インタビュー

DMPを使った広告配信は「ターゲティング」より「フィルタリング」が有効

パブリックDMP市場で3年連続シェア1位のインティメート・マージャー社長の簗島氏が語るDMPの本質と活用法。
インティメート・マージャー代表取締役社長 簗島亮次氏

「自社で持っているデータ(ファーストパーティデータ)だけではわからない情報が欲しい」。そういった要望に応えるサービスとしてパブリックDMP(サードパーティDMP)が存在しています。

ただお客様と話をしていると「DMPに期待しすぎている」と感じることがあります。またDMPを販売している企業の担当者が、DMPをそもそも使っていないんじゃないかと思うことがあります。

都市伝説的に「DMPは万能だ」と思われている方もいるようですが、DMPってなんでもできるわけじゃないです!

それにDMPには「企業の欲しいデータがすべてある」と思っている人がいますが、全データを1つの企業が持っているはずありませんから。

でも全データを持っていなくても、マーケティングの成果は上げられるんです。理想論のようなマーケティングじゃなく、着実に確実に取れるところをちゃんとやれば成果が出るんです。

そう話すのは、インティメート・マージャー代表取締役社長の簗島亮次(やなしまりょうじ)氏。同社のDMPは、パブリックDMP市場で3年連続シェア1位を獲得している。簗島氏にDMPで気になることをいろいろ聞いてきた。

  • パブリックDMPはどう使われる?
  • DMPは広告配信に使っても効果が出ないんじゃないか?
  • DMPのデータは商品開発に使えるってホント?
  • シェア1位を獲得できたワケ

※アイ・ティ・アール(ITR)が発行する市場調査レポート「ITR Market View」において

無駄な人に広告を出さないために使うDMP

――まずパブリックDMPはどんな使い方をしているお客様が多いんでしょう?

簗島亮次氏(以下、簗島): 効率的にターゲットにアプローチするために使ったり、無駄なユーザーに広告を出さないように使ったりしている企業が多いです。

お客様には「取れる人と取りたい人」の説明をよくします。

たとえば旅行代理店の方に「取りたい人」を聞くと「年収が400万円以上で、過去にハワイに行ったことがある人のデータが欲しいです」と言うんです。でも、取りたい人に絞り込んでターゲティングをすることは超非効率です。

それよりも自社のサイトに来ている人を精査する方が、よっぽど効果があるはずなんです。言い換えると、理想的な顧客を取ってくるのではなく、無駄な人には広告は出さないほうが効果的です。

――「取れる人」とは具体的にどういうことですか?

簗島: たとえば、旅行会社のサイトに何度も訪れているユーザーがいます。そのユーザーが直近で就職活動の情報を見ていたら、その人は就活生などで、旅行を検討している人ではない可能性が高いです。

他にも、IPアドレスを見て競合他社の代理店からアクセスしていたら、その人も旅行を検討している人ではないですよね。

そういう人にリターゲティング広告を出したとしても意味がない。

見込み客ではないことが明らかな人を排除して、見込み度が高い人に広告費をかけるようにすると、CPAが下がってROIが良くなります。これが私たちが言う「取れる人」です。

DMPは広告配信に使っても効果が出ないんじゃないか?!

――広告配信にDMPを使ってもあまり効果がないという話を聞くのですが。

簗島: 「ターゲティング」と「フィルタリング」という概念があります。DMPはフィルタリングには使いやすいかなと。

たとえば、見込み客が100人いたとして、そのうちの5人が商品を購入したとします。何もデータがなければ、100人の見込み客全員に広告を出さないといけません。すなわち95人分の広告が無駄になります。

ここでパブリックDMPのデータを使って、無駄な95人のうち50人を見込み客ではないと判断して広告配信から除外できたら、50人分の広告費で成果がでます

確度の低いユーザーをどれだけ除けたか(フィルタリングできたか)によって、広告費の無駄を省けるわけです。

簗島亮次(やなしまりょうじ)氏

DMPのデータは商品開発に使えるってホント?!

