バズって入場者40%増の226万人!男子プロバスケ・B.LEAGUEのマーケ秘策「広告費の思い切った使い方」を聞いた

B.LEAGUE(Bリーグ)発足1年目は、前年度の旧リーグにおける年間入場者数に比べ40%増の226万人を達成。マーケ施策をBリーグの葦原氏と新出氏に聞いた。
B.LEAGUE(公益社団法人 ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)
左:広報部 新出 浩行氏 右:常務理事 事務局長 葦原 一正氏

広告予算を広告出稿ではなく、バスケコートの床全面にLEDを埋める仕掛けに全投下したら、デジタルでバズって、他の試合のチケットも完売続出。しかし、バスケットの試合コートの下に電気を流したことなんてなく、初の試みだった。

うまくいかなかったら、自分のクビが飛ぶなと思うくらい相当なリスクも背負って決断しました(葦原氏)。

そんなしびれるくらい攻めの姿勢でマーケティング施策を進めているのは、2016年9月に開幕した国内最高峰の男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE(以下、Bリーグ)」の葦原 一正氏と新出 浩行氏。

リーグ発足1年目は、前年度の旧リーグにおける年間入場者数に比べ40%増の226万人を達成。デジタルとリアルを融合させた施策を数多く進めているBリーグの葦原氏と新出氏に聞いた。

開幕戦の演出に広告予算を全投下、それがデジタルのバズを生んだ!

――Bリーグが開幕して1年、振り返ってどうですか?

葦原 一正氏(以下、葦原): 開幕戦(2016年9月22日)は印象的です。国立代々木競技場第一体育館で開幕戦が行われたんですが、実は広告予算がそんなになかったんです。少ない広告予算をどう使うべきか、デジタルで広告を出すか、中吊り広告を出すかと悩みました。

しかし、最終的に広告には使わず、LEDコート(バスケコート全面)に使いました。その方がバズるだろうと思って。

バスケコートを全面LEDコートに。コートが崩れ落ちているように見せる演出(写真提供:Bリーグ)
LEDコート(写真提供:Bリーグ)

――え、LEDコートに全部使ったんですか?

葦原: フジテレビの全国地上波やNHK-BS1で2時間生放送されることが決まっていて(スポナビライブでも生配信)、目玉の演出として広告予算を投下しました。

その決断が功を奏して、生放送終了後、リアルタイム検索ワードの20ワードのうち19ワードがLEDコートやBリーグに関することで埋め尽くされました。そして、放送終了後3時間、Bリーグの他試合チケットが相当売れて、完売が続出しました。

テレビのインパクトはもちろん大きいですが、リアルとデジタルがうまく融合できたと思っています。

と、結果が良かったから堂々と言えますが、実は全面LEDコートを採用した前例がなく、うまくいくかどうか心配でした。

――と言いますと?

葦原: 実は開場の直前まで、LEDコートをトンカチで叩いて、飛ばないよな……と確認していて、不穏な空気が流れていたんです。コートの下に電気を流すなんてこと今までやったことありませんでしたから。

冗談じゃなくLEDコートが映らなくなったら、自分のクビも飛ぶなと思うくらい、相当なリスクも背負いながら決断しました(笑)。でも、広告予算を別のものへ投下していたら、この結果は得られていなかったと思います。

葦原 一正氏

初年度の入場者数226万人

――Bリーグ初年度の入場者数226万人と聞きましたが、どう評価されていますか?

葦原: 初年度の目標値には届きませんでしたが、「2020年に入場者数300万人」を目指しているので、その足がかりとして226万人はまずまずの結果かなと。

226万人は、Bリーグができる前の入場者数に比べて40%増です。たとえば、プロ野球の球団が優勝したとしても、入場者数は上がっても数%です。スポーツ市場において、入場者数が40%増は異常ともいえる事態です。

とはいえ、1年目はご祝儀みたいなものですから、2年目以降これからが正念場です。

――この成果を達成するために、LEDコート以外にはどんな施策を行ったのでしょうか?

