HCD-Net通信
「人間中心設計 (HCD)」を効果的に導入できるよう、公の立場で研究や人材育成などの社会活動を行っていくNPO「人間中心設計推進機構(HCD-Net)」から、HCDやHCD-Netに関連する話題をお送りしていきます。
HCD-Net通信

1.ユーザー特性の抽出

1.ユーザー特性の抽出

まずは、ペルソナを文章として記述するのではなく、評価対象物の利用に関連性のあるユーザー特性を列挙することからスタートする。ユーザー特性というと、一般に年齢や性別、職業などをリストアップすることになるが、たとえば、「男性」か「女性」かという性別が評価対象物の利用に関係ないと判断された場合には、その特性はリストから削除しても構わない。言い替えれば、ペルソナを使って検討を行う評価対象物ごとに、利用する特性リストのカテゴリが異なることになる。

学歴が関係すると思われればそれは含めるし、職業や家族構成が関係ないと思われればそれは除外する。そうやって関連性のある特性だけを取り上げた検討を行っていけば、現実的な規模で網羅的なペルソナ分析ができるだろうと考えた。

2.特性カテゴリ内の項目をリストアップ

次に、そうやって抽出した各特性カテゴリの項目をリストアップする。性別のように「男性」「女性」とシンプルな場合もあるが、年齢のような連続量の場合、どのあたりで区切りをつければいいのか悩ましい場合もあるし、職業のように、単純にリストアップすると膨大な項目群になってしまう場合もある。これを防ぐには、当該の人工物の利用に関係しそうな区切りを設定し、各特性カテゴリに最適な項目をリストアップすれば良い。

たとえば、年齢による特性がみられると判断された場合でも、20代と30代、40代にあまり差がないものであれば、担当者が適切に判断してひとくくりにしてもいい。ペルソナ法というのは、あくまでも設計サイドが想像力を駆使して実施する手法であり、分析に必要な感度が低かった場合には、予測精度は保証されない。実施担当者の感受性や想像力の低さをカバーする手法ではないからだ

ただし、項目を決めていく際には交互作用について注意する必要がある。たとえば、年齢と性別に交互作用があり、「20代」の「女性」にだけ特別な行動が予想されるが、それ以外の年齢と性別の組み合わせの場合はほとんど同じ行動をすると考えられるような場合だ。そのような場合、「20代」もしくは「女性」という項目内に、交互作用ケースとして特別に記述する必要がある

3.特性カテゴリに特化した記述を

特性カテゴリと各カテゴリの項目を用意したら、当該人工物について「どのような使い方をする可能性があるのか」「どのような問題点に直面する可能性があるのか」「どのような点でうれしさを感じる可能性があるのか」といった、利用法や問題点、評価点などを記述していく。全てのカテゴリに関する項目数の合計をnとした場合、n × 3のマトリクスに文章を記入していくのだ。これが特性ペルソナ手法の基本である。

従来の全体記述のペルソナ法では、各カテゴリ内の項目から1つずつを選び、それらをつなげて1つのペルソナ像を作り上げるものだった。たとえば6つの特性カテゴリを想定し、それぞれの項目数がそれぞれ「2、4、8、3、6、9」だったとき、可能な組み合わせはそれらを掛け合わせた10,368通りにもなる。従来のペルソナでは、そのなかから数個の組み合わせを選び出してペルソナを作っていた。ただし、この作り方でカバーできる組み合わせは、すべての組み合わせに比べて遙かに少ない(数例~10数例と考えると0.1%に満たない)ため、検討漏れが起きてしまう可能性がある。

これに対して、特性リストペルソナであれば、各特性カテゴリの情報は独立しているため、単純に特性カテゴリごとの検討のみで済む(上記の例であれば2+4+8+3+6+9=32通り)。交互作用の発生を考慮しても40通り以下の検討で網羅的な分析ができることになる。

16カテゴリ(計103項目)による特性リストペルソナの例
16カテゴリ(計103項目)による特性リストペルソナの例
103 × 2のマトリクスに特性を記述していく。
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