新人Web担当者が捨てるべき3つの心
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の402
新年度のはじまりです
新年度のはじまりです。締め切りと納期に追われ、曜日感覚をなくしがちな日々を過ごしながらも、この日ばかりは身が引き締まる思いです。
「はじめまして」の読者もいるでしょうか。本稿はWeb担当者の「現場の心得」を中心にお届けしており、本サイトの最長連載記録を誇りながらも「ド素人のため」と題しているのは、筆者の成長が足りないから……も、あります。しかし、「日々新た」も「Web担当者の心得」の1つ。体現しているのだと自画自賛しつつ、新年度初日にお届けするのは「新人Web担当者になったら捨てる心、捨ててはいけない心」。
文字通り「現場の心得」です。
Web担が捨てる3つの心
Web担当者になったその瞬間から、捨てなければならない心は3つあります。
まずは「甘え」。企業サイトとは「インターネット支店」であり、Web担当者とは「支店長」です。先輩や上司がいれば「支店長代理」や「支店長補佐」と若干グレードダウンしますが、確実に言えることは、サイトを訪問したユーザーやお客に対して、一切の言い逃れはできないということです。
トラブルが発生すれば、事情を説明し、理解を求めなければなりません。そのとき、あなたが「新人だから」とは理由になりません。それどころか、
新人をよこしやがって
と、お客の怒りに火をつけることになりかねません。顔の見えない「Web」の世界では、ささいなことが重大なトラブルに発展することがあり、会社に大ダメージを与えることがあるのです。Webの世界では、ネガティブな情報は瞬く間に燃え広がります。外部と接するときは、実際にはペーペーの新人でも、会社を代表するぐらいの心持ちが必要です。
学生気分にさよなら
次に捨てるのは「依存心」です。会社には指導を仕事とする教員や教官はいません。上司や先輩は仕事を教えてくれるでしょうが、自分の仕事も抱えており、ついつい指導がおろそかになることもあります。そんなとき、だれかが教えてくれるのを待つ心が「依存心」です。自分から積極的に声をかけ指導を仰ぎます。
また、会社は組織で動いており、上司や先輩、同僚と協力するのは当然です。しかし、協同と依存は似て非なるものです。「だれかがやってくれる」という「依存心」は、学生時代なら通じても社会では通用しません。
仮に一度や二度は通じても、通じた分だけ信頼を失っています。どうしても自分で対応できない案件ならば、上司に相談するなり、先輩の力を借りるなり、同僚に頭を下げるなどして、自らが動いて解決しなければなりません。
成功体験という慢心
最後は「慢心」です。外部企業と連携する場合、たとえ新人であっても発注者となるWeb担当者に対して親切に接してくれます。ときにこれを、自分の実力と錯覚する新人Web担が現れますが、外部業者は前任者や先輩、会社の信用に敬意を払ってくれているであって、新人Web担の実力とは限りません。
そしてどの業界でも世界は狭いもので、関係性の上下がいつ入れ替わるのかわからない「LOTO7」のCMにおける柳葉敏郎さんと妻夫木聡さんの関係に似ています。
また、1つの成功ぐらいはWeb担当者ならだれでも経験するものです。しかし、1つの方法論がすべてに通じることはありません。「勝ちに不思議の勝ちあり」という格言があるように、偶然と運だけの成功が転がっているのがWebの世界で、その多くには再現性がありません。実際、Web業界に転がるサクセスストーリーの大半はこれです。だからWeb担当者には、成功体験という慢心を捨てる努力が求められるのです。
捨ててはならない心
ここからは折り返し、「捨ててはならない心」について。
筆頭は「遊び心」です。サイトは訪問者を楽しませるためにあり、お堅い企業でも「オモテナシ」のための洒落や遊び心は不可欠です。なにより、どうせお金をもらって仕事をするなら、楽しみながらやるのが得というものです。
Web担当者になったばかりの新人に、これを告げるのは残酷かもしれませんが、この商売は「終身刑」です。部署が変わるまで勉強を強いられる職種で、つまり「向学心」を捨てるときがWeb担当者を辞任するときです。10年選手でも得た知識にあぐらをかくことは許されず、「Windows 95」から数えても20年選手の私が、いまだに「ド素人」である理由……とすると「向学心」の説得力を欠きますね。
最後の心得は「恐怖心」で「甘え」と対をなします。わずかな油断が失言となり、炎上すれば会社に与える影響は甚大です。Webは楽しい空間であるとともに、恐ろしい世界でもあるのです。地球のあらゆる空間とつながり、さまざまな国籍の数多の階層と触れあいます。初恋の相手から、テロリストまでが「ネットの向こう側」にいるのです。
価格の誤表記(入力ミス、確認漏れ)により閉鎖となった「丸紅ダイレクト事件」※は、いまから11年前の出来事です。「恐怖心」は常に頭の片隅に置いておかなければなりません。
※ ネットショップのPC販売価格を本来の19万8,000円ではなく1万9,800円と誤表記し、約1500台の注文が入る。後日、注文を取り消すことなく1万9,800円で販売したが、昨今は売買契約を無効とする事例が多い。参考:価格誤表記に関する考え方(ECOMネットショッピング紛争相談室)
リアルにおいての心得
ここまでが「新人Web担当者」における心得。もちろん、Web担当者の「心得」はこれだけではありません。400本を超えるバックナンバーがあるので、息抜きがてらにお読みいただければ幸いです。そして最後に「新社会人」に向けての「心得」。
まず、配属された職場、隣接する部署があれば、そこの上司や先輩、同僚らを、
●●さん、おはようございます
と、「名前」をつけて挨拶します。これは「先制パンチ」。
先輩だって緊張しているのです。上司だって新入社員を警戒しています。どんな人物かわからないのは「お互い様」なのです。
名前とは、集団において個人を特定する「識別子」で、自分の識別子を認識する人物を「仲間」と理解します。だから、できる先輩や上司は、新人を必ず名前で呼びます。そして「名前パンチ」は、お客さんにも取引先にも通じる、良好な人間関係を構築するための「極意」でもあります。
今回のポイント
捨てる心と持ち続ける心
甘えと遊び心と恐怖のバランス
- 電子書籍『マンガでわかる! 「Web担当者」の基本 Web担当者・三ノ宮純二』
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