新出 浩行氏(以下、新出): 4マス(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)、デジタルなどで露出量を増やす取り組みを行っています。

たとえば、テレビ番組が使いやすいようにBリーグの試合映像をショートクリップにして試合終了直後に配布したり、Bリーグの試合中の写真を報道関係者向けに速報で提供するサービスを用意したり、Bリーグに関する素材を数多く用意しています。

極論を言うと、報道関係者はBリーグの試合会場に足を運ばずとも、ニュースや記事を作れてしまうのです(笑)。

このような素材を用意しているにもかかわらず、やはりプロ野球やJリーグの露出量には劣ります。テレビや新聞は私たちではコントロールできませんので、自分たちの価値を高められるデジタルやSNSは力を入れています

新出 浩行氏

――デジタル活用について具体的に教えてください。

新出: たとえば、去年の開幕戦までにSNS(Twitter、Facebook、Instagram)で12万以上のフォロワーを集められれば、リーグが初年度に目標としている入場者数を達成できるだろうと試算していました。

そこで15万フォロワーを目標に掲げ、開幕戦終了時点でその目標を達成。その結果、各クラブの試合に波及して、開幕節18試合のうち11試合が満員御礼になりました。

クラブ・選手の協力なしに、プロバスケ業界は盛り上げられません。そのためBリーグ発足に合わせ、全36クラブでTwitterとFacebookの公式アカウントをそれぞれ開設しました

こちらは初年度のシーズン終了時点で、クラブ全体の総フォロワー数の目標を100万人としていたのですが、110万人を達成しました。

季節に応じた、ハロウィンやクリスマス、バレンタイン、エイプリルフールなどの企画を仕掛けることで、ソーシャル上のファンの方に楽しんでもらえたのではないかと感じています。

その結果、そのSNS企画自体がテレビニュースでも取り上げていただけたり、流行のハッシュタグ経由で、Bリーグを知らなかった方に届き興味を持ってもらえたりできたと感じています。

ソーシャルリスニングをしていると、そんなことをキッカケに興味を持ち、実際に試合観戦された方もいらっしゃるようでした。

――全クラブのSNS活用に関してBリーグがサポートしているんですか? ガバナンスはどう効かせたのでしょう?

新出: 私たちがサポートしているのは、BリーグのB1(1部)、B2(2部)の各18クラブずつの合計36クラブです。

開幕前に、全クラブを対象にSNSを活用する勉強会を行いました。たとえば、「試合終了後、総括を選手に書いてもらったら、ファンは喜ぶよね!」といったファン視点でどんな投稿をしていくといいかというポジティブな勉強会です。

その後のフォローとしては、「この投稿はエンゲージメントが良かった、この投稿でフォロワーが増えた」といった月間レポートをクラブと共有しています。

ファンの方が喜ばれる情報発信は、リーグよりもクラブよりも選手からの言葉だと思います。選手もクラブ同様、Bリーグが開幕する前に全選手を集めて、ソーシャルリスクを共有しました。Bリーグでは、炎上を恐れるよりも、積極的に発信していき、自分たちの価値を高めていこうというスタンスでSNSを活用しています。

攻めのSNS活用

――注目してもらいたい取り組みなどありますか?

新出:SNS連動オールスター」ですね。

ファン投票で選ばれた選手が出場できるオールスター戦(B1リーグ全選手、ポジション別)の選手選抜に「#ハッシュタグ」の数によって選ばれるSNS選出枠を設けました。

またオールスターの試合当日は、試合の他に「ダンクコンテストのチャンピオンの選出」「MVP選手の選出」といったイベントをTwitter、Facebook、InstagramのSNSからリアルタイム投票で選出するイベントを実施しました。

「ダンクコンテスト」のリアルタイム投稿の様子(写真提供:Bリーグ)
「MVP選手の選出」(見えづらいが)4選手に票が集まっている様子が映し出されている(写真提供:Bリーグ)

タグボード(Tagboard)さんにご協力いただいて、最優秀選手をファンからハッシュタグ投稿で決めていき、その集計の様子を会場でリアルタイムで表示するといった取り組みです。5分間で5,000を超える投票が集まりました。

当日は、NHK-BS1でも生放送されていて、来場できなかったファンも投票に参加できるように画面上にテロップを出してくださったご協力のおかげで、会場外も含めた多くの人に楽しんでもらえたと思います。

ちなみに、今年も11月27日(月)から12月8日(金)でファンによるSNS投票を実施します。今年はLINE公式アカウントでもファン投票ができるようになり、ますますの盛り上がりを期待しています。

――ファンとBリーグの距離がとても近いですね! 意見が通りやすい環境のように感じますが、どうですか?

