“売れるコトバ”の作り方|セールスコピーで今すぐ使える5つの言い換え表現とAI活用例
- とてもあたたかい服
- まるで、着るコタツ
より心に響くのはどちらのキャッチコピーだろうか?
初心者には難しいと思われがちなコピーライティングだが、「言い換えのコツ」を知るだけで、誰でも簡単に“売れるコトバ”が作れるという。
「Web担当者Forum ミーティング 2023 秋」では、累計10万部を突破した『セールスコピー大全』の著者みんなのコピー代表の大橋一慶氏が登壇。ChatGPTを用いたコピーライティングについても解説した。
セールスコピーの2つの技術:「訴求作り」と「文章表現」
セールスコピーとは、ひとことで言うと「販売文書のテクニック」だ。
セールスコピーを習得すると、どれだけ売りにくい商品でも、『いいものを見つけた!』とお客さんに喜んでもらえるようになります(大橋氏)
セールスコピーは、ホームページやランディングページ、チラシやDM、SNSや商品名など、どんなメディアでも効果を発揮する。語彙力やセンスは関係なく、きちんとした技術を学んで、正しく実践すれば、誰でも成果が得られる。
ポイントは大きく分けて以下の2つだ。
1.訴求作り(誰に何を言うか?):文章にする前のセールスアイデア
まずは訴求作り。「真夏に熱々のおでんを売る」ために、「ローカロリーだからダイエット中の方に訴求するのはどうか」と考えることだ。どれだけ売りにくい商品でも、その価値をわかってくれる人の元へ届けることができるが、時間の都合上本セッションでは割愛する。
2.文章表現(何をどう言うか):どのように伝えるかを言葉にする
2つ目の「文章表現」が今回のメインテーマだ。セールスアイデアが固まった後で、それをどのように伝えるかを考える。セッションでは、ビジネスでも使える5つの言い換え表現を、例題形式で紹介した。
言い換え① 読み手が「良いと信じているモノ」を引き合いに出す
まず、ヘアケア商品のセールスコピーを考えてみよう。考え方のヒントは、「あこがれの美しい髪」と聞いて、読み手が“誰”をイメージするかという視点だ。
重要なのは、価値を視覚的にイメージできる言葉にすること。そのためには読み手が「良いと信じているモノ」を引き合いに出すことが有効だという。なぜなら、人は自らの経験や知識を物差しにして、その価値を測るからだ。
人は自分がわかっていないものは受け入れられないんです。みんなが良いと思っているコトバに変える必要があります(大橋氏)
たとえば他にも……
- 「おいしい赤だし」→「寿司屋の赤だし」
- 「三陰交をあたためるソックス」→「まるでこたつソックス」
- (アメリカ進出時)「カップヌードル」→「具の多いスープ」
この方法は、価値がわかりにくい商品や、今までになかった目新しい商品に特に効果的だ。お客さんがすぐにイメージできるものに例えることで、飛ぶように売れるようになったという成功例だ。
言い換え② ベネフィットを五感に訴えて、シズル感をアップ
ヒントは、マフラーを装着したとき、肌が何を感じるのかという視点だ。
この言い換えのポイントは、ベネフィットを五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)に訴えること。それによってシズル感(臨場感)がアップする。
ここで重要なのは、「商品を使う前/使用中/使った後の3つの時間軸で、目、耳、鼻、肌、舌が何をどのように感じるかを具体的にイメージし、明文化する」ことだと大橋氏は語る。
たとえば「焼肉」のセールスコピーについて、①商品を使う前、②商品を使用中、③商品を使った後の3つの軸で見てみよう。
このような五感表現が使えるのは、グルメや美容商品だけに限らない。たとえば「商談が上手くいく」というベネフィットを五感表現で表すと、下図のようになる。
このように、複数の五感表現を組み合わせることで、シズル感がよりアップします(大橋氏)
言い換え③ 「特定のこと以外はやらない」と断言する
こちらは、クリニックのWebサイト制作を専門にしている会社のコピーだ。ターゲットの絞り込みや専門特化ができているように見えるが、大橋氏は「もっと強化できる」と言う。ヒントは、「○○をします」 ではなく、「○○をしません」で表現すること。
