見るゾウ! 知るゾウ! ユーザー像!

苦手な操作を○○してしまうユーザーに、要注意だゾウ!(第8回)

優秀なアナタには想像できない、苦手な分野・行動・対象に対して○○という行動をとってしまうユーザーを理解できていますか?

ネットやコンピュータが「わからない」「苦手だ」という人は、まさかの行動をとる。画面の表示を把握して判断するのではなく、思考をストップさせて「上から○番目をクリック」のように手順を丸覚えしようとするのだ。優秀なアナタには想像できないユーザー行動を理解しよう。

皆様は、何か苦手なことがありますか?

こんにちは! アジアゾウさんが大好きなモリマミコです。象好きのかたわら都内でパソコン教室を運営し、ユーザーテストを行い、ユーザーと企業の懸け橋となるお仕事をしています。「増産体制」という言葉を聞くと、“人間が象さんの格好をしている……”と考えてしまうほど、象さんが好きです。

ところで、皆様は、何か苦手なことがありますか?

私は、苦手なことがたくさんあるのですが(えっへん)、そのなかでも「運動」がとくに苦手です。それなのに、遠い遠い昔、ゴルフを習っていたことが実はあります。鬼のかく乱、鬼が書く欄、「趣味:ゴルフ」と書くのに憧れたからです。

しかし、本当に運動が苦手。先生が「腰のひねりに合わせて、上体を回して」などとおっしゃっても、全然意味がわからない。腰腰~と思っても、上体の状態が悪くなる。「自然に!」と先生にいわれても、それがとにかく難しい。「人間の自然な振る舞い」ということについて考え始めてしまい、ますますうまく動けなくなってしまう性質なのです。

まったくうまくならず、ボールは前に飛ばず、気分は落ちる。悩んだあげく、行き着いたのは、こんな考え方でした。

腕の角度だけ覚えて、それだけ決めてれば、間違えなくない?

不審がる先生にすべて腕の角度で教えていただき、なんとか練習場でそれなりの飛距離が出るようにはなりました。……しかし、グリーンに出ると、傾斜によって角度が変わってしまうことが判明。私にはファジー機能は付いておらず、結果はさんざん……。ゴルフは止めてしまいました。

この話を友人にしたところ、

角度で覚えるとか信じられない
練習すれば、どうにかなるでしょ
グリーンに出れば、どうにかなるよ

などと言われました。しかし、どうにも苦手意識は止まらない。できる人には苦手な人の気持ちはわからないと強く思ったのでした。

丸尾さんは、苦手な操作を○○で乗り切ろうとする

丸尾さん(仮名、52歳、女性)が弊社のパソコン教室にお越しになった。「お久しぶりです!お元気ですか?」と聞くと「元気じゃないわよ~」との返事。そして大きなため息をついた。

はあああ

どうしたのかを聞くと、最近、社会人大学に入り、レポートに追われているとのこと。まずはその向上心に脱帽する(パタパタパタパタ←帽子が飛んでいく音)。

私、機械系全般が苦手なのよ~! このあいだ習ったばかりのパワーポイントで、ようやくレポート作り終わって、よかったー!と思ったら、『提出はインターネットで』って言われて……。提出用のページも見たんだけど、全然分からないの!!

ちょっとレポートの提出を、手伝ってもらえない?

レポートは作り上げたのだが、それを提出できないという。レポートは、専用Webサイトにアップロードすることで提出する形となっている。画面を見せてもらうと、ごく一般的な受付サイトに見える。確かに決まった手順を踏まなくてはいけないが、とくに難しいことではない。

先生は、わかっていることを前提に話すから、「わからない」って言えないし、わからないからますます混乱しちゃって……

そう、私のような「わかっている人」にとっては難しくないが、丸尾さんにとっては難しいのだ。

そこでとりあえず、すべての操作方法を教えて、そのとおりにやってもらう。実際にレポートを提出してもらい、丸尾さんは、すべての手順をきちんとメモ。

全部覚えたわ! 基本的なことだから、先生に聞けなくて困っていたけど、これで全部覚えたから、次は大丈夫よ。よかった!

と笑顔でお帰りになった。

丸覚えしても、記憶も状況も変わる

しかし後日、困った顔の丸尾さんが、再度いらした。

また、わかんなくなっちゃった! 締め切りが迫っているから、提出のやり方を、もう一度全部教えて! 絶対次は、1人でできるようにがんばるから!!

