誰もが受けたい!アクセス解析5分クリニック

複数サイトを持っています。相互の影響をアクセス解析で調べる方法はありますか?

複数サイトや外部サイトを使っている場合、相互の影響が気になるところだ。クロスドメイントラッキングについて、改めて考えてみよう。
誰もが受けたい!アクセス解析5分クリニック
丸山先生
医者:丸山先生(35歳・男)
当クリニックの代表。
来栖あきら
研修医:来栖あきら(25歳・男)
イケメンの研修医。
綾瀬ゆい
研修医:綾瀬ゆい(25歳・女)
優しい天然ボケの研修医。

ここ「アクセス解析5分クリニック」には、Webサイトについてさまざまな悩みを抱えた患者が、毎日のようにやってくる。研修医の来栖と綾瀬はデコボココンビだが、院長の丸山先生がとにかく名医。たった5分ですべての悩みを解決する!というのだ……。(登場人物紹介を詳しく見る

今回のお悩み
複数サイトを持っています。相互の影響をアクセス解析で調べる方法はありますか?

複数のサイトを統合して分析するには

私のお客さんで2つのサイトを持っていて、さらにフリーの外部の申し込みフォームを使っている人がいるの。Googleアナリティクスを導入しているので、それぞれのドメインのデータはわかるのだけど、どういう動きがあって、どうお互いにどう影響し合っているのか、よくわからないのよね。

動線がわからないし、相互の影響を数値化できていないってこと?

そう。まずは、最初に来たサイトから、どういう経路をたどって、最後に申し込みフォームまで行ったのか、その動線が知りたいの。

そういうときこそ「クロスドメイントラッキング設定」だよ! 複数ドメインの情報をまとめて1つのレポートで確認できるんだ。

……ちょっと待った。確かに来栖君の言っているとおりだけど、本当にクロスドメイントラッキング設定が必要か、一度落ち着いて考えてみよう。そもそも綾瀬さんは、その動線を知って、何に役立てるつもりだい?

たとえば、Aサイトから来たお客さんが、バナーを押してBサイトに行きますよね。どれくらいのお客さんがそういう行き来をしているか確認したいんです。

それは、今の状態でもわかるんじゃないかな? Bサイトで“Aサイトから来た人”をカウントしてもいいし、どのバナーか特定したいなら、Aサイトで“Bサイト行きのバナーをクリックした人”を確認すればいい。

それは……。確かにそうですね。

意地悪で言っているわけではないけど、複数ドメインがあった場合に、安易にクロスドメインを設定しようとすると、設定ミスなども含め、思ってもみないデータになってしまうケースもあるんだ。

本当は、それぞれ別サイトなのだから、別々に計測していてもいいのかもしれない。まずは「クロスドメイントラッキング設定」の前に、一度冷静になって、「何を確認したいのか?」を考えてみよう。

クロスドメイントラッキングが有効な場合

まず、以下のようなケースでは、クロスドメイントラッキングが有効だろう。ぜひ検討してみてほしい。

  • 外部のショッピングカートや、申し込みフォームを使っている
  • それぞれのドメイン(サブドメイン含む)を回遊する作りになっている
  • 集客サイト→成約サイトという流れになっていて、最終コンバージョンしたユーザーの集客キーワードを知りたい

特に外部のカートやフォームを使っている人は多いと思うけど、クロスドメイントラッキング設定をすれば、どのキーワードから来た人がコンバージョンしているかがわかるというメリットは大きい。

うちのお客さんがまさにそうです! ですから早く設定方法を教えてください!

うん……。ただ、外部の申し込みフォームを使っている人は、プログラミング関係が苦手な人も多いよね? 綾瀬さんのお客さんはどうかな?

苦手ですね。だからこそ、自作ではなく外部フォームを使っているのです。

そうすると、少し拒否反応が出るかもしれないね。クロスドメイントラッキングは、ユニバーサルアナリティクスになって設定がかなり簡単になったけれど、それでも、コードやGoogleアナリティクス側の変更が少し必要だ。仕様を理解していないと、思わぬ設定ミスも起こりやすい。

設定手順を説明するから、次のステップをゆっくり理解しながら進んでほしい。

クロスドメイントラッキングの設定の手順

クロスドメイントラッキングは、以下の3ステップで設定していこう

  1. なぜクロスドメイントラッキングの設定が必要なのかを知る
  2. Googleアナリティクス側で準備する
  3. サイト側のコードを書き換える

1. なぜクロスドメイントラッキングの設定が必要なのかを知る

そもそも、なぜクロスドメイントラッキング設定が必要なのかというと、cookieの仕様が影響している。

セキュリティポリシーにより、Aドメイン名からは、Bドメイン名用のcookieの内容を見られない仕様になっている。これはルールだ。そのため、別ドメイン名となっていると、Googleアナリティクスはcookieからうまくデータ収集できないのだ。

