NTTドコモのチャットボットプラットフォーム「Repl-AI」で変わるマーケティングの今と未来
携帯電話のイメージが強いNTTドコモですが、実はアイデアからサービス誕生まで高速のPDCAを回し、実際にサービスを動かす「39works」といった、イノベーションが生まれるプログラムなどにも積極的に取り組んでいます。
今回「THE AI」で講演いただいた“Repl-AI”も、39worksから生まれたサービス。
早くから自然言語処理技術のノウハウを持ち、チャットボット作成プラットフォーム『Repl-AI』を運営しているドコモに、リアルなチャットボットの今と未来のお話を聞くことができました。
THE AIとは、株式会社レッジ主催の、“今のAIを語る”大規模AIカンファレンスです。AIが世の中をこう変える、ビジネスを進化させるなどの抽象的な未来な話ではなく、具体的なコストは? 具体的に何ができるのか? など、今のAIを知る名だたる企業が登壇する大規模イベントです。
>> THE AIの詳細はこちら
株式会社NTTドコモ / イノベーション統括部 クラウドソリューション担当
docomo Developer supportの運営を経て、現在はチャットボット作成・実行プラットフォーム「Repl-AI」のチームリーダー。
協創プラットフォームから生まれたチャットボット『Repl-AI』
NTTドコモは今回の講演のテーマであるチャットボット、その主役であるRepl-AI以外にも、
- Docomoスマートホーム
- ここくま
- 顔パス認証アプリ
といった、新しいテクノロジーを組み込んだサービスを多く生んでいます。
類にもれずチャットボットにおいては、“Repl-AI”が生まれたということですね。
「もともと対話APIや雑談APIなどの、チャットボットを構成するうえで必要な自然言語処理技術を持っていたので、それを応用して何かできないかと思い、チャットボットをやることになったんです。」
もちろん技術があったから、という理由だけではなく、チャットボットそのものに可能性を感じ、その未来があるからこそサービスが立ち上がっています。
では、その可能性と未来とは具体的に何なのか、講演の内容を踏まえつつ、紐解いていきます。
ユーザー導線が変化している。それに対応するために最適なのがチャットボット
従来ではメルマガなどからユーザーがサイトに訪れ、CVに繋がるというのが当たり前でした。
ただ、現在はそのユーザー導線が変化し始めていると小林さんはいいます。
「ドコモがAIに取り組むのは、ユーザー導線が変化しているからです。
メールや電話ではなく、LINEやSlackなどのチャットツールでのコミュニケーションが主流になってきています。
それはお客さまとのコミュニケーションも同様で、ユーザーがチャットという文化に慣れはじめると、企業側もチャットを導入する必要がでてきます。」
実際にドコモオンラインショップでも、お客さんとのコミュニケーションでチャットツールを導入しているそうです。
小林さんが語ったチャットコミュニケーションのメリットは、
- 即時性
- 匿名性
- 気軽さ
- 記録性
という4つ。
ユーザー側のメリットとして電話やメールよりもはるかに気軽に使えますし、企業は会話ログが追えるので、何かあったときの対処などにも柔軟な対応が可能。
これって、業務効率化へもつながりますよね。
「ただし、チャットボットを導入したからといって確実にオペレーターの工数が減るかというと、実はそうでもないことがあります。というのも今まで電話やメールを躊躇していたユーザーが流入し、問い合わせ数も増加傾向にあります。
ですので、チャットツールをいれるだけでは顧客満足に対してコストが削減できるかはまだまだ微妙なところです。」
「チャットでの問い合わせも結局はオペレーターがヒアリングして適切な情報を与えたり、該当ページへ案内します。ただ、これだと毎回同じような内容に対応する必要があったりするので、無駄ですよね。
そこでフロントにボットを置くと何が起こるかというと、条件を設定してヒアリング、オペレーターに渡す、もしくはチャットで回答するなど、業務改善につながるんです。」
ここでポイントなのは、完全にチャットボットに任せきりにするのではなく、まずはボットでお客さんからの問い合わせをさばくこと。
問い合わせの仕分けをボットが担当する、それが今のチャットボットの最適な使い方なのかもしれません。
チャットボットはまだまだ優秀ではない。リアルと向き合いながらAIを成長させていく
現状の業務にチャットボットをどのよう取り入れていくか、という観点で知見を多く持っているRepl-AIのボット技術の原点は「しゃべってコンシェル」だそう。
すでに、
- 文章の意図解釈
- シナリオ対話
- 知識Q&A
といった、チャットボットサービスの開発に必要なノウハウがあるからこそ、現状のチャットボットの限界や、手が届かない部分が分かるそうです。
「現在、チャットボットを実現できる技術は大きく2つあります。まずは多くの方が期待している“機械学習”によるもの。もうひとつは、“ルールベース”で動くものです。
両者のデメリットについて、機械学習は予想外の回答があったりするため、まだまだ実用レベルではありません。ルールベースであれば正確な対応が実現できますが、ルールから外れた場合、一切対応できないという問題があります。」
一般にチャットボットに期待されるのは、機械学習やディープラーニングなどの技術による、人間と自然な会話をするチャットボットですが、やはりまだまだビジネスシーンでは難しそうです。
Repl-AIに関しては、ルールベースに加えて、足りない部分などを機械学習で補うという、2つの技術を組み合わせて実現しています。
「自然言語に対して深層学習を適応させるのは2025、30年ころになるといわれているのが現状です。
実際にNTTドコモで深層学習を活用している事例としては、Instagramの画像認識から潜在ニーズをさぐるサービス、AIタクシーでお客さんがどこにたまりやすいか、つかまりやすいかを機械学習から判定してドライバーに知らせるサービスなどがあります。」
「まだ自然言語に対して機械学習、深層学習のみでのアプローチは難しいですが、例えば、横浜市のゴミ分別ボットではユーザーとの対話を通してチャットボットの精度を右肩上がりであげることが簡単にできたんですね。
単純に会話ログの統計データから何が足りないか見えてくるので、そこを埋めていくことでボットの精度向上が見込めるんです。」
現状はディープラーニングメインでボットを構築するのは難しいですが、今後の2025年や2030年に新しい技術がでてきた際、早急に対応できるように対話データを貯めておくのが、今後でてくる新しい技術をいちはやく活用する戦略だといいます。
外部システムとの連携が高度で実用的なチャットボットを実現する
「今まで紹介したのはチャットボットはユーザーのテキスト入力に対し、テキストで返すボットでした。今後はそれだけだと厳しくて、画像や位置情報を活用したチャットボットが増えてくるのではないかと思っています。
外部の技術、社内基幹システムと連携することでより高度で、実用可能なチャットボットを開発することができます。」
今後さらに進化していくチャットボット。その現状と未来、どのようにボットが成長していくのか、チャットボットのリアルを知れた講演でした。
小林さん、ご講演ありがとうございました。
「AI:人工知能特化型メディア「Ledge.ai」」掲載のオリジナル版はこちらNTTドコモのチャットボットプラットフォーム「Repl-AI」で変わるマーケティングの今と未来 | Ledge.ai(レッジエーアイ)2018/03/08
ソーシャルもやってます!