いいね!を数えるのでなく、ソーシャルデータをEメールのターゲティングに活かすのがリレーションシップマーケティング
ソーシャルメディアをEメールや他のデジタルチャネルと組み合わせて活用することの重要性や海外での取り組みを紹介する。
この記事でお伝えしたいのは、端的にいうと次のようなことだ。
ソーシャルメディアは直接的な収益チャネルというよりも、そこから得られるデータを他のデジタルチャンネルと統合することで、より大きな価値が生まれる。
米レスポンシス社が開催したイベント「インタラクト2012」で語られた内容から、ソーシャルメディアの活用や取り組みにおいて課題を感じている方のヒントになるだろう情報を整理してお伝えする。
ソーシャルメディアは「いいね!」を増やすだけでなく
ターゲティングにも有効活用できる
一般的にソーシャルメディアの役割として期待されているのは、「ブランド認知」「ブランディング」といった部分が大きいのではないだろうか。そうした取り組みにおいて指標とされていたのは、ファンやフォロワーの数であり、「いいね!」のクリック数などだった。
しかし、リレーションシップマーケティングの観点から考えると、また異なるとらえ方ができる。強力なコミュニケーションチャンネルであるソーシャルメディアを、Eメールをはじめとする他のデジタルチャンネルと統合することで、さらにマーケティング施策の成果を上げることができるのだ。
具体的には、「ソーシャルデータ」から得られる顧客の「興味」「ニーズ」「行動」などの情報を、他のチャンネルにおけるコミュニケーションのパーソナライズやターゲティングに用いるということだ。
ソーシャルデータから得た「興味のあるカテゴリ」に基づいたターゲティングによる成果の一例を紹介しよう。
米国のある大手フラッシュマーケティング(クーポン)サイトの事例だ。
このサイトでは、顧客が興味あるカテゴリに合わせてメールを配信するターゲティングメールを実施した結果、「フード」セグメントは開封率600%増、CTR450%増と大幅に向上した。また、「旅行/カルチャー」セグメントでは、開封率96%増、CTR46%増となった。
ソーシャルデータをEメールのターゲティングとパーソナライズに活用することによって飛躍的にROI効率を上げられる可能性があることをイメージしていただけただろうか。
リレーションシップマーケティングの担当者が
ソーシャルメディアに注目すべき理由
少し視点を変えて、デジタルマーケティングの先進国である米国のマーケティング事情が今後どう変わるかを、フォレスター・リサーチのレポートから考察してみたい。
「米国インタラクティブマーケティング予測(“US Interactive Marketing Forecast, 2011 To 2016”)」というレポートでは、次のように述べている。
2016年までに、米国の広告主は770億ドルをデジタルマーケティングに投資するようになる。
これは現在テレビを始めとするマスメディアに投じている予算とほぼ同額である。
SEM、ディスプレイ広告、モバイルマーケティング、Eメールマーケティング、ソーシャルメディアといったデジタルチャネルへの投資は、全広告費の35%にまで成長すると見られる。
レポートによると、デジタルマーケティング分野で見込まれる成長要因として下記が挙げられるという。
- デジタルマーケティングを遂行する組織の強化
- 新興のデジタルマーケティング技術がユーザー企業の信頼を獲得
- デジタルマーケティングの効率が向上
- カスタマーセントリックアプローチの浸透(とくに幅広い年齢層の顧客を持つ企業は、顧客に合わせたブランド体験を創出するために、顧客に合った各タッチポイントに投資する必要がある)
さらにフォレスター・リサーチは、この先予測されるソーシャルメディアへの支出の内訳を次のように分析している。
代理店手数料を含むソーシャルメディア関連施策への支出は、次の5年間で年成長率26%のペースで増加するとみられる。
とはいえこれは49億ドルに過ぎず、2016年までに使われるデジタルマーケティング全体における支出のうち、わずか7%である。
また、次のようにも述べている。
現在ソーシャルリスニングと呼ばれているマーケティング施策は「ソーシャルインテリジェンス」へと発展する。
ソーシャルメディアに関連する支出は、ソーシャルメディア上のユーザーの声をモニタしデータ収集するためのTrackur、Crimson Hexagonといったソーシャルリスニングプラットフォームを採用する会社が増えるにつれて伸びていく。
しかし、さらに大きな投資が、CRMプラットフォーム拡張の一環としてソーシャルデータを既存の顧客データベースに統合する企業によってなされると予想される。
上記のレポートから注目すべきは次の3点である。
ソーシャルメディア関連支出のデジタルマーケティング支出全体に占める割合が7%という少なさが示唆するのは、「ソーシャルメディアはデジタルマーケティングによる収益を押し上げる主要因ではない」ということ。
ソーシャルメディアに関連する支出約49億ドルの50%を占めるのは「ソーシャルメディアを組み合わせた統合キャンペーン」への投資(約25億300万ドル)である。
これは、「ソーシャルデータ」の統合がデジタルチャンネルにおけるCRMの成功要因の1つとして重要視されていることを示す。
ソーシャルメディアが「ソーシャルインテリジェンス」ツール、つまり「リスニングプラットフォーム」として発展し、既存の顧客DBに統合されるという予測は、ソーシャルメディアの役割の変化とその重要性を現している。
日本においても、これからの数年間でソーシャルメディアに求める役割の再考を迫られる可能性が高いだろう。
ソーシャルデータを既存の顧客データと統合することは、リレーションシップマーケティングの取り組みにおいて大きなハードルであるのは確かだ。しかし、そこから得られるメリットが大きいのも間違いないだろう。ソーシャルメディアから統合されたデータを、Eメールを中心とするコミュニケーションに活用することで、リレーションシップマーケティングの精度を大幅に向上させることが可能になるからだ。
ソーシャルデータと既存データの統合とは?