またレポートの提出を手伝ってほしい、というお願いだった。先日のメモを見てもらうと、

まずね、おかしいのよ。この、上から2番目のマークをダブルクリックすると、パスワードを入れる画面に行くはずなの。でも、なんかそうならないのよ

と言う。「マーク」とはデスクトップに置いてあるアイコンのことらしい。パソコンの上から2番目を見ると、そこには、Chromeのショートカットアイコンが鎮座している。しかし、このショートカットアイコンは、まったく別のサイトに移動する内容だった。どうも、思わぬタッチ操作によって、元のアイコンが移動してしまったようだ、画面内を探すと、なんと画面の真ん中に、ちょこんと座っていた。

とりあえず私はアドバイスする。

「上から2番目」とか場所を丸覚えするんじゃなくて、アイコンに書いてある文字を読んで、確認して開いてくださいね

この「画面内の場所」という覚え方は、パソコンに苦手な人がよくやってしまうやり方だ。形や文字を覚えて「その意味を考えて選ぶ」のではなく、「上から○番目、左から○番目を選ぶ」と丸覚えしてしまうのだ。

その瞬間は楽だが、世の中は記憶通りにはならない。パソコンの表示は、簡単に変わってしまう場合が多い。記憶そのものが改ざん・忘却されることもある。

私は象さんに会ったとき、手(鼻)を振ってくれた気になっている。しかし、写真を見ると、象さんはバナナしか見ていない。記憶は改ざんされる。それも人の都合にいいように。

えー、ここに行っちゃったの? なんだ、もうどうしようか、パニックになっちゃった

マークが動くこともありますし、このChromeのマークは、いくつかデスクトップにあるので、この文字をメモしてくださいね

はい、よかったー

彼女がそう言いながら書いたメモを覗いたら、「真ん中」と書いてあった。嗚呼……。まだまだ道は長そうだ。象さんのお鼻みたいに。

レポート提出サイトを開いてみると、前回のときよりもレポートを提出しなくてはいけない授業が増え、提出を促す文字が赤くなっていた。これがウワサの赤文字系か。女子大生気分を味わえるサイトである。ありがたい(なにが)。

いっしょに操作をしながら、丸尾さんは「下の方」「UPLOAD」「右のボタン」などと、細かくメモをしているが、あいかわらず、丸覚え方式。しかも細かすぎて、逆に応用できなそうだ。そして、提出用のサイトは、少し、使いづらい。

今のメモの書き方だと、後でまた混乱しそうですよ

操作の流れで解説しますので、画面の意味を確認しながら、提出まで進めましょう

と伝えても、

そうなんだろうけど、私、全部書かないと覚えられないのよ

かたくなだ。そして結局、次回のレポート提出も「わからない!」ということで手伝うことになったのだった。

「丸覚え」が、さらに対象を「苦手」にしてしまう

丸尾さんは、覚える気がないわけではない。むしろ丸覚えしようとする。

「できない」「苦手」という気持ちが、「すべて丸覚えしなくては」というプレッシャーにつながっている。

しかし結局、ガンバリが滑ってしまうのだ。これはつらい。

気持ちはわかる。私も、ウケるギャグを言わなくちゃ!という焦燥感で滑るギャグを生み出してしまう。そして、滑れば滑るほど勢いがつくので、ノンストップギャガーさんになってしまう(反省はたまにする。でも、ほとんどスルー)。

はあああ、パソコンとかネットって、苦手なのよねえ

と、丸尾さんのため息は、どんどん深くなっていく。

パソコンなどの「機械」「IT」だけではなく、「数学」「英語」「運動」「料理」などなど、世の中にはさまざまな「○○系苦手」がウヨウヨしている。

「○○が苦手!」という人に○○について話を聞くと、苦手意識が強すぎることにより、不安を感じ、その不安が「できないに違いない」という気持ちを象福、ちがった、増幅させ、思考をストップさせていることがわかる。

「できる人にはささいなこと」が、「苦手な人には大問題」だったり、ときには「苦手な人には恐怖」だったりするのだ。まるで怨霊や幽霊だ。

「幽霊の、正体見たり、枯れ尾花」というぐらいなので、わかってしまえば怖いものではない。しかし、やっぱり、「できない」と思ってしまっている人にとって、幽霊(できないと思い込んでいること)はとてつもなく怖く感じられるものなのだ。

優秀な「わかる」「できる」人が、サービスの質向上を阻害している

このように、ユーザーが苦手意識を持ってしまう状況、丸覚えしてしまう状況について、逆に「提供者=わかる人」の側から考えてみよう。わかる人は言う。

考えれば、丸覚えしなくてもできるでしょ?
そのくらい、わかるでしょ?
ボクは、そんなことはしない!

私も、覚えようとして考えないユーザーさんに対し、「一回深呼吸して、考え直してみようよ」と言いたくなることがある。しかし、そのときに思い出すのが、前述の「ゴルフ」での経験だ。

ある日、ゴルフボールのどちら側に立つのか、グリーンに立ったときにど忘れしてしまったことがあった。いつものフォームと反対側に立てば、もちろん反対側にボールが飛んでいくのは「当たり前」だ。しかし、常日頃、ゴルフに苦手意識を感じていた私は、ど忘れしてしまったのだ。

「信じられない、ギャグでしょ?」と友が言う。そこで、「苦手すぎてわからない」というのは、できる人には理解されないのだと思い知った。

繰り返すが、「わかる人には、苦手な人の気持ちは、露ほどもわからない」のだ(関西人が関東人のツユを認めないという話ではない)。考えすぎて、記憶が飛んで、考えられなくなり、すべてわからなくなる、というような状況が想像できない。苦手な人は、考えることができない、考えてもわからないのだ。

