あれから1年、消費者の「無関心化」はどうなった? 日本「だけ」が悪化する低ロイヤリティ化の処方箋

先進国で日本「だけ」消費者の無関心化が進行している? 米国と日本のどこに差があるのか、日本企業はどうすればいいのか。

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「日本の消費者が『無関心化』している」という2016年8月の記事を覚えている方はいるだろうか。中国やインドなどの新興国と比較して、日本や米国などの先進国では次の2つの要因から製品・サービスへの「無関心化」が進んでいるという調査結果だった。

  • どの商品を買っても大して変わらないという思いがある
  • 情報過多で処理することに疲れ、選ぶこと自体に苦労を伴う
2016年の調査結果は「先進国の消費者は無関心化のフェーズに入った」という内容だった
2016年の調査結果は「先進国の消費者は無関心化のフェーズに入った」という内容だった2016年の記事はこちら

あれから1年。同じくアクセンチュアがその続報となる調査結果を2017年9月に発表した。そこで語られたのは、「米国など先進国では無関心化に歯止めがかかる流れだが、世界で『日本だけ』無関心化がさらに進んでいる」という事実だった。

日本の消費者に一体何が起きているのだろうか。そして米国など他の先進国とはどこに差があるのだろうか。そのカギは「若者のブランドへの愛着」にあるという。アクセンチュアの百瀬氏と石川氏に、データを交えながら解説してもらった。

先進国のなかで日本「だけ」無関心化がさらに進行

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 顧客戦略グループ シニア・マネジャー 百瀬亮輔氏
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 顧客戦略グループ シニア・マネジャー
百瀬亮輔氏

調査の内容と結果について説明するのは、アクセンチュアの百瀬亮輔氏。同調査は、32か国2万5,000人を対象に行われた。そのうち日本人は1,300人だ。

全体でいうと、先進国における消費者の無関心化傾向は昨年に引き続き維持している。しかし大半の先進国では、無関心化の流れに歯止めがかかりつつある傾向が見られた。「大半」と書いたのは、日本だけが違う傾向を見せているからだ。

実際の調査結果を順に見ていこう。

まずは「製品・サービスについて購入前によく検討しますか?」という質問に「検討しない」と応えた割合だ。数値が大きいほど無関心であるといえる。日本以外のすべての国で昨年比マイナスとなっているが、日本だけが昨年比プラス5ポイントという結果だった。

製品・サービスへの執着を国別に比較した図。日本は「事前によく検討しない」割合が最も高い
製品・サービスへの執着を国別に比較した図。日本は「事前によく検討しない」割合が最も高い

では、日本の回答の詳細はどうだったのか。11業種の内訳は次のとおり。この1年で、日本においてはすべての業種で満遍なく無関心化が進行しているといえる。

日本では11業種すべてに対して「よく検討しない」と回答した消費者が増えている
日本では11業種すべてに対して「よく検討しない」と回答した消費者が増えている

企業や商品・サービスに対するロイヤリティも日本「だけ」低下

別の角度から見てみよう。無関心化の度合いと、企業や商品・サービスに対するロイヤリティ(信頼・愛着)には相関がある。両者の関係を表したのが次の図だ。ロイヤリティが低いほど、無関心化の度合いも強くなる関係が読み取れる。愛着があれば無関心から遠ざかるのは当然だが、それをデータからも確認できるわけだ。

ロイヤリティ(信頼・愛着)が高ければ無関心化の度合いは低くなる
ロイヤリティ(信頼・愛着)が高ければ無関心化の度合いは低くなる

ここで注目したいのは昨年調査からの変化だ。昨年の調査結果(図中薄いグレーの)と今年の調査結果(図中濃い)を見比べるとほぼすべての国で左上に移動しており、ロイヤリティが向上し、無関心化の度合いも低下していることがわかる。しかし日本だけは右下に移動している。つまり日本だけロイヤリティが低下し、無関心がさらに進んでいるという結果が見て取れる。

無関心化の傾向にある先進国のなかでも、米国はロイヤリティの高さ、および無関心化の度合いに大きな改善が見られた。一方で日本の消費者は、依然として「無関心化」と「低ロイヤリティ化」のトレンドの最中にいる。米国と日本でなぜこの差が生まれるのだろうか?

日本と米国の差は「若年層のロイヤリティ」にあり

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 顧客戦略グループ アジア・パシフィック統括 マネジング・ディレクター 石川雅崇氏
アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 顧客戦略グループ アジア・パシフィック統括 マネジング・ディレクター
石川雅崇氏

同社の石川雅崇氏は「日本と米国では若年層のロイヤリティに差がある」と説明する。

米国では、企業が18~34歳に属する若年層のロイヤリティ構築に成功しており、これが全体のロイヤリティを牽引しているという。無関心化とロイヤリティに相関があるのは先ほど示したとおりだ。

商品やサービスの何に対してロイヤリティを感じるのか、感じていないのかを見ていくことで、無関心化トレンドの原因に迫れるかもしれない。

取引をしている企業・商品に対してロイヤリティを感じますか?」という質問に「感じる」と答えた割合を日本と米国で比較したのが次の図だ。数値が高いほどロイヤリティも高いことを表している。

年代別で見ると米国では18~34歳の若年層がロイヤリティを引き上げている
年代別で見ると米国では18~34歳の若年層がロイヤリティを引き上げている

回答者を18~34歳と55歳以上の年代で分けると、日本では18~34歳の若年層が米国の約半分しかロイヤリティを感じていないことがわかる。

さらにロイヤリティ形成に影響を与える因子について深掘りしていこう。「特定の企業・ブランドに対してロイヤリティを形成する上で、次の要素はどの程度重要ですか?」という質問に「とても重要/重要」と答えた割合を表しているのが次の図だ。日本と米国の消費者が、それぞれ何にロイヤリティを感じているのかの内訳を表している。

日本と米国の若年層を比較すると「製品のパーソナライズ」や「新たな体験」の差が特に大きい
日本と米国の若年層を比較すると「製品のパーソナライズ」や「新たな体験」の差が特に大きい

米国では「製品のパーソナライズ」や「新たな体験」がロイヤリティ形成に寄与している一方で、日本ではそれらの事柄に対して感じるロイヤリティが低いことがわかる。

ここまで「日本の消費者だけ無関心化の度合いが進行し、ロイヤリティも低下している」というトレンドを見てきたが、どうやらその差を生み出す要因の1つはここにありそうだと推察できる。

新たな体験をしたくても日本では「体験する機会」がない?

日本の若者は「製品のパーソナライズ」や「新たな体験」に価値を感じないのだろうか? 新たなサービスの利用意向について調査したのが次の図だ。「次の新たなサービス・体験について、利用したいと感じますか?」という質問に「感じる」を答えた割合を日本と米国で比較している。

新たなサービスの利用意向は日本と米国に大きな差はない
新たなサービスの利用意向は日本と米国に大きな差はない

見てわかるとおり、新たなサービスの利用意向は日米間で大きな差は見られない。つまり日本の消費者も新たなサービスや体験を望んでいるのだ。しかし「実際に新たなサービスを利用しているか」ということになると話が変わってくる。次の図は新たなサービスの実際の利用率と認知率を日本と米国で比較したものだ。

日本で新たなサービスを実際に体験している人は極端に少ない
日本で新たなサービスを実際に体験している人は極端に少ない

先ほどの図では日本も米国と同じくらい「シェアリング・サービスを利用したい」と回答していたにもかかわらず、実際の利用率では大きく差が開いている。

このことから「日本では消費者が新たな体験をしたいと望んでいるのに、ロイヤリティを感じるような体験を企業が提供できていないのではないか?」という仮説が立てられる。

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