顧客や見込み客のソーシャルデータは、Facebookやその他ソーシャルネットワークから得られる。しかし、CRMの効率向上につなげられるようなソーシャルデータの活用を検討するうえで、以下の課題に直面するだろう。
- どのようにして、ソーシャルデータを低コストで集めるか。
- どのように、ソーシャルデータを既存の顧客データと統合するか。
- どのようにして、統合したソーシャルデータを基に効果的なコミュニケーション戦略を開発するか。
1点目の「ソーシャルデータを集める」部分は、さまざまな企業がソーシャルリスニングサービスとして提供している。
2点目の「ソーシャルデータを既存のCRMデータと統合する」部分に関しても、CRM企業やデータ分析企業がツールやサービスを提供するようになってきており、ハードルは決して低くはないものの、技術的な解決策は整いつつあるといえる。
しかし、3点目の「統合したソーシャルデータを既存のコミュニケーション施策に活用する」に関しては、現時点では効果的なソリューションは数少ない。
そして、その課題に対する1つの解としてレスポンシス社が提供しているのが、Social Data Cloudだ。これはResponsysレスポンシス社パートナーでもあるCalmSea(カームシー)社が開発した技術がバックボーンとなっており、Responsys Interactの1機能として提供される。
Social Data Cloudでは次のようなデータを収集できる。
- ソーシャルグラフ
- ソーシャルプロフィール
- インフルエンス(影響力)
- エンゲージメント
- センチメント(感情)
- ソーシャルコマース
そして、収集したデータはResponsys Interact上でCRM・EC・顧客DB・アクセス解析のデータとシームレスに統合してコミュニケーションに活用できる。
気になるのはソーシャルデータの収集方法だが、ソーシャルメディア上のデータにアクセスするためには企業やブランドが専用のFacebookアプリを提供し、ユーザーに登録してもらうことが必要となる。
ソーシャルデータが収集されると自動的にResponsys Interactで利用可能になり、既存の顧客データと統合して、デジタルチャネルでのコミュニケーションのターゲティング(パーソナライゼーション)などに活用できる。
米O'Neill社では、ソーシャルデータに基づいて誕生日/居住地/興味のあるカテゴリによるターゲティングメールを実現している。この施策の自動実行とパーソナライゼーションのプラットフォームとしてResponsys Interactが活用されている。
記事冒頭で紹介した米国のある大手フラッシュマーケティングサイトのターゲティング事例も、このSocial Data Cloudを利用して行ったものだ。
まとめ
ここまで見てきたように、ソーシャルメディアは直接的な収益チャネルというよりも、そこから得られるデータを他のデジタルチャンネルと統合することで、より大きな価値が生まれる。
ソーシャルデータと既存の顧客データを統合することにより、デジタルチャネル上のコミュニケーションのパーソナライズ精度、エンゲージメント、CRM効率などを向上でき、それによって、顧客と企業の双方に利益をもたらすことだろう。
こうしたデータ統合と活用は一見ハードルが高いように思われるかもしれない。しかし実際のところ、すでに技術的には難易度の高いものではなくなっているという点は、改めて強調しておきたい。
ソーシャルもやってます!