わかる人は、苦手な人に共感できない。なぜならば、わかるから。わからなくても考える余裕があるからだ。「なぜ、こんなことがわからないのか」と考え、余裕があるから「努力が足りないからではないか」と思うのだ。そして「わかる」人の視点でサービスを提供するから、苦手な人はますますドツボにはまる

サービス提供者は当然、「できる人」「わかる人」だ。そのため、ユーザーの真の姿を理解せず、「これぐらいなら使えるはず」「考えればできるはず」といった機能を提供してしまう場合がある。

しかし実際にサービスを利用するユーザーすべてが、「できる人」「わかる人」だとは限らないのだ。

ユーザーはこれくらいできるでしょ?
自分だって努力してできたんだから、他の人だってできるでしょ?

という“自分中心のユーザーゾウ”のせいで、“苦手意識のあるユーザー”を理解するという大切なことをしなくなってしまうのだ。「わかる人」「できる人」の脳内のユーザーゾウは、幻象、じゃなくて、幻想なのです。ゾウブン足りなくて、象さんに会いに行く夢を見るのですが、ソレも幻想……

「わかる人」ほど、ユーザーテストをしよう

「わかっている人」が自分の物差しで「苦手な人」を測ってしまったら、苦手な人がなぜサイトやサービスをうまく使えないのかは、永遠に理解できないだろう。

では、「わかる人」は、どうやれば苦手な人に寄り添えるだろうか?

その答えの1つが、「ユーザーの観察」つまり、ユーザーテストである。堅苦しいユーザーテストを最初からする必要はない。「わかる人にとって、最初のユーザーテストの目的」とは、「苦手な人の存在を理解すること」だからだ。

その昔、ユーザビリティならぬ「オカンビリティ(オカンも使える)」というのが、私のなかでトレンド入りするワードだった。というのも、多くのシニアが次のように愚痴る。

苦手だから聞いているのに、娘・息子に習うと難しく教えられる。「なぜそう間違った、なぜそう考えた!なぜわかろうとしない!?」と、超怒られる

娘・息子たちは、オカンの行動を、自分の“わかっているモノサシ”で測っているのだ。だから怒る。怒っていないかもしれないが、醸し出す雰囲気が怖いのだろう。苦手な人にとっては、少しのことがとても大きな問題に見えてしまう。

こんなとき、オカンの行動も、ユーザーテストへの反応だと考えよう。そうすれば、ユーザーテストの体験にもなるうえに、共感できずともに理解する練習にもなる。

時折、苦手なオカンの存在をかたくなに信じてくださらない人もいる。

そんなオカンは実在しない。うちのオカンはこれだけ使える

まあ、そこは落ち着いて、象さんの写真でも見てから、とりあえず、苦手そうな人を観察することから始めよう。大切なのは、あなたのオカンが優秀なことではなくて、世の中には苦手な人がいると理解することなのだから。

ユーザー行動まとめだゾウ

ユーザーの行動の「正しさ」を決めるのは自分ではないことを、「わかる人」は、肝に銘じてほしい。特に、機械・IT系に苦手意識を感じている人が、どれだけストレスを感じているか、「わかる人」は理解することが必要だ。

苦手な人に「がんばりなさい」「わかりなさい」「考えなさい」というのは簡単だ。だが、自社のサービスを苦手だと感じている人にも使ってほしいなら、ストレスを感じるところを知り、軽減し、心地よく使っていただくことが大切だ。

ユーザーテストの良さは、ユーザーを観察するだけではなく、「自分と違ういろいろな人が世の中にいる」という大前提を知り、自分と違えば捉え方も違うという寛容さを理解することだ。

キリン好きがいる。象好きがいる。象さんはかわいいし賢いし、超ステキだし、見ているだけで胸がキュンキュンするけれど、象さんよりもキリンさんが好きな人もいる。それだけのことなのだ。犬好きでもいい。猫好きでもいい。大切なことは、ユーザーの行動を否定しないことだ。

日常生活だと、共感できない自分以外のやり方を否定する人は多い。だが、ユーザーテストだと思えば、観察者になり、共感もなにもいらない。だから、「できる人」「自分の周りには優秀な人が集まっている、と思っている人」にこそ、ユーザーテストをおすすめしたい。

  • まる覚えしてしまう人は、応用が効かない
  • だから、少しの違いで混乱してしまう
  • この混乱を、「わかる人」は理解できない
  • わかる人は、苦手な人を理解することが必要
  • 理解の第一歩は、ユーザーテスト
  • 形式ばらなくても、オカンでも十分(オカンが優秀なら、他の人でもいい)
  • 共感はしなくていい。あなたの感想よりも、観察することが重要
  • 象さんはかわいい。だが、キリン好きもいる
  • 私は、アジアゾウが、もーれつに好きだ

ちなみに、本日の丸尾さんは、「まるおぼえ」からの丸尾さんでした!

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