Facebookで集客するド素人な女将のノウハウ
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の431
それは恒例行事だった
Facebookで千客万来!
Facebookの上陸前後に叫ばれていましたが、結果はどうだったか。「いいね!」を集めても、フォロワーを増やしても、それだけで売上につながるわけではなく、ビジネスチャンスが生まれることはありません。当たり前の話です。Twitterでも「セカンドライフ」でも繰り返された恒例行事で、新たなツールやトレンドの登場が、すべての常識や秩序を塗り替えるとは、新たな敵が登場するたびに、主人公らが桁違いに強くなっていく少年漫画の読み過ぎです。
しかし、いまだからあえて断言します。「Facebookで千客万来」と。
東京23区ながら、のどかに過ぎる足立区北部にある手打ちそば「足立さらしなの里」は、毎日Facebookで「日替わりランチ」の情報を更新しています。Web担当者は女将さん。ITスキルは、ガラケーの延長線上にある程度のいわば「ド素人」ですが、そんな女将さんがFacebookでの集客に成功しているのです。
だれにでもできること
商用目的としたFacebookの運営で、最も難しいのが「更新の継続」です。セールのときだけ更新してもお客には相手にされず、常日頃からの情報発信こそが売上を作ります。仮に「Facebookマーケティング」なるものがあったとするなら、「更新」は最重要項目に挙げられることでしょう。しかし、それが最難関でもあります。
「さらしなの里」の女将さんは毎日更新しつつ、あの手この手を駆使して、来訪者を飽きさせません。だから集客につながっているのです。
ある日のFacebookは次のように始まります。
もし、続編を作るなら
『足立さらしなの里で昼食を』
が、いいと思います(*゚▽゚)ノ .•*¨*•.¸¸♬
そして写真とともに日替わりランチを紹介します。これぐらいなら、だれでもできます。それを着実に実行するのは、Webにおける重要な「成功法則」の1つです。
名画ティファニーで朝食をもし、続編を作るなら『足立さらしなの里で昼食を』が、いいと思います(*゚▽゚)ノ .•*¨*•.¸¸♬ 本日のランチ「もり蕎麦とミニえび天丼セット950円」です本日も皆様のお越しを心よりお待ちしておりますo(^▽^)o
Posted by 足立さらしなの里 on 2015年10月27日
ゆるさも活用
その前日には次のような投稿もされています。
あらっ?Σ(●ꉺ▱ꉺ●)
大変っ‼日本時間だったんですね?時差を考えてなかったわ!もうすぐランチの時間
「見解を述べる」と宣言しながらの触れずじまい。SNSにおいて、この「ゆるさ」は味です。また、単に日替わりランチの内容を更新するだけではなく、「ジョーク」を織り交ぜて訪問者を楽しませようという心配りは、かならずユーザーに伝わります。
一行添えるだけでもよい
さらにこんなアプローチもあります。
・・・を、誰か教えてください (*꒦ິ⌓꒦ີ)
と、絵文字通りの投げっぱなし。ネタが無ければ、無理にネタを作らない。それでいて日替わりランチの情報更新だけではなく、「一行」でも添えるところが「おもてなし」です。
完敗の乾杯
女将さん、こんな切り口も持っていました。
問題 2ab+831+2u を求めよ
問いに、数学的解答はありません。
2abで【海老が2つ】
831は【野菜】(野菜の天ぷら)
2uは【つゆ】(蕎麦つゆ)
つまり、答えは えび天もり蕎麦です
と日替わりランチを「クイズ化」したのです。
クイズがあれば「なぞなぞ」もあります。「生ビール半額」の告知はこうです。
(*゚▽゚)ノ答えは
保母さん。ほぼ3・・・なんちゃって
円周率は通常、ギリシア文字π(パイ)で表される。
生ビールは通常【杯】で表される
パターンを身につける
前述の女将さんのネタを紹介した順に分類すると、
- 宣伝
- ジョーク
- 時事ネタ(雑談)
- クイズ
- なぞなぞ
といったところでしょうか。さらに「5x2+9x-2=0 を解きなさい」と数式を提示しながら、次の行では「私には無理です。卵を溶きます」とし、「親子丼」へとつなげるハイブリッド型もありました。定休日を除いて毎日更新し続けており、その多彩なパターンに乾杯!
更新を継続するコツは、こうした「パターン」をできるだけ多く持つことです。パターンには天性の「センス」を必要としますが、女将さんのFacebookなどを「参考」にすることで、いくらでも身につけることができます。
会社務めの人は、こんなゆるい投稿は参考にできないと嘆くかもしれませんが、シャープやタニタなど、フォーマルとゆるさを使い分ける企業もあります。つまり、大切なのは自社にあったパターンを持つということ。
すぐに真似……もとい参考にできるのは「クイズ」や「なぞなぞ」。出涸らしのように使い古されたクイズやなぞなぞでもOKです。たとえば、「朝は4本、昼は2本、夕に3本。この生き物は何だ※1」など。ギリシャ神話からの使い回しですが、一度聞いても答えを忘れている人は多いため、新しいネタに固執する必要はありません。なお、「クイズの答えは本文の最後に!」と、最後までに読ませるテクニックとしても使えます。
テレビはネタの宝庫
そして、この紹介にベテランWeb担当者は微苦笑することでしょう。SNSがなかった時代、クイズやなぞなぞは大流行したコンテンツだからです。しかし、いまでも十分通用し、Facebookだけではなく、メルマガやTwitterでも使えます。なお、日本人はクイズやなぞなぞが大好きで、コロプラのスマホアプリ「魔法使いと黒猫のウィズ」にヒット要因は「日本人の80%以上がクイズ好き」とする調査結果にあると、同社社長はゲーム情報サイトの取材に答えております。
さらに、安直でありながら、読者受けの良い更新ネタを、最後に添えておきます。それは「占い」。
占いアプリを作れというわけではありません。朝の情報番組の「星座占い」で、1位の星座の人に向けておめでとう! とエールを贈ったり、最下位の人をはげましたり、自分の順位に一喜一憂してみたりします。漠然とながら星占いを信じている人は多く、また「順位」というのが「ランキング好きの日本人」の興味を惹きます。そして月曜日から金曜日までネタが尽きることはありません。
今回のポイント
パターンを数多く持てば更新は楽
ネタは毎日量産されている
※1 答え:人。人生を1日に例え、ハイハイする赤ちゃんは4本足、大人は2足歩行、老人は「杖」をついて3本。
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