見るゾウ! 知るゾウ! ユーザー像!

ユーザーは困っていることに気づかないゾウ――たぶん、タブの話(第2回)

ユーザーは「○○に困っています」と頻繁に発言するが、それが本当かどうかは、操作を観察するしかない

上級者? 初心者? 田臥さん(仮名)の場合

こんにちは! 象好きのかたわら、都内のパソコン教室などで「ユーザーがなぜ間違えるのか」「何が間違いの原因なのか」などを観察する業務を行っているモリマミコと申します。ゾウが好きだゾウ(定例のご挨拶)

さて、本日のユーザーは、田臥さん(仮名・50代女性)。パソコンとスマホを使い、ブログを書き、かわいらしい手作りの作品をいろいろなサイトで販売しているという。自分のサイトも持っており、かなりアクティブなユーザーだ。一般的には上級ユーザーだといえる。周りには「スマホもパソコンも十分に使いこなしている人」に映るはずだ。

しかし田臥さん自身は、自分のことを「機械音痴」だと主張し、機械に対する苦手意識を抱えている、「永遠の初心者」のような人だ。

さて、田臥さんは何に困っているのか? 何が彼女のストレスなのか?(私の挟むギャグが、一番のストレス鴨鍋?)

パソコンが苦手な「永遠の初心者」がやっちゃう「アレ」

ユーザーを観察して5000人。最近では田臥さんのような「サイトやブログは持っていても、永遠の初心者」のような人がたくさんいる。そんな田臥さんの最初の質問はこちらだ。

メールで送られてきたアドレスの先の意味がわからないから、見てもらえる?

合点承知の助でござる! 「アドレスの先の意味」というのは、URLから誘導されたウェブページのコンテンツのことだ。

田臥さんがデスクトップのGmailへのショートカットアイコンをダブルクリックする。Chromeが起動しGmailが表示され、該当メールを探し出した。

そこに書かれたURLをクリックすると、別のタブが開いた。ショップへの集客のコツが書かれている。残念ながらWeb担のページではなかった。淡々と、そのページの解説をする(Web担のページだったら担担麺を張り切って食べるくらい頑張って解説するのに)。

あともう一個教えてほしいの、もう1通メールが来ていて、それもよくわからなくて……。

と、別のメールも読もうとしたところで、彼女はChromeの「×」をクリックしてブラウザを速攻で閉じてしまった。ソッコークリックする!?

すでにGmailのタブがあるのに、後ろに隠れてしまったため、わからなかったようだ。彼女は「後ろにタブとして残っている」というのを知らなかったのだ。

あ~~~~~っ ×踏んじゃった ×踏んじゃった……。

ネコ踏んじゃったの音楽で、猫が軽快に脳内を駆けていく。そして、Chromeが終了。Chrome終わってクロ(ラ)クロ(ラ)

たぶん使いこなせてない「タブ」

タブ操作を知らない彼女が再度Gmailを見るためには、「ブラウザを起動しなおす」という選択肢しかない。タブ操作はタブーなの?という疑惑がモリモリと湧く(名は体を表す)。

彼女のPCは決してスペックがよいわけではないので、Chromeの再起動にも時間がかかる。せっかちな私にとっては地味にストレスである。

田臥さん、ここ(ブラウザ)の×じゃなくて、ここ(タブ)の×を押したほうが、操作が早くて楽ですよ。

と声をかけると

あ、そうなんだ。そういう難しいの、よくわかんない。てへっ。

と、50代にはまったく見えないかわいらしい笑顔を私に向けた。

私が「てへ」などと言おうものなら、「The」を「てへ」と読んだと言われる長嶋茂雄氏のファンだと認識されるだろう。

しかたがないので、Gmailをもう一度開き、リンク先の内容を解説する。そして彼女は、「もう1個、解説お願い!」と言い、またもやChromeのウィンドウ全体を、光より早く青い稲妻のようなスピードで閉じた。

うっ。寝耳にミミズ、目から目玉。衝撃で声にならない声が出る。私の人生哲学の1つに「覚える気がない人には伝わらない」というのがあるのだが、まさしく、いまがそれだ。

永遠の初心者を見分けるリトマス紙、「タブ」機能

「新しいタブ」とかけて「抜けた髪」と解く、そのこころは、「どちらも元には戻れない」

必要な機能は使っても、それ以外の機能は知らない。そういう“永遠の初心者ユーザー”を見分けるリトマス紙とも言えるのが、ブラウザのタブだったリし(ト)マス。

タブブラウザでは、新しいページを開くと、新しいタブが作られる。ウィンドウは増えず、戻るボタンはグレーアウトする。そうすると、タブブラウザの操作に精通していないユーザーは、前のページに戻る方法がわからずブラウザ全体を閉じてしまう

「タブを切り替える」という使い方を知らないため、「あ、消えちゃった」というつぶやきとともに、サイトの存在自体が目の前から消えてしまう。戻らないのであれば閉じるあるのみ、まるで戦国時代だ。

サイトが再訪されない原因にも

最近は、「検索結果をクリックすると別タブ」「設定画面を開くと別タブ」というサイトが象化、否、増加している。ぞうさんが増えるのであれば全私が大喜びだが、別タブが開くとタブン、泣く

たとえばAmazonでも、商品一覧をクリックすると新しいタブが開く。開かれたページの中央に、興味を惹く関連商品やレコメンドがあれば、戻らなくても先に進むことができるので、「新しいタブで開いている」と考えないですむ。というよりも、新しいタブが開いていることに気付いていない。

しかし、関連商品の項目に、欲しい商品がレコメンドされてなかったらどうなるだろう?

