某航空会社の神サポート対応にみた、「例外的な顧客対応がファンを作る」法則
今日は、「顧客サポート対応でファンを作る」ことについて。サポートで例外的な対応をしてもらえると「あ、この会社いいな」とファンになるのですが、その例外とルールの整合性って難しいんですよね。
飛行機の時間に遅れる、セミナー講演に間に合わない!
以前にセミナー講演をしに熊本に行ったときに、こんなことがありました。
午後からのセミナーなので朝イチの飛行機で羽田から熊本に移動したのですが、自宅から羽田までの移動時間を読み違えて、離陸時間に間に合わなかったのです。
電車で移動中に「マズいな」と気づき、あわててスマホで航空会社の連絡先を調べて「○○便に乗る予定なのですが、搭乗時間ぎりぎり、もしかしたら遅れてしまうかもしれない
」と連絡しました。
しかし対応は「通常のスケジュールで運航しているので、間に合わなくても待たずに離陸してしまいますよ
」とのこと。当然ですよね。
結局、空港に着いたのは離陸時間ちょうどぐらい。当然、予約していた便には乗れませんでした。
しかも悪いことに、予約が航空機+宿のパックだったので、便の変更ができないチケットだったんですよ。
振り替え不可のチケットだけど、現場の対応は……
落胆しつつもカウンターに行って「一番早く熊本に着ける便に乗りたいんです、予約していたのに遅れてしまって……パックだから正規料金ですよね」と話したところ、少し調べた担当者さんの返事は、こうでした。
本当は振り替えのできないチケットなんですが、
遅れるかもしれないと事前に連絡してくれてましたし、
今回は無料で振り替えますよ。
何とありがたい! かなり助かりました。もともと振り替えできない契約で、しかも事後なんですから。
マイルが余るぐらい飛行機を使っている人には普通のことかもしれませんが、私はこの対応で、一気にこの航空会社のファンになりました。
もちろん次の便に空きがあったからできた対応なのですが、本来の契約内容に留まらず、「目的地に、安全に、間に合うように、(予算の範囲内で)移動する」という私の目的に沿うように、最大限の対応をしてくれたのです。
顧客対応では、ルールの範囲に留まらず、顧客にとって良い結果のための例外的な対応をすることが、顧客側に感動体験を与え、それがファンを増やすことにつながるのだと実感しました。
例外に感動したけど、ルールとの整合性ってどうなんだろう?
ただ、難しいのは「ルール」と「例外」の線引きなんですよね。
例外対応をしてくれたのは、私にとっては感動体験でした。
しかし、同様の状況で、契約どおりに正規料金で次の便のチケットを買った人も世の中にはいることでしょう。その人が私の体験を知ったら、不公平感でファンどころかアンチになってしまうことでしょう(だからその航空会社の名前はここでは挙げません)。
また、そういう例外的な判断をすべての人ができるとは限らないですよね(特に、カスタマーサポートを外部に委託している場合)。
「例外的な顧客対応でファンを増やすこと」と「ルールに基づいた公平な対応でアンチを増やさない」ことのバランスって、すごく難しいですよね。
私も、Web担が主催するセミナーに関して「もう満席だということだが、どうしても参加したい
」という問い合わせを受けて、どう対応すべきか困ることがあります。
- 参加したいと言ってくれている人だから、せっかくなので来てほしい。
- でも、席が足りなくなったら、早くから申し込んでくれていた人に申し訳ない。
- でも、通常の歩留まりでいくとギリギリ大丈夫のはず。
- 場合によっては追加で椅子を出せばいい。
- でも、同じような問い合わせがあと10人きたらもうOKとは言えなくなる……。
そんなことを、申し込み状況や会場の状況とあわせて考えながら対応しています。
例外的な対応が感動を生み、ファンを増やす。でもその実践は……
ルールから離れた例外対応が可能になるためには、ある程度以上の情報や裁量を、現場で対応する人がもっていて、かつ、顧客にどういった価値をどう提供することが企業の価値なのかを現場と共有している必要があるんだろうな、と思います。
そういう意味では、Web担のような小さな所帯ではいつでも例外対応ができるはず。
それに対して、超大企業である航空会社さんがそういう対応できるのは、やはり「おもてなし」の文化ですばらしいな、と思います。
「例外的な対応が感動を生み、ファンを増やす」それ自体は、ザッポスの話などでよく語られますし、言われてみれば当然ですね。しかし、それを現場で実践するとなると、(大企業だと)なかなか難しいものだと思います。
効率化のためのルールと、ファンを増やすための対応のバランス、難しいですよね。御社ではどうされていますか?
ちなみに、熊本のセミナーですが、主催者さんに連絡して出番を調整してもらったのですが、結局は開催に間に合う時間に現地に着きました。それ以降は、何かトラブルがあって1本遅れても間に合う便を予約するよう、さらに心がけるようにしています。はい。
コメント
感動が落胆に変わる事もある
先日よりゲームショウであったらしい、車椅子の方への対応についての話が巷で絶賛されながら出回っているのをキモチワルイと思いながら眺めていました。
あれは本当に美談なのか?と。
編集長のおっしゃるように特別なサービスを受けなかった大多数の気持ちはどうなるのか、ということだけではなく、一度例外的なサービスを受けて感動した顧客が、次の機会に特別でない普通の対応を受けたとき、前はここまでやってくれたのに、と感動が落胆に変わり、本来なら生まれないはずの余計な不満が出る可能性がありますよね。
ですのでリピーターの多い弊社では、できるだけサービスの質を均一にするよう、例外的なサービスを控えるように通達が出ています。それでもお客様に喜んでいただくため、そして営業成績を上げるためなどの理由で、社内で禁止されているような余分なサービスを行っている人は多いんですけれど。
そのとおり!
っと、コメント返信が遅れました。
おっしゃるとおり!
ホントに、そのあたりが難しいところです。
私も先日、この記事で書いた航空会社で(また)乗り遅れてしまったのです。ところが今度は、現場の対応はマニュアルどおり(それは普通)だし、事前にしておいた電話連絡も伝わっていなかったのです。
それ自体は普通のことなんですが、前回に感動体験があっただけに今回は落差を感じてしまいました。
おっしゃるように、均質なサービスを提供したうえで、全体のサービスの質を上げていくのが良いのかな、などと感じてしまいました。
難しいですね。