インフルエンサーを“専用コンテンツ”で動かしてブランドを強化する方法(前編)
ソーシャルメディアが誕生して以来、インフルエンサーを動かしてブランド強化につなげる効果的な方法がないかと模索されてきた。
「インフルエンサー」とは、次のような人だ。
- ソーシャルメディアで強い影響力を有し
- それぞれの業界でかなりの支持を得ていて
- 強力な発言力を持っている人
あなたの企業が小さかったりニッチだったりしても、適切なインフルエンサーが言及してくれれば、ソーシャルメディアで注目を集められる可能性がある。
しかし、ことはそう簡単ではない。
どのインフルエンサーが良いのかはどうやって決めればよいのだろうか?
そのインフルエンサーをどう口説いたらブランドを推奨してくれるようになるのだろうか?
この記事では、僕たちRise Interactive社が、特定の人物に向けたコンテンツを開発して、デジタルマーケティング戦略に組み込んでいった手順を紹介するとともに、それがどれほどRise Interactiveのデジタルプレゼンス向上に大きく寄与したかを示していく。
ステップ1どのインフルエンサーを選ぶか
まずしなければならないのは、ソーシャルメディアの大物を見つけ出すことだ。
ソーシャルメディアで多くの支持者を得ていて、自分たちに関係する業界で強い発言力がある、だれかだ。
そこで思い浮かんだのが、シマンテックのトラビス・ライト氏だ。ソーシャルメディア担当グローバルマネージャーであり、「デジタルかく乱者」「マーケティング工作員」を自称する大物だ。
というのも、以前にライト氏に講演を頼んだことがあったんだ。
Rise Interactiveは、日ごろからデジタルマーケティングのカンファレンスイベント「インターネット・マーケティング・リーダーシップ・シリーズ」(IMLS)を開催しており、業界でトップクラスの頭脳を招いている。
そのIMLSとしての最初のイベントで登壇してもらったのが、トラビス・ライト氏だった。ソーシャルメディアの力を物語る、魅力的で愉快なプレゼンテーションを披露してもらった。
そのプレゼンテーションのことを、少し紹介しておこう。
ライト氏はアメリカンフットボールのチーム「カンザスシティ・チーフス」の熱心なファンで、ソーシャルメディア上でチーフスとやり合った体験について話をしてくれたんだ。
すべての始まりは、次のツイートだった。
I'm not much of a @kcchiefs fan anymore. Clark Hunt's yearly 30m under the cap bullshit is unethical. Greedy bastard owners can F.O. cc @nfl
— Travis Wright (@teedubya) 2012, 9月 11
@kcchiefs には愛想がつきた。クラーク・ハントが選手の年俸を規定上限から3000万ドルも低く抑えているのは、許しがたい。強欲なオーナーは消え失せろ。 cc @nfl
このツイートが予想外に、しかも強力に波及していったのだ。
そうなったのは、ソーシャルメディアにおけるライト氏への注目の大きさによるところが大きかった(講演の時点で、同氏のTwitterのフォロワーは12万9000人を超えていた)。
このツイートから間もなく、@kcchiefsがライト氏に無礼な対応をしたことから、ソーシャルメディア上で論争が勃発し、拡大していった。ライト氏とチーフスのこの争いは、やがてreddit、Yahoo!、Mashableなどで取り上げられていった。
こうしたなかで高まったチーフスに対する否定的な論調が、チーフスによるスコット・ピオリGM解任の一因になったのではないかと思いたくもなる(もちろん、第一の理由は2勝14敗というカンザスシティ・チーフスの悲惨な成績だというのは周知のことだが)。
この一件は、ソーシャルメディアの真の力を証明するものだった。そして、自分に有利にすすめるためにライト氏がいかにソーシャルメディアを活用したかを、プレゼンテーションで明らかにしてくれた。
ライト氏には、人を引き込むエピソードがあり、大勢のフォロワーがいた。これがあってこそ、この驚くべき成果をあげられたのだ。
そこで我々は、こんな風に考えた。