こういうサイトだと「戻りたい欲求」があっても、田臥さんのような永遠の初心者は、もう戻れない。そこに待ち受けている初心者の行動は、「閉じる」あるのみだ。UIがばらばらなサイトだとなおさらだ。運命のあの子だって別タブで開いたらそのままさよならだ。全私が泣く悲恋の物語。名前を覚えていないあの子には、もう二度と、会えない。

このような永遠の初心者ユーザーの行動を見れば、EC担当者は、象好きでなくても、ゾウっとするに違いない(ゾウさんの世界にようこそ!)

「苦手」を主張するユーザーに共通する傾向

「パソコンが苦手だ」と主張するユーザーは、「クリック」「戻る」「閉じる」以外の、「考えなくてはいけないブラウザ操作」を、とてもストレスに思っている。手順通りに操作できれば、ストレスは溜まらない。そこに、「なぜそうなるか概念を理解しよう」という姿勢はない。

当社では大人のための数学教室も運営している。そこでも「数学が苦手」という意識を持っている人に出会う。そして、そういう人のなかに、「公式」にこだわり、「公式で教えてほしい」「どういうときにどういう公式を使うのかを知りたい」「この公式を使って解きたい」という人が多い。とにかく、「公式を覚えて“簡単に”解けるようになりたい」と希望するのだ。

「公式=手順」を覚えてその通りに使うのは楽だが、「なぜそうなるか」という概念を考えるのはストレスになる。これは、パソコン苦手を主張する層と同じ考え方だ。

ユーザーは、「なぜそうなるか」には無関心――謎の行動攻略法

今回のユーザー像

田臥さんに、お困りごとはありません。何も困っていない。ストレスは感じています。しかし、それは普通と思っています。タブの使い方などを説明しても「そうなんだ」とはおっしゃるが、内心では、

いつものやり方で困らないのに新しいことを覚える必要がある? だって、それでなくても機械苦手なのに

機械が苦手だから、ちょっと面倒くささを感じているけれども、仕方ないわ、苦手なんだもの

機械が苦手だから、難しいことはしたくないわ。簡単なやり方さえわかればいいのよ

と思っているのでしょう。パソコンが苦手だと主張するユーザーは、苦手意識が強すぎて、困っていることの本質は認識しないのです。

ユーザー自身が話している内容は、実はお困りごとではないことがほとんどです。「パソコンが苦手」ということは、お困りごとの本質ではありません。「苦手」という言葉を身にまとうことで、操作について考えることを避けているのです。

誰でも、「苦手」なことはなるべく考えたくない。だからこそ、ユーザーが考えずにしている行動を観察することで、できる人にはわからない面倒くささが見えてきます。

対処法:「ユーザーの発言」ではなく「ユーザーの操作」を観察せよ

トラブルシューティングで重要なのは、「ユーザーに共感し、ユーザーの気持ちになること」とよく言われます。しかし、結局は他人、共感も目線も、最終的には「自分のフィルターを通したユーザーの気持ち」に過ぎません。

だから、「ユーザーの操作」を観察すべきなのです。

  • 共感ではなく、理解する。
  • 行動を見て、判断する。
  • 自分の考え、さらにはユーザー自身の発言とも切り離し「行動」自体を冷静に観察する。

「ユーザーの発言」は、貴重な意見です。しかし、パソコン教室の現場で、何が困っているのか聞いても、たいてい「困っていると主張していること」と「本質的な問題の原因」は、違ったりします。

「○○に困っています」という言葉は、頻繁に発言されます。しかし、本当はどこで困っているのか、本人もわかっていません。「本当に困っていること」「不満に思うポイント」を発見するには、ユーザーの操作そのものを観察するしかありません。

だから、ユーザーを観察することはとても重要なのです。タブン重要なのだ! だって今日のネタはタブの話だから!(ドヤ)。ちなみに聡明な皆様は、今日の主人公の仮名が「田臥さん」になった理由を、ご理解いただけたかと思います。そう、「タブ」の話だからです(2回目のドヤ)。

ユーザー行動まとめだゾウ

  • ユーザーは、“真の自分のお困りごと”に気付いていない。それを肝に銘じておきましょう。

  • 自分のフィルターを極力通さず、ユーザーを観察して、真のお困りごとを発見しましょう。

ちなみに、私は圧倒的ゾウ派であり、キリン派には共感できません。でも「首長に萌えるキリン派が存在する」ということは理解できます。首長萌え派が鼻長萌え派に共感できなくても、理解する。そうやって、共存していくのだと思います。ユーザーと提供者も。

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