そこで、Googleは独自のプログラムを作成して、この問題を解決する方法を提示した。それがクロスドメイントラッキングの設定だ。

2. Googleアナリティクス側で準備する

クロスドメイントラッキングの設定を進めるには、まずGoogleアナリティクス側で、以下3つの手順を踏む必要がある。

  1. プロパティを新規作成する

    まずデータの入れ物であるプロパティを新規作成する。今後は、このプロパティに複数ドメインをまとめたデータが入ることになる。

    新規プロパティを作成する
    名前やURLを設定する
  2. 新しいトラッキングコードを発行しカスタマイズする

    さきほど作成したプロパティからトラッキングコードを発行し、設定を行う(ユニバーサルアナリティクスの場合)。

    【Google公式ヘルプページより抜粋】

    まず、create行を見つけます。たとえば、example-1.comというウェブサイトでは次のようになります。

    ga('create', 'UA-XXXXXXX-Y', 'example-1.com');

    次のようにスニペットを修正します。

    ga('create', 'UA-XXXXXXX-Y', 'auto', {'allowLinker': true}); 
    ga('require', 'linker'); 
    ga('linker:autoLink', ['example-2.com'] );

    例に示したトラッキングID(UA-XXXXXX-Y)とセカンダリ ドメイン(example-2.com)は、実際のトラッキングIDとセカンダリ ドメイン名に置き換えてください。プライマリ ドメインのすべての挿入個所で、このトラッキング コードを上記のとおりに修正してください。

    ※ドメインが3つ以上ある場合

    上の例と同じように編集しますが、3つ目以降のドメインをautoLinkプラグインに追加します。下記のとおりカンマを付け加える必要があります。

    ga('linker:autoLink', ['example-2.com' , 'example-3.com' ] );
    ※Google公式ヘルプページ:クロスドメイン トラッキングを設定する(アナリティクス ヘルプ)
  3. フィルタをかける

    上記のトラッキングコードをサイトのHTMLに貼れば、最初の手順で用意したプロパティにデータが収集される。

    しかし、そのままでは、Googleアナリティクス上のデータにどのドメイン名のサイトへのアクセスなのかの情報が付与されない。たとえばAドメイン名のindex.htmlの閲覧と、Bドメイン名のindex.htmlの閲覧がドメイン名の区別なく合算されるし、他にも、company.htmlなどがどのドメイン名のものかわからなくなってしまう。これは非常にやっかいな状況だ。

    そこで、ビューにフィルタをかけて、区別を付ける必要がある。具体的には、下記のようにする。

    フィルタを作成する
    該当のビューにフィルタを新規作成する
    カスタムフィルタを設定する
    フィールドAホスト名 引用Aホスト名(ドメイン名)を取得し、フィールドAに格納する。
    フィールドBリクエストURI引用URI(パスとファイル名)を取得し、フィールドBに格納する
    出力先リクエストURI構成ホスト名(A)とURI(B)を連結して、通常レポートのURIの個所に出力する

3. サイトにコードを貼る

「2. Googleアナリティクス側で準備する」の「2. 新しいトラッキングコードを発行しカスタマイズする」の手順で作成したコードを、サイトのHTMLに貼る。

旧来のコード(ga.js)が入っている場合でも問題ないので、新しく貼るだけでいい。もし現在ユニバーサルアナリティクスのコードを貼っている人で、かつ初心者の場合はそのコードを入れ替えるのが良いだろう。

現在ユニバーサルアナリティクスを使っていてそちらを残し、さらに追加で貼りたいならば、新しくトラッキングオブジェクトを作成する必要がある。具体的には下記のようにするが、コードを読んでも意味がわからない人は、外部に頼むほうが安全だろう。

現在のユニバーサルアナリティクスのトラッキングコードに今回の内容を追加する場合の書き方
<script>
(function(i,s,o,g,r,a,m){i['GoogleアナリティクスObject']=r;i[r]=i[r]||function(){
  (i[r].q=i[r].q||[]).push(arguments)},i[r].l=1*new Date();a=s.createElement(o),
  m=s.getElementsByTagName(o)[0];a.async=1;a.src=g;m.parentNode.insertBefore(a,m)
  })(window,document,'script','//www.google-analytics.com/analytics.js','ga');

ga('create', 'UA-XXXXXXX-X', 'auto');
ga('send', 'pageview');

//ここがクロスドメイントラッキングの追加 ga('create', 'UA-XXXXXXX-Y', 'auto', {'name': 'crossTracker','allowLinker': true}); ga('crossTracker.require', 'linker'); ga('crossTracker.linker:autoLink', ['example-2.com'] ); ga('crossTracker.send', 'pageview'); //クロスドメイントラッキングの追加ここまで
</script>

