初代編集長ブログ―安田英久

「お役所言葉 改善の手引」は文章作成マニュアル! 専門用語は言い換えを

「いわゆる『お役所言葉』改善の手引」は、佐賀県が作成した文章の書き方ガイド。肯定的な言葉に言い換えたり、回りくどい言い方を止めたりするなどのテクニックを、具体例とともに解説しています。行政だけでなく、ビジネス文書にも応用できます。この記事では、手引きの内容を簡単に紹介します。
Web担のなかの人

今日は、Webライティングにもメールにも役立つはずの、「わかりやすく、読みやすい」文章を作るための日本語を解説したマニュアルを紹介します。これは、すべての社会人が読むとその日からトクする情報です。

いわゆる「お役所言葉」改善の手引 by 佐賀県

いわゆる『お役所言葉』改善の手引」という、佐賀県が2004年に公開した文書があります。文書名だけ見ると「なんだ、また意味のない無駄なやつか」と思うかもしれませんが、これが非常に役に立つ内容だったのです。

なにが役に立つって、本当に「わかりやすい、読みやすい、伝わる」文章を書くための基本をシンプルかつ明確に、具体的な例を示しながら解説してくれているのです。

内容はこんな感じです。

  • できるだけ具体的な表現を
  • 的確で簡潔な文章を、まずは結論から
  • 行政で多用される慣用語の見直しを
  • カタカナ語(外来語)は普及しているものを
  • 専門用語は言い換えや説明を
  • 命令調は禁物
  • 回りくどい表現は止めて
  • 肯定的で前向きな表現を
  • 敬語表現は適切かつ簡潔に
  • 言葉の乱れにも敏感に
  • レイアウトにも工夫を
  • 親しみやすい文書にするために
  • 最後に、声に出して読んでみる

目次を見るだけでも、「当たり前だけど、なかなかできていない、読んでもらえる文章の作り方」が書かれていると思いませんか?

もともとは文書名どおり「お役所言葉」からの脱却を目指して作られた「日本語文章の書き方ガイド」というようなものですが、いまのWebコンテンツやメールでの仕事のやりとりにも適用できる、一般的な内容が詰まっています。

いくつか、私が「そうそう、そのとおり!」と思った点を紹介しましょう。

的確で簡潔な文章を、まずは結論から

できる限り結論を先に書きましょう。それから、理由や説明などを書いていけばよいでしょう。

まず結論、それから詳細」は、情報伝達やコミュニケーションの大原則ですよね。Webコンテンツでもそうですし、業務上のお願いや報告でもそう。

これができているだけで、情報を受ける側のストレスが大きく減ります。

文書の要点を把握して、的確な標題や見出しを付けるようにします。標題や見出しを読むことにより、文書の内容の理解が容易になります。

無駄に見出しで区切りすぎるのはどうかと思いますが、見出しがまったくないと、やはり読みづらいものですよね。また、文の長さについても、こんな参考情報を示しています。

一つの目安として文化庁が発行した文章の書き方(ことばシリーズ20)によると、「なるべく字数で一文平均50字、文節数で一文平均15文節を超えないように注意して書くのがよい。」となっています。参考にしてください。

あと、大切なのが「その文書は何をするものなのか」の性質を明確にするということですね。

対外的な往復を主とする文書(往復文書)には、標題の末尾にその文書の性質を表す言葉(照会、回答等)を括弧書きで付記します。

これはメールでの連絡で非常に大切なポイントですよね。メールを読んだあとに何かアクションをしてほしいのなら、それを明確にするのが大切です。

文書では、その例を次のように分類しています。

  • 照会・依頼・協議・通知・回答
  • 報告・送付・提出
  • 申請・願書(願い)・届出(届け)
  • 督促・請求

私は、メールの冒頭と最後に、「相手にどうしてほしいのか」を明示するようにしています。「OKかNGか返事ください」「詳しい内容を確認のうえ、引き受けてもらえるかどうか返事ください」といった感じですね。

問い合わせているのか、頼んでいるのか、調整しているのか、連絡しているのか、自分は相手に何の意図でそのメールを送っているのかを明確にしておけば、相手からの返事もこちらの求める内容になるものです。

カタカナ語(外来語)は普及しているものを・専門用語や略語は言い換えや説明を

外来語をどう表現するか、専門用語をどこまでそのまま使っていいのかは、Web担のようなセグメントメディアでも、常に悩むポイントです。

文書では、

  • アカウンタビリティ
  • イニシアチブ
  • インセンティブ
  • オンデマンド
  • コミットメント
  • コンセンサス
  • スキーム
  • ソリューション
  • タスク
  • フレームワーク
  • プレゼンス

といった外来語や、

  • クーリング・オフ
  • プロポジション
  • ISO14000シリーズ
  • URL

といった専門用語を例に、どう解説するかを示しています。

もちろんこれは自治体、マスメディア、雑誌、セグメントメディアなど、組織や対象者や媒体によって変わりますから、この文書に書かれているとおりにすればいいというものではありません。

でも、「自分がわかる表現」「関係者(部署や編集部)がわかる表現」を使うのではなく、「この情報を受け取る人は、この表現で正しく理解できるのだろうか」を考えるのは大切なことです。

このあたり、Web担でもいま明確にできていないので、ちゃんとしなきゃ。

回りくどい表現はやめて簡潔に

文章を書こうとすると、なぜか固くまわりくどい書き方になってしまう傾向は、だれしもあるものです。

でも、実はシンプルな表現のほうがわかりやすいんですよね。

文書では、たとえば次のような例を示しています。

県が保有する情報については、積極的に県民へ提供することとする
  ↓ (不必要な言葉を省く。)
県が保有する情報、積極的に県民の皆様へ提供します

今後、ますます脅威が増大するであろう思われます
  ↓ (同じ意味の言葉の重複と推定の言葉の重複を避ける。)
今後、脅威が増大すると思われます。

肯定的で前向きな表現を

個人的に好きなのはここです。

○○については、4月1日以降は受け付けません
  ↓ (否定形の表現を肯定形の表現にする。)
○○については、3月31日までに提出してください

貸出はできません。ただし、閲覧と複写は可能です。
  ↓ (肯定表現を先に書く。)
閲覧と複写は可能です。ただし、貸出はできません。

Webコンテンツでもそうですし、他人を動かそうとするときの説得でもそうなのですが、いろいろわかってる人は、つい否定から入っちゃうんですよね。

でも、実は肯定にもっていくほうが、良い結果を生むと思っています。

「そのやり方だとダメ」「このままだとヤバい」ではなく、「こうする方がいい」ともっていくということですね。

◇◇◇

実はこういう文章の書き方って、文系よりも理系のほうが学ぶ機会があるんですよね(論文とかで)。

数十年前までは、日本で仕事していても文章の書き方というのは、さほど大きな意味をもっていなかったのかもしれません。でも今は、メールでもWebでもソーシャルでも、文章で何かを伝える機会が非常に増えています。

ということは、「相手にとってわかりやすい」文章を書くスキルが上がれば、それだけ仕事を進めやすくなるということですね。

この「いわゆる『お役所言葉』改善の手引」は、固い文書ではなく、内容も31ページと多くはありません(具体例が多いので、実際にはもっと少なく感じます)。

あなたも、この文書を昼休みにでもざっと読んでみてください。もうその次から、あなたが書く文章は、少しわかりやすくなって、仕事がスムーズになると思いますよ。Webでもメールでも手紙でも、そして日常の上司や同僚や取引先とのコミュニケーションでも。

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