申し込みフォーム改善(EFO)をしたいのですが、どのデータを参考にすべきですか?
当クリニックの代表。
イケメンの研修医。
優しい天然ボケの研修医。
ここ「アクセス解析5分クリニック」には、Webサイトについてさまざまな悩みを抱えた患者が、毎日のようにやってくる。研修医の来栖と綾瀬はデコボココンビだが、院長の丸山先生がとにかく名医。たった5分ですべての悩みを解決する!というのだ……。(登場人物紹介を詳しく見る)
今回のお悩み
申し込みフォーム改善(EFO)をしたいのですが、どのデータを参考にすべきですか?
申し込みフォーム改善(EFO)をしたい
僕のクライアントが「EFOをしたい」と言ってきました。どのデータを参考にすべきでしょうか?
EFOか。Entry Form Optimization、つまり「申し込みフォームの最適化」だね。
さすが、あきらのクライアントは勉強熱心ね。EFOなんてあまり聞かないわ。
まず制限を外してアイデアを出そう
「EFO」や「SEO」とか、Web業界はとかく3文字英語が多いけど、あまり用語や流行にとらわれすぎるのも良くないね。本質はシンプルなことも多い。ではまず、来栖君に聞くけど、EFOにはどのデータを参考にすべきだと思う?
それが、「申し込みページの滞在時間」くらいしか思い浮かばないのですよ。滞在時間が短いということは、興味がなかったということですからね。
でも滞在時間が長かったとしても、ユーザーが迷っていただけかもしれないわ。その判断が難しくない?
2人とも、ひょっとすると本末転倒な考え方をしているかもしれないよ。まず考えるべきは、Googleアナリティクスでどこを見るかではないよ。考えるべきは、EFOで何のデータを取得すべきか?ということだ。
Googleアナリティクスを無視するのですか? だとすると、申し込みフォームの改善のためには、「ユーザーが入力をやめた項目」などを知る必要があると思います。
いいね。制限を外してまずアイデアを出すことが大切だ。他にも思いつくかな?
「入力時間」なども取得したいですね。たとえば、自由記入欄なのに数分迷っているとしたら、自由記入だと伝わっていないのかもしれません。「入力エラー率」もそうかな。
当たり前かもしれないけど、「申し込みページからのコンバージョン率」も大切だと思うわ。EFOがうまくいったかどうかの最終判断基準になるから。
どうやってデータを取得するか?
うん、だいぶアイデアが出たね。
- ユーザーが入力を止めた項目
- フォームの入力時間とエラー率
- コンバージョン率
という3つを見ていくとして、どうやってこれらのデータを取得しようか?
フォームの入力にかかった時間なんて項目は、Googleアナリティクスにはないですよね? どうしたら良いのでしょうか?
基本的な考え方だけど、項目がないなら自分で値を取得するしかないよ。
それにはプログラムを使う、特にJavaScriptを使うことが一般的だね。もしくは、他のEFO専門ソフトを導入してもいい。
「お金はかけられない」って僕のクライアントは言っていたんですよね。僕がJavaScriptで組むしかないのでしょうか?
Webは多くのものが無料だから、ついつい無料でとなりやすいよね。しかし無料のリスクも知っておくべきだよ。
少し前、Web担当者Forumで、清水誠氏の記事「Googleアナリティクスの無料版ユーザーが今後、気を付けるべきこと」があったよね。
自分で設定するにしたって、人件費の問題もあるし、バグの問題もある。
個人的には、投資対効果があると思うならば、思いきってお金をかけても良いと思うよ。一般的なビジネスはみんなそうやって投資しながら大きくするもの。Web業界だけは無料というのは特殊すぎだよね。
自分でやる方法も選択肢に
とはいえ、今日は来栖君が自分でできる方法を教えよう。まず、Googleアナリティクスの基本機能で使えるのは、「目標到達プロセス」と「ページ滞在時間」だと思う。
目標到達プロセスは、どのページでユーザーが離脱したのかがわかる。こんなイメージで確認できるよ。
この目標到達プロセスレポートを見るには、事前設定が必要だ。これには以下のページが参考になるだろう。
- アナリティクス 日本版 公式ブログ: 目標到達プロセスと正規表現
http://analytics-ja.blogspot.com/2008/02/how-to-set-up-funnels-and-tips-for.html - GAフォーラム:Googleアナリティクスの始め方、プロファイル設定(4)目標設定の2
http://gaforum.jp/basic/intro/2340#more-2340
しかし、これだけでは正確な判断はできなさそうですね。
そのとおり。だから、結局は来栖君が指摘したように、それぞれのフォームのパーツごとにデータを取得したほうがいい。それには“JavaScriptを使用したイベントトラッキング”などが便利だよ。
イベントトラッキングは以前出てきましたね(サイトのメニュー構成が悪いと思うのですが、改善のためにはどのデータを見るべきですか?)。
でも、私JavaScriptがいまいち苦手です。
プログラミングだから、多少は得意不得意が出るとは思う。先ほど伝えたように判断が必要になってくるね。人に頼むか、自分でやるか。この連載では、自分でやると決めた人向けに、なるべく簡単にできる方法を発信していくよ。
まとめ
EFOのように、新しい用語が出てきても、アクセス解析の基本的な考え方はいっしょだ。
つまり「Googleアナリティクスの、どのデータを見れば良いか?」と考えるのではなく、「目的のために、どのデータを取得すべきか?」と考えるんだ。
これは全般的に言えることだけど、標準機能だけで取得できるデータでも良いけど、自分が思いつくデータをJavaScriptなどで取得できれば、可能性はぐっと広がる。
多少テクノロジーが必要な個所になってくるけど、よく見ればそれほど難しくないことも多い。あまり苦手意識をもたず、ぜひがんばってほしい。
お悩み申し込みフォーム改善(EFO)をしたいのですが、どのデータを参考にすべきですか?
