能をリリースしたんですが、これも高速化の一環です。ページを高速に表示できるようにすると、UXが良くなるだけでなくグーグルからの評価が下がりにくくなるというメリットもあります。

WebP関連では、手軽に画像を投稿して共有できるInstagramライクなサービスも現在、開発中です。会員機能と組み合わせてプライベートな画像共有サイトを立ち上げるといった使い方ができると思います。画像を軽くしないと、こういった機能は回らないんですが、うまく標準機能に取り込めてきたという感じです。WebP、すごく良いですよ(笑)。コーポレートサイトなどで、高解像度な画像で情報を提供したいといったニーズなどにも対応しやすいと思います。

画像投稿・共有のための軽快なモジュールを、近日提供予定
画像投稿・共有のための軽快なモジュールを、近日提供予定

――そのほかに、顧客企業側から引き合いの多い技術などはありますか?

大きなニーズとしては「会員制サイト」でしょうか? これも、かなり深いコアの部分から標準対応しているので、簡単に構築できると評価いただいてます。スポーツ系であれば「現役部員だけに見せる」「OBだけに見せる」「保護者だけに見せる」といった使い方ができるように開発されていたので、同種の使い方を一般的なサイトでも行えるわけです。

ラグビー部のサイト構築での管理画面。閲覧制限を1クリックで設定可能

――ラグビー部特化・スポーツ特化で始まっていたはずのシステムが、意外に汎用性があった、という感じですね。

加藤:「コミュニティで必要とされる機能」自体は、スポーツ分野だけに限らず、じつはビジネスシーンでも有用なんです。あと当社は、「こういう機能がありますよ」といって売るのではなく、お客様から「こういうことできない?」と聞かれて対応して、それを全体にフィードバックするという流れが多いので、“気がついたら、こんなことができていた”というケースも多いです(笑)。

普通のCMSだと、お客様ごとにソースコードが枝分かれしたり、バージョンごとにズレが出たりするんですが、RCMSはSaaSでの提供なので、誰もが最新の全機能を使用できるというのが強みかもしれません。

――データを維持し続けるのが大変そうですね。

基本的にはすべて継承しているので問題はありません。データベースの形式については、うちのノウハウもあり、データ構造では追加しかしない・変えないということで整合性を保っています。マイグレーションについては、近年はJSONにしたいといった要望をいただくこともありますので、バックエンドで処理して表には影響が出てこないように、仕組みを作っています。

国内企業も無関係でいられない「GDPR」も視野に

――そして5月には、GDPR(General Data Protection Regulation、EU一般データ保護規則)への対応を発表されました。GDPRは、欧州における個人情報保護のルールですが、情報漏洩があった場合、日本の企業であっても、2000万ユーロ(約26億円)という巨額の制裁金が科される可能性があります。

加藤:GDPR対策の一助として、IPアドレス匿名化、アプリケーションログの無効化機能を実装しました。いろいろ調べて、「RCMSとして何をやるべきか」を考えたときに、いろいろと難しい面はあったんですが、最低限やっておいたほうが良さそうな部分に、システムで対応しました。RCMSはSaaSという仕組み上、ログを自動保存してしまうんですが、そこに匿名化・無効化を設定できるようにしました。

――GDPRに関する要望は、内部から出てきたのですか? 外部企業の要望ですか?

加藤:ほぼ同時です。気にされる企業さんは、早いところもありましたが、お客様全体の動きは、まだまだにぶいです。

GDPRへの対応や認知は、まだまだ日本で進んでいないと思います。EU側自体は、グーグルやアマゾンのような大きなサービスを想定しているので、現実問題として、そうそう国内企業ではトラブルにはならないと思います。それでも万が一を考えると対応せざるを得ない、そういう側面はあると思います。

あと、EUと日本が協定を結ぶといったケースを将来的に考えると、日本の保護規則も強化されるはずです。そういった流れを考えても、ここで対応を行っておくタイミングだと判断しました。

――この機能はいつから利用可能ですか?

加藤:RCMSでは年に4回アップデートを行っています。直近では7月18日にシステムのアップデートを行い、GDPR、WebPに正式対応しました。このアップデートでは、Webプッシュ通知機能にも対応しました(有償版のみ)。このように随時アップデートで機能を搭載しているので、果てしなく日々増えている感じですね。

RCMSでは、機能を顧客企業と共同開発する場合、コストを折半して提供するといった取り組みを行っています。すぐに使える無料版もラインアップしているので、ぜひ一度使ってみてください。

――ありがとうございました。

株式会社ディバータ 代表取締役社長 加藤健太氏
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