ブランドセーフティって、実際のとこネット広告のブランディングにどう影響するの?
今日は、デジタル広告の話題を。「ブランドセーフティ」「アドベリフィケーション」は、さて実際のところ、ネット広告のブランディング効果にどれほどの影響があるのでしょうか?(「ブランドセーフティとは?」の基礎解説もあります)
メディアレップのCCI(サイバー・コミュニケーションズ)が行った、日本のインターネット広告におけるビューアビリティの広告評価に関する調査結果をお届けします。
(今回は執筆していてコラムというより記事モードになってしまいましたので、ここから文体が変わります)
調査結果をわかりやすくまとめると
ネット広告の掲載先がブランドセーフなサイトかどうかによって、FQ(広告接触回数)※の増加とともに効果がどう変わるかを調査したところ、
FQが高まるにつれ認知度は高まる。ブランドセーフであってもなくても大きな違いはない。
ブランドセーフなサイトで広告に接触したユーザーは、FQが高まるにつれ、次の変化がみられた(特にFQ3回以上から顕著に):
- 企業(ブランド)への好意度が高まり
- 商品への興味が沸き
- 広告接触後の態度変容が高まる傾向にある
ブランドセーフではないサイトで広告に接触したユーザーは、FQが高まるにつれ、次の変化がみられた(特にFQ3回以上から顕著に):
- 企業(ブランド)への好意度が下がり
- 商品への興味が薄れ
- 広告接触後の態度変容は横ばい、または薄れる傾向にある
調査結果をそれぞれ紹介していく。
広告認知
(広告クリエイティブを提示して)あなたは、これらのバナー広告のいずれかをご覧になったことがありますか?
広告に対する認知率(確かに見た+見たような気がする)は、FQが重なるほどに高まる傾向がある。
とはいえ、広告に接触したサイトがブランドセーフであるかどうかによる違いは、FQと認知率の関係に関しては見られなかった(企業名の認知や商品名の認知も同じ傾向だった)
ブランドへの好意度
あなたは●●という自動車ブランドに対して好意を持っていますか?
ブランドセーフなサイトで広告に接触した場合、FQが重なるにつれポジティブな反応が増加している(実線)。ネガティブな反応も増加しているが(点線)、その増加率は非ブランドセーフなサイトでの接触に比べると低い。
ブランドセーフではないサイトで広告に接触した場合、FQが重なるにつれネガティブな反応が増加する率が高く(点線)、ポジティブな反応は横ばいから減少の方向(実線)。
商品への興味関心度
あなたは▲▲という車種に対して、興味関心がありますか?
ブランドセーフなサイトで広告に接触した場合、FQが重なるにつれポジティブな反応が増加し(実線)、ネガティブな反応が減少している(点線)。
ブランドセーフではないサイトで広告に接触した場合、FQが重なるにつれネガティブな反応が増加している(点線)。ポジティブな反応は横ばい(実線)。
広告接触後の態度変容(来店)
バナー広告について、次の内容に関してどのように感じましたか?
→ 店舗で実際に確認したいと思った
ブランドセーフなサイトで広告に接触した場合、FQが重なるにつれ広告接触後の店舗来店意向が増加し(実線)、ネガティブな反応は減少(点線)。
ブランドセーフではないサイトで広告に接触した場合、FQが重なるにつれ広告接触後の店舗来店に関するネガティブな意向が増加し(点線)、ポジティブな反応は横ばい(実線)。
広告接触後の態度変容(購買)
バナー広告についてどのように感じましたか?
→ 購入したいと思った
ブランドセーフティかどうかにかかわらず、FQが1回~2回以上までは購入意向は高まらなかった。
ブランドセーフなサイトで広告に接触した場合、FQが3回以上で購入意向が12ポイント増加し(実線)、購入に関するネガティブな反応も減少(点線)。
ブランドセーフではないサイトで広告に接触した場合、FQが3回以上で購入に関するネガティブな意向が増加し(点線)、ポジティブな反応は横ばい(実線)。
そもそも「ブランドセーフティ」ってなんだっけ?
「ブランドセーフティ」とは、自社が出稿しているネット広告がどのようなサイトに掲載されるかに関する考え方(と判断の指標や仕組み)のこと。
現在のネット広告は、さまざまな経路を経てサイトに掲載される。にもかかわらず、最終的に掲載されるのがどのサイトなのかを広告主が細かくコントロールすることはもちろん、配信後にすべての配信先について調べることすら難しいことが多い。
そのため、広告主が意図せぬ(知らぬ)状況で、広告主にとって不適切な広告接触が発生することもある(後述)。
そうした状況を避けたり、より良い広告接触の状況を増やしたりするために、広告配信の時点でどのようなサイトに掲載するかをコントロールできるようにする考え方や、そのための仕組みを「ブランドセーフティ」「アドベリフィケーション」のように呼ぶ。
ブランドセーフティを意識する広告主には、大きく分けて次のような考え方があるだろう。
支払っている広告費が反社会勢力やテロリストなどに支払われ、それらの資金源になることを避けたい。
支払っている広告費がヘイト・暴力・非合法的商材などのようなサイトに支払われ、企業がそうした組織をサポートしているように消費者から見られることを避けたい。
掲示板・まとめサイト・アダルトサイトなどのような、印象が良くない場合があるサイトに広告が載るのを避けたい。
自社ビジネスや広告内容と相性の悪い情報が掲載されている面(コンテンツ)に広告が載り、その情報と自社のイメージが結びつけられてしまうのを避けたい。
より品質の高いメディアを通じて消費者に広告を届けることで、より良い印象の醸成につなげたい。
前に記述したものほど上場企業や大企業が意識することが多い印象があるが、経営方針によっては企業の規模を問わずこうしたことを意識するようになってきている傾向がある。
また、ブランディング目的ではなくコンバージョン目的の広告出稿においても、こうしたことを意識する動きも出てきている。
で、結論としてブランドセーフティは意味あるの?
冒頭のサマリにも示したが、この調査結果からは、単純な「認知獲得」の効果に関しては、広告接触サイトがブランドセーフであるかどうかとの相関性はみられなかった。
しかし、ブランドへの「好意度」「興味関心」や「来店や購買の態度変容」といった効果については、ブランドセーフティの影響だとみられる違いがあった。
そのため、単なる認知ではなくポジティブな認知に結びつけ態度変容を促すためには、ブランドセーフティを考慮したネット広告配信を行う価値があるのではないかと考えられる。
また、ブランドセーフではないサイトで広告接触した場合にはネガティブな反応が増加する傾向が(ブランドセーフなサイトでの接触と比べて)みられた。
そのため、アンチとの接点を増やさないことや、炎上の火種を増やさないことといった観点でも、ブランドセーフティの判断は役に立つのではないかと思われる。
調査概要と補足
- 広告主: 某自動車メーカー
- 広告掲載期間: 2017年7月21日(金)~7月31日(月)
- 調査期間: 2017年8月1日(火)~8月3日(木)
- 調査方法: インターネットリサーチ
- 有効回答数: 1000件(全国)
- 調査リリースページ: http://www.cci.co.jp/news/release/2017_09_08/1.html
調査は次のようにして行った。
- 当該広告主のキャンペーン実施時にあわせて調査を実施。
- 配信する広告には、Integral Ad Science(IAS)とインターネットリサーチ企業のタグを設置。
- 広告はCCIのBEYONDX PMPとオープンRTBそれぞれに配信。各ユーザーの広告接触回数を把握。
- インターネットリサーチのモニターで広告に接触したユーザーに対して、アンケートを実施。
調査結果やグラフに関する補足は次のとおり。
本調査では、広告枠評価指数「TRAQ Score」が1000点(満点)のサイトのみを「ブランドセーフ」とし、それ以外を「ブランドセーフではない」としている。
回答者のうち、「ブランドセーフなサイトでのみ接触者」と「ブランドセーフでないサイトでのみ接触者」の比率は、おおよそ次のとおり。
ブランドセーフ 1 非ブランドセーフ 1.5 FQ回数の階級それぞれの比率は、おおよそ次のとおり(いずれも「○回以上」のため重複あり)。
1回以上 3 2回以上 2 3回以上 1 本記事に掲載したグラフの縦軸には数値を示していないが、すべて0から始まっている。ただし、縦軸の最大値や目盛り線の単位は、すべてのグラフで同じとは限らない(同じテーマに関する2つのグラフではそろえている)。
CCIによる調査ではブランドセーフティとビューアビリティに関する調査が行われていたが、本記事ではブランドセーフティに関してのみ掲載している。
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