アドバイスまず考え方が2つあります。 1つは「現在取得できているデータのどこを見るべきか?」という考え方。もう1つは、「参考になるデータを新規で取得していく」という考え方です。
既存データでいえば、EFOには目標到達プロセスとページ滞在時間、およびコンバージョン率が役に立つでしょう。
今回お教えするのは、新規で1つデータを取得する方法です。「ユーザーがどこまで入力しようとしたか?」をGoogleアナリティクスで取得してみます。難しく見えるかもしれませんが、よく見れば決まり切ったコードを入れるだけで、デザイナーさんでも簡単です。ぜひチャレンジしてみてください。
- 【1分】 ユーザーがテキストフォームなどに入力し始めた瞬間を計測する
各フォームのパーツに入力し始めた瞬間(技術的に言えばフォーカスが当たった瞬間)にアクションを実行します。やり方は簡単。その名のとおりフォームの各パーツ(テキストボックスなど)のHTMLに「onfocus」という文言をくっつけるだけです。まず、各フォームのHTMLパーツにonfocus=""を付けてみます。
【例】
<input type="text" onfocus=""> <input type="radio" onfocus=""> ……
これでフォーカスが当たった瞬間に、何かJavaScriptでアクションを起こすことができます。
- 【3分】 onfocusのところに、Googleアナリティクスのイベントトラッキングコードを入れる
このままでは、アクションは起こりますが、Googleアナリティクスに何も情報を送っていませんので、何も起こりません。そこで、Googleアナリティクスに情報を送る設定をonfocusに入れ込みます。まず以下のコードを見てみてください。
【例】
_gaq.push(['_trackEvent', 'Moushikomi-Form', 'Onfocus', 'name-text',,true]);
順に説明します。
左から1番目 _trackEvent 「_trackEvent」が決まり文句です。そのまま入れてください。 2番目 Moushikomi-Form カテゴリです。自分でわかりやすい名前を付けましょう。 3番目 Onfocus アクションです。今回はフォーカスが当たった瞬間なので「Onfocus」を入れてみます。 4番目 name-text ラベルです。これは各フォームのパーツごとにわかるように固有の値にします。たとえば名前のテキスト入力フォームであれば「name-text」などで良いでしょう。 5番目 (空白) 何も値を入れません。コンマでつなぐだけです。 6番目 true 最後の項目はイベントが発生したときに直帰とみなすかどうかの設定です。通常は「true」を入れて、直帰とは関係ないようにしておきましょう。 これをフォームの各パーツごとに作成し、先ほどのonfocus=""の「""」の間に入れ込みます。
【例】
<input type="text" onfocus="_gaq.push(['_trackEvent', 'Moushikomi-Form', 'Onfocus', 'name-text',,true]);">
全部のパーツに入れたら設定完了です。
- 【1分】 1日後、イベント情報を確認する(1分)
設定が完了した1日後、イベントの値を見ます。値が入っていたら、設定はうまくいっています。ドリルダウンして値を見てください。
あきらかにフォーカスが少ない項目があれば、その項目で入力をあきらめたユーザーが多いかもしれません。もしくは、その上の項目に入力するだけで嫌になったのかもしれません。こうして、本当に必要項目かどうかなど、再検討しましょう。
1つの判断基準として、急にフォーカスが少なくなった項目があれば、その項目で入力を諦めたユーザーが多いか、その直前の項目で嫌になった可能性があります。たとえば、住所や電話番号などは入力を避けられる傾向があります。
入力文例を示したり、そのパーツを外すことで、申し込み率をあげることができるかも知れません。ぜひ確認してみてください。
※今回のトラッキングはOnfocusイベントで取得しているので、ユーザーのマウス操作などによっても値は前後します。またトラッキングされた数値は他と比べて少なくなることもあるので、あくまで数値は相対的に評価してください。
※キャラクターイラスト(来栖、綾瀬):「コミPo!」にて制作
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