「売上に効いた広告はどれか」テレビ・Web・実店舗の広告効果測定を可能にする。有馬誠氏が楽天データマーケティングで起こす変革とは

テレビ、オンライン、オフラインのデータを連携させ、一気通貫で広告効果を測定する楽天データマーケティングという会社を楽天と電通が立ち上げた。社長の有馬誠氏に聞いた

今まで分断されていた「テレビ」、「Web(オンライン)」、「店舗(オフライン)」のデータをつなげて、広告の効果測定をできるようにする。「どこの、何が、売り上げに貢献したのか」を明確にし、今までわからなかったデータを見えるようにして、広告効果測定の変革を起こす――。

こう語るのは、楽天と電通のジョイントベンチャーとして2017年7月に設立された「楽天データマーケティング」の代表を務める有馬誠氏。

有馬さんは、ヤフーの第一号社員、Google日本法人代表などを経て、20年以上インターネット業界の第一線で活躍を続けています。そんな有馬さんに、楽天データマーケティングが広告効果測定にどんな旋風を巻き起こそうとしているのか、デジタル広告業界に対する思い、若手へのエールなどを聞いてきました。

有馬誠氏 楽天データマーケティング 代表取締役社長

「テレビ・Web(オンライン)・実店舗(オフライン)」をつなげてデータを見える化する

――楽天データマーケティングの目指していることから教えてください。

広告主の最大の課題として、どの広告が売り上げに貢献したのかがわからないということがあります。

広告にはさまざまな種類がありますが、大きく3つに分けると「テレビ」「Web(オンライン)」「実店舗(オフライン)」です。これら3つは分断されていて、それぞれが最終的にどう売り上げに貢献したのか効果がはっきりとは見えません。

それら3つをデータでつなげてクリアにするのが、私たち楽天データマーケティングの役割です。

具体的には、楽天の約9,300万のIDとその消費行動のデータを、テレビや実店舗(オフライン)とひも付けることで、「どの広告が、どのくらい購買につながったのか、売り上げに貢献したのか」の効果測定をできるようにします。

こういったデータがわかれば、個別の最適化だけでなく、マーケティング全体の最適化ができるようになり、予算配分の見直しやクリエイティブの見直しをより効果的に行えるようになります。

そうすれば、広告主は広告の無駄を減らせるわけですから、Win-Winの関係が築けると思っています。

また楽天として、広告ビジネスを大きくしたいという方針がありました。

今までも、楽天市場に出店する人向けに、広告ビジネスを行っていました。しかし、「楽天」という全体の規模(PVやアクセス数)からすると、もっと広告ビジネスを大きくできる可能性があると考えています。

マーケティングと広告、店舗で商品を売ることは不可分の時代になってきていると言えます。楽天としては、両方のソリューションを提供していきたいのです。

――どんな企業がターゲットですか?

テレビCMを出している企業、ナショナルクライアント、ブランドアドバタイザーが対象です。

もちろん、楽天市場に出店している方へは、引き続き広告商品を提供していきます。これは今後も継続していきますし、強化も図っていきます。

引き合いとしては、日用品や化粧品といったオンラインでもよく売れるようになってきた商材、マスマーケティングが必要な商材などからあります。

後は、耐久消費財である自動車メーカーからも問い合わせがあります。楽天では車は買えませんが、楽天市場内にショールームページを作ってもらい、テレビCMと連携させることで、テレビCMの効果がわかるといった仕組みです。

――その企業はどんな価値が得られるのでしょうか?