「特定のこと以外はやらない」と断言することで、「専門性=他との違い」がより強く伝わる。また、多くの会社が「できます」と訴求するので、その中で「できません」という言葉は意外性が高く、目立つという効果もある。
『うちは塩ラーメンしか出さねぇよ!』というこだわりのラーメン屋の親父さんみたいなイメージ。その分野に対するこだわりや自信が強く伝わります(大橋氏)
言い換え④ 「感情的な言葉」+「なぜなら」の公式
これは普段の会話でも使える技術だ。どうしても理由を聞いてほしいときには、読み手に「何があったの?」と思わせる必要がある。
ポイントは、いきなり“感情的な言葉”を伝えること。すると相手は「どうしたの?」と続きが気になり、読んでもらえる確率が上がる。
たとえば他にも……
- 悲しくなりました。なぜなら……
- 怒っています。なぜなら……
- もう、我慢の限界です。なぜなら……
- ゾッとしました。なぜなら……
- 笑いが止まりません。なぜなら……
- 困っています。なぜなら……
実は、大橋氏が自身のオンラインサロンで集客に使っていたコピーを、参加者だった鍼灸整体院の院長がそのまま模倣したところ、レスポンスが大きく向上したと喜ばれたという。
この事例は私のオンラインサロンの文章構成を模したものですが、要はテクニックさえ押さえれば、成果は出るということ。今日お伝えした技術の中で一番シンプルで、かつ効果も出やすいと思います(大橋氏)
言い換え⑤ 「得る喜び」を「失う痛み」に言い換える
最後に、睡眠をケアする商品の例。「若返る」というベネフィットを訴えているが、それらに関心を持つ人が、どのような不安や恐怖を感じているかを軸に言い換えてみよう。
ポイントは、「得る喜び」を「失う痛み」に言い換えること。逆に、今まで失う喜びばかり伝えていたのなら、得る喜びを伝えることで、反応が変わることもある。ブログのタイトルなどでもよく見られるテクニックだ。
ここでよく聞かれるのが『得る喜びと失う痛みではどちらが効くのか』ですが、これはケースバスケースとしか言えません。ずっと『得る喜び』を訴求してきて、成果が頭打ちだと思ったら『失う痛み』に変えると反応がよくなるかもしれないし、逆もまた然り。
困ったときは迷わずテストをしてください。2つのアイデアがあるなら、どちらがいいかをお客さんに聞いてみることが大切です(大橋氏)
AIが作ったキャッチコピーをより魅力的に書き換えよう
大橋氏は最後に、「AIの専門家ではないので、経験に基づいた個人的な見解」としつつ、AIを用いたコピーライティングについて語った。今まで紹介したようなセールスコピーの表現技術は、ChatGPTやBing AIを使う時にも効果的だという。
AIが作るコピーは、我々プロから見ると改善の余地がたっぷりある。コピーライティングの技術で、AIの言葉をもっと魅力的に磨くことができます(大橋氏)
たとえば、大橋氏が2023年3月にBing AIで試したのが以下の図だ。
一見キャッチコピーらしさはあるが、プロが見ると0点。そこで「もっと魅力的に」という簡単なプロンプト(指示命令)を実行したのが以下の図だ。
プロンプトのクオリティの問題もあるが、よりよくなったとは言い難い。このような時、セールスコピーの表現技術を使うと、質の高いコピーに修正できるという。
- step1.「ずるい○○」を使う→「小顔メイク」を「ちょっとずるい小顔メイク」に修正
- step2.「方法」を使う→「引き出そう」を「引き出す方法」に修正
- step3.「3つの○○」を使う→「引き出す方法」を「引き出す3つの方法」に修正
- step4.「不要な言葉」をカット→「最大限に引き出す」から「最大限に」を削除
また、以下のような言い換え表現を知っていれば、プロンプト自体の精度を高めることも可能だ。
- 数字の3を使って表現して
- ○○の効果を、名詞で表現して
- 問いかけ表現にして
現段階では、AIを扱うには利用者の経験と知識が最重要だ。大橋氏は、「AIは新米ライターで、利用者は敏腕編集者・ディレクターというつもりで考えるといい」と語った。
本セッションでは5つの言い換え表現を紹介したが、実は他にも95パターン存在するという。大橋氏の著書『売れるコピー 言い換え図鑑』にわかりやすくまとめられているので、興味があればお手に取ってほしい。
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