「人間中心設計 (HCD)」を効果的に導入できるよう、公の立場で研究や人材育成などの社会活動を行っていくNPO「人間中心設計推進機構（HCD-Net）」から、HCDやHCD-Netに関連する話題をお送りしていきます。

HCD-Net通信

特性リストシナリオとしても応用可能

従来のペルソナ法は、どちらかというとユーザー像を明確にしてペルソナを中心に置いた施策を行ったり、社内の部署やクライアントとの意識のずれを防いだりするために活用されてきたものだが、今回紹介した特性リストペルソナ法は、網羅性を高め検討漏れを防ぐ事に主軸が置かれた全く異なるアプローチである。

この考えを利用状況などに拡大したのが、特性リストシナリオ手法（Trait List Scenario）だ。特性カテゴリとしては、季節、時刻、場所、緊急度などがあり、それらについての検討を特性ペルソナ手法と同様に行っていく。特性リストシナリオ手法に基づいた検討をすることで、たとえば「ソーラー電池で起動する腕時計が冬場には太陽に当たらない」といった考えてみればあたりまえだが、見落としやすい状況を確認することができ、その商品性についての検討が可能になる。

特性リストペルソナと特性リストシナリオは、シナリオ検討の時間を短縮する効率化と、網羅性という意味での有効さを向上させており、ユーザビリティの高い分析手法と考えられる。さらに、従来のペルソナやシナリオの記述には、数ある項目の中から数例のペルソナにまとめあげるためのイメージ統合力や文章表現力などの創作能力が必要であったが、特性リスト手法ではそうした苦労をする必要もない。

もちろん、どのような特性カテゴリを取り上げるか、どのような項目リストを設定するかという点に注意は必要だが、これらの手法によって検討漏れをなくすことができれば、利用品質を含めた商品性に関する適切な事前検討ができると考えられる。