「テレビCMを見た人たちが本当に買い物をしたのか」「オンライン広告を見た人たちが実店舗で本当に買い物をしたのか」など今まで見えなかった広告効果、マーケティング施策の効果が見えるようになります。

広告主にとっては、「この広告は効果が薄いかもしれない、でも確たるデータがないから、判断しかねる」といったことが多くあると思います。実際に、そういう声を聞きます。

その証拠となる「データ」を見えるようにしていきたいと思っています。データがわかれば、次のCMはどう作るべきか、放送地域を変える、放送時間帯を変えるといったPDCAが回っていき、最適化が図れますよね。デジタル広告の場合も、同じことが言えます。

また、効果がわかると、広告が悪いのか、プロダクトがダメなのか……といった責任の所在も明らかになります。そうすることで、ビジネス全体の改善スピードも上がるはずです。

――具体的にテレビ、Web、実店舗をどのようにデータを連携させていくのですか?

まず、テレビメーカーが持っている秒単位の視聴ログと楽天会員IDを連携させていきます。テレビメーカー各社によって、連携の方法は異なりますが、一例を挙げます。

たとえば最近は、ネットにつながったテレビが増えてきました。テレビの購入と同時にリモコン機能や録画視聴機能を備えたアプリのダウンロードを勧めています。

そうすると、アプリを介してテレビとスマホがつながります。

楽天市場の全売り上げの約64%はスマホからです。つまり、楽天で買い物をする人の約64%以上がスマホを持っているわけです。もちろんユーザーの許諾を得たうえでですが、スマホのなかで楽天会員IDと視聴データがつながるのです。

後は、実店舗ですね。これは、楽天スーパーポイントで連携します。楽天スーパーポイントのパートナーは今も増えつつありますが、これをもっと増やしていき、POSデータ(レジのデータ)と連携させていきます。

そうすれば、今まで分断されていた、テレビ、Web(オンライン)、実店舗(オフライン)がデータでつながり、すべてが見えるようになるのです。

まとめると、

  • テレビは視聴ログ
  • Web(オンライン)は、楽天市場をはじめとする消費行動分析データ
  • 実店舗(オフライン)は、楽天スーパーポイント加盟店のPOSデータ

これらを楽天会員IDでつなげるのです。

誤解のないようにお伝えしますが、データは楽天のものではなく、ユーザーのものです。これらを利用する場合は、すべてユーザーの許諾を取ってから使っています。

「CPCの罠」から抜け出し、適正な広告市場にしていきたい

――「デジタルマーケティング」「データマーケティング」「マーケティング」などの言葉をよく耳にします。時代の流れに対して今後どのように企業はとらえていくべきでしょうか?

デジタルマーケティング市場について言うと、残念な状況だと思います。

私は「バナーってなんですか?」という20年前から、インターネットに携わっています。バナー広告が登場した当初の触れ込みは、「今までと違って、(広告)効果が数字でわかる」でした。

もちろん、クリック数や閲覧数などがわかるようになり、オンライン上でサービスが完了する場合は、広告からの流入がコンバージョンにどのくらい貢献したかわかるようになりました。

しかし、そこにオフラインが絡んでくると、とたんにわからなくなります。実店舗に来て、買い物をした人とバナー広告を見た人がひも付けられていないからです。結局、広告主からすると、「どの広告が効いて、どれがダメだったのか、最終的に売れたのは何の影響だったのかわからない」わけです。

そうなると、「Webサイトの訪問者数、閲覧数」などがKPIとなり、そこでPDCAが回っています。でも、それを改善していくことが、本当に売り上げにつながっているのか定かではありません。これは、問題ですよね。

――確かにそうですね。

また、オンライン広告はクリック課金型(CPC)が主流ですよね。

つまり、広告を配信する側からすると、クリックされなければ広告費はかからないわけですから、どこに出ていても関係なく、たくさんの面に露出されれば、させるほど、クリックが増えるわけです。

この状態は、広告主にとっても、ユーザーにとっても、不幸です。

ユーザーにすると、見たくもない広告が次々に流れてくるので、迷惑ですよね

広告主にすると、本来は出したくないサイトや、ブランド毀損になりかねないサイトに広告が出ている恐れがあるわけです(たとえば、アダルトや反社会的組織のサイトなど)。ブランドセーフティといった観点でこれはマズい。それでいて、広告効果が出ているかというと、売れたかどうかわからない