――DMPは商品開発に使えると聞いたことがあるのですが。

簗島: 私の見解としては、商品開発に使うのは難しいかなと。なぜならば精度の高い分析者からすると、DMPに入っているデータって世の中一部分だからです。DMPのデータが偏っている可能性も大いにあります。

たとえば、マイナンバーを分母にして、FacebookやGoogle、Yahoo!などの検索データ、楽天やアマゾンの購買データなど、網羅性の高いデータが入ったDMPが存在すれば、商品開発に使えると思います。

でも、そんなデータは存在しませんから(笑)。

だからDMPのデータで正しいインサイトを得るという点では疑問が残ります。データを商品開発に生かすという使い方よりは、自分が言っている内容を後押しする、説得するようなデータの使い方のほうが望ましいと思っています。

データをカスタマイズしやすい

――パブリックDMP市場で3年連続シェア1位を取れた理由をどのように考えていますか?

簗島: 私たちのパブリックDMP(IM-DMP)には、国内最大級の約4.7億件のユーザー情報が入っています。具体的には次の3つのような情報です。

  • デモグラフィックな情報(年齢、性別など)
  • 端末・ネットワークに関連する情報(iOS、Android、IPアドレスなど)
  • 提携メディアに関する情報(どんなサイトをどう見ているかなど)

これらのデータをお客様が自社で持つデータ(会員情報、サイトログなど)と組み合わせて、課題解決に活用していきます。

弊社も含め、DMP事業社の保有するオーディエンスデータは、お客様が使いやすいようにカテゴライズされています。

でも用意されたカテゴリだけでは、お客様の企業課題に対応することが難しいんです。お客様自身が、細分化・カスタマイズできないと、お客様の求める結果につながらない。

――「カテゴリをカスタマイズできる」とは、どういうことですか?

簗島: たとえば、BtoBの企業向けに広告を出したい場合、企業といっても数人から1万人を超えるような企業があります。それらが「ビジネス」といった1つのカテゴリになっている場合、そのカテゴリ枠はざっくりしすぎていますよね。

「どのくらいの規模の企業を対象にしたいのか」というカテゴリ内のデータをお客様がカスタマイズできないと、マーケティングには使えません。

しかもカスタマイズできなければ、PDCAが回らないので導入自体が途中で止まってしまうことがあります。ただ、現状では細分化・カスタマイズに柔軟に対応できないDMPが案外多いんです。

でも、私たちのパブリックDMP(IM-DMP)では、普段お客様が使っているマーケティングツールと繋ぎこんで、目的に合わせて簡単に、細かくカスタマイズできる仕組みをシステム上で提供しています。後、挙げるとするならば「データ活用がフラットな点」でしょうか。

――データ活用がフラットとは?

簗島: 平たくいうと、どんなアウトプット先でもデータを使えるということです。言い換えると、私たちの企業が独立系で、連携しているツールが豊富だということです。

独立系でない場合、「あのメディアには広告配信ができて、このメディアは配信できない」なんてことが起こるんですが、私たちのパブリックDMP(IM-DMP)ではほぼそういったことはないです。

だからこそ、データ抽出の仮説がダメだったのか、データとメディアの相性が悪かったのかといったPDCAが回せるのです。パブリックDMP市場で3年連続シェア1位を取れたわけの質問に回答すると次の3つでしょうか。

  • データ量が豊富
  • ターゲットの抽出の自由度が高い
  • 連携しているツールが多く、選択の自由度が高い

――パブリックDMPのデータには、購買データは含まれないんですね。

簗島: よくお客様にも「購買データが欲しい」と言われることもあります。

でも、やりたいマーケティングにもよりますが、実は購買データよりもその前にどんな情報に興味関心を持っているかの方が大事だと思います。

――最後に一言お願いします。

簗島: よく企業の方とお話をしていると、DMPで取りたいお客様像の理想が高すぎることが多いと感じています。

鯛を一本釣りするよりも、いけすに入った魚にエサをまいて網ですくう方が確実に釣果は上がります。おもしろいか、おもしろくないかは別として。

できることをちゃんとやれば、成果は確実にでます。

だからデータが全数である必要はないのです。マーケティングをするときに、どこまでの情報が必要なのかということが一番重要だと思います。

――ありがとうございました。

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