デザインに赤十字マークは使用禁止! 不当な使用は法律違反で罰則を受けるかも
今日は、「赤い十字(✚)をデザインに使うと法律違反になる場合がある」というお話を。「ジュネーブ条約」と「赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律」によって、赤十字のマークは正当な理由なく使ってはいけないとされているのです。しかも罰則付きで。
病院や救急箱や薬局など医療をモチーフにしたデザインをするときに、ついつい使ってしまいそうな、赤い十字のマーク。でもこのマークは、だれでも勝手に使っていいものではないということ、ご存じですか?
恥ずかしながら私もこれは知らず、Web担の記事デザインで使ってしまっていたのですが、読者さんの指摘で知りました。
赤い十字のマークは病院や医療を象徴するマークだと思っていませんか? 実は違うのです。
赤い十字のマークは「戦地や紛争地で活動する救護員やその施設を攻撃から守るためのマーク」であり、赤十字マークを掲げている人や施設を攻撃してはいけないとジュネーブ条約で定められているのです。そして日本でも、赤十字社など定められた組織以外がこのマークを使うことを、「赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律」で禁止しているのです。
- 赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S22/S22HO159.html
この法律には「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則もあります。
これは「マークの使用」に関する法律なので、商標としての利用でなくても(つまりいわゆる「デザインとしての使用」でも)適用されるはずです(商標法にはこのマークに関する定めが別途ありますし)。
ちなみに、勝手に使うのが禁じられているものには、赤い十字のマーク以外にも、赤い新月のマークなどもあります。また、明確な「白地に赤」でなく色が多少違っていても、また、十字が傾いていたり角丸になっていたりなどデザインが変わっていても、同様に使用が制限されます。
このあたりは、そもそもの背景やダメな例、使っていい組織などをわかりやすく示した資料を日本赤十字社が出していますので、そちらを参照してください。
- 日本赤十字社「知っていますか?このマークの本当の意味」(PDF)
http://www.jrc.or.jp/vcms_lf/redcross-mark2011.07.pdf
とはいうものの、病院や薬局、テレビ番組、広告などなど、日本赤十字社ではない組織がこのマークを使っているのを見たことがあるある人は多いでしょう。
そもそも、このルールの根本の目的からいうと、主に守るべきは建物や衣類などに付けるマークです。Webサイト上でのイラストや広告に赤十字マークを使っていても、それがすぐに戦地での救護のさまたげになるわけではないので、実質的な問題につながるかというと、そういうわけではないでしょう。
しかし、そういう小さなことから守っていくことが大切なんだと思います。
特にこのルールは、傷ついた人たちを救うために戦地や紛争地に行く人たちを守るためのものであり、だれかの既得権益を守るようなものではありませんからね。
あなたも赤い十字のマークをうっかりと使ってしまっていませんか? 知らずに使ってしまっていたら、こういうルールがあることを思い出してください。
コメント
イングランドの国旗はどうなんでしょうか。
イングランドの国旗はどうなんでしょうか。
ど、どうなんでしょうか。
あれはセントジョージクロスといって、端まで赤が伸びている点が、赤十字マークとは違う点のようですね。
一般的に考えると、イングランド国旗として提示する場合は問題ないのではないかと思いますが、ざっと探してみたのですが、明確にはわかりませんでした。
米国の法律では明確に区別しているという言及はありましたし、同様に英国の国内では関連法があるかもしれませんが、日本国内での使用に関しては、弁護士など専門家にご相談いただくのが良いかと……。
お役に立てず、すいません。
いいですね
こういう事ってなかなか話題になりませんし、すごく勉強になります。
白地に赤の十字とか月のマークって、知らなければデザインしてしまいそうですよね。
もっと周知されていくといいですね。面白い記事でした。
ぜひみなさんに教えてください
ありがとうございます。
私も知らなかったので、ぜひ知ってもらわねばと思って記事にしました。
いろんな人に知らせてあげてくださいませ。
なーんか納得いかねー
「法律で禁止」されているのだから、禁止なんだがどうにも納得がいかない。そもそもこの法律を守れば攻撃されない訳でも無く。太平洋戦争ではガンガン爆撃されてましたからねぇ。
攻撃しても「見えませんでしたーてへぺろ(・ω<)」で以上終了。所詮ジュネーブ条約なんて罰則も無いオレオレ解釈のまかり通る紳士協定なんだから、実効性の怪しいルールを義務付けられるのは、実に気に入らない。「正直者が馬鹿を見る」にしかならないだろ。
でも知識として知る、ということが大事
それならそれでいいと思います。どうするかはあなたの自由だと思います。
でも知識として知る、ということが大事かと思うので、このような記事は大変ありがたいです。
この記事もそういう意味で存在していると思います。
知らないより知るほうが良いと思いますから。
ありがとうございます。
このマークが戦場で絶対の効果を持たないのはみんな知ってる。
このマークが戦場で絶対の効果を持たないのはみんな知ってる。
だが、それでも兵士戦局に関係しないところでは可能な限り狙わないようにはする。
救護に従事する連中も撃たれる覚悟で戦場に入っていく。
その人命救助の志を人々が評価するからこそ、その評価イメージを誰かが商売に勝手に利用しないようにするためにも規制されてるんじゃないの?使用フリーにしたら戦場でこの旗つけて死体から金品漁る奴もでてくるだろうよ。
そんなに君は赤十字のマークのついたロゴを掲げて商売がしたいのかい?
なんでだい?禁止義務をされると君の基本的人権や生活の利便性がおかされるのかい?
利用したいのに禁止されて腹立ててる商売人か、なんでも世の中の仕組みに反対することで満足してる反抗期の子供にしかみえないよ。
赤十字の使用制限はマークだけではありません
赤十字と関係のない所で使用することができないのは、赤十字マークだけではないんですよ。
実は“赤十字”という名称自体の使用も同様に制限されています。
例えば、鍵や水道のトラブルに対応する会社が「住まいの赤十字」なんてキャッチコピーを使ったりすると法律に触れる事になります。(赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律)
日本でこのルールが一般どころか行政にも浸透していない典型的な例の一つに、本来は赤十字マークがデザインに含まれたものは商標として登録できない(商標法第4条)はずなのにも関わらず、とあるドラッグストアーのキャラクターのイラストが、手に持った救急箱に赤十字マークが描かれているのに商標として登録されてしまっている例(第5230216号)などもあります。
しかしこんな独自性の薄い意匠を独占して罰則を付けるってのも
しかしこんな独自性の薄い意匠を独占して罰則を付けるってのもなんですかね。
そういうマークが存在する事自体は結構だし理念も立派だとは思いますが
いくらなんでも適用と解釈の範囲が広すぎ。
十字マークなんてデザインでは基本みたいなもんだし、それが赤いというだけで
実質「使ってはならない」事になるなんて。デザインの言葉狩り感があります。
>こんな独自性の薄い意匠を独占して罰則を付ける
>こんな独自性の薄い意匠を独占して罰則を付ける
>いくらなんでも適用と解釈の範囲が広すぎ
ほんとこれの問題はそこなんですよね、それでしかない
こんな独自性も何もないマークに無条件とも言える独占を認めたら、どう考えても支障が出る
別のマークにするか条件を建物や衣装に限定するかするべき
補足
医療関係のシンボルとしては、「アスクレピオスの杖」が適切なので、こちらを使用しましょう。
救急車や日本赤十字社系列以外の病院のロゴマークにしばしば使われてます。こっちは使用制限はありません。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%...