また、広告詐欺と呼ばれるアドフラウドの問題もあります。こういった「閉ざされた空間で、ユーザーに迷惑をかけながら、市場が巨大化している」というのは、いびつです。

それを「なんとかしたい!」という思いも今回この楽天データマーケティングに参加した大きな理由の1つです。

――効果が本当にわかれば、こういった課題が解決できるということですね。

そうです、「テレビ・Web(オンライン)・実店舗(オフライン)」がデータですべてつながっていけば、効果がわかります。

そうすれば広告主は、無駄なところに広告費を掛けずにすみます。ユーザーからすると、見たくもない広告を見る機会が減り、買った商品の広告に追いかけ回されることもなくなります

誰が悪いわけでもないですが、「CPCの罠」ですよね。CPCで広告市場が回り続けるかぎり、この状況は変わらず、いつか限界が来ると思います。そこを適正な形にするお手伝いができればと思っています。

ブランディングもOne to Oneの広告も境界がない「大最適化時代」が来る

――One to Oneの広告(ダイレクト)は刈り取りがメインなので、細かなセグメント分けをして、ターゲットに合った方法で訴求しますが、ブランディング広告はそうではありません。今後、この2つの広告はどうなっていくと思いますか?

ブランド広告主が、広告を打つのは企業イメージを上げたいといった目的もありますが、結局は「モノを売りたい、売り上げにつなげたい」わけです。そういう意味では、ダイレクト広告と同じなんです。ただ、先述しましたが、効果がわからないから、「イメージ戦略」と銘打って広告予算を獲得して来るしかなったわけです。

とはいえ、今後もブランド広告主の広告費のうち何割かは、ブランドイメージ、マインドシェアなどの向上に使われると思います。

しかし、広告主の本音としては、売れる広告を作りたいはずです。効果が見えるようになれば、ブランディング広告とダイレクト広告の作り方は、結局同じことになっていくと思います

セグメントやチャネルをきっちりわけて、チャネルも楽天市場で売るのがベストか、実店舗で売るのがベストなのか。デジタルだけで回っていたサイクルが、テレビ・Web(オンライン)・実店舗(オフライン)すべてを巻き込んだ大きなサイクルになって回っていく

大最適化時代の到来ですね

ダイレクト広告を扱ってきた人のPDCAのノウハウは、ブランディング広告にも生かされると思います。

自分に自信が持てる仕事をしよう

――有馬さんのさまざまな企業での経験から、今後のマーケティングを担う中堅・若手の読者に、アドバイスをお願いします。

私は還暦を超えています。30年前に、こんな世の中が来るなんて想像できたかと言えば、まったくできていませんでした。よくライフプランとか言いますが、未来を予測してライフプランを立てられる人がいたら、お目にかかりたいくらいです。

だって10年後だってどうなっているかわかりませんよね?

私の場合、たまたまインターネットという大きな波がやってくるときに、ヤフーに参画したわけです。今ではヤフーは多くの人が知る企業になりましたが、その当時まったくの無名でした。

ヤフーの一号社員だった私でも、こんなに大きくなるなんて思ってもいませんでしたから(笑)。

アドバイスではないにせよ一言言えるとしたら、手がけている仕事を一生懸命やって、実績を上げることです。そして、人に認められることも大事ですが、自分に自信を持つことしかないかなと思います。

成果を上げることは、自分のためです。

その成果の難易度や課程における創意工夫、満足度はどの位得られたか、自分しかわかりません。そういったことを積み重ねると、徐々に自信につながっていくはずです。

後は、伸びる産業・会社・業界に身を置くことは、幸運がついてくることが多いと思います。自分の努力なんて本当に1割か2割。世の中のトレンドにいたので、今回も楽天データマーケティングに参画するといった話をいただけたのだと思っています。

――貴重なお話ありがとうございました。

(写真・取材・文:編集部)

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