明日からできるユーザ中心の考え方と実践手法 - デジタル時代のユーザ中心マーケティング戦略

WAIS JAPAN 2009の基調講演、デジタル時代のユーザ中心マーケティング戦略の講演をレポートする

[基調講演3 成果を上げる!デジタル時代のユーザ中心マーケティング戦略]
明日からできるユーザ中心の考え方と実践手法

2009年10月2日、Webサイト活用&マーケティングに関するイベント「Web担当者Forumミーティング WAIS JAPAN 2009」 が東京で開催された。今回は「今だからまるごと全部成功事例」をテーマに、成功事例に特化して講演やセミナーが行われた。ここでは、当日の基調講演3の様子、株式会社ビービット 遠藤氏の講演をお伝えする。

成功するサイトはお客様のニーズを満たしている

写真:遠藤 直紀氏
株式会社ビービット
代表取締役
遠藤 直紀氏

WAIS JAPANを締めくくる最後の基調講演では、ビービット 代表取締役の遠藤氏がデジタル時代のユーザ中心マーケティング戦略について解説。インターネット上での意思決定を行うユーザーが増えるほど、企業がユーザーを理解して、利益のあるコミュニケーションを行う必要性が高まる。これを実現する方法論が、遠藤氏の言うユーザ中心アプローチだ。

では実際にユーザ中心アプローチによってどのような成果が得られるのか、遠藤氏は成果を感じてもらうためにいくつかの事例を紹介。

はじめに紹介されたのはBtoBの事例だ。NECのERPパッケージの顧客獲得増に向けて取り組んだところ、Webサイト経由の見込み客獲得が10倍以上になったという。このときのポイントは、集客施策ごとに複数の接客パターンを用意した点だという。

何万ページもある大規模サイトでは、リニューアルの際にツリー型の構造をとりがちで、上から分類して整理されていく。ところが、ユーザーはトップページ以外からもやって来る。「NECのERPが欲しいと思っている人と、ERPを選定している人ではコミュニケーションが異なり、着地地点もことなる。それぞれに、適切なコミュニケーションをとって成果をあげている」と、遠藤氏は解説。また、数千万円という成約では、ランディングページ1ページだけで資料請求に至ってもらうのは難しい。LPOをする際にも、社内コンテンツを複合的に活用し、事例やデモを見た上で資料請求してもらおうと、1ページ単位のLPOではなく、ランディングページから見たサイト全体の最適化を行ったという。

また、結婚式場を運営するPlan・Do・Seeのサイトでは、ユーザ中心アプローチによって、見学や相談の件数が2倍以上に伸びたという。このときのポイントが、結婚式場側が提供したいと考えている情報とユーザーの考えに乖離があったことだという。結婚式場では、企業は式場を探すペアをつれて来て説明をし、成約につなげる。そのため、Webサイトの役割は「式場に連れて来ること」になる。ことのき、企業側はブライダルフェアの内容を打ち出して来客を促していたが、実際にユーザーが求めているのは、ペアで見学するための日程をどれだけ押さえやすいかだったという。また、写真も重要な点だという。「我々の過去の事例からも、情報系のサイトは写真をどれだけ載せるかが重要です。企業側が見せたいのは、綺麗なイメージのいい写真ですが、リアリティがユーザーにとって重要です」と指摘する遠藤氏。たとえば、外国人が式をあげている写真を見ても、日本人である自分の場合を想像しにくい。そこで、品位を落とさずにどうやってリアリティをだすかがキーになり、そこを攻めていくとで成果が出たという。

この他にもいくつかの事例が紹介されたが、どのサイトにも共通するのが、企業側の想定ユーザー像と実ユーザーが乖離している点で、それを近づけていくことで、成果はあげられるという。

ユーザ中心設計手法の具体的なポイント

講演では、実際にユーザ中心設計を行うための具体的なポイントが紹介された。

ユーザターゲティング」では、セグメントを分けて、優先順位をつけてコミュニケーションをとっていくことが必要だ。一番良くないのが、全員をターゲットにしましょうというもので、そうした場合、自分観点のサイトになってしまうので、注意が必要だ。

ユーザシナリオ設計」では、ターゲティングしたユーザーがどういう人達で、どういう状況でどういった経路でサイトに何をしに来て、どう動いてくれるのかというシナリオを設計する。ユーザシナリオを考える際には、ユーザーの前提知識や経験、直前の流入状況や心理を考慮する必要がある。ニーズを点ではなく、線で考えることがポイントだ。

3つ目が「意見を聞かないユーザ調査」だ。ユーザシナリオを描いたら、本当にそうなのか、シナリオや狙っているターゲット調査した上でサイトをリリースする。ただし、人間は相手の期待に応えようとする傾向があるため、ユーザーの言葉ではなく行動を重視すると良いという。

写真:WAIS JAPAN 2009 基調講演、遠藤 直紀氏
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