企業ホームページ運営の心得

企業Webサイトだけではリーチできない。マルチポスト時代に突入か

各種Webサービス上には公式サイトだけでは接触することができないユーザーがいます
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の469

今でも落書きか

Thinkstock Images/Stockbyte/Thinkstock

インターネット上の書き込みは、かつて便所の落書きと呼ばれました。根拠不明で暇つぶし程度のゴミ情報ばかりという意味です。

時を重ね、Web 2.0的に言うところの集合知やCGMによって情報の質が高まった面はあります。一方で、各種クチコミサイトやFacebookなどSNSの台頭によって、不確かな情報が拡散される事例も増えています。

外部のクチコミサイトなんて気にしない。公式サイトがあれば十分だ。

という考えは時代遅れです。文字通りインターネットが日常生活に溶け込んだ現在、お客のすべてが公式サイトを見るわけではありません。そこで「Web多面展開=マルチポスト」が必然となりつつあるのです。

「マルチポスト」とは、1つの記事を複数のブログやサイトに投稿することを指しますが、本稿では「各種営業情報をクチコミサイトやSNSで多面的な発信する」という意味で用いています。

公式は広告に負ける

こんな報告があります。2015年11月、イギリスの情報通信庁の「Ofcom」が発表した調査結果では、12~15歳の約70%が検索結果の上部に表示される広告を広告と理解しておらず、同年代の約20%は「検索結果に表示されていることは真実」と信じていたとあります。

ご存知の通り、検索結果は上位ほどクリックされやすく、公式サイトが検索結果の1位に表示されていても、その上に表示される「広告」に負ける可能性が高いということです。

現時点では、情報リテラシーの低い未成年という分析も可能です。しかし、十数年にわたり「情報リテラシー」の向上が叫ばれながらも、なかなか改善されない現実に照らすと、広告と検索結果の区別がつかないまま大人になる可能性も否定しきれません。

「検索」は半分に満たない

芸能事務所の社長が手がける異色のWebプロモーション企業「LIDDELL株式会社」が、18歳~22歳の日本人男女を調べたところ、「最近検索によく利用する検索サービスはどれか。どのような時に利用するか」という質問に対し、Google(33%)を筆頭に、Twitter(31%)、Instagram(24%)、Yahoo!(12%)が続きます。

GoogleやYahoo!は全般的な情報探査に用い、Twitterはニュースやネタの特定、Instagramは「画像検索」の要領で利用されていると報告します。サンプル数が「100人」と少なく、いささか統計としての精度に疑問が残されますが、若者風俗の一端としては参考になります。

先の「Ofcom」の調査結果と重ねて浮かぶ推論は、SEOに代表される検索結果にのみに拘泥していれば、若者の半数を取りこぼす可能性があり、さらにその検索結果も「広告」に負けるかもしれず、「公式サイト」の運営だけでは、多くのお客を取りこぼしかねない、そんな時代だということです。

今年の初めに話題となった「GoogleはSEOされている。リアルじゃない」というGENKINGさん発言からも、リアルな若者の姿を感じ取ることができます。もはや、ネットの情報検索はGoogleかYahoo!というのは先入観に過ぎません。そこで「マルチポスト」が重要になります。

クチコミの間違い

人気焼肉店のWeb担当者となってから十数年が経ちます。当初は公式サイト(ホームページ)の管理だけでしたが、いまは「食べログ」と「Facebook」も管理しています。

当初、クチコミサイトの食べログは、ユーザーが好き勝手に感想を語る場であって、店が関与すべきではないと考えていました。

しかし、店頭で「食べログを見て来た」という声が多くなり、それと同時に公式サイトで紹介していないトンチンカンな問い合わせも増えました。食べログのユーザー投稿の内容をチェックすると、営業時間や営業日など、基本情報に数多くの過ちを見つけます。これがトンチンカンの「ネタ元」になっていたようです。

食べログの店舗会員に登録し、間違った情報を更新することでトンチンカンの激減に成功します。飲食店を探すのに食べログを利用するユーザーは、わざわざ公式サイトを訪問するとは限らず、そのままでは間違いに気づくことはありません。

Facebookも侮れず

同じ頃、公式のFacebookページを立ち上げて管理するようになります。ユーザーが作ったページは、ファンの愛情に満ちたものでしたが、こちらも基本情報に間違いが多かったからです。放置していては、店休日に客がやってくる事態にもなりかねません。

Facebookの「伝播力」に驚いたのは「臨時休業」の案内でした。4年前のある日、経営者の親族に不幸があり、臨時休業することになりました。公式サイトはもちろんFacebookにも掲載すると、ろくに運営をしていないにもかかわらず、多くのアクセスがあったのです。

以来、夏冬の休業など、1つの広報チャネルとして活用しています。食べログ同様、Facebookを主に利用するユーザーにとっては、公式サイトよりFacebookだということです。直近では「夏期休業のお知らせ」というまったく同じ情報を、公式サイト、食べログ、Facebookへとマルチポストしました。

公式サイトだけでは出会えない

かつて企業や店舗が運営するサイトには、タイトルや見出しに「公式」と入れる習慣がありました。それは根拠不明な「便所の落書き」ではないと明示するためです。

ですが、いまのネットユーザーにとって、情報の入手先が公式サイトであるかどうかは、さほど重要ではありません。ソーシャルメディアだろうと、キュレーションメディアだろうと、自分が触れるツールで得られた情報を信頼する傾向は、先の若者の調査における「検索で2番目にTwitterが利用されている」という結果にリンクします。そして「公式」の文字を見かけなくなりました。

各種Webサービスには、公式サイトだけでは接触することができないユーザーがいます。Web担当者は可能な限りこれらを管理下に置いて、同じ情報を多面的に発信する「マルチポスト」が求められる時代になったということです。

今回は飲食店を軸に説明しましたが、すべての業種に通じ、私が管理するユーザー投稿型の地域サイトでも誤情報がたびたび投稿されています。

今回のポイント

「検索」だけが接点じゃない時代

営業情報のマルチポストで多面展開

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