生活者の意識や行動を理解するための分析と、実際のマーケティング施策の分断は、多くの消費財メーカーが抱える課題です。これに対し、電通デジタルと楽天グループは、楽天が提供するオフラインでの購買データに基づくIDマーケティングソリューション「RMP- Omni Commerce」を活用することで、分析と施策を一気通貫で実施し、大きな成果を上げました。どのような観点で分析と施策を実施し、実需を創出しながら生活者理解を深めたのか、楽天グループ 山口高志氏と電通デジタル 藤田佳吾に話を聞きました。
1億以上の楽天IDを軸に、オフライン販促から購買起点のマーケティングが可能な楽天「RMP – Omni Commerce」とは?【電通デジタルコラム】
※役職や肩書は記事公開時点のものです。
オフラインでも楽天IDを軸に分析から施策へ
――消費財メーカーは流通の構造上、生活者と直接つながることが難しく、調査・分析と施策の分断という課題を抱えています。これに対して、楽天グループにはどのような解決方法がありますか?
山口 : 楽天グループは、国内最大級のインターネットショッピングモールである「楽天市場」を中核に、70以上のサービスを展開し、楽天エコシステムを形成しています。楽天エコシステム内のユーザーの消費行動分析データは楽天IDに基づいて蓄積されていて、現在、楽天IDの数は1億以上です(2023年3月時点)。
楽天グループが蓄積する消費行動分析データは、「どこで買ったか」に加え、「どんな商品を買ったか」「どのような層の人が買ったか」までが、オンラインとオフラインを通して分かるという点が、特にユニークだと思っています。
――楽天というとECのイメージが強いですが、オフラインの消費行動分析データも蓄積しているのですね。
山口 : そうなんです。オフラインの購買データは、2つの方法で蓄積しています。
1つ目は、「Rakuten Pasha」でユーザーの合意を得て蓄積している、レシート情報の購買明細。2つ目は、小売店の合意を得て蓄積している、楽天ポイントに基づくPOS相当の購買データ。これらのデータを規約に基づいて、一定の範囲で分析等しています。
また、楽天グループには、楽天インサイトという調査会社があります[1]。業界最大規模となる約220万人の自社パネルによるリサーチデータと、行動ログを掛け合わせた、多角的なデータ分析機能を有しています。
楽天IDを活用したソリューションと併せてご利用いただくことで、より効果的なデジタルマーケティングを実施することができます。
ポイントバッククーポンを活用したオフライン販促事例
――2022年9月、楽天グループと電通デジタルの協業により、楽天データを活用した運用型広告プラットフォーム「RMP - Connect」の先行運用が開始されました[2]。こちらを活用したマーケティング事例について教えてください。
藤田 : 楽天では、「RMP – Connect」をベースにさまざまな広告商品を展開しています。今回紹介するのは、マーケティングソリューション「RMP - Omni Commerce」の「ポイントバッククーポン」というソリューションを活用した事例です。
電通デジタルは、アサヒグループ食品株式会社様のサプリメントシリーズ「ディアナチュラ」について、「RMP - Omni Commerce」のうち、「ポイントバッククーポン」を活用した施策を実施しました。
目的はドラッグストアでの売り上げ増加による「サプリメント」カテゴリ内のシェア向上です。加えて、今回の施策で生活者に対する理解を深めることで、今後、デジタル広告やSNSを活用したマーケティング施策全体を精緻化していきたいというご要望もありました。
――施策はどのような手順で進めたのでしょうか?
藤田 : 最初は「分析」です。「RMP – Connect」で楽天のデータベースからターゲット顧客を抽出しました。今回のターゲット顧客は、「過去にサプリメントを購入したことがある人」です。その上で、「どのような属性か」「他に何を購入しているのか」「他に何のサービスを利用しているのか」など、さまざまな切り口で分析し、複数のクラスタにグルーピングしました。
次に「施策」です。クラスタごとの特徴を読み解いて、インサイトの仮説を立て、それぞれのクラスタに対して、広告バナーのクリエイティブを複数制作しました。
「RMP – Connect」は、グルーピングしたクラスタに対し、広告を出し分けることができます。楽天IDを軸にすることで、購買履歴に基づいたターゲット顧客抽出、分析、クリエイティブ制作、広告配信、効果検証を一気通貫で行える。これが「RMP – Connect」の一番の特長です。
――広告の配信からオフライン販促はどのような流れですか?