この設定をすると、すべてのトラッカーで、リンカーが使用する同じクライアントIDが共有されるので、注意してほしい。

クロスドメイントラッキングの注意点

基本的に、上記の設定をすればクロスドメイントラッキングは完了するのだけど、注意点もある。それは、コードを入れ替えたとすると、今度は、今までのGoogleアナリティクスのレポートにデータが貯まらないということだ。

入れ替えたのだから当然でしょうけど、それは困るという人もいるでしょうね。

そこで、既存のものを残して追加していく方法もあるのだけど、もし現在ユニバーサルアナリティクスを使っていた場合は、先ほど書いたように、追加のトラッキングオブジェクトを作成する必要があるので少しプログラミングの素養が必要になる。そのコードの意味がわからないと、何かあった場合に応用が利かなくなってしまうから、より注意が必要になるね。

それでは困ります。さっきも言ったようにお客さんはプログラムが苦手なのです。

クロスドメイントラッキングは、もともとプログラムが必要なものだから、「優しく」かつ「誰でも設定できる」を両立するのは難しい。これでもだいぶ、ユニバーサルアナリティクスになって、設定が楽になったんだけどね。

だから、最初に言ったように、まずは「本当に自社にはクロスドメイントラッキングは有効か?」を自問してみてほしい。もしYESならば入れ替えを検討。できれば既存を残したいけどプログラミングが苦手というならば、この部分だけは得意そうな人に頼むなど、柔軟にとらえたほうがいいだろう。

まとめ

複数ドメインにまたがってサイトが存在している人は少なからずいる。

特に外部フォームを使っている人などは、意識せずに外部のドメインを使っていることも多い。ただ、そうすると普通のGoogleアナリティクスではドメイン間をまたがったデータ収集ができなくなる。

このときにまず検討してほしいのは、複数ドメインをまとめたデータ収集が本当に必要かどうかだ。たとえば視点を変えて、オリジナルの申し込みフォームを作成して自社ドメインに設置すれば、クロスドメイントラッキングは必要なくなる。

そういったことも考慮した上で、やはりクロスドメイントラッキングが必要だと判断した場合は、今回伝えた手順に従って、設定を進めてほしい。

そのとき、万が一理解できないところがあるならば、外部の力を頼るのがいいだろう。

今日の処方箋

お悩み複数サイトを持っています。相互の影響をアクセス解析で調べる方法はありますか?

アドバイスクロスドメイントラッキングを使えば、Googleアナリティクスで調べることができます。しかし、本当にその設定が必要かどうか、今一度考えてみましょう。以下3つの質問に対して、回答してみてください。

  1. 12【2分】 今のまま、ドメインごとに別々に計測して、十分な分析はできませんか?

    「Bドメインを参照してAドメインに来た数」などは、標準機能でも普通に分析できます。

    そういった分析だけで十分ということはありませんか?

  2. 34【2分】 逆に1つのドメインにサイトを統合できませんか?

    1つのドメインに統合すれば、クロスドメイントラッキングは必要なくなりますし、そのほうがユーザーにとっても利便性があがることも多いでしょう。外部フォームを使用している人は、プログラマに頼むといった対応で、オリジナルの申し込みフォームを作ることが可能です。

  3. 5【1分】 最初に方針を立てましょう

    文中でも説明していますが、「既存のコードを残すのか、それとも入れ替えるのか」を考えましょう。

    既存のコードを残せば、今までのレポートはそのまま使え、さらに追加でクロスドメインレポートが確認できますが、その場合は、少しプログラミングの知識が必要になります。初心者には入れ替えのほうが楽でしょう。

    以上をふまえて、方針を立てましょう。

■筆者からお知らせ【9月27日開催】

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海外マーケットに向けてUNIQLOの認知を高めるプロジェクトを行うなどの実績を持ち、国内外の広告賞の審査員を務める敏腕クリエイター。カンヌライオンズ、D&ADなどの国際広告賞を数々受賞し、国際カンファレンスでの講演も多数。11年クリエイター・オブ・ザ・イヤー・メダリスト。
「ブランドを壊さずに数万人にメッセージを伝える方法」を最新海外事例も交えてお話いただきます。

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ウェブ担当者通信らしく、“実運用”にフォーカスした珍しいセミナーになると思います。
  • どうやったら中小企業でも1万人にブランド訴求ができるのか?
  • 名前が知られていない企業・商品の知名度を爆発的にあげる方法はあるのか?
  • いい商品であることを伝えるためには何が必要なのか?
  • 知名度をあげブランドを作り上げるためには、どういうライティング力が必要なのか?
  • そもそも社内体制はどうしたら良いのか?
こういったことを改めて考え直す機会にしてください。

※キャラクターイラスト(来栖、綾瀬):「コミPo!」にて制作

用語集
Cookie / Googleアナリティクス / HTML / UA / アクセス解析 / コンバージョン / スニペット / ドメイン名
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