コンバージョン率の最適化で陥りがちな罠に気づいていますか? [アクセス解析tips]
相対的な%と絶対値の両方が大事
表1はあるECサイト全体の購入者数とコンバージョン率の6ヶ月の推移を示した表である。4月と5月のコンバージョン率が激減しているが、担当者は悪びれる様子もない。季節変動する商品を扱っている訳でもないのだが、一体何が起きているのか、その理由は何だろうか?
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | |
---|---|---|---|---|---|---|
購入者数 | 110 | 210 | 230 | 320 | 240 | 190 |
コンバージョン率 | 1.6% | 4.9% | 2.1% | 0.4% | 0.3% | 4.0% |
ここではコンバージョン率と購入者数だけでなく、コンバージョン率の母数となるサイトの訪問者数を考慮に入れる必要がある。賢い読者はおわかりだと思うが、コンバージョン率と購入者数を逆算すれば全体のサイト訪問者数が算出できる。サイトの全体訪問者数を加えた表2をご覧いただきたい。4月と5月は購入者の絶対値もこの半年の中で最も多くなっており、コンバージョン率つまり効率は悪くなっているが、キャンペーン施策で人を多く呼び込んでいるということが推測できる。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | |
---|---|---|---|---|---|---|
サイト全体の訪問者数 | 7,060 | 4,300 | 11,120 | 87,630 | 83,460 | 4,760 |
購入者数 | 110 | 210 | 230 | 320 | 240 | 190 |
コンバージョン率 | 1.6% | 4.9% | 2.1% | 0.4% | 0.3% | 4.0% |
前回の例とは毛色が異なるが、これも絶対値と相対値(%)と両方の視点で見なければいけないというポイントは同じである。特にキャンペーンなどの集客の施策では、多くの人を呼び込めば効率は悪くなる。しかし新規ユーザーを呼び込まない限り、売上増は期待できない訳で、集客の施策は続けなければならない。
ここで重要なのは、サイト全体のコンバージョン率という指標ではなく、キャンペーン別、さらにその中での媒体別、クリエイティブ別などでセグメントしてコンバージョン率を比較して、効率のよい施策に絞り込んでいくといった工夫ということである。
部分最適が全体最適にならないケース
下の表3は、あるサイトのメルマガ広告とバナー広告のコンバージョン率を、キャンペーンの実施時期ごとに示した表である。メルマガ広告担当者もバナー広告担当者も、4月のキャンペーンよりも成果が出るように工夫した結果、5月のキャンペーンのコンバージョン率をともに上げることに成功したのだが、全体でみると何と、合計したコンバージョン率は下がっていた。こんな馬鹿なことがあるのだろうか。答えを見る前に、どういうケースがありえるか是非考えてほしい。
4月のキャンペーン | 5月のキャンペーン | 前月比 | |
---|---|---|---|
メルマガ広告 | 7.0% | 7.5% | +0.5% |
バナー広告 | 5.5% | 6.0% | +0.5% |
全体 | 6.55% | 6.30% | -0.25% |
この例での教訓はバナー広告やメルマガ広告などの施策ごとの担当者が努力して部分最適を果たしても、全体最適を監視する人がコントロールしなければいけないということを示している。下がこの例の実際の詳細の数字である。そう、メルマガ広告とバナー広告の流入数の割合が劇的に変化しているのだ。メルマガ広告の担当者はさらにコンバージョンを上げることにばかり目がいってしまい、ボリュームを稼ごうとしなかったのだ。一方、バナー広告の担当者はボリュームも効率も上げるという快挙を成し遂げている。
4月のキャンペーン | 5月のキャンペーン | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
流入数 | CV数 | CVR | 流入数 | CV数 | CVR | |
メルマガ広告 | 1,400 | 98 | 7.0% | 200 | 15 | 7.5% |
バナー広告 | 600 | 33 | 5.5% | 800 | 48 | 6.0% |
全体 | 2,000 | 131 | 6.55% | 1,000 | 63 | 6.30% |
ここで重要なのは、セグメント化によって各施策担当者はその中でベストを尽くしていくことに努力するようにデータは使わなければならない一方、全体を統括するマネージャーは、それぞれの割合をコントロールするのが、重要な仕事になるということだ。
最近は、特にSEOやキーワード広告からの集客において、コンバージョン率が重要ということが多く語られるようになってきているが、コンバージョン率を見ていればすべてがうまくいくということでは必ずしもない。コンバージョン率はあくまで指標の一つである。常に他の指標と組み合わせて見る習慣を忘れないようにしよう。
まとめ
- 相対的な%と絶対値の両方が大事
- 部分最適と全体最適を見る場合は絶対値を見る
ソーシャルもやってます!