新出: 組織として、世の中の決まりきった考え方を取り払うという「BREAK THE BORDER」の考えを持っているので、新しい取り組みはチャレンジしやすい環境にあります。

自分たちからどんどんおもしろい企画を考え、仕掛けていけば、自ずと露出も増えていくはずです。取材を待つだけではなく、攻めていく。

リアルでおもしろいと感じてもらえれば、デジタルでもポジティブな拡散がされます。会場に足を運んでもらった人に、プレー以外でも楽しんでもらえるような企画を盛り込んでいます。そういった意味でも、攻める戦術でSNSを活用しています。

――デジタルとマスの力の入れ具合は?

新出: マスとデジタルを分離するのではなく、補完する関係だと捉えています。今年の9~10月にLINEスタンプの無料配布をしていたのですが、友だち数が420万人に増加しました。この結果を上層部は「テレビCM打つみたいなものだよね」と解釈してくれています。

今回この施策で友だちになってくれた人は、ライトなユーザーです。ライトなユーザーに対して、突然Bリーグの公式サイトに誘導しても、あまり興味がわかないはずです。そこでライトなユーザーに向けに、「B.HAPPY」というスペシャルサイトを作り、そこへ誘導しています。

B.HAPPY
「これからBリーグを楽しんでみたい方のための、新しいオフィシャル発信マガジン」

バスケットに親しみを持ってもらえるように「バスケットの楽しみ方」「Bコーデ」「カップルでの楽しみ方」といったコンテンツを用意して、週1回程度のプッシュ頻度でコミュニケーションを取っています。そこからナーチャリングして1回でも会場に足を運んでもらえればいいかなと考えています。

最後に

――最後に、Bリーグでのこれからの課題と目標を教えてください。

新出: 今年の目標は、次の2つです。

  • リーグの認知を高めること
  • クラブ・選手の認知を高めること

「認知」とは、毎年秋に実施しているオンラインサーベイ(Webアンケート)の結果を指しています。

Bリーグが開幕する前の2015年は、リーグの認知度は40%でした。開幕直後の2016年は65%まで上昇しました。

しかし、野球は90%、Jリーグは87%なので、まだまだ伸ばす余地があります。また、クラブの認知度、選手の認知度も調査しているのですが、数%と極端に低い結果です。

私たちの最大のコンテンツは、試合であり選手たちです。元NBAプレーヤーの田臥選手のようなプレーヤーをどんどん増やし、名門クラブといわれるようなクラブを作っていくことが、目下の課題です。

葦原: 2020年に入場者数300万人を達成することが直近の目標です。

私たちはコンテンツホルダーで、予算ありきで動かずとも、企画次第でいかようにも話題が作れ、メディアに取り上げてもらえます。つまり、企画力が試されているとも言えます。

デジタルばかりやっていると、デジタルのなかだけでKPIが決まって、デジタルだけで解決しようとしてしまいますが、あくまでもデジタルは目標を達成するためのツールに過ぎません。そこを履き違えてはいけないですよね。

入場者数300万人を達成させるためには、人員補強も欠かせません。さらにドライブさせるためには、組織体制を改めてマーケティングと広報の両輪でBリーグをサポートしていきたいと思っています。

そのため、マーケティング、広報の幹部人材「マーケティング部長」と「広報部長」を募集しています(11/9~12/6)。募集自体は即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」さんにご協力いただいているので、以下の概要からご確認ください。

■Bリーグのマーケティング部長・広報部長の募集に関するページ
https://www.bizreach.jp/content/471

――貴重なお話ありがとうございました。

取材・文・写真:編集部

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