ライト氏がやったのと同じように、ブランドについてもソーシャルメディアで有利な騒ぎを起こすことができるのではないか。実際に試してみよう。
キーポイント
ソーシャルメディアのインフルエンサーに直接の知り合いがいれば、足掛かりになるのは確かだ。
しかし、個人的なつながりがなくても道はつけられる。影響力のあるソートリーダーとみなされていて、フォロアーも多く、あなたが尊敬する人物を、業界で見つけよう。
そういう人が見つかったら、最初はオンライン上の関係を構築しよう。ブログ投稿をほめたり、投稿にリプライしたり共有したりして接触を図るといい。誠実な姿勢を崩さず進む方向を見守ることだ。
目当ての人物と確かな関係を築くことができたら、その人物向けのコンテンツを作るからフォロワーに広めてもらいたいというアイデアを、提案できないか検討しよう。
最悪でも断られるだけだ。なんということはない。断られる経験なんていくらもある。次のインフルエンサーを探そう。そのうち必ず、提案を喜んで受け入れてくれる人が現れる。
あらかじめ付き合いのあるインフルエンサーがいれば言うことなしだが、いなければだめだというわけではない。データを漁ってぴったりのエピソードを見つけ出し、その人だけに向けたコンテンツを作って共有する。それができれば、インフルエンサーと付き合い始めるには十分だ。
ステップ2 インフルエンサー向けの特別コンテンツを作る
ライト氏のエピソードは、珍しいうえに、だれもが興味を持つものだった。さらに、わかりやすく時系列に整理できる出来事だったので、すばらしいインフォグラフィックになるのは明らかだった。
実験が楽しみだった。ライト氏を取り上げたコンテンツを作ったら、彼は、たくさんいるフォロワーと共有してくれるだろうか。これによって僕らを支持して、Rise Interactiveというブランドに注目を集めてくれるようになるだろうか。
答を知る方法はただひとつ……そのためのコンテンツを作ることだ。
どんなコンテンツがいいだろう? 例のチーフスとの出来事を扱うのがいいだろう。
我々は、出来事を時系列にまとめて、事実をはっきりさせ、わが社のグラフィックデザイナーがインフォグラフィックのレイアウトに着手した。
時間のかかる作業だった。見直し、修正、思いもしない法律上のハードル、さらに修正……。
しかし、完璧でなければならなかった。なんといっても大きな影響力を持つ人へのギフトなのだから。全力を投じて完成品を作りあげた。
縦に5000ピクセル以上の大作で、インフォグラフィックの冒頭はこんな感じで始まり、登場人物を紹介してから時系列の出来事が書かれている。
ファンの力
ときには、変化をもたらすにはひとりの人間で十分なのだ。このタイムラインをたどれば、一連の流れの結果、チーフスのスコット・ピオリGMの解任に行きつくことがわかる。
僕らとしては誇れるものを作りあげたが、ライト氏は本当にこれを共有してくれるのだろうか。大きな反響を引き起こせるのだろうか。
キーポイント
1つ目のポイントは、コンテンツの形式をどうするかを決める必要があるということだ。
我々がインフォグラフィックにしたのは、コンテンツをわかりやすく共有するのに人気の形式であり、ライト氏の話は時系列として視覚的に表現しやすいと考えられ、さらには、わが社のクリエイティブチームの得意分野の1つだったからだ。
そのコンテンツに最適の形式が何で、自分たちの得意分野が何かを考えれば、おのずと創造性の果実は結実する。
インフルエンサーに気に入ってもらうためのものではあるが、たとえその人に共有してもらえなかったとしても、コンテンツ単独で通用する魅力のあるものでなければならない。
2つ目のポイントは、十分な時間をかけて、すばらしい完成品を作る必要があるという点だ。
大きな影響力を持つ人のためのコンテンツを作るのだから、大きな影響力を発揮できる完成品にしなければならないのは当然だ。
この記事は、前後編の2回に分けてお届けする。Rise Interactiveが作成したインフォグラフィックは、その後どのように活用され、ブランド強化に役立ったのか。後編ではその点を紹介する。→後編をよむ
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