藤田 : 広告をクリックしたユーザーは、「Rakuten Pasha」内に設置されたLP(ランディングページ)に遷移し、「ディアナチュラ」の「トクダネ」(日替わりのデジタルポイントバッククーポン)を取得します。その後、オフライン店舗で「ディアナチュラ」を購入して、そのレシートを撮影し、「Rakuten Pasha」に送信もしくは、対象店舗では購入時に「楽天ポイントカード」または「楽天ポイントカード」機能が搭載されたアプリを提示していただくと、後日「楽天ポイント」が付与されるという仕組みです。
購買起点とスピード感が特長の「RMP - Omni Commerce」
――今回の施策で活用した「RMP - Omni Commerce」とは、どのようなソリューションですか?
山口 : 楽天が提供するマーケティングソリューションの1つで、オフラインマーケティングを実施するためのソリューションです。
大きな特長は2つあります。1つは、購買起点であること。もう1つは、オフラインでもオンラインのスピード感で施策を実施できることです。
ある商品のマーケティング施策をオフラインで行う場合、一般的には、ユーザーに商品を認知してもらい、興味関心を引いて、購買を促す、という順番、つまりファネルの上部から下部へという流れで施策を実施します。
しかし、「RMP - Omni Commerce」は、オフラインの購買データを分析するところから始まります。
その商品を買った人はどのような層か。同じ特徴を持つのはどんな層か。楽天IDに基づいた属性データ、行動データ、購買データを分析し、ターゲットを抽出します。そして、そのターゲットに対し、楽天ポイントをインセンティブにして、オンライン、オフライン問わず、さまざまな形で購買を促す施策を打つことができます。これが、1つ目の特長である「購買起点」です。
もう1点、「RMP - Omni Commerce」の優位性として強調したいのが、施策実施のスピードです。
一般的な店頭販促キャンペーンの場合、企画、制作、関係者の調整などで、3~6カ月ほど準備期間がかかるとされています。
しかし、「RMP - Omni Commerce」の場合、例えばデジタルクーポン(トクダネ)による販促であれば、クリエイティブが揃っていれば、10営業日で実施可能な状態までご用意することも可能です。オンラインのスピード感でオフラインマーケティングを実施するのが、「RMP - Omni Commerce」の目指す世界観でもあります。
また、「RMP - Omni Commerce」では、デジタルクーポンの発行は成功報酬型です。実際に商品が売れ、その後クーポンが使われた時点で費用が発生する形なので、ROASの予測がしやすいという意味で、試していただきやすいソリューションになっています。
分析と施策、施策と施策をつなげていけるソリューション
――ディアナチュラの事例では、どのような成果が出たのでしょうか?
藤田 : クライアント様からは、想定を上回る売り上げを達成できたことで、ROASの観点から高い評価をいただきました。また、しっかりと売り上げを立てつつ、同時に次の施策につながるような生活者理解を得られたことも、評価していただきました。
特に後者の成果として、店頭での購買に貢献したのはどのクラスタのどのクリエイティブだったのか、明確にその勝ち筋を検証することができたことに、手応えを感じています。
「RMP - Omni Commerce」を使えば、データ分析と施策だけでなく、今回の施策と次回の施策、さらにその次の施策へとつなげていくことができる。それをご理解いただけたことは、われわれにとって、もっとも大きな成果でした。
オンラインとオフラインの融合を進める第一歩に
――本記事で紹介した手法は、どのような課題を抱えている企業にとって役に立ちますか?
藤田 : 店頭での売りにつながるセグメントやクリエイティブが何なのか、漠然としか掴めていないとお感じのご担当者様には、お役に立てます。「RMP - Omni Commerce」を使えば、売り上げを立てながら、今後につながる明確な示唆が得られるはずです。
一般的に、生活者理解のための調査費用は出ていくだけです。その点、生活者理解を深めつつ、売り上げも立てることができる「RMP - Omni Commerce」は、生活者理解を深めたい部署にとって、費用対効果の高いソリューションだと思います。
山口 : 藤田さんもおっしゃるとおり、「RMP - Omni Commerce」は、実需創出をしながら、必要な生活者理解を得られる点が、最大のアピールポイントです。
これからはオフラインにおいても、これまでのようなマスマーケット的な売り方だけではなく、目的やターゲットに応じてインセンティブをつけた販促が求められるようになります。
ステップバイステップでオンラインとオフラインの融合を進めていくことができるソリューションとして、ぜひ「RMP - Omni Commerce」をご利用していただきたいと思っています。
脚注
2. ^ "楽天会員に基づくデータを活用したマーケティング基盤「RMP - Connect」の先行利用を開始". 電通デジタル.(2022年9月20日)2023年4月16日閲覧。
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「電通デジタル トピックス」掲載のオリジナル版はこちら1億以上の楽天IDを軸に、オフライン販促から購買起点のマーケティングが可能な楽天「RMP – Omni Commerce」とは?2023/05/18
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