Googleアナリティクス地域レポートの正確性は? どこまでわかるもの?
※記事初出時に編集部の作業ミスで次回の内容が掲載されていました。2017年2月23日10:55に正しい内容に修正いたしました。
Googleアナリティクスは、ユーザーがWebサイトを利用しているときのおおよその場所を特定することができる。第31回のユーザーの性別や年齢などの「誰が」に加えて「どこで」という情報もわかるわけだ。
世界展開しているブランドや、全国展開している事業なら居住地域別の利用実態を知ることは有益だ。また、リアルな店舗を持っている事業者や地域性の高い商品・サービスを提供している事業者なら、ユーザーの場所に応じて最適な広告を出すといったマーケティング手法も可能となる。
地域を調べるのには「IPアドレス」という情報を利用している。ここでは、その仕組みとデータの精度についても触れていこう。
- サイト利用者のおおよその場所を知る
- IPアドレスの仕組みと地域の精度を知る
ユーザーの利用場所は「地域」レポートで確認できる
Webサイト利用者の利用場所を知ることのできるレポートは、[ユーザー]>[地域]>[地域]レポートだ(図1赤枠部分)。
標準では「国」ディメンションが選択されているので、国別のサイト利用状況を横並びで比較する表形式の部分を見ることから始まる(図2赤枠部分)。日本だけで事業展開している事業者の場合は、セッションのほとんどが「Japan」に集中しているだろう(図2青枠部分)。
もし世界で事業展開しているサイトで、各国の利用状況を同一プロパティで計測しているのであれば、このレポートを見ればどの国が相対的に成果を出しているかは一目瞭然だ。たとえば、次のような国はないだろうか?
- 売上比率は相対的に高いが、Webサイトのセッション数(訪問数)の割合は相対的に低い国
- Webサイトの作りは同様なのに「ページ/セッション」(1訪問あたりのページビュー数)が高い国
こうしたデータがあれば、各国のマーケティング責任者と話をするきっかけにもなるのではないだろうか。
地域の分析単位は「大陸」「亜大陸」「国」の順にドリルダウンする
プライマリ ディメンションの並びを見れば、「国」ディメンション以外に「市区町村」「大陸」「亜大陸」といった選択肢があるのがわかる(図2緑枠部分)。
[地域]レポートの分析軸(ディメンション)の粒度は大きいくくりの順に、次の5つがある。
- 大陸
- 亜大陸
- 国
- 地域(都道府県レベル)
- 市区町村
「プライマリディメンション」のうち、最も大きなくくりが「大陸」だ(図3赤枠部分)。アジア(Asia)、アメリカ(Americas)、ヨーロッパ(Europe)、アフリカ(Africa)、オセアニア(Oceania)の5分類があり、不明を意味する「(not set)」も含めると最大で6つの表示がある(図3青枠部分)。そのうちの1つの大陸名をクリックすると、大陸内の「亜大陸」のデータにドリルダウンできる。
「大陸」の次に細かいくくりが「亜大陸」だ。アジアの意味での「亜」ではなく、「大陸の中の一部」という意味を表す。
たとえば「Asia」(アジア大陸)の中には、南アジア(Southern Asia)、東アジア(Eastern Asia)、東南アジア(Southeast Asia)、西アジア(Western Asia)、中央アジア(Central Asia)の5分類がある。「亜大陸」ディメンションを選択したレポートで亜大陸名をクリックすると、その亜大陸内の「国」ディメンションにドリルダウンできるというわけだ。
最も細かいディメンションは「市区町村」
最も細かい「プライマリディメンション」が「市区町村」だ(図4赤枠部分)。訪問数の上位を見ると、「Minato」(港区)、「Shinjuku」(新宿区)など東京都は23区レベルで表示されている。あとは「Osaka」(大阪市)、「Yokohama」(横浜市)など市のレベルで見ることができる(図4青枠部分)。
なお、このレポートで市区町村名をクリックしてもそれ以上細かくはならず、クリックした1行が表示されるだけだ。
日本国内を中心に活動している事業者の多くは、おそらく都道府県レベルに一番興味があるのではないだろうか?
都道府県レベルで見るには、図2の「国」ディメンションが選択された状態で「Japan」をクリックすればよい。すると「地域」ディメンションが表示される(図5赤枠部分)。
「地域」ディメンションの項目を見ると、「Tokyo」「Osaka Prefecture」「Kanagawa Prefecture」などとなっている(図5青枠部分)。東京都が「Tokyo」で北海道が「Hokkaido」、それ以外の府県は「○○ Prefecture」という表記パターンになっている。
つまり、「地域」ディメンションは日本においては都道府県レベルを表している。なおこのレポートから市区町村にドリルダウンすることはできない。この下のレベルの市区町村を見たいのであれば、プライマリディメンションの「市区町村」(図5緑枠部分)を選択しよう。
地域ごとの傾向を見ていると、新たな課題に気付けることがある。たとえば本社や支店、実店舗がないのにサイト利用が意外に多い地域はないだろうか? そうだとすれば、新たな拠点を出すと成功するかもしれない。
また、新規ユーザー比率が低くておなじみさんばかりの地域はないだろうか? 実際にその地域の営業成績が悪ければ、その地域でのキャンペーンを検討できないだろうか。あるいは、セッション数のわりに成果(コンバージョン率)が低い地域はないだろうか。その地域の担当者に「地域性」という理由で説明できるのか聞いてみてはどうだろう。
そもそもIPアドレスでどのくらい地域を正確に絞り込めるのか?
冒頭に書いたように、Googleアナリティクスでは、計測対象サイトにアクセスしたユーザーのIPアドレスから「地域」レポートを作成している。
IPアドレスとはわかりやすくいえば、「インターネット空間における住所」だと考えてほしい。Webサイトだけでなくメールをやりとりをする場合でも使われる。「どこの場所の何に対して通信をするのか」とお互いの場所を伝えて通信をするための所在地だ。ただ、IPアドレスは物理的な住所とは異なる。そのあたりをもう少し説明していこう。
Googleアナリティクス公式ヘルプ内の「データの保護」というページにもIPアドレスを利用している旨が明記されている。
- データの保護 - アナリティクス ヘルプ
https://support.google.com/analytics/answer/6004245?hl=ja
サイト利用者のIPアドレス情報を取得し、その情報を「IPアドレスと地域の対応データベース」と照合して「地域」のレポートを作成しているはずだ。おそらく全世界をカバーしている何らかのデータベースを利用しているものと考えられる。
まずは「そもそもIPアドレスからどの程度利用地域を正確に絞り込めるのか?」という問題を押さえておこう。
IPアドレスは各種管理団体がそれぞれのレベルで存在していて、IPアドレスの分配を担当している。まずは国際管理団体「ICANN」が、国や地域ごとにIPアドレスを分配している。そうして分配されたIPアドレスを、さらに国ごとの管理団体が下位のISP(インターネットサービスプロバイダー)に分配するという仕組みになっている。
たとえば日本においては、「日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)」がIPアドレスの管理を行っている。
つまり「国ごとに分配されたIPアドレスが、さらにどの地域に割り当てられているか」というデータベースがあれば、それと照合すればよいわけだ。問題は「どこまで細かく情報がわかるか」という点だろう。
精度の高いデータベースはあるが、100%正確に特定することは不可能
たとえば、日本全国でサービス展開しているISPに対して、ある範囲のIPアドレスが割り当てられたとしよう。そのISPでのIPアドレスの利用がどの程度細かく地域別に割り振られているのかによって「IPアドレスで都道府県レベルまで正確にわかるのか」「市区町村レベルまで正確にわかるのか」といった精度は異なってくる。
日本のIPアドレスのエリア情報データベースとしては、サイバーエリアリサーチが管理するSURFPOINTがある。このデータベースを利用すると市区町村まで判定可能だ。
こうした情報を使うことでかなり高い精度で利用者の所在地域を判定できる。とはいえ、IPアドレスの仕組みを考えると「利用地域を100%正確に特定することは不可能」だと考えておくのがいいだろう。
たとえば小規模な企業が利用している小さなIPアドレスブロックが、実際にどこで使われているかをリアルタイムに100%データベースに反映することは不可能なことに加えて、どれだけデータベースが正確でも、企業内からプロキシを通したアクセスやVPNを通じたアクセスなどでは実際にアクセスしている人の所在地とは異なる場所だと判定されることになる。
ましてや、Googleアナリティクスが日本の精緻なデータベースを日本のレポートだけに適用しているとは考えにくい。地域のレポートを見るときは「その程度の精度である」ということを押さえておくべきだろう。GPSのようにピンポイントで居場所の近くを特定するような精度にはならないので、大きな傾向の参考にするのはいいが、「市区町村レベルの細かい数字を見て一喜一憂しても仕方ない」といったくらいの緩い見